不動産

土地法制改正⑦不動産登記法

2022.05.30

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1 相続登記の申請義務化等

(1)改正の経緯

相続登記の申請が義務とされていないことや、また、費用や手間をかけてまで登記申請したくないと考える場合も少なくないことが、相続登記未了の原因となり、結果として、所有者不明土地発生の最大の温床となっていました。そこで、相続登記申請の義務化とその義務履行を簡易にできる制度について、不動産登記法が改正されました(以下、改正不動産登記法を、単に新法といいます。)。

なお、これらの点に関する新法施行日は、令和6年4月1日になっています。

(2)相続登記の申請義務化

ア 義務内容

相続(特定財産承継遺言による場合を含むとされています。なお、特定財産承継遺言については、https://kawanishiikeda-law.jp/blog/2000/ をご覧ください。)や遺贈によって不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました(新法76条の2)。

さらに、例えば、上記登記が遺産分割前の暫定的な法定相続分に基づく共同相続登記等である場合において、その後に遺産分割が成立したときには、その内容を踏まえた登記申請をすることも義務付けられています(新法76条の2-2項)。

イ 過料の制裁

正当な理由がないのに相続登記申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます(新法164条1項)。この「正当な理由」の具体的な内容は、後日、通達等であらかじめ明確化される予定です。過料を科する際の具体的手続についても、事前に義務の履行を催告することを必要とする等、後日同様に、省令等で明確に規定される予定となっています。

(3)義務履行の簡易化

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、上記(2)の相続登記申請義務を履行したものとみなしてもらえます(新法76条の3)。

申出をした相続人の氏名・住所等が職権で登記に付記され、これを「相続人申告登記と呼ぶことになります。「相続人申告登記」は、単独申出可、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が不要、資料収集の負担の軽減という3つの点で簡易な方法といえます。また、令和4年度税制改正の大綱では、相続人申告登記を非課税とする方針がとられています。

(4)経過措置

施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していたケースについても、相続登記の申請義務は課されます。ただし、申請義務の履行期間については、施行日か要件を充足した日のいずれか遅い日から3年間として起算されます(令和6年3月31日までに発生した相続でいえば、令和9年3月31日までに申請義務を履行すべきことになります。)。

 

2 所有不動産記録証明制度の創設

(1)改正の経緯

相続が発生した場合にその相続人が被相続人所有名義の不動産を名寄せして知ることができる制度があれば、相続財産調査の煩雑さを軽減でき、ひいては相続登記未了の予防につながると考えられました。そこで、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が新設されました(新法119条の2)。これを「所有不動産記録証明制度」と呼び、かかる制度による証明書を「所有不動産記録証明書」といいます。

なお、これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね5年とされていますので、令和8年4月1日頃と予想されます。

(2)交付請求可能者

所有不動産記録証明書の交付請求が可能な者は、以下のとおりです。

ア 新法119条の2-1項によれば「何人も…交付を請求することができる」とされているので「自らが所有権の登記名義人として記録されている者」だけでなく「所有権の登記名義人として記録されている不動産がない者」も、請求が可能です。この場合には、該当する不動産の記録がない旨の証明書が交付されます。

イ 相続人その他の一般承継人(新法119条の2-2項)。

 

3 住所変更登記等の申請の義務化

所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けられ(新法76条の5)、「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処されます(新法164条2項)。この「正当な理由」の具体的な内容は通達等で、過料を科す手続は省令等で明確にされる予定です。

上記変更登記は、登記官が職権ですることも可能で、その場合自然人に対しては法務局からの意思確認がなされる手続となっています。

なお、これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね5年とされていますので、令和8年4月1日頃と予想されます。

そして、住所変更登記申請の義務化についても、義務履行期間の起算日に関して経過措置が設けられ、施行日か要件を充足した日のいずれか遅い日から2年間として起算されます(令和8年3月31日までに発生した住所変更でいえば、令和10年3月31日までに申請義務を履行すべきことになります。)。

 

4 その他の登記手続の簡略化

(1)遺贈を原因とする所有権移転登記

従来:登記権利者(受遺者)と登記義務者(被相続人の全相続人又は遺言執行者)との共同申請

新法:相続人が受遺者である場合に限り、登記権利者である受遺者による単独申請が可能(新法63条3項)。例えば、遺贈によって共同相続人ABCの中の一部の者であるABの共有とされた不動産について、Aが単独でAB共有名義とする登記を申請することも実務上可能と考えられています(部会資料57・9頁)。

(2)法定相続分での相続登記後に、①遺産の分割の協議又は審判若しくは調停、②他の相続人の相続放棄、③特定財産承継遺言、④相続人が受遺者である遺贈による、所有権の取得に関する登記申請をする場合

従来:登記権利者と登記義務者の共同申請

新法:単独申請による更正登記が可能

これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね2年とされていますので、令和5年4月1日頃と予想されます。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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