企業法務

FCガイドライン②FC本部の基礎知識

2022.08.09

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1 はじめに

  前回の記事では、セブンイレブンに対する排除措置命令(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)を素材としてフランチャイズ契約と独禁法上の「優越的地位」に関する考え方をフランチャイズ・ガイドライン(以下、単にGLと略します。)の規定を参照しながら解説しました。
 このGLですが、実は、令和3年4月、大幅に改正されています。そこで、今回は、GLについて、①優越的地位の濫用に関する改正を中心に解説するとともに、②その他の改正についても簡単に紹介することとします。

 

2 GL改正の背景

具体的な改正内容を紹介する前に、そもそも、なぜ今回のGL改正が行われたのかというと、それは、コンビニフランチャイズ問題が背景にあるとされています。

報道等もされているところですが、近年、コンビニエンスストアでの24時間営業に関し本部加盟店間のトラブルが生じています。このような事態を受けて、公正取引委員会は大規模な調査を行い、令和2年9月「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」を、公表しました(ポイントは、以下のとおり。200902_03.pdf (jftc.go.jp))。

そこで明らかになった問題点をふまえて、今回のGL改正となりました。このような経緯から、内容的にもコンビニフランチャイズを念頭においたと思われる改正が多くなっています。

しかし、今回のGL改正の対象は、コンビニフランチャイズに限定されておらず、他のフランチャイズにも妥当し得るものとなっている点には注意が必要です。

 

3 優越的地位の濫用についてのGL改正

  先ず、優越的地位の濫用に関するGL改正を見ていきます。
 前回の記事で紹介したのは「優越的地位にあるかどうか」についてのGLの考え方ですが、これを前提として「優越的地位にある」本部がした行為等が「どのような場合に優越的地位の濫用に当たり得るか」といった想定事例が示されています(GL3(1)ア)。

それでは、今回のGL改正により、どのような事例が追加されたのか、具体的に紹介します。

(1)仕入数量の強制

「本部が加盟者に対して,加盟者の販売する商品又は使用する原材料について,返品が認められないにもかかわらず,実際の販売に必要な範囲を超えて,本部が仕入数量を指示すること又は加盟者の意思に反して加盟者になり代わって加盟者名で仕入発注することにより,当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。」

  下線部分が「無断発注による仕入数量の強制」として追記されました。もともと仕入数量の強制は想定事例として存在したのですが、今回の改正により、本部が加盟者に無断で仕入れを行うこと等に規制が及ぶことが明確にされました。

(2)見切り販売の制限

GL(注8)では「見切り販売を行うには,煩雑な手続を必要とすることによって加盟者が見切り販売を断念せざるを得なくなることのないよう,本部は,柔軟な売価変更が可能な仕組みを構築するとともに,加盟者が実際に見切り販売を行うことができるよう,見切り販売を行うための手続を加盟者に十分説明することが望ましいとされました。
 正当な理由のない見切り販売の制限は、今回の改正前からも想定事例として規定されていました。今回の改正では、見切り販売の「手続」についても、実質的に見切り販売が可能となるような仕組みづくりを求める注が新設されました。
 なお、上記の改正の「望ましい」という部分が、仕組みの構築にまでかかるのか、それとも仕組みの構築自体は本部の義務とされているのかについては、二通りの読み方ができるように思います。この点については、GLの「原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方」のなかで「仕組み構築を義務付けるのは行き過ぎではないか」という「意見」に対し「システム管理上やむを得ない事情により複雑なものとなっているのかについては,個別事案ごとの判断を要するものですが,本改正では,柔軟な売価変更が可能な仕組みの構築を慫慂しています」(GL原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.99)という「考え方」が示されていることから、仕組みの構築自体についても義務というわけではなく「望ましい」とされているものと考えることができます。

(3)営業時間の短縮に係る協議拒絶

  「本部が,加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。」

  この想定事例は、今回の改正により新設されたものです。ただ、この規定はあくまでも協議の拒絶を禁止しているものですから、協議の結果として合意ができなかったとしても、直ちに優越的地位の濫用に当たると判断されるわけではありません。また、契約書中に協議に関する定めがない場合には、そもそもこの想定事例に当てはまりませんので、協議を拒絶してもそのこと自体は優越的地位の濫用と評価されません。

(4)事前取決めに反するドミナント出店等

ドミナント出店とは、特定の地域に店舗を集中させることですが、GLは、次のようなドミナント出店が「正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合」には、優越的地位の濫用に該当するとしています。

即ち「ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるにもかかわらず,ドミナント出店が加盟者の損益の悪化を招く場合において,本部が,当該取決めに反してドミナント出店を行うこと。また,ドミナント出店を行う場合には,本部が,損益の悪化を招くときなどに加盟者に支援等を行うとの事前の取決めがあるにもかかわらず,当該取決めに反して加盟者に対し一切の支援等を行わないこと。」は、優越的地位の濫用にあたる場合があります。

 この想定事例は、今回の改正で新設されたもので、ドミナント出店自体が直ちに独禁法に違反するものではないとの考え方を前提とした上で、優越的地位の濫用になり得る類型を規定しています。また「事前の取決め」がない場合には、ドミナント出店をしても直ちに優越的地位の濫用にあたるわけではありません。

 

4 その他のGL改正について

  以上は、今回の改正のうち「GL3フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引」に関する「(1)優越的地位の濫用について」のものです。今回の改正では、その他に「GL2本部の加盟者募集について」に関する「(3)ぎまん的顧客誘引」の観点からも規定が新設されています。

  具体的には、①「人手不足,人件費高騰等の経営に悪影響を与える情報」の開示が望ましいとする規定(GL2(2)ウ)、②ドミナント出店に関して配慮を行う旨を提示する場合にはその配慮の具体的内容を明らかにしたうえで取り決めに至るよう留意することを促す規定(GL2(2)ア(注3))及び③募集時の説明におけるモデル収益等が予想収益と誤認されないように求める規定(GL2(2)イ(注4)、が新設されています。
 このうち、①は優越的地位の濫用のところで解説した時短営業等に関わるものであり、②は、優越的地位の濫用の箇所で解説したドミナント出店に関する規定と関係するものです。
 時短営業やドミナント出店は、主として、契約前は「ぎまん的顧客勧誘」の観点から問題となり、契約後は「優越的地位の濫用」の観点から問題となるため、このように複数の規定がされたものと思われます。

 

5 まとめ

  今回以上のような改正がされましたので、本部としても、この改正GLを踏まえた態勢を整えておく必要があると思われます。
 また、今回解説したのは、独禁法関係の一部についてです。独禁法上問題がない場合でも、例えば民事上の問題が生じる場合もあり得るところですし、逆に民事上の問題に独禁法の問題が関係してくることもあり得ます。
 本部としては、フランチャイズ・システムには複数の法規制等があることを意識して、適切な対応をとれるように契約書の整備などをしておく必要があると思われます。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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