事業再生法人破産

事業譲渡③事業再生・私的整理での有用性/会社分割との比較

2021.06.23

 

 

1 はじめに

 会社全体としては、著しい債務超過であっても、採算性の高い事業部門があれば、当該事業を出来る限り活用することが望ましいです。事業譲渡では、不採算部門の事業を処分し採算性のある事業を残すことができるため、事業再生にとって有用です。特に、これを私的整理の中で行うなら、風評被害等による事業価値毀損のリスクを可能な限り減らすことができ、コロナ禍での事業再生スキームとして、注目されているところです(コロナ不況の特徴については、https://saimu-law.jp/column/info2297/ を参照)

 

2 事業再生での事業譲渡の有用性/会社分割との比較

  事業譲渡と会社分割の違いは様々ですが、以下の点が重要と思います。

(1)期間の見通し

   事業譲渡は、当該事業を譲渡する旨の契約ですから、互いに合意了解さえすれば、直ちに実現できます(但し、事業の全部譲渡等であれば、株主総会等の手続が必要)。ただ、以下の注意が必要です。

① 譲渡スキームとして、売買等でなく現物出資・事後設立を選択する場合には、検査役の選任・調査といった手続が必要とされますが、その手続が何時終了するかは、検査役次第のところがあり、確実な予測が立ちません。

② 後述しますが、資産・負債・契約関係・従業員の移転は、個々に対応せざるを得ませんので、その点手間取れば時間を要します。

会社分割の場合、そのための手続期間は法定されていますので、期間の見通しは確実といえます。ただ、必ずその期間は必要なので省略できません。その意味で、一般的には、事業譲渡の方が、迅速性を有するとされています。

(2)資金の準備

   事業譲渡の場合、上記(1)①で述べたとおり、現物出資等による譲渡スキームには問題があるので、譲渡対価は金銭であることが多いでしょう。その意味で、資金が必要となります。他方、会社分割により事業再生を行う場合、分割対価は、新設会社乃至は吸収会社の株式であることが多いので、その意味で、資金を準備する必要はありません。

(3)資産・負債・契約関係の移転方法

  ① 事業譲渡の場合、個々の資産・負債等について移転手続を取る必要があります。この点、会社分割における資産・負債等の移転は、一般承継です。分割計画等に記載した資産や負債が分割効力発生日に新設会社に移転することになるため、特に債務の免責的移転(免責的債務引受)について債権者の個別同意を得る必要がない点はメリットといえます。ただし、債権者保護手続が必要な場合があります。

  ② 逆にいえば、会社分割の場合、特定の事業に関する債務が一般承継されるため簿外債務の承継を回避できない点がデメリットになります。この点、事業譲渡であれば譲渡契約で債務の範囲を特定することができるので、簿外債務・偶発債務の承継を回避できるのは利点です。

  ③ 事業譲渡の場合、改めて事業譲渡後に、譲受会社が許認可を取得し直さなければなりません。他方、会社分割では、分割会社が有する許認可が新設会社に承継されることが多いことはメリットといえます。

(4)従業員の移転

  事業譲渡の場合、従業員の移転(労働契約の承継)については、譲渡会社、譲受会社及び労働者の三者の同意が必要であるため、このうちいずれかの当事者が同意しなければ、労働契約は譲渡会社に残存することになります。他方、会社分割では、労働契約承継法により、承継事業に主として従事していた労働者の労働契約は原則として新設会社に移転することになります。

 

3 私的整理での事業譲渡の有用性/会社分割との比較

(1)私的整理とは、金融機関等のみを対象に、その全員の同意を要件として、リスケ・債務カット等をすることです(私的整理の概要は、https://m2-law.com/blog/1216/ を参照)。私的整理は、秘密裏に行われるため(密行性)、事業価値が棄損される程度は低いです。他方、法的整理と比較して、債務遮断効が弱く、商取引債務・簿外債務はカットの対象外です。また、債務のカットには全金融債権者の同意が必要であることから、金融債務のカット自体も低額しかできないことも多いです。このような点について、事業譲渡がどのように役立つかという視点から、会社分割と比較して、検討してみましょう。

(2)事業譲渡・会社分割のメリット

  ① 事業譲渡は、個々の取引行為として、簿外債務リスクを大幅に軽減できます。この点が一般承継である会社分割との違いです(上記2(3)②)。一般的に債務カットの範囲と程度が少ない私的整理において、この点は一つのメリットといえます。

  ② 事業譲渡を行う場合は、資産・負債等の移転は、個々の手続が必要で一見煩雑ですが、実務上早急に対応すれば短時間で処理できる場合が多いと思われます。一方、会社分割の場合、会社法上の手続が必要で、ある程度の時間を要する点で大きな違いがあります(上記2(1)②)。私的整理の密行性をどのように理解するかによりますが、事業譲渡が短時間で実現可能という点からすれば、密行性に資するといえるでしょう。

  ③ 会社分割は、一般承継なので、資産・負債・契約関係・従業員の移転は、相手方と交渉することなく簡略に実施できます(上記2(3)①)。多数の交渉が不要という意味で、私的整理の密行性には資するといえるでしょう。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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