不動産

宅建業行政処分⑥不正不当行為等

2021.12.28

 平成27年8月から令和3年6月までの間に、不正不当行為等として宅建業法違反で行政処分を受けた行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

54 不正不当行為

  (1)不正不当行為は、法65条2項5号が定める概念で、単なる宅建業法違反として業務停止処分が下されるよりも、1つ上の違反行為類型と考えられます(だからこそ、原則業務停止30日、関係者の損害の程度や社会的影響が特に大きい場合には60日の処分がされる訳です。)。ただ、不正不当行為と同様に、その概念は不明確で、具体的処分例を踏まえ検討することが必要です。

(2)具体的処分例

ア 個人を買主とする媒介業務に関して、ⅰ投資用物件にもかかわらず、被処分者は住宅ローンの銀行融資申込書を買主に作成させ、銀行へ提出、ⅱ金融機関と買主に対し、それぞれ異なる内容の売買契約書(法37条1項書面)を作成・交付

業務停止22日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

イ 売主業者と媒介業者が、
手付金と金銭貸借の斡旋額について内容の異なる2種類の重要事項説明書
売買代金と手付金、融資申込額について内容の異なる3種類の売買契約書
を作成し、低い価格が記載された重要事項説明書を買主に交付し、高い価格が記載された両書面を金融機関に提出した(これらを3つの取引で行った)

業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 原則業務停止30日の違反行為類型ですが複数回存在し、他に重要事項説明書の虚偽記載も複数の取引でなされていた(14-原則業務停止7日)ことが影響しています。

ウ 建物売買取引において預り金を流用した

業務停止45日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、本件事案では他に預り金不返還(41-原則業務停止15日間)や媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)も存在したことが影響しています。

 

55 報告命令、立入検査の拒否等

専任の宅地建物取引士の設置状況について報告するよう求められたが、報告期限までに報告を行わなかった

業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、本件事案では、同時に取引士設置義務違反行為(6-原則業務停止処分7日)も処理されたことが影響しています。

 

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宅建業行政処分⑤取引の公正を害する行為

2021.12.20

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平成27年8月から令和3年6月までの間に大阪府から、取引の公正を害する行為として、宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

51 取引の公正を害する行為

(1)宅建業法は、第6章(監督)65条で、宅建業者に対する指示及び業務停止について定めています。

業務停止に関しては原則として法65条2項が定めるところで、その処分の重さに照らしても、違反行為類型は比較的明確です(不正不当行為は例外)。そして、指示に関して原則として定めるのが法65条1項で、その中でも2号の「取引の公正を害する行為」という概念を通じて、2項以外の宅建業法違反行為を集めて「指示」等の処分に導いていくという、バスケット条項的な位置付けがあります。

逆にいえば「取引の公正を害する行為」がどのようなものかについては、現実の処分例を参考にすることが不可欠です。

ちなみに「取引の公正を害する行為」そのものの処分は「指示」に留まり弱いですが、なぜそのような処分までするのかということを考えると他により重く処分される行為を行っていることが多いからであり、最終的な処分結果が必ずしも軽いものとはいえないように思います。

(2)具体的処分例

ア 売買契約に関する重要事項説明書に、対象物件の敷地の中に国所有の畦畔があるにも関わらずその旨を記載せず、売主であるにもかかわらず、売主の表示に事実と異なる表示をした。

指示のみ

 賃貸借契約書に、転貸借が可能であるにも関わらず記載せず、付属設備に存在しないエアコンを記載した。

業務停止10日間 他に重要事項不説明(14-原則業務停止7日)と契約書不備(17-原則業務停止7日)の違反があったことが影響しています。

ウ 広告費について虚偽の内容の領収書(130,000円受領したにもかかわらず140,000円と記載)を貸主に交付

業務停止22日間 原則指示の違反行為類型ですが、他に賃貸契約書記載不備の違反(17-共益費の外に月々支払う8,000円の不記載・原則7日間の業務停止)と限度額を超える報酬の受領(28-特別な広告をしていないにも関わらず広告費として130,000円を受領・原則15日の業務停止)があったことが影響しています。

エ 重要事項説明書及び売買契約書に、ア法39条2項に反する買主に不利な手付解除期日を設定、イ日付の異なる手付金の領収書を2通作成し、買主に交付

業務停止44日間 原則指示の類型ですがその他、重要事項説明書の虚偽記載が複数の取引でなされていたり(14-原則業務停止7日)、さらに内容の異なる重要事項説明書や売買契約書を作成し金融機関に交付されたりしたことが不正不当行為と認定されたことが影響しています(54-原則業務停止30日)。

オ 契約が成立していないにもかかわらず、手付金を受領

業務停止45日間 原則指示の類型ですが、他に預り金の返還拒否(41―原則業務停止15日)や預り金流用(54―原則業務停止30日)の違反があったことが影響しています。

 賃貸借契約締結前に媒介報酬を受領

指示のみ

キ 取引することができる物件であったにもかかわらず、貸主に確認を取ることなく、被処分者自らの判断だけで賃貸借契約の媒介を断り、入居申込者の賃貸借契約締結の機会を奪った

  指示のみ 

ク 建物の賃貸借契約に係る媒介業務において、被処分者は調査義務を怠り、4階を適法に使用することが出来ない旨重要事項説明書に記載せず

 指示のみ

ケ 契約解除期限の到来前に、買主に対する金融機関の融資の承認が困難となったことを売主に通知・説明し、買主と売主との間で契約解除期限延長の合意の仲介をするなどの適切な業務の遂行をせず

  業務停止7日 他に媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)があったことが影響しています。

 

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宅建業行政処分④担保責任特約・超過報酬等

2021.12.08

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平成27年8月から令和3年6月までの間に担保責任特約違反・超過報酬等により宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。

 

22 瑕疵担保責任についての特約違反(法40条1項)

宅地建物取引業者でない買主との契約において、土地及び建物の瑕疵担保責任に関し「引渡完了日から3ヵ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負う。」という買主に民法(1年間)よりも不利となる特約をした

業務停止7日間 原則指示にとどまる違反行為類型ですが、取引士以外の者が重要事項の説明をした違反(14-原則業務停止7日)のあることが影響しています。 

 

28 限度額を超える報酬の受領(法46条2項)

(1)建物の賃貸借契約の媒介業務において、特別な広告を行っていないにもかかわらず、貸主から84,000円を「広告料」として受領 + 別の取引においても、同様に80,000円を「広告料」として受領。なお、特別な広告の例としては、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する広告とされています(東高判昭和57年9月28日金商665号41頁)。

業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、複数の取引で行われていたことが影響しています。

(2)保証会社費用及び鍵交換費用について、実体のない金銭を請求し、媒介報酬の法定上限を超える金銭を受領した

指示のみ 原則業務停止処分15日の違反行為類型ですが軽減規定が適用されました。

 

38 相手方等が契約を締結しない旨の意思を表示した場合の再勧誘(法47条の2-3項、規則16条の12-1号ハ)

業務停止15日間

 

41 契約申込みの撤回時における預り金の返還拒否(法47条の2-3項、規則16条の12-2号)

(1)預り金を借主より受領した後、借主から申込みの撤回があったにもかかわらず、預り金を返還せず

業務停止15日間

(2)賃貸借の媒介業務において、賃貸借の申込みの撤回後も預り金15,300円の返還を拒み、相手からの預り金返還等請求の認容判決確定後も遅延損害金の一部を支払わなかった

指示のみ 原則業務停止15日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。

 

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