不動産

位置指定道路

2021.08.27

というのは、聞きなれない言葉かもしれませんが、建築基準法(以下、単に「法」といいます。)42条1項5号により、接道義務を充たすための道路として取り扱われるものです(接道義務については、https://m2-law.com/blog/2450/ )。例えば、広い土地を分譲して複数の建築物を建てようとした場合、道路に接していない建築物の敷地が発生することがありますが、その場合に広い土地の一部に位置指定道路を設置することで分譲後の建築物の敷地が接道義務を果たすことができるようにするものです。

ところで、ここで道路とされる「広い土地の一部」というのが、共有地を含む私有地であることが多いことから、道路の敷地所有者と通行者との間で通行方法や通行妨害に関する紛争が生じやすいので、これらの紛争に関する裁判所の基本的考え方(最1小判平成9年12月18日、以下、本件最高裁判決といいます。)について説明したいと思います。

なお、図面画像は、本件最高裁判決の「判例解説民事篇・法曹会」からの引用です。

1 事案の概要

 位置指定道路の所有者以外の者(Ⅹら)が位置指定道路所有者(Yら)に対し通行妨害排除・妨害予防請求をした事案です。

 昭和33年頃に分譲住宅団地が開発された際に各分譲地に至る通路として、幅員4mの私道が位置指定道路として指定されました(以下、本件私道といいます。)。30年以上Xらを含む近隣住民等の徒歩及び自動車による通行の用に供されてきており、自動車を利用するXらにとっては、その居住地から公道へ出るには、本件私道の通行が不可欠でした。しかし、YらがXらの自動車通行を図面(A)の近辺に簡易ゲートを置いて妨害するので、原告らは妨害排除及び妨害予防を求めました((A)とは別のもう一方の端は階段状になっていて、仮に平面上の道にしても勾配が急であるため自動車は通行できません。)。第1審はⅩらの請求を認め、第2審もYらの控訴を棄却したところ、Yらが最高裁に上告しました。

2 最高裁の判断

ア 判断枠組み

 最1小判平成9年12月18日(以下、本件最高裁判決といいます。)は「建築基準法四二条一項五号の規定による位置の指定を受け現実に開設されている道路を通行することについて日常生活上不可欠の利益を有する者は、右道路の通行をその敷地の所有者によって妨害され、又は妨害されるおそれがあるときは、敷地所有者が右通行を受忍することによって通行者の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有するものというべきである。」という判断枠組みを示しました。そして、Xらが位置指定道路を自動車で通行することについて日常生活上不可欠の利益を有しており、YらがXらの通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情があるということはできないとして、Ⅹの請求を認めた第2審の判断を支持しました。

イ 理由

 ちなみに、本件最高裁判決が理由とするのは、次の点です。即ち「道路位置指定を受け現実に開設されている道路を公衆が通行することができるのは、本来は道路位置指定に伴う反射的利益にすぎず、その通行が妨害された者であっても道路敷地所有者に対する妨害排除等の請求権を有しないのが原則であるが、生活の本拠と外部との交通は人間の基本的生活利益に属するものであって、これが阻害された場合の不利益には甚だしいものがあるから、外部との交通についての代替手段を欠くなどの理由により日常生活上不可欠なものとなった通行に関する利益は私法上も保護に値するというべきであり、他方、道路位置指定に伴い建築基準法上の建築制限などの規制を受けるに至った道路敷地所有者は、少なくとも道路の通行について日常生活上不可欠の利益を有する者がいる場合においては、右の通行利益を上回る著しい損害を被るなどの特段の事情のない限り、右の者の通行を禁止ないし制限することについて保護に値する正当な利益を有するとはいえず、私法上の通行受忍義務を負うこととなってもやむを得ないものと考えられるからである。」というものです。

 

3 解説

 本件最高裁判決は、Xらの妨害予防・排除請求権を人格的権利として認めるべきである考えたものです。ただ、人格的権利について示された「日常生活上不可欠」という要件は、相当程度厳しいもので、妨害排除請求が必要以上に認められることを防ぐ機能を果たしています。本件のポイントは「自動車を利用するXらにとっては、その居住地から公道へ出るには、本件私道の通行が不可欠」という点にあります。例えば、他に外部の道路への通路がある場合には、係争の道路を通行する方が便利であっても「日常不可欠」とはいえないことが多いでしょう。ところが一旦、通行が日常生活上不可欠であると判断された場合には、道路敷地所有者側にそれを上回る損害が発生しているとして請求が棄却されることはあまり多くないでしょう(「特段の事情のない限り」原則として「敷地所有者に対して右妨害行為の排除及び将来の妨害行為の禁止を求める権利(人格権的権利)を有する」という本件最高裁判決の判断枠組みがそのことを示しています。)。従って、通行者の請求が棄却されるのは、通行者の通行態様が乱暴であるとか、道路の維持管理費用が看過し得ないほど高額にのぼるのに通行者が応分の負担をしようとしないなどの場合に限られるでしょう。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

接道義務

2021.08.02

1 はじめに

 今回から暫く、不動産関連ブログの連載です。下手へた画像で申し訳ありません(笑)。ただ、ないよりあった方がマシかと思い、恥を忍んで書いて載せました。絵心があれば、フリーハンドでも、もう少しアジがでるのですが、、、

 さて、建築物の敷地、構造、設備及び用途に関する最低の基準を定めて、国民の生命、健康及び財産の保護を図る法律として、建築基準法(以下、単に「法」といいます。)があります。法では、上記目的から建築物に関し様々な義務が定められており、これから説明する接道義務もそのひとつです。

 

2 接道義務(法43条)

 法43条1項は「建築物の敷地は、道路(省略。)に二メートル以上接しなければならない」と定めており、敷地までの幅員(ふくいん)が連続して2m以上であることが必要と解されています。

 建築基準法施行(昭和25年)以前に存在し若しくは工事中であった建築物の敷地に上記規定は適用されません(法3条2項、既存不適格)。他方、例えば、工事の着手が法の施行後である増築、改築、移転、大規模の修繕又は大規模の模様替に係る建築物の敷地については接道義務の規定が適用されます(同3項3号)ので、接道義務に反する工事を行うことができません。ちなみに、大規模の修繕や模様替とは、建築物の「主要構造部」(法2条5号)の一種以上について過半に行う場合です(同14・15号)。

 

3 建築基準法上の「道路」(法42条)

 それでは「道路」とはどのようなものかというと、それは法42条に規定されていて、1項では「道路」としては幅員4メートル以上が必要な場合を、2項は幅員4メートル未満の道でも「道路」とみなされる場合を規定しています。

 

4 位置指定道路(法42条1項5号)

 法42条1項の「道路」とは、同1号の定める道路(高速道路、国道、都道府県道、市町村道といった公道)や同3号の定める道(公道、私道を含む)等があります。

 また、位置指定道路といって「土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造(上記3号参照)する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの」もあります。例えば、広い土地を分譲して複数の建築物を建てようとした場合、道路に接していない建築物の敷地が発生することがあり、その場合に広い土地の一部に位置指定道路を設置することで分譲後の建築物の敷地が接道義務を果たすことができるようにするものです。

 位置指定道路の所有関係は、面する敷地の所有者らが共有したり分筆所有したりしている場合や、元の地主個人や土地を分譲した業者が所有している場合等様々です。そして、位置指定道路とされた土地の所有者は、位置指定の適法な廃止・変更がされない限り、位置指定道路内に建築物や擁壁を建築できない等の制限を受けます(法44条、45条)。

 

5 みなし道路(2項道路)

 建築基準法の施行時などに既に存在していた幅員4m未満の道は、前述のとおり原則として接道義務における道路にあたりません。しかし、道の幅員のみを理由に過度な建築制限を受けないよう建築の自由に配慮して、一定の場合には道路とみなす規定もあります。

 接道義務の規定ができた昭和25年に現に建築物が立ち並んでいる道で、特定行政庁が指定したものを、法が定める「道路」とみなすのが法42条2項です。このような道は2項道路と呼ばれています。

 2項道路に指定されると、当該道が「道路」とみなされ、道の中心線から水平距離2m後退した線が道路境界線とみなされます。その結果、その境界線よりも道路側には建築物を建てることができなくなります(法44条1項柱書)。これをセットバック義務といいます。なお、2項道路に指定されていなければ、単なる既存不適格物件に過ぎないですから、たとえセットバックをしたとしても、建築物の増築、改築、大規模修繕等は許されません(法3条2項、3項3号)。

 

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