不動産

賃貸住宅管理業法①賃貸住宅管理業

2021.09.21

 

1 はじめに

(1)背景事情

 近年、賃貸住宅管理業務を、建物のオーナー自らが行う割合は大幅に減少し、業者に委託するケースが増えています(平成4年度:25%→令和元年度:81.5%)。これは、オーナーの高齢化、相続等に伴う兼業化の進展とそれに伴うアマチュア化、管理内容の高度化などに起因すると考えられています。ただ、賃貸住宅に管理業者が介在することにより、オーナー・管理業者・入居者の三者間でのトラブルも増加してきました。

 これまでも、管理業者の任意登録制度と登録業者のみに課されるルールは存在しましたが、それだけではトラブルを十分に防ぐことが困難となってきたので、不良業者を排除し、業界の健全な発展・育成を図るため、「賃貸住宅の管理業務の適正化に関する法律(以下、管理業法といいます。)」が制定され、その中で新しく賃貸住宅管理業に関する規定が設けられました。

(2)賃貸住宅管理業とは

 管理業法2条2項において「賃貸住宅管理業」は、賃貸住宅の賃貸人から委託を受け事業として行う、以下の①、②の業務と定義されています。

① 賃貸住宅の維持保全業務(点検・清掃・修繕及びそれに係る契約締結の媒介・取次ぎ・代理を含む)

➡ 玄関・通路・階段等の共用部分、居室内外の電気設備・水道設備、エレベーター等の設備等について、点検・清掃等の維持を行い、これら点検等の結果を踏まえた必要な修繕を一貫して行うこととされていて、以下の場合を含みません(FAQ1(2)3)。

Ⅰ 定期清掃業者・警備業者・リフォーム工事業者等が、維持又は管理の「いずれか一方のみ」を行う場合

Ⅱ エレベーターの保守点検・修繕を行う事業者等が、賃貸住宅の「部分のみ」について維持から修繕までを一貫として行う場合

Ⅲ 入居者からの苦情対応のみを行い維持及び修繕(維持・修繕業者への発注等を含む)を行っていない場合

② 賃貸住宅の家賃、敷金、共益費等の管理業務(上記①と併せて行うものに限る。)

2 概要

(1)登録制度(管理業法3条~9条関係)

 賃貸住宅管理業を営もうとする者は、国土交通大臣の登録を受けなければなりません。なお、管理戸数が200戸未満の者の登録は任意ですが(規則3条)、登録すると以下に述べる賃貸住宅管理業者の義務も課せられ、監督処分や罰則の対象にもなることに留意しましょう(FAQ2(1)11、(3)1)。

(2)賃貸住宅管理業者の義務

① 営業所又は事務所ごとに「業務管理者」の配置(管理業法12条)

 なお「業務管理者」になるにあたっての要件は規則14条に規定されており、実務経験の有無、宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士資格の有無によって「業務管理者」になるまでの流れが異なります。

② 管理受託契約の締結前の書面交付(重要事項説明書・管理業法13条)

 管理業務においてオーナーが期待している対応がなされないというトラブルが多いことから「契約を締結するまでに」業務内容等を明確にするための重要事項を記載した書面を交付して説明しなければならないとされました。

 管理業者は、具体的な管理業務の内容・実施方法、一部の再委託に関する事項等を説明する必要があります(規則31条)。この説明は「業務管理者」によって行われることは必ずしも要しませんが「業務管理者」又は一定の実務経験を有する者など専門的な知識及び経験を有する者が行うことが推奨されています。なお、重要事項説明は、オーナーから委託を受けようとする賃貸住宅管理業者自らが主体として行うものであることに留意してください(国土交通省「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の解釈・運用の考え方(以下、考え方といいます)」15頁)。

 なお、重要事項説明については、オーナーが契約内容を十分に理解した上で契約を締結できるよう、説明から契約締結までに1週間程度の期間をおくことが望ましいとされており、説明から契約締結までの期間を短くせざるを得ない場合には、事前に重要事項説明書を送付し、その送付から一定期間後に、説明を実施するなどして、管理受託契約を委託しようとする者が契約締結の判断を行うまでに十分な時間をとることが推奨されています(考え方15頁)。

③ 管理受託契約の締結時の書面交付(管理業法14条)

 賃貸住宅管理業者は、管理受託「契約を締結したときは」オーナーに対し、確定した契約条件を当事者同士で確認できるよう、遅滞なく、必要事項を記載した書面を交付しなければなりません。適正化法13条の重要事項説明書は、契約締結に先立って交付する書面であり、ここでいう締結時の書面とは交付するタイミングが異なる書面ですから、両書面を一体で交付することはできないとされていますので注意しましょう(FAQ3(2)3)。

④ 再委託の禁止(管理業法15条)

 再委託のせいで管理業者の責任内容が不明確になるという例が多かったので、管理業務の再委託は原則禁止になりました。

 管理受託契約に管理業務の一部の再委託に関する定めがあるときは、一部の再委託を行うことができますが、自らで再委託先の指導監督を行わず、全ての管理業務を他者に再委託すること、又は、管理業務を複数の者に分割して再委託して自ら管理業務を一切行わないことは、本条に違反します。

 なお、契約によらずに管理業務を自らの名義で他者に行わせる場合には、禁止されている名義貸し(管理業法11条)に該当する場合があるため、再委託は契約を締結して行う必要があります(以上、考え方19頁)。

⑤ 分別管理(管理業法16条)

 管理業者からの賃料・敷金等の入金の遅れ・不入金のトラブルが多かったことから、事業者の自己の固有の財産等と入居者等から受領する金銭を「分別」する義務が定められました。分別等の方法については、管理受託契約に基づく管理業務において受領する家賃、敷金、共益費その他の金銭を管理する口座と賃貸住宅管理業者の固有財産を管理する「口座を別」とした上で、管理受託「契約毎」に金銭の「出入を区別した帳簿を作成」する等により勘定上も分別管理する必要があるとされています(規則36条、考え方19頁)。

⑥ 定期報告(管理業法20条

 管理業務の実施状況の不透明や入居者の意見が反映されにくいという問題があったことから、業務の実施状況や入居者からの苦情の発生・対応状況について、オーナーに対して定期報告の義務が課されました。規則40条1項によれば、それは「契約を締結した日から一年を超えない期間ごと」とされています。 

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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