不動産

土地法制改正⑥所有者不明土地管理制度等

2022.04.09

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1 はじめに

  土地法制改正①総論(https://m2-law.com/blog/4048/)でも触れましたが、所有者不明土地問題の一つの側面として、所有者不明土地が管理不全状態になりやすいという問題があります。

  今回ご紹介する「所有者不明」「土地等」管理制度・「管理不全」「土地等」管理制度(民法264条の2以下及び264条の9以下)は、こうした問題に対処しようとする制度です。
 以下では、所有者不明土地管理制度に重点を置いて解説を行い、その他の制度については簡単に解説を行うこととします。

  これらの制度の施行は、令和5年4月1日からです。

2 所有者不明「土地」・「建物」管理制度

  財産の管理に関する制度としては、これまでも、不在者管理制度(民法25条1項)や相続財産管理(民法952条)がありました。しかし、これらの制度では、不在者等の財産の全てが管理の対象になり、管理費用が高額になるという問題があります。
 今回創設された所有者不明土地等管理制度等の特徴は、従前の不在者や被相続人といった「人」に着目した管理と異なり、所有者不明土地等という「物」に着目した管理を可能とするところにあります。

(1)所有者不明「土地」管理制度

   まず、所有者不明土地管理制度について解説します。

  ア 具体例

 所有者不明土地管理制度の利用が検討される例としては、隣地が管理不全状態で草木が生い茂ったり、工作物が倒壊し又は倒壊の危険が生じているなどして、自己所有地に妨害状態が生じ又は生じるおそれがあるといった場合が考えられます。
 このような場合、当該土地の所有者は、隣地の所有者に対し、妨害状態の排除や予防を請求することが出来ます。
 しかし、そもそも隣地の所有者が不明であれば、このような請求をする相手方が不明であり、所有者が対応に窮する可能性があります。
 このような場合には、甲土地の所有者は、所有者不明土地管理制度を利用し、選任された所有者不明土地管理人に対し、妨害排除や予防を請求することができるようになります。

イ 要件等

 では、どのような場合に、所有者不明土地管理制度を利用できるのでしょうか。
 まず、対象土地について、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」ことが必要です(民法264条の2第1項)。所有者が誰かわからない場合だけでなく、所有者がどこにいるかわからない場合も含まれます。
 そして、この制度を利用できるのは、「利害関係人」(同項)及び「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」(所有者不明土地利用円滑化特措法新38条2項・施行日は同じく令和5年4月1日)です。「利害関係人」についてみると、どのような人が「利害関係人」当たるかは法律には明記されていないのですが、例えば単なる隣人は「利害関係人」含まれないものの、隣地の管理不全状態により悪影響を被っている者は「利害関係人」当たると考えられています。
 上記の「利害関係人」等は、裁判所に対し、所有者不明土地管理命令の申立を行います。そして、裁判所は、「必要があると認めるとき」には、所有者不明土地管理命令を発令し、所有者不明土地管理人が選任します(民法264条の2第1項、4項)。この必要性についてですが、必要性がないと考えられる場合の例としては、不在者管理など他の財産管理制度が既に利用されている場合が考えられます。
 なお、管理費用については、当該土地の所有者が負担するのが原則です(民法264条の7第2項)。しかし、予納金が必要な場合もあるとされています(民法267条の7第1項参照)。

  ウ 効果

    このようにして、所有者不明土地管理人が選任されると、当該土地等の管理処分権は、所有者不明土地管理人にのみ帰属することになります(民法264条の3第1項)。
 所有者不明土地管理命令の効力は、当該土地と土地上の一定の動産などに及び(民法264条の2第2項)、所有者不明土地管理人は、これらの物の保存行為や対象財産の性質を変えない範囲における利用・改良行為をすることができます(民法264条の3第2項各号)。
 また、所有者不明土地管理人は、裁判所の許可を得れば、当該所有者不明土地の所有者の同意がなくても、対象土地を売却することが出来ます(民法264条の3第2項柱書本文)。そのため、民間事業や公共事業に際して所有者不明土地を買受けを希望する者(このような者も前記「利害関係人」に当たり得ます。)が同制度の申立てを行い、管理人から買受けることによって、土地利用の活性化にもつながると期待されているのです。

(2)所有者不明「建物」管理制度

   以上のような所有者不明土地管理制度とは別に、今回の改正では、建物についての所有者不明建物管理制度(民法264条の8)も定められました。
 建物についての管理制度を創設しなくても、「土地の管理制度の効力を建物に及ぼせばよいのではないか」と考えられるかもしれません。
 しかし、土地と建物は別個の物とされているため、土地と建物の所有者が異なる場合があります。その場合に同一の管理人が、土地と建物の双方とも管理するとすれば、利益相反のおそれがあるのです。例えば、土地上の家屋が老朽化している場合、土地の所有者からみれば建物の解体が利益になりますが、家屋の所有者からすれば建物の存続が利益になります。
 そのため、今回の改正では、土地と建物のそれぞれについて管理制度が創設され、それぞれ規定が整備されることとなったのです。
 もっとも、土地と建物の双方の所有者が同一の場合には、利益相反のおそれがないことから、土地と建物について同一の管理人が専任される場合も多いと思われます。

3 「管理不全」土地・建物管理制度

 以上のような所有者不明土地・建物管理制度が創設されたのですが、不動産の管理不全状態は、所有者が不明である場合にのみ生じるわけではありません。例えば、所有者が誰かが判明し、かつ、どこにいるかがわかったとしても、遠方に暮らしている等の理由により、土地等を管理する意思が希薄であるという場合も考えられます。

 このような場合に対処するため、今回の改正では、管理不全土地等管理制度(民法264条の9及び民法264条の14)も創設されました。
 管理不全土地等管理命令の発令要件は、①対象土地又は建物の所有者による管理が不適当なことによって「他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある」こと、②「利害関係人」による申立て及び③「必要があると認め」られることです(民法264条の9第1項、民法264条の14第1項)。
 管理不全土地等管理命令が発令されると、管理人は、当該対象土地等につき、保存行為等をすることができます(民法264条の10)。
 もっとも、所有者不明土地等管理命令と異なり、管理不全土地等管理管理人は、所有者の同意なく、当該土地等を処分することはできません(民法264条の10第3項)。

4 所有者不明土地等管理制度と管理不全土地等管理制度

  ここまでの解説で、所有者不明土地等管理制度(要件は「所有者不明等」です。)と管理不全土地等管理制度(要件は「管理不適当」です。)のどちらの要件もみたす場合にはどうなるのかという疑問を持たれるかもしれません。

  すなわち、所有者不明であるがゆえに管理不全状態となっている土地・建物については、どちらの制度を使えばよいのかという問題です。
 法律上は、どちらの制度を利用することも可能です。もっとも、所有者不明土地等管理制度の方が、所有者の同意なく、裁判所の許可のみで、土地等を処分できる点で管理人の権限が大きいと考えられます。

  そのため、両制度の双方の要件を満たす場合には、所有者不明土地等管理制度を利用する方がよいと思われます。

5 まとめ

  今回は、所有者不明土地等管理制度・管理不全土地等管理制度について、所有者不明土地管理制度を中心に解説をしました。もっとも、ブログ記事の性質上解説を省略した箇所もあります。
 土地・建物の管理については、本文でも言及した相続財産管理制度など、利用可能な制度が複数存在することもあります。具体的にどの制度を利用するべきかは、それぞれの制度の特色やメリット・デメリットを踏まえたうえで検討する必要があります。

                                              以上

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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