2021.10.31
1 はじめに
管理業法30条は、マスターリース契約(オーナーとの契約)締結に際し、特定転貸事業者(サブリース業者)に対し、重要事項説明書(以下、重説書といいます)を交付して説明を行うことを義務付けています。今回は、この点について解説します。
2 宅建業法の重説と管理業法30条の重説
宅建業法では、宅建業者は「宅地若しくは建物の…貸借の相手方…に対して、その者が…借りようとしている宅地又は建物に関し…貸借の契約が成立するまでの間に、宅地建物取引士をして、少なくとも次に掲げる事項について、これらの事項を記載した書面…を交付して説明をさせなければならない」とされています(宅建業法35条1項)。しかし、宅建業法では業者自身が借主となる場合は含まれておらず、業者自身が借主となる賃貸借契約には、いわゆる重説(重説書を交付して説明すること)は不要でした。そのため、業者が、オーナーから物件を借り上げ、これを転貸する形で行われるサブリース契約では、重説は要求されてきませんでした。
しかし、管理業法が施行され、令和2年12月15日以降、特定転貸事業者がサブリース契約をする場合には、重説が義務付けられることとなりました。
業者が借主となる場合に宅建業法上の重説が義務付けられていないのは、宅建業法が借りる側を保護する法律であり、業者が借主であれば保護の必要性が乏しいためと考えられます。これに対し、管理業法は貸す側であるオーナーを保護することを目的としています。そのため、業者が借主となる場合でも、管理業法による重説が義務付けられているのです。
以上のように、たとえば宅建業者が特定転貸事業者に当たる場合には、これまでと異なり、前記のようなサブリース契約の際に、管理業法30条に基づき、重説を行うことが必要となったのです。
3 重説が義務付けられた理由
前記のとおり、管理業法により、特定転貸事業者が特定賃貸借契約を締結しようとするときには、オーナーに対し、重説が義務付けられました。では、なぜこのような義務が課されるようになったのでしょうか。
サブリース事業におけるオーナーの中には、賃貸住宅経営に関する経験や専門知識に乏しい者が増えてきたことから、サブリース業者との間で大きな格差が生じてきていました。このような格差を背景として、従前は、契約内容をオーナーに十分説明せずに契約を締結する業者が存在し、オーナーとの間で大きなトラブルとなることが多発していました。
そこで、管理業法は、重説を義務付け、オーナーが契約内容を理解したうえで契約を締結するかどうかの判断を行うことができるようにしました。
4 説明を行う者及び説明の時期
このようにオーナーに契約内容を理解させるため重説を行うのですが、法律には、誰が重説書の説明をするかについては、なんら規定もありません。しかし、契約内容を理解させるという管理業法30条の目的からすれば、説明をする者も専門的な知識・経験を有していることが望ましいといえます。そのような観点から、同条の重説は、賃貸不動産経営管理士(一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会の賃貸不動産経営管理資格制度運営規定に基づく登録を受けている者)などにより行われることが望ましいとされています。
また、重説書の交付時期についても、法律上の規定はありません。しかし、重説を受けてからその内容を十分に理解するためには、ある程度の時間が必要です。そのため、重説から契約締結までには1週間程度の期間をおくのが望ましいとされています。重説から契約締結までの時間を短くせざるを得ないときは、事前に重説書を送っておくなどの方法をとるとよいでしょう。
なお、マスターリース契約に加えて管理受託契約も締結する場合、管理受託契約についての規制もかかることとなりますので、賃貸住宅管理業に関する記事も参考にしてください( https://m2-law.com/blog/2818/ )。
5 重説書記載事項
以下には、重説書に記載しなければならない事項を示します。
① マスターリース契約を締結するサブリース業者の商号、名称又は氏名及び住所
② マスターリース契約の対象となる賃貸住宅
③ 契約期間に関する事項
④ マスターリース契約の相手方に支払う家賃の額、支払期日、支払方法等の条件並びにその変更に関する事項
⑤ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全の実施方法
⑥ サブリース業者が行う賃貸住宅の維持保全に要する費用の分担に関する事項
⑦ マスターリース契約の相手方に対する維持保全の実施状況の報告に関する事項
⑧ 損害賠償額の予定又は違約金に関する事項
⑨ 責任及び免責に関する事項
⑩ 転借人の資格その他の転貸の条件に関する事項
⑪ 転借人に対する⑤の内容の周知に関する事項
⑫ マスターリース契約の更新及び解除に関する事項
⑬ マスターリース契約が終了した場合におけるサブリース業者の権利義務の承継に関する事項
⑭ 借地借家法その他マスターリース契約に係る法令に関する事項の概要
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投稿者:
2021.10.18
1 管理業法29条
次のとおり特定転貸事業者等による不当勧誘などが禁止されています。
法第二十九条
特定転貸事業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
二 前号に掲げるもののほか、特定賃貸借契約に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるもの
規則第四十四条 法第二十九条第二号の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。
一 特定賃貸借契約を締結若しくは更新させ、又は特定賃貸借契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者(以下「相手方等」という。)を威迫する行為
二 特定賃貸借契約の締結又は更新について相手方等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為
三 特定賃貸借契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法により相手方等を困惑させる行為
四 特定賃貸借契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示した相手方等に対して執ように勧誘する行為
2 管理業法29条1号について
(1)背景事情
オーナーに対する勧誘の際、事実でなかったり、断定できないにもかかわらず「サブリース家賃が下がることはない。入居率は確実である。家賃収入は将来にわたって確実に保証される。」、「原状回復費用・維持修繕費用はサブリース会社が全て負担する。」、「周辺相場よりも当社は高く借り上げることができる。」等の文句が使われ、多くのトラブルが発生していました。そこで、1号は、不実告知等を禁止しました。
前回ブログで指摘した誇大広告規制( https://m2-law.com/blog/2927/ )の背景事情も同様ですが、誇大広告規制に違反した場合の罰則が三十万円以下の罰金であるのに対し、不当勧誘規制の罰則は六月以下の懲役若しくは(or)五十万円以下の罰金又は、これの併科(懲役+罰金)となっており、規制の程度は強くなっています(管理業法42条2号、44条10号)。それは、一層被害を発生させやすい危険な行為と考えられるからでしょう。
(2)問題となる場面
①「勧誘をするに際し」とは
ここで「特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し」とは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者がいまだ契約締結の意思決定をしていないときに、特定転貸事業者又は勧誘者が、特定賃貸借契約を締結することを目的として、又は契約を締結させる意図の下に働きかけることをいいます。なお、その後実際に契約が締結されたか否かは問いません。
②「解除を妨げるため」とは
ここで「解除を妨げるため」とは、特定賃貸借契約の相手方の特定賃貸借契約を解除する意思を翻させたり、断念させたりするほか、契約の解除の期限を徒過するよう仕向けたり、協力しない等、その実現を阻止する目的又は意図の下に行うことをいいます。なお、実際に契約解除を妨げられたか否かは問いません。
(2)禁止される行為
① 故意による事実を告げない行為・不実の告知が禁止されています。
② 管理業法29条1号にいう「当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」とは、当該事項に関して告げなかったり、事実と違うことを告げることが、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の不利益に直結するものをいいます。
③ 管理業法29条にいう「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」については、特定転貸事業者であれば当然に知っていると思われる事項を告げないような場合には、故意の存在が推認されることになると考えられます。
3 管理業法29条2号・規則44条について
不実告知等以外にも、相手の正常な意思決定を困難にさせるような勧誘がトラブルを多く生んでおりました。そこで、2号では規則44条に定められる次のような行為を禁止しています。
(1)「威迫する行為」の禁止(規則44条1号)
ここで「威迫する行為」とは、相手方等に不安の念を抱かせる行為をいいます。脅迫と異なり、相手方等に恐怖心を生じさせることまでは要しません。
(2)「迷惑を覚えさせるような時間」における電話・訪問による勧誘の禁止(2号)
ここで「迷惑を覚えさせるような時間」とは、相手方等の職業や生活習慣等に応じ個別に判断されます。一般的には、相手方等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由なく午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、本号に該当します。
(3)「相手方等を困惑させる行為」の禁止(3号)
ここでの「その者を困惑させる行為」も、個別事案ごとに判断されます。深夜勧誘や長時間勧誘のほか、例えば、相手方等が勤務時間中であることを知りながら執ような勧誘を行って相手方等を困惑させたり、面会を強要して相手方等を困惑させる行為などが該当します。
(4)「執ように勧誘する行為」の禁止(4号)
ここにいう「執ように勧誘する行為」とは、相手方等が特定賃貸借契約の締結又は更新をしない旨を意思表示した以降、又は勧誘行為そのものを拒否する旨の意思表示をした以降、再度勧誘することをいいます。一度でも再勧誘を行えば本号違反になるとされています。また、勧誘方法や勧誘場所は問いません。
投稿者:
2021.10.04
1 はじめに
管理業法28条では、特定転貸業者等による誇大広告等が禁止されています。条文は、次のようになっています。
第28条(誇大広告等の禁止)
特定転貸事業者又は勧誘者(特定転貸事業者が特定賃貸借契約の締結についての勧誘を行わせる者をいう。以下同じ。)(以下「特定転貸事業者等」という。)は、第2条第5項に規定する事業にかかる特定賃貸借契約の条件について広告をするときは、特定賃貸借契約に基づき特定転貸事業者が支払うべき家賃、賃貸住宅の維持保全の実施方法、特定賃貸借契約の解除に関する事項その他の国土交通省令で定める事項について、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。
長くてわかりづらいですよね。詳しくはこれから解説しますが、おおまかにいうと、業者がサブリースの広告をするときには、実際よりも著しく優良であると誤認させるような広告をしてはならないということが規定されています。
2 特定転貸事業者とは
(1)ちなみに、前提として「特定転貸事業者」とは、特定賃貸借契約に基づき賃借した賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営む者をいいます(管理業法2条5項)。
(2)そして「特定賃貸借契約(マスターリース契約)」とは、賃貸住宅の賃貸借契約(賃借人が賃貸人と密接な関係を有する者として国土交通省令で定めるものを除く-賃貸人が、個人である場合の親族・法人である場合の親子会社等)であって、賃借人が当該賃貸住宅を第三者に転貸する事業を営むことを目的として締結されるものをいいます(管理業法2条4項)。
老人ホームやデイケアホームを利用契約という形で運営する場合は「賃貸住宅の賃貸借契約」に関するものではなく、特定賃貸借契約にあたりません(FAQ1(3)5)。また、個人が賃借した賃貸住宅について、事情により、一時的に第三者に転貸するような場合は「事業を営むことを目的」とするものではなく、特定賃貸借契約にあたりません(FAQ1(3)1)。
(3)ここも、少しわかりにくいですが「賃貸住宅」をサブリースする「業者」は「特定転貸事業者」に該当すると考えられます。
3 誇大広告等
管理業法28条のタイトルは、誇大広告「等」の禁止です。ここから、実際の条件より優良であるとみせる「誇大広告」が禁止されていることがわかります。では「等」には、何が含まれるのでしょうか。この等には、「虚偽広告」が含まれるとされています。「誇大広告」と「虚偽広告」を併せて、「誇大広告等」と表現されているのです。
ここでいう広告とは何でしょうか。広告と言えば、新聞の折込チラシやテレビCM等が思い浮かびます。最近は、インターネットでも広告を見かけることも多くなりました。管理業法28条が対象とする広告は、その媒体が限定されておらず、すべての媒体でされる広告が対象となります。
4 誇大広告等をしてはならない事項
誇大広告等をしてはならない事項として、管理業法28条では、①賃料に関する事項、②物件の維持等に関する事項、③維持費の分担に関する事項、④解除に関する事項及び⑤その他国土交通省令で定める事項が規定されています。
5 「著しく事実に相違する表示」
管理業法28条では「著しく事実に相違する表示」が禁止されています。どのような場合に「著しく」といえるかは、個別の表示に即して判断されることとなりますが、一般論としては、オーナーとなろうとする者が事実の相違を知ればサブリース契約を締結しようと思わないような場合に「著しく」にあたると考えられています。
6 「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」
管理業法28条では、「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」が禁止されています(具体例については後述します。)。誤認するかどうかは、オーナーの知識にもよるのでは?とも考えられそうです。しかし、ここでのオーナーには、サブリース契約の内容等につき、専門的知識や情報を有していないオーナーが想定されています。したがって、専門的知識のないオーナーを誤認させるような表示は、同条の「実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示」に該当すると考えられています。
7 記載の具体例
以下では、いくつかの具体的な記載を紹介しながら、解説を行います。ここで紹介しきれなかった具体例については、「サブリース事業に係る適正な業務のためのガイドライン」をご参照ください。
(1)具体例1
記載例
・「○年家賃保証!」「支払い家賃は計約期間内確実に保証!」
解説
判例上、サブリース契約にも借地借家法の適用があるとされています。そして、借地借家法32条では、賃料減額請求が規定されています。賃料減額請求とは、一定の場合に、賃借人(サブリース業者)から賃料の減額を請求できる権利です。家賃保証との記載があるとしても、実際には、賃料が減額される可能性があるのです。したがって、上記の内容のみでは、管理業法28条に違反するものと考えられます。
管理業法28条に違反しないためには、上記の記載に加え、その記載と隣接する箇所に、「定期的な見直しがあること」等のリスク情報についても表示することが必要になるのです。さらに、実際には、記載の文字の大きさにも注意しなければなりません。
(2)具体例2
記載例
・「いつでも自由に解約できます」
解説
前述したとおり、サブリース契約にも借地借家法の適用があります。借地借家法では、貸主(オーナー)側から契約を解除するには、「正当な理由」が必要です。そのため、サブリース契約は、オーナーがいつでも自由に解除できるわけではありません。
(3)具体例3
記載例
・「30年一括借り上げ」「建物がある限り借り続けます」
解説
広告では上記のような記載をしていても、実際には、一定の場合には業者側から解約できる場合があります。業者側からの解約の可能性があるのに、その旨を記載しないことは、管理業法28条に違反すると考えられます。
この場合、一定の場合には業者側から解約できることを表示しなければなりません。
6 まとめ
以上のように、管理業法では、誇大広告等が禁止されています。管理業法28条の対象となる広告は、チラシやインターネット等媒体の如何を問わないので、広告媒体ごとに注意すべきポイントもあります。
記載例もいくつか紹介しましたが、これらはあくまでも例であり、実際には広告を見たうえで具体的に検討することが必要になります。
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2021.10.01
四半期決算とは、一年を四つにわけて、3か月毎に決算する仕組みで、上場会社に義務付けられている制度です。これが始まると、会社経営が目まぐるしくなり、大変なんですが「生きている(?生かされている、笑)」という実感は湧きますね。
実は、村上・新村法律事務所の顧問先であるアスタリスクが、昨日(9月30日)、東証マザーズに上場しました。アスタリスクというのは、スマフォやパソコンのキーボードで見かける「*」の表示で、村上は「米印みたいな」と説明する叔父さんですが、正確には星を意味するようですね。最近は、ユニクロとの訴訟で、一躍有名になりましたね。
鈴木社長とは、知り合ってからちょうど10年になりますが、ついに偉業を果たされました。ただ、健康に留意され、次の、またそのまた次の、ステップに上がって頂けることを、希望し、応援します(^.^)/~~~
ところで、実は、うちも法人化して、昨日で丸9年が終了し、今日(10月1日)から10年目に突入します。まだまだ全然爪先にも及びませんが、村上も頑張っていきたいと思います。
やっと緊急事態宣言もあけましたし、今から福知山に行ってきます🚙。
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