不動産

土地法制改正③相隣関係

2022.02.28

相隣関係とは、隣接する不動産所有権等の相互の権利関係を意味します。相隣関係については、民法制定以来実質的な見直しがされてこなかったところ、所有者不明土地問題が生じている近年の社会情勢に合わせて見直しがされました(令和5年4月1日施行)。

 

第1 隣地使用権

隣地使用権に関する新民法の規定は、以下のとおりですが、重要点について解説します。

 

第二百九条 

1 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。

一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕

二 境界標の調査又は境界に関する測量

三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り

2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。

4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。

 

1 要件

(1)目的

   旧民法209条で認められていたのは「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため」でしたが、以下の場合が追加されました。 

・「工作物の…収去」(新民法209条1項1号)

・「境界標の調査又は境界に関する測量」(2号)

・「233条3項の規定による枝の切取り」(3号)

(2)使用方法

旧民法209条で認められていたのは「必要な範囲内」での使用でしたが、その内容を明確にするため「使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者…のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」とされました。

2 内容

(1)承諾請求権から使用権へ

旧民法209条では「隣地の使用を請求することができる」とされていましたが、新民法209条では「隣地を使用することができる」と改められ、承諾請求権構成から使用権構成に変わりました。ただし、隣地を使用する権利があると構成したとしても、その実現方法をどのように考えるのかは別の問題です。

例えば、部会資料52・2頁では「一般的に、権利がある場合であっても、自力救済は原則として禁止されているが、ここで問題になっている隣地の使用の場面に即していえば、当該隣地を実際に使用している者がいる場合に、その者の同意なく、これを使用することは、その者の平穏な使用を害するため、違法な自力救済に該当することになるのではないかと思われる。例えば、土地の所有者が、住居として現に使用されている隣地について、隣地使用権を有しているからといって、隣地使用者の同意なく門扉を開けたり、塀を乗り越えたりして隣地に入っていくことまではできないと思われる。」とされていますただ、後述する設備設置権に関してですが、それが使用者が存在しない所有者不明土地の場合にどうなるのかについては、議論があるようです「新しい土地所有法制の解説」有斐閣82頁) 

また、同じく部会資料52・2頁では「隣地使用者が通知を受けても回答をしない場合には、黙示の同意をしたと認められる事情がない限り、隣地使用について同意しなかったものと推認され、土地の所有者としては、隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになると考えられる。」とされています。

以上から、承諾を得られないときは、原則として裁判手続をとる必要があることに変わりはなく、実務上の取扱いが大きく異なることにはならないといえます。

(2)手続

隣地使用者及び所有者の利益も保護する必要から、隣地使用の目的、日時、場所、方法を「隣地使用者と隣地所有者の両方」に通知する必要があります(新民法209条3項本文)。ただし、「あらかじめ通知することが困難なとき」は遅滞なく事後通知することで足ります(同項ただし書)。

3 住家の立入り

住家の立入りについては、従前から、判決をもって隣人の承諾に代えることはできないとされていましたが、改正後もその考えが維持されています(新209条1項ただし書)。したがって、必ず任意の承諾を得なければなりません。ただし、同条がプライバシーの保護を目的とすることから、プライバシーの保護を要しない部分(屋根、屋上、外部の非常階段等)、現に居住する者がいない場合は、上記でいうところの「任意の承諾」を得る必要はありません(判決で代替することが可能、東地判平11年1月28日参照)。

 

第2 設備設置権・設備使用権

これまで民法では、公の水流又は下水道に至るまでの排水としての低地への通水(民法220条)、通水用工作物の使用(民法221条)を定めるにとどまり、各種ライフラインの設備に関する規定は不十分であったことから、新たに条文が新設されました(新民法213条の2、3)。

その規定は、以下のとおりです(令和5年4月1日施行。それ以前の設備設置行為の適法性は旧民法時の判例法理に基づき判断されますが、設置場所の変更については新民法が適用されます。)。隣地使用権と内容が似ているので、特に異なる点を太文字・大文字・イタリックで示し、必要点のみ解説をします。

 

第二百十三条の二 

1 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。

2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。

3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。

4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。

5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。

6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。

7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。

第二百十三条の三 

1 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。

2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。

 

 

1 継続的給付として、例示されているのは電気、ガス、水道水の供給ですが「その他これらに類する」ものとして、下水道、電話等が含まれます。なお、設備設置権等は、土地の所有者に認められているもので、供給事業者対象ではありません(部会資料56・4頁)。なお、新法制定前の裁判例としては、平成31年3月19日東京地判が、給排水管とガス管について、民法220条(排水のための低地の通水)、221条(通水用工作物の使用)、下水道法11条(排水設備の設置等)を類推して、相手方の承諾を認めたものが参考になります。

2 自力救済が基本的に不可能であることや通知が必要であることは隣地使用権と同様です。ただし、設備設置権等では必ず事前通知が必要ですので(新民法209条3項参照)、通知の相手方が所在等不明の場合は、公示による意思表示等をすることになります。

 

 

第3 隣地の竹林の切除

旧民法では、隣地の竹木の境界線を越えたものが「根」である場合は、土地所有者が切り取ることができましたが「枝」である場合は、切り取りを隣地所有者に請求できるだけでした。「枝」に関するルールは、新民法233条1項でも原則的なものとして残っていますが、同3項ではそれが修正されました(以下、修正ルールといいます)。

第二百三十三条 

1 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。

3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。

一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。

二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。

三 急迫の事情があるとき。

4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

 

1 修正ルール(新民法233条3項)

隣地の竹木の枝(境界線を越える部分)を自ら切除できる場合とされたのは3つです。

①「切除するよう催告したにもかかわらず…相当の期間内に切除しないとき」(1号):2週間が目安

②「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」(2号)

③「急迫の事情があるとき」(3号)

2 竹木が共有物の場合(新233条2項)

(1)枝の切除は1項によって各共有者に対して求めることができ、当該共有者はそれに応じることができます。

(2)急迫の事情があるときは1項3号を根拠に認容判決を経ずに切除できますが、3号を根拠にできない場合は、竹木共有者全員について1号または2号の事情がなければ認容判決を経ずに切除することはできません。

    もっとも、多数の者に対し催告して自ら切除するのではなく、竹林の共有者の一人について認容判決を得て強制執行により枝の切除を実行するという方法もあります。

 3 費用負担についての明文化は見送られました。個別の事案ごとに、当事者間で協議や調整を行う必要があります。

 

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土地法制改正②遺産分割等

2022.02.14

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1 はじめに

  今回は、所有者不明土地の解消に向けた法改正のうち、相続に関する改正を解説します。今回解説するのは、①遺産分割に関する改正、②相続財産等の管理及び清算に関する改正です。相続に関係する改正としては、相続登記の義務化もありますが、こちらは不動産登記法の見直しについて紹介する記事で扱うことにし、今回は上記①及び②の改正について解説することとします。
 なお、今回解説する改正の施行日は、令和5年4月1日です(民法の一部を改正する法律の施行日を定める政令〔令和3年12月14日閣議決定〕)。

 

2 遺産分割に関する改正

(1)具体的相続分による遺産分割期間の制限

遺産分割期間の制限遺産分割に関する改正内容はいくつかありますが、そのなかでも重要なのは、具体的相続分による遺産分割期間の制限です。

  ア 改正内容

    今回の改正まで、遺産分割についての期間制限はありませんでした。しかし、今回の改正により、具体的相続分による遺産分割は、原則として、相続の開始時から10年間の間にしなければならないと規定されました。具体的相続分とは、生前贈与等の特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)を考慮して決まる相続分のことをいいます。
 具体的相続分による遺産分割ができないと、例えば、被相続人から生前贈与等を「受けていない」相続人の取り分が具体的相続分による場合に比べて減ってしまうことになります。
 それでは、実際にどのような条文になったのかを確認してみましょう。
 新民法904条の3柱書本文では、「前三条の規定(注:特別受益や寄与分について規定)は、相続開始のときから10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。」と規定されています。相続開始時から10年経過後にする遺産分割では、原則として、特別受益や寄与分を考慮されないこととなるのです。
 ここで、「原則として」と書いたのは、同じく、新民法904条の3で例外規定が定められているからです。
 同条ただし書では「ただし、次の各号のいずれかに該当するときには、この限りではない。」されています。そして、「次の各号」である同条1号及び2号では、例外事由として、①「相続開始のときから10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(1号)及び②「相続開始のときから始まる10年間の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(2号)が規定されています。
 相続開始時から、10年経過後でも、①や②に該当する事情があれば、具体的相続分による遺産分割が可能です。
 なお、上記の例外に加え、10年の経過後でも、相続人の間で具体的相続分によって遺産分割をするとの合意がされた場合は、その合意に基づく分割が可能と考えられています。

 具体的相続分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/926)、特別受益(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/954)、寄与分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/964)に関心ある方は、別途村上新村法律事務所のブログを参照ください。

  イ 改正理由

    それでは、なぜこのような具体的相続分による遺産分割期間の制限を設ける改正がされたのでしょうか。それは、所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化のためと考えられます。
 本ブログの所有者不明土地関係法に関する総論の記事で、今回の改正は、所有者不明土地問題に対処するものであると解説しました。そこで解説した通り、所有者不明土地問題の解決には、発生予防の視点と利用の円滑化の視点が必要です。では、遺産分割の期間を制限することがどのように所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化につながるのでしょうか。
 まず、所有者不明土地の発生原因として、「相続登記がされないこと」が挙げられます。相続登記がされないことに対処するため、今回の改正で相続登記の義務化もされたのですが(相続登記の義務化については別記事で解説します)、相続登記のためには遺産分割が円滑に進むことが重要です。
 ここで、具体的相続分による遺産分割ができない場合について考えると、この場合、生前贈与等を受けていなかった相続人は、具体的相続分による遺産分割と比べて、遺産分割において不利益に扱われます。そのため、具体的相続分による遺産分割を主張したい相続人には、期間内に遺産分割を行うインセンティブがあると考えることもできます。その結果として、遺産分割が促進されると考えられます。
 このように、具体的相続分による遺産分割の期間制限を設けることは、間接的に遺産分割を促進するといえるのです。すなわち、遺産分割の促進→相続登記の促進(義務化)→所有者不明土地の発生予防という関係にあるのです。
 そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、所有者不明土地の発生予防につながるのです。
 また、既に存在する遺産分割長期未了状態の土地については、法定相続分による画一的で簡明な遺産分割がされれば、遺産分割未了状態の解消が促進されます。
 そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、すでに存在する遺産分割長期未了状態の土地との関係では、遺産分割未了状態を解消し、その利用円滑化につながると考えられます。

  ウ 経過措置について

    このような上記改正の施行日については、前述のとおり令和5年4月1日からですが、遺産分割の期間制限については、経過措置に注意が必要です。
 施行日は令和5年4月1日からなのですが、同日より前に発生した相続についても、本改正は適用されます(改正法付則3条第1文)。
 もっとも、施行日から5年以内にこの10年の期間制限が経過してしまう場合には、施行日から5年を経過する時まで、家庭裁判所に遺産分割の請求(新民法904条の3第1号)をすることができます(改正付則3条第2文)。新民法904条の3第2号についても、同様の経過措置が定められています(改正付則第3条第2文)。

(2)その他の改正等

   遺産分割に関するその他の改正としては、遺産分割の調停又は審判の申立ての取下げに関する制限、遺産分割禁止に関する規定の整備などが行われました。

3 相続財産管理及び相続財産の清算に関する改正等

(1)相続財産の管理及び清算に関する改正

  今回の改正前にも、相続財産の管理に関する制度として、相続財産管理人がありました。改正前の相続財産管理では、相続財産の清算を目的とした相続財産管理制度(改正前民法951条以下)と保存のための相続財産管理制度(改正前民法918条2項、926条2項、936条3項、940条1項)の目的を異にする制度が同じ名称の「相続財産管理制度」として規定されていました。

ア 相続財産清算人
 そこで、今回の改正では、改正前の清算のための相続財産管理制度において相続財産管理人とされていたものについて、その名称を相続財産清算人と変更し、生産手続の合理化を図るなどの改正が行われました。
 具体的には、改正前は権利関係の確定に最低10カ月かかっていたところ、その期間を6カ月程度に短縮する等の改正がされています。

イ 相続財産管理
 相財産管理制度については、相続人不分明の場合や熟慮期間経過後遺産分割前の暫定的共有状態の場合にも利用できる等の改正がされました。これにより、所有者不明土地の管理についても、同制度の利用が一つの選択肢となりました。
 また、相続財産管制度が準用する不在者管理に関する規定についても、管理すべき財産の全部が供託されたことが管理人選任処分の取消事由に当たると規定され、その終了事由が明確化される等の改正がされました(家事新146条の2第1項、147条)。

(2)相続放棄をした者による管理についての改正

   改正前民法940条1項では、「相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産管理を継続しなければならない。」と規定されていました。
 改正前民法では、放棄した者でも「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって管理することが要請されていることはわかりますが、被相続人と同居していない場合などの場合であっても、このような義務を負うかが明確ではありませんでした。
 改正後民法940条では、「相続を放棄したものは、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならい。」と規定されました。
 この改正により、相続放棄をした者による管理の範囲等が明確化されました。

 

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土地法制改正①総論

2022.02.03

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1 はじめに

  令和3年4月21日、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しに関する法改正等が行われました(「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び

「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号))。
 この法改正により、どのような変化が生じるのでしょうか。これから、このブログでは何回かに分けて上記の法改正等につき解説します。
 なお、今回の法改正等は、令和5年4月から段階的に施行されます(「民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」「相続等により取得した土地所有権の国庫へ

の帰属に関する法律の施行期日を定める政令」(令和3年12月14日閣議決定))。

 

2 所有者不明土地とは?

  所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地又は②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地をいいます。

  平成29年の国土交通省の調査によると、所有者不明土地に割合は、実に22%にも上るそうです。22%という数字だけ見てもその大きさがなんとなく分かるかと思いますが、九州本島に匹敵する面積といわれると、より直感的にその広さが分かるかと思います。

 

3 法改正の理由

  このような所有者不明土地問題を解消するために今回の法改正等がされました。しかし、そもそも土地の所有者が不明だとどのような問題があるのでしょうか。

  復興事業や民間取引で土地が必要となっても、所有者が不明だと円滑な事業や取引の妨げとなります。さらに、所有者不明土地は適切な管理が行われていないまま放置されることが多く、所有者不明土地と隣の土地に対する悪影響を与えるといった問題があります。このように、所有者不明土地には、その土地自体が活用できないことによる悪影響だけでなく、隣地に対する悪影響(隣の土地が管理されず、草木が生い茂っている様子などを想像してみて下さい。)など様々な問題があるのです。

もっとも、所有者不明土地といっても、相応の費用を掛けて住民票や戸籍等で調査を行えば、所有者が判明することが多いです。しかしながら、例えば複数回の相続が繰り返されたことにより所有者不明土地が生じている場合には、土地の共有者が数十人以上になることもあり、所有者(共有者)の探索には多大な時間と費用が必要になります。
 事業や取引の内容によっては、それだけのコストを掛けることが割に合わない場合もあり得ます。
 そこで、所有者不明土地問題を解消するために、今回の法改正等が行われることになりました。

 

4 法改正等の概要

  今回の法改正等の内容としては、①遺産分割に関する新たなルールの導入、②相続登記・住所等の変更登記の申請の義務化、③相続登記・住所等の変更登記手続きの簡素化・合理化、④土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設、⑤土地・建物に特化した管理制度の創設、⑥共有地利用の円滑化などの共有制度の見直し及び⑦相隣関係の見直しなどがあります。
 これらの改正は、一見しただけでは所有者不明土地問題の解消にどのように関係するか分かりづらいと思います。
 詳しくは各改正に関する記事で紹介しますが、上記の各改正内容は、所有者不明土地の発生を防止するための仕組みや所有者不明土地の利用の円滑化に関する仕組みを定めるものが多くなっています。
 すなわち、所有者不明土地問題の解決には、大きく分けると、第1に所有者不明土地の増加をどのように防止するか(発生予防の視点)と第2に現に存在する所有者不明土地をどのように活用するか(土地利用の円滑化の視点)の2つの視点からのアプローチが必要ですので、これらの視点から規定を整備したのです。
 例えば上記②の相続登記の義務化についてみると、改正前は相続登記が義務でなかったことが所有者不明土地増大の一因となっていたため、改正により相続登記を義務付け、相続による権利関係の変動を正確に登記簿に反映させる(発生予防の視点)といった具合です。

 

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宅建業行政処分⑥不正不当行為等

2021.12.28

 平成27年8月から令和3年6月までの間に、不正不当行為等として宅建業法違反で行政処分を受けた行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

54 不正不当行為

  (1)不正不当行為は、法65条2項5号が定める概念で、単なる宅建業法違反として業務停止処分が下されるよりも、1つ上の違反行為類型と考えられます(だからこそ、原則業務停止30日、関係者の損害の程度や社会的影響が特に大きい場合には60日の処分がされる訳です。)。ただ、不正不当行為と同様に、その概念は不明確で、具体的処分例を踏まえ検討することが必要です。

(2)具体的処分例

ア 個人を買主とする媒介業務に関して、ⅰ投資用物件にもかかわらず、被処分者は住宅ローンの銀行融資申込書を買主に作成させ、銀行へ提出、ⅱ金融機関と買主に対し、それぞれ異なる内容の売買契約書(法37条1項書面)を作成・交付

業務停止22日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

イ 売主業者と媒介業者が、
手付金と金銭貸借の斡旋額について内容の異なる2種類の重要事項説明書
売買代金と手付金、融資申込額について内容の異なる3種類の売買契約書
を作成し、低い価格が記載された重要事項説明書を買主に交付し、高い価格が記載された両書面を金融機関に提出した(これらを3つの取引で行った)

業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 原則業務停止30日の違反行為類型ですが複数回存在し、他に重要事項説明書の虚偽記載も複数の取引でなされていた(14-原則業務停止7日)ことが影響しています。

ウ 建物売買取引において預り金を流用した

業務停止45日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、本件事案では他に預り金不返還(41-原則業務停止15日間)や媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)も存在したことが影響しています。

 

55 報告命令、立入検査の拒否等

専任の宅地建物取引士の設置状況について報告するよう求められたが、報告期限までに報告を行わなかった

業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、本件事案では、同時に取引士設置義務違反行為(6-原則業務停止処分7日)も処理されたことが影響しています。

 

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宅建業行政処分⑤取引の公正を害する行為

2021.12.20

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平成27年8月から令和3年6月までの間に大阪府から、取引の公正を害する行為として、宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

51 取引の公正を害する行為

(1)宅建業法は、第6章(監督)65条で、宅建業者に対する指示及び業務停止について定めています。

業務停止に関しては原則として法65条2項が定めるところで、その処分の重さに照らしても、違反行為類型は比較的明確です(不正不当行為は例外)。そして、指示に関して原則として定めるのが法65条1項で、その中でも2号の「取引の公正を害する行為」という概念を通じて、2項以外の宅建業法違反行為を集めて「指示」等の処分に導いていくという、バスケット条項的な位置付けがあります。

逆にいえば「取引の公正を害する行為」がどのようなものかについては、現実の処分例を参考にすることが不可欠です。

ちなみに「取引の公正を害する行為」そのものの処分は「指示」に留まり弱いですが、なぜそのような処分までするのかということを考えると他により重く処分される行為を行っていることが多いからであり、最終的な処分結果が必ずしも軽いものとはいえないように思います。

(2)具体的処分例

ア 売買契約に関する重要事項説明書に、対象物件の敷地の中に国所有の畦畔があるにも関わらずその旨を記載せず、売主であるにもかかわらず、売主の表示に事実と異なる表示をした。

指示のみ

 賃貸借契約書に、転貸借が可能であるにも関わらず記載せず、付属設備に存在しないエアコンを記載した。

業務停止10日間 他に重要事項不説明(14-原則業務停止7日)と契約書不備(17-原則業務停止7日)の違反があったことが影響しています。

ウ 広告費について虚偽の内容の領収書(130,000円受領したにもかかわらず140,000円と記載)を貸主に交付

業務停止22日間 原則指示の違反行為類型ですが、他に賃貸契約書記載不備の違反(17-共益費の外に月々支払う8,000円の不記載・原則7日間の業務停止)と限度額を超える報酬の受領(28-特別な広告をしていないにも関わらず広告費として130,000円を受領・原則15日の業務停止)があったことが影響しています。

エ 重要事項説明書及び売買契約書に、ア法39条2項に反する買主に不利な手付解除期日を設定、イ日付の異なる手付金の領収書を2通作成し、買主に交付

業務停止44日間 原則指示の類型ですがその他、重要事項説明書の虚偽記載が複数の取引でなされていたり(14-原則業務停止7日)、さらに内容の異なる重要事項説明書や売買契約書を作成し金融機関に交付されたりしたことが不正不当行為と認定されたことが影響しています(54-原則業務停止30日)。

オ 契約が成立していないにもかかわらず、手付金を受領

業務停止45日間 原則指示の類型ですが、他に預り金の返還拒否(41―原則業務停止15日)や預り金流用(54―原則業務停止30日)の違反があったことが影響しています。

 賃貸借契約締結前に媒介報酬を受領

指示のみ

キ 取引することができる物件であったにもかかわらず、貸主に確認を取ることなく、被処分者自らの判断だけで賃貸借契約の媒介を断り、入居申込者の賃貸借契約締結の機会を奪った

  指示のみ 

ク 建物の賃貸借契約に係る媒介業務において、被処分者は調査義務を怠り、4階を適法に使用することが出来ない旨重要事項説明書に記載せず

 指示のみ

ケ 契約解除期限の到来前に、買主に対する金融機関の融資の承認が困難となったことを売主に通知・説明し、買主と売主との間で契約解除期限延長の合意の仲介をするなどの適切な業務の遂行をせず

  業務停止7日 他に媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)があったことが影響しています。

 

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宅建業行政処分④担保責任特約・超過報酬等

2021.12.08

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平成27年8月から令和3年6月までの間に担保責任特約違反・超過報酬等により宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

22 瑕疵担保責任についての特約違反(法40条1項)

宅地建物取引業者でない買主との契約において、土地及び建物の瑕疵担保責任に関し「引渡完了日から3ヵ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負う。」という買主に民法(1年間)よりも不利となる特約をした

業務停止7日間 原則指示にとどまる違反行為類型ですが、取引士以外の者が重要事項の説明をした違反(14-原則業務停止7日)のあることが影響しています。 

 

28 限度額を超える報酬の受領(法46条2項)

(1)建物の賃貸借契約の媒介業務において、特別な広告を行っていないにもかかわらず、貸主から84,000円を「広告料」として受領 + 別の取引においても、同様に80,000円を「広告料」として受領。なお、特別な広告の例としては、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する広告とされています(東高判昭和57年9月28日金商665号41頁)。

業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、複数の取引で行われていたことが影響しています。

(2)保証会社費用及び鍵交換費用について、実体のない金銭を請求し、媒介報酬の法定上限を超える金銭を受領した

指示のみ 原則業務停止処分15日の違反行為類型ですが軽減規定が適用されました。

 

38 相手方等が契約を締結しない旨の意思を表示した場合の再勧誘(法47条の2-3項、規則16条の12-1号ハ)

業務停止15日間

 

41 契約申込みの撤回時における預り金の返還拒否(法47条の2-3項、規則16条の12-2号)

(1)預り金を借主より受領した後、借主から申込みの撤回があったにもかかわらず、預り金を返還せず

業務停止15日間

(2)賃貸借の媒介業務において、賃貸借の申込みの撤回後も預り金15,300円の返還を拒み、相手からの預り金返還等請求の認容判決確定後も遅延損害金の一部を支払わなかった

指示のみ 原則業務停止15日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

 

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宅建業行政処分③重要事項説明書・契約書関連

2021.11.22

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 平成27年8月から令和3年6月までの間に宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

11 媒介契約締結時における書面の交付義務違反(法34条の2)

(1)法人間の売買契約の媒介業務において、売主から売却の依頼を受けたにもかかわらず、売主に対し、媒介契約書を交付しなかった。

    業務停止7日間

(2)土地建物の売買契約(売主:法人、買主:個人)に関する媒介業務において、媒介契約締結時に、買主(依頼者)に対し、媒介契約書を交付しなかった

 指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

 

14 重要事項説明義務違反(法35条1乃至3項)   

 (1)必要的記載事項を欠く・虚偽記載

一般的な重要事項説明書のひな形は、Ⅰ対象となる宅地に直接関連する事項、Ⅱ取引条件に関する事項、Ⅲその他の事項で構成されています。ここで問題になっているのは、法35条関係であり、主としてⅠに関する事項です

ア 賃貸借契約に関する重要事項説明書に抵当権の詳細(法35条1項1号)、賃貸保証料、契約事務手数料(同条項7号)を記載せず

指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

イ 土地建物の売買契約の媒介業務において、重要事項説明書に売買対象物件が建築基準法規定の容積率・建蔽率の基準を超過している旨を記載せず(法35条1項2号)

  指示のみ アの事例と同様、軽減規定が適用されました。

ウ 重要事項説明書に、
ⅰ 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容について、金利等の詳細を記載していない(法35条1項12号)
ⅱ 代金以外に授受される金額について、固定資産税等精算金の具体的な額を記載していない(同7号)

 業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 原則業務停止7日の違反行為ですが、本件事案では上記手法が複数の取引で用いられており、さらに内容の異なる重要事項説明書や売買契約書を作成したり、媒介業者がそれらを買主と金融機関に交付するなどしていたことが、不正不当行為と認定されたことが影響しています(54-原則業務停止30日)。なお、媒介業者はさらに誇大広告(7-原則業務停止7日)も行っていたことから、売主業者よりも業務停止日数が1日多くなっています。

(2)重要事項説明書の交付はしたが説明せず

業務停止7日間 なお、関係者に損害が発生した場合には15日間、その損害が大きければ30日間の業務停止となります。

(3)取引士以外の者が重要事項について説明

業務停止10日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に契約書記載不備の違反(17-原則業務停止7日)もあることが影響しています。

(4)重要事項説明書の不交付

建物の賃貸借契約において重要事項説明書のコピーを交付して説明

指示のみ 交付しなかった場合は、少し重たく原則業務停止15日の違反行為類型とされていますが、軽減規定が適用されました。

 

17 売買契約等の締結時における書面の交付義務違反(法37条1乃至2項)

(1)不動産売買契約書に受領した108,000円(代金及び交換差金以外の金銭)について記載せず(法37条1項6号)

業務停止7日間 

(2)建物1室の賃貸借契約に関する媒介業務において、賃料・共益費の他に月々支払う金銭8,000円が定められていたにもかかわらず、その旨を賃貸借契約書に記載しなかった(法37条2項3号)

業務停止22日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に限度額を超える報酬の受領(28-原則業務停止15日)が影響しています。

(3)賃貸借契約書において賃料に共益費を含め記載した(法37条2項3号)

 業務停止10日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に重要事項説明義務違反(14―原則業務停止7日)のあることが影響しています。

(4)売買契約書において、
ア 建物の代金に係る消費税を記載しなかった(法37条1項3号「代金…額」を記載する際には「当該売買につき課されるべき消費税等相当額」を明記する必要があります(「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)」34頁)。
イ 瑕疵担保責任について、引き渡し以後2年以内であれば買主は売主に対して責任を追及できるという契約内容であるにもかかわらず、事実と異なる記載をした(法37条1項11号参照)

業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 重要事項説明義務違反の事例(14-(1)ウ)と同じものです。そちらをご参照ください。

(5)賃貸借契約において、賃貸借契約書を借主に交付していない。

 指示のみ 書面交付すらしていないので、原則業務停止15日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

 

18 宅地建物取引士の記名押印義務違反(法37条3項)

   不動産売買契約書において、宅地建物取引士に記名押印させなかった

 業務停止7日間 原則指示にとどまる違反行為類型ですが、他に不動産売買契約書の記載不備(17―原則業務停止7日)があったことが影響しています。

 

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宅建業行政処分②営業保証金・誇大広告等

2021.11.18

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平成27年8月から令和3年6月までの間に宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

1 変更の届出義務違反(法9条)

大阪市○○から大阪市△△へ事務所を移転しているにもかかわらず、事務所所在地の変更の届出を行わなかった。

業務停止30日間 届出義務違反(法9条)は指示に留まる違反行為類型ですが、本件事案では他にも専任宅地建物取引士不存在(6-原則業務停止7日間ですが、知事指摘後の違反状態の是正がないと30日間)と報告拒否(55-業務停止15日間)の違反行為が同時に処理されたという事情がありました。

 

4 営業保証金の供託等に関する義務違反

  宅建業者は、営業保証金を供託しなければなりません(法25条1項)が、その金額は本店の場合で1000万円と高額であることから、多くの方が、宅建業保証協会の社員となる形でその負担を免れています。

しかし、宅建業保証協会の社員たる地位を失うと、原則通り営業保証金を供託しなければならず、その期間は地位喪失から1週間以内とされています(法64条の15前段)。ところが、本件事案では、その義務を守れませんでした。

業務停止30日間 なお、上記と類似の場合において、業務停止期間経過後も供託をせず、その情状が特に重いとされると、営業免許が取り消されたものがあります(法66条1項9号)。

 

6 専任宅地建物取引士の設置義務違反(法31条の3)

  宅建業者は、事務所等ごとに、専任の宅地建物取引士(以下、取引士といいます)を置かなければなりません(法31条の3―1項)。また、既存事務所等で、取引士がいなくなれば、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません(同条3項)。ところが、本件事案では、新たな専任の取引士を設置しませんでした。

業務停止7日間

 

7 誇大広告等の禁止違反(法32条)

(1)web広告に、所有者から媒介依頼を受けていない物件を表示+土地の所在を誤り建物が存在しないのに「新築一戸建」等の表示

 指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、監督基準第4-6によれば「指示処分に軽減することがある」旨の記載があり、それにより軽減されたものです(以下、軽減規定といいます)。なお、軽減事由としては、以下のようなものがあります。

ア 関係者に損害が発生せず、その見込みもない場合

イ 知事の指摘に応じ直ちに、損害補てん取組を開始し、補てん内容が合理的で対応が誠実な場合等

ウ 知事の指摘に応じ直ちに、違反状態を是正した場合(損害が発生した場合は、上記②の事由に該当することが必要)等

エ その他特に軽減すべき特別な事情が存在する場合

 

(2)web広告で、入居者がいて取引できない物件を4年間掲載

    業務停止7日間

 

10 取引態様の明示義務違反(法34条1項)

   宅建業者は、広告をするとき、自己が、契約当事者なのか・代理人なのか・媒介なのかを明示しなければなりません(法34条1項)。ところが、本件事案では、売主(当事者)でないにもかかわらず、取引態様を売主としてweb(SUUMO)に10日間広告を掲載しました。

業務停止7日間

 

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宅建業行政処分①指導監督基準

2021.11.16

 

 

 宅地建物取引業法(以下、宅建業法乃至は法といいます)は「宅地建物取引業を営む者について免許制度を実施し、その事業に対し必要な規制を行うことにより、その業務の適正な運営と宅地及び建物の取引の公正とを確保するとともに、宅地建物取引業の健全な発達を促進し、もつて購入者等の利益の保護と宅地及び建物の流通の円滑化とを図ることを目的とする。」法律です(法1条)。

  そのため、宅建業法には、様々な規制が定められており、一般的にはどのような規制があるかという点から解説されることが多いですが、今回は「その規制に違反したらどのような処分がされるのか」といった視点から、宅建業法を眺めてみます。方法としては、大阪府がHPで公開している平成27年8月から令和3年6月(以下、検討期間といいます。)までの宅建業法違反による行政処分例(事務所・業者不確知、業者・役員の欠格等、必要的免許取消の場合を除きます。)を整理する形で、現実的にはどのような規制で処分されることが多いのか、また、処分される具体的な違反行為を紹介します。

2 大阪府では、宅建業法違反による行政処分について、違反行為類型ごとに指導監督基準(以下、監督基準といいます。)を設けています(詳細は、20211101shidoukanntokukizyun.pdf (osaka.lg.jp))。中でも「別表第1」が判り易く整理されており、村上・新村法律事務所の方で以下のとおり番号を付し、次回以降、検討期間の中で行政処分がされた違反行為について、整理紹介していきます。

 

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別表第1(第4関係)

 

違反行為の概要

適用

条文

標準

処分例

1

変更の届出義務違反

法第9条の規定に違反して、商号、役員の氏名、事務所の所在地等変更の届出をしなかった場合

65条

①,③

指示

2

営業を目的とした名義貸し

法第13条第1項の規定に違反して、他人の営業のために名義貸しをした場合

65条

②2,④2

90日

3

表示又は広告を目的とした名義貸し

法第13条第2項の規定に違反して、他人の表示又は広告のために名義貸しをした場合

65条

②2,④2

15日

 

 

 

 

4

営業保証金の供託等に関する義務違反

① 法第25条第5項(法第26条第2項において準用する場合を含む。)、法第28条 第1項、法第64条の15前段又は法第64条の23前段の規定に違反して、必要な営業保証金を供託しなかった場合

② 法第64条の9第2項の規定に違反して、必要な弁済業務保証金分担金を納付しなかった場合

③ 法第64条の10第2項の規定に違反して、必要な還付充当金を納付しなかった場合

④ 法第64条の12第4項の規定に違反して、必要な特別弁済業務保証金分担金を納付しなかった場合

65条

②2

30日

5

業務処理の原則違反

法第31条の規定に違反して、業務処理を行った場合

65条

①,③

指示

 

 

6

専任宅地建物取引士の設置義務違反

(1)法第31条の3第3項の規定に違反して、専任宅地建物取引士の設置に関し必要な措置をとらなかった場合

65条

②2,④2

7日

(2)(1)の場合において、知事が指摘したにもかかわらず業者が違反状態を是正しなかった場合

30日

 

 

 

7

誇大広告等の禁止違反

(1)法第32条の規定に違反して、誇大広告等をした場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

7日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合((3)の場合を除く。)

15日

(3)(2)の場合において、当該関係者の損害の程度が大であると認められる場合

30日

 

8

広告開始時期の制限違反

法第33条の規定に違反して、工事に関し必要とされる開発許可、建築確認その他の処分を取得する前に、広告をした場合

65条

①,③

指示

 

 

9

自己の所有に属しない宅地又は建物の売買契約締結の制限違反

(1)法第33条の2の規定に違反して、自己の所有に属しない宅地又は建物について、売買契約(予約を含む。)を締結した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

10

取引態様の明示義務違反

法第34条の規定に違反して、取引態様の別を明示しなかった場合

65条

②2,④2

7日

 

 

11

 

媒介契約締結時における書面の交付義務違反

① 法第34条の2第1項(法第34条の3において準用する場合を含む。②において同じ。)の規定に違反して、媒介契約の締結時に書面を交付しなかった場合

② 法第34条の2第1項の書面について、同項各号に掲げる事項の一部を記載せず、又は虚偽の記載をした場合

65条

②2,④2

7日

 

12

価額について意見を述べる際の根拠の明示義務違反

法第34条の2第2項(法第34条の3において準用する場合を含む。)の規定に違反して、宅地又は建物を売買すべき価額又はその評価額について意見を述べるときに、その根拠を明らかにしなかった場合

65条

②2,④2

7日

 

13

専任媒介契約に関する義務違反

法第34条の2第3項から第9項までの規定に違反して、専任媒介契約に係る指定流通機構への登録、登録書の依頼者への引渡し又は依頼者に対する業務の処理状況の報告をしなかった場合等

65条

①,③

指示

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

14

重要事項説明義務違反

(1)次のいずれかに該当する場合((2)の場合を除く。)

① 法第35条第1項、第2項又は第3項の書面に、同条第1項各号、第2項各号又は第3項各号に掲げる事項の一部を記載せず、又は虚偽の記載をした場合

② 法第35条第1項、第2項又は第3項の書面は交付したものの、説明はしなかった場合

③ 宅地建物取引士以外の者が、法第35条第1項、第2項又は第3項までの規定による重要事項説明をした場合

65条

②2,④2

7日

(2)(1)①から③までのいずれかに該当する場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合((3)の場合を除く。)

15日

(3)(2)の場合において、当該関係者の損害の程度が大であると認められる場合

30日

(4)法第35条第1項、第2項又は第3項の規定に違反して、同条第1項、第2項又は第3項の書面を交付しなかった場合((5)の場合を除く。)

15日

(5)(4)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合((6)の場合を除く。)

30日

(6)(5)の場合において、当該関係者の損害の程度が大であると認められる場合

60日

15

供託所等に関する説明義務違反

法第35条の2の規定に違反して、供託所等に関する説明を行わなかった場合

65条

①,③

指示

 

 

16

 

契約締結等の時期の制限違反

(1)法第36条の規定に違反して、工事に関し必要とされる開発許可、建築確認その他の処分を取得する前に、売買契約の締結等をした場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

17

売買契約等の締結時における書面の交付義務違反

法第37条第1項又は第2項の書面に、同条第1項各号又は第2項各号に掲げる事項の一部を記載せず、又は虚偽の記載をした場合

65条

②2,④2

7日

法第37条第1項又は第2項の規定に違反して、同条第1項又は第2項の書面を交付しなかった場合

15日

 

18

法第37条第1項又は第2項の書面への宅地建物取引士の記名押印義務違反

法第37条第3項の規定に違反して、法第37条第1項又は第2項の書面に宅地建物取引士をして記名押印させなかった場合

65条

①,③

指示

 

19

クーリングオフに関する制限違反

法第37条の2第3項の規定に違反して、事務所以外の場所での買受けの申込みの撤回又は売買契約の解除にあたり手付金その他の金銭の返還をしなかった場合

65条

①,③

指示

20

損害賠償額の予定等の制限違反

法第38条第1項の規定に違反して、売買代金の10分の2を超える損害賠償額の予定等を定めた場合

65条

①,③

指示

21

 

手付額の制限違反

法第39条第1項の規定に違反して、10分の2を超える手付金の受領した場合

65条

①,③

指示

22

担保責任についての特約の制限違反

法第40条第1項の規定に違反して、民法の規定より買主に不利な特約をした場合

65条

①,③

指示

 

 

23

手付金等の保全義務違反

(1)法第41条第1項又は第41条の2第1項の規定に違反して、必要な保全措置を講じずに手付金等を受領した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

24

 

割賦販売の契約の解除等の制限違反

 

法第42条第1項の規定に違反して、必要な催告をせずに賦払金の支払の遅滞を理由として契約を解除した場合等

65条

①,③

指示

 

 

 

25

所有権留保等の禁止違反

(1)法第43条第1項若しくは第3項の規定に違反して、登記その他引渡し以外の売主の義務を履行しなかった場合、又は、同条第2項若しくは第4項の規定に違反して、担保の目的で宅地若しくは建物を譲り受けた場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

26

不当な履行の遅延

法第44条の規定に違反して、宅地若しくは建物の登記若しくは引渡し又は取引に係る対価の支払いを不当に遅延させた場合

65条

②2,④2

30日

27

 

秘密を守る義務違反

法第45条の規定に違反して、秘密を他に漏らした場合

65条

②2,④2

15日

28

限度額を超える報酬の受領

法第46条第2項の規定に違反して、限度額を超えて報酬を受領した場合

65条

②2,④2

15日

29

報酬額の掲示義務違反

法第46条第4項の規定に違反して、報酬額を掲示しなかった場合

65条

①,③

指示

 

30

重要な事項に関する故意の不告知等

法第47条第1号の規定に違反して、重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げた場合

65条

②2,④2

90日

31

不当に高額の報酬の要求

法第47条第2号の規定に違反して、不当に高額な報酬を要求した場合

65条

②2,④2

30日

 

 

32

手付の貸与等による契約締結の誘因

(1)法第47条第3号の規定に違反して、手付の貸与等により契約の締結を誘引した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

33

契約締結の勧誘時における将来利益に関する断定的判断の提供

(1)法第47条の2第1項の規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、利益を生ずることが確実であると誤解させるべき断定的判断を提供した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

34

契約締結等を目的とした宅地建物取引業者の相手方等に対する威迫

(1)法第47条の2第2項の規定に違反して、契約の締結等を目的として、業者の相手方等を威迫した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

 

35

契約締結の勧誘時における将来の環境又は利便に関する断定的判断の提供

(1)法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号イの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、将来の環境又は交通その他の利便について誤解させるべき断定的判断を提供した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

 

36

契約締結の勧誘時における判断に必要な時間の付与拒否

(1)法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号ロの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、契約を締結するかどうかを判断するために必要な時間を与えることを拒んだ場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

37

勧誘に先立つて宅地建物取引業者名、担当者名、勧誘目的を告げずに勧誘

法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号ハの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、勧誘に先立って、宅地建物取引業者名、担当者名、勧誘目的を告げずに勧誘を行った場合

65条

②2,④2

7日

 

 

38

相手方等が契約を締結しない旨等の意思を表示した場合の再勧誘

(1)法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号ニの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、業者の相手方等が契約を締結しない旨等の意思を表示したにもかかわらず、勧誘を継続した場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

39

迷惑を覚えさせるような時間の電話又は訪問による勧誘

(1)法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号ホの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、迷惑を覚えさせるような時間に電話勧誘又は訪問勧誘を行った場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

 

40

私生活又は業務の平穏を害する方法による契約の締結の勧誘

(1)法第47条の2第3項及び規則第16条の12第1号ヘの規定に違反して、契約の締結の勧誘をするに際し、私生活又は業務の平穏を害するような方法によりその者を困惑させた場合((2)の場合を除く。)

65条

②2,④2

15日

(2)(1)の場合において、当該違反行為により関係者の損害が発生した場合

30日

 

41

契約申込みの撤回時における預り金の返還拒否

法第47条の2第3項及び規則第16条の12第2号の規定に違反して、預り金を返還することを拒んだ場合

65条

②2,④2

15日

 

42

正当な理由のない契約解除の拒否等

法第47条の2第3項及び規則第16条の12第3号の規定に違反して、正当な理由なく、契約の解除を拒み、又は妨げた場合

65条

②2,④2

30日

 

43

証明書不携帯時における従業者の業務従事

法第48条第1項の規定に違反して、証明書を携帯させずに、従業者をその業務に従事させた場合

65条

②2,④2

7日

 

44

従業者名簿の不備

法第48条第3項の規定に違反して、従業者名簿を備えず、又は規則第17条の2第1項各号に掲げる記載事項の一部を記載しなかった場合

65条

②2,④2

7日

45

従業者名簿の閲覧拒否

法第48条第4項の規定に違反して、従業員名簿を閲覧させなかった場合

65条

①,③

指示

46

帳簿の備付け義務違反

法第49条の規定に違反して帳簿を備え付けなかった場合

65条

①,③

指示

47

標識の掲示義務違反

法第50条第1項の規定に違反して、標識を掲示しなかった場合

65条

①,③

指示

48

事務所、案内所等の届出義務違反

法第50条第2項の規定に違反して、事務所等の届出をしなかった場合

65条

①,③

指示

49

指示に従わない場合

法第65条の規定による指示に従わない場合

65条

②3,④3

15日

50

取引の関係者に損害を与える行為等

業務に関し取引の関係者に損害を与えたとき、又は損害を与えるおそれが大であるとき

65条

①1,③

指示

51

取引の公正を害する行為等

業務に関し取引の公正を害する行為をしたとき、又は公正を害するおそれが大であるとき

65条

①2,③

指示

52

他法令違反

業務に関し他の法令に違反し、宅地建物取引業者として不適当であると認められるとき

65条

①3,③

指示

53

業者の責めに帰すべき理由がある宅地建物取引士の処分

宅地建物取引士が監督処分を受けた場合において、業者の責めに帰すべき理由があるとき

65条

①4,③

指示

 

54

不正不当行為

(1)業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき((2)の場合を除く。)

65条

②5,④5

30日

(2)(1)の場合において、関係者の損害の程度又は社会的影響が特に大きい場合

60日

 

55

報告命令、立入検査の拒否等

法第72条1項の規定による、報告提出命令に対する報告・資料提出の拒否若しくは虚偽の報告・資料の提出、又は立入検査に対する拒否等をした場合

65条

②4,④4

15日

 

56

履行確保法違反(業務停止相当の違反を除く。)

履行確保法の規定に違反した場合(履行確保法第11条第1項、第13条又は第16において読み替えて準用する第7条第1項の規定に違反した場合であって、違反内容が業務停止相当の場合を除く。)

65条

①,③

指示

 

57

履行確保法の規定に基づく保証金の供託に関する義務違反

履行確保法第11条第1項の規定に違反して、必要な住宅販売瑕疵担保保証金の供託を行わなかった場合で、違反内容が業務停止相当の場合

65条

②2

7日

 

58

履行確保法の規定に基づく新築住宅の売買契約の締結禁止違反

履行確保法第13条の規定に違反して、基準日の翌日から起算して50日を経過した日以降において、新たに自ら売主となる新築住宅の売買契約を締結した場合で、違反内容が業務停止相当の場合

65条

②2

15日

 

59

履行確保法の規定に基づく不足額の供託に関する義務違反

履行確保法第16条において読み替えて準用する第7条第1項の規定に違反して、不足した住宅販売瑕疵担保保証金の供託を行わなかった場合で、違反内容が業務停止相当の場合

65条

②2

7日

 

投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

賃貸住宅管理業法④マスターリース契約における重要事項説明

2021.10.31

1 はじめに

 管理業法30条は、マスターリース契約(オーナーとの契約)締結に際し、特定転貸事業者(サブリース業者)に対し、重要事項説明書(以下、重説書といいます)を交付して説明を行うことを義務付けています。今回は、この点について解説します。

 

2 宅建業法の重説と管理業法30条の重説

 宅建業法では、宅建業者は「宅地若しくは建物の…貸借の相手方…に対して、その者が…借りようとしている宅地又は建物に関し…貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面…を交付して説明をさせなければならない」とされています(宅建業法35条1項)。しかし、宅建業法では業者自身が借主となる場合は含まれておらず、業者自身が借主となる賃貸借契約には、いわゆる重説(重説書を交付して説明すること)は不要でした。そのため、業者が、オーナーから物件を借り上げ、これを転貸する形で行われるサブリース契約では、重説は要求されてきませんでした。
 しかし、管理業法が施行され、令和2年12月15日以降、特定転貸事業者がサブリース契約をする場合には、重説が義務付けられることとなりました。
 業者が借主となる場合に宅建業法上の重説が義務付けられていないのは、宅建業法が借りる側を保護する法律であり、業者が借主であれば保護の必要性が乏しいためと考えられます。これに対し、管理業法は貸す側であるオーナーを保護することを目的としています。そのため、業者が借主となる場合でも、管理業法による重説が義務付けられているのです。

 以上のように、たとえば宅建業者が特定転貸事業者に当たる場合には、これまでと異なり、前記のようなサブリース契約の際に、管理業法30条に基づき、重説を行うことが必要となったのです。

 

3 重説が義務付けられた理由

 前記のとおり、管理業法により、特定転貸事業者が特定賃貸借契約を締結しようとするときには、オーナーに対し、重説が義務付けられました。では、なぜこのような義務が課されるようになったのでしょうか。

 サブリース事業におけるオーナーの中には、賃貸住宅経営に関する経験や専門知識に乏しい者が増えてきたことから、サブリース業者との間で大きな格差が生じてきていました。このような格差を背景として、従前は、契約内容をオーナーに十分説明せずに契約を締結する業者が存在し、オーナーとの間で大きなトラブルとなることが多発していました。

 そこで、管理業法は、重説を義務付け、オーナーが契約内容を理解したうえで契約を締結するかどうかの判断を行うことができるようにしました。

 

4 説明を行う者及び説明の時期

 このようにオーナーに契約内容を理解させるため重説を行うのですが、法律には、誰が重説書の説明をするかについては、なんら規定もありません。しかし、契約内容を理解させるという管理業法30条の目的からすれば、説明をする者も専門的な知識・経験を有していることが望ましいといえます。そのような観点から、同条の重説は、賃貸不動産経営管理士(一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会の賃貸不動産経営管理資格制度運営規定に基づく登録を受けている者)などにより行われることが望ましいとされています。

 また、重説書の交付時期についても、法律上の規定はありません。しかし、重説を受けてからその内容を十分に理解するためには、ある程度の時間が必要です。そのため、重説から契約締結までには1週間程度の期間をおくのが望ましいとされています。重説から契約締結までの時間を短くせざるを得ないときは、事前に重説書を送っておくなどの方法をとるとよいでしょう。
 なお、マスターリース契約に加えて管理受託契約も締結する場合、管理受託契約についての規制もかかることとなりますので、賃貸住宅管理業に関する記事も参考にしてください( https://m2-law.com/blog/2818/ )。

 

5 重説書記載事項

 以下には、重説書に記載しなければならない事項を示します。

 

① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所

② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅

③ 契約期間に関する事項

④ マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項

⑤ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法

⑥ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項

⑦ マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項

⑧ 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項

⑨ 責任及び免責に関する事項

⑩ 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項

⑪ 転借人に対する⑤の内容の周知に関する事項

⑫ マスターリース契約の更新及び解除に関する事項

⑬ マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項

⑭ 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要

 

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