事業再生法人破産

事業譲渡④第二会社方式

2021.06.28

1 意義

(1)第二会社方式とは、会社の事業のうち再生見込みのある事業について、事業譲渡等の手法を利用して別会社(第二会社)に承継させるスキームです。事業の一部を移転させれば、旧会社は不採算部門のみ残ることになり、事業の全部を移転させれば、旧会社は空っぽになります。旧会社の債権者からすれば、旧会社が破産、特別清算等の手続で消滅することが望ましいのでしょうが、現実には、そのまま旧会社が放置されたままという場合も珍しくありません。

(2)事業再生を考えるには収支の改善が必須ですが、幾ら改善しても合理的な期間に負債を完済できないのであれば、払えない部分の債権をどのようにするかが問題になります。

   これが私的整理であれば、債権放棄を求めることになりますが、政府系金融機関や地域金融機関では十分な対応が出来ないことがあります。その際、第二会社方式を採り、併せて旧会社を破産等させれば、間接的な形であるが事実上、債権者に債権放棄してもらうのと同じ効果をもたらします。

   また、これが再建型倒産手続であれば、払えない部分は法的に債権カットできますが、例えば、民事再生手続の場合、①公租公課や労働債権はカットの対象にならないばかりか、再生手続開始決定後も引き続き支払っていかなければなりません。免除益課税の問題もあり、それらが事業再生の足枷になることもあります。②再生債権であれば法的カットが出来るといっても、そのためには、再生債権者の頭数過半数及び債権額2分の1以上の同意が必要であり(民再法172条の3-1項)、そもそもそのための予納金等も馬鹿になりません(負債額が1億円以上5億円未満であったとしても、東京地裁の場合、その額は400万円とされています。)。前者①の問題を回避すべく、再建型倒産手続の中で第二会社方式が採られることもありますし、後者②の問題を回避する方法として第二会社方式が採られることもあり、これが破産手続と併せて行われるのであれば、簡易な法的整理としての意義を有します。

 

2 長所

(1)免除益課税を回避できる可能性が高い

   事業再生後も払えない債務(債権者からみれば債権)については、その放棄乃至は法的カットが必要になり、その反面として免除益課税が問題になりますが、第二会社方式をとる場合、それらは旧会社の処理としてなされるので、その問題を限りなく回避できます。

   併せて、旧会社について破産・民事再生その他の法的整理手続が採られるのであれば、債権者にとっても無税償却が容易に可能となり、その協力が得易いというメリットが加わります。

(2)スポンサーの支援が受け易い

   第二会社方式では、新たな会社を利用するので、簿外債務や過去の法令違反の問題を回避することができ、その結果スポンサーによる資金援助が受けやすくなるという長所があります。新たな会社を利用するということは、旧会社と事業を継続する第二会社とを明確に区別するということなので、それが私的整理の中で行われるのであれば、債権放棄に比べて金融機関の支援を受け易いというメリットも加わります。旧会社の整理を伴うのであれば、スポンサーから提供を受けた事業譲渡等の対価を債権者が一括で取得できるという点もメリットといえます。

 

3 注意点

(1)問題の所在

  ① 第二会社方式が、私的整理の一環として行われるのであれば、旧会社を破産・特別清算により消滅させるという点も含め、全金融機関等の同意の下で行われるので問題はありません。債務者は第二会社において事業再生を果たせます、金融機関は事業譲渡・会社分割による対価によって不良債権処理を果たせます、その対価は事業価値の毀損を避けるべく秘密裏に行われた結果として最大価値を有するものです、事業に関する取引先は何ら影響を受けずそのまま継続した取引を営めます、正に「三方良し」といえます。

    また、第二会社方式が、債務者主導下で行われたとしても、これが再建型倒産手続の中で行われるのであれば、債権者集会等債権者が関与する機会があり、ある程度の保障はあります。また、旧会社が破産手続を経る場合は、管財人と裁判所の目が光るので、ギリギリ大丈夫かもしれません。

② 問題なのは、債務者主導の下、第二会社方式による事業再生が行われたものの、旧会社がそのままの状態になっている場合です。事業譲渡等により資産移転はされているので、正当な対価が旧会社に入っていればいいのですが、そのようなものもないまま、放ったらかしにされている場合は意外と多いように思います。このような場合の債権者としては踏んだり蹴ったりでしょう。ただ、大人しい債権者ばかりではありません。旧会社が破産しないまま債権が残っているのであれば、中には様々な行動をする債権者もいます。

(2)商号続用責任

   このような場合、債権者としては様々な対応が考えられますが、ここでは商号続用責任について、簡潔に述べます(その他、取締役の第三者責任の追及-会社法429条、法人格否認の法理、債権者破産により管財人に否認権行使を促すといった方法も考えられます。)。

   事業譲渡により事業再生を図る場合、旧会社から顧客その他を譲り受けることが多いです。では顧客はどこについているかといえば、それは様々で、契約関係のみならず、人そのものや、場所、商品、看板、中には電話番号やメールアドレスであったりもします。従って、これらの承継も併せてされることも多いです。

   この点、新会社が旧会社の商号を続用している場合は、債務弁済責任を負うという規定があります(会社法22条1項)。ただ、その類推適用という解釈手法は進んでいて、例えば、新設分割によりゴルフ場の経営が旧会社から新会社に移転したものの、同じクラブ名称を用いていた場合に、同条項を類推して新会社に旧会社の預託金債権者に対する責任を認めたものがあります(最3小判平成20年6月10日集民228号195頁)。

 

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事業譲渡③事業再生・私的整理での有用性/会社分割との比較

2021.06.23

 

 

1 はじめに

 会社全体としては、著しい債務超過であっても、採算性の高い事業部門があれば、当該事業を出来る限り活用することが望ましいです。事業譲渡では、不採算部門の事業を処分し採算性のある事業を残すことができるため、事業再生にとって有用です。特に、これを私的整理の中で行うなら、風評被害等による事業価値毀損のリスクを可能な限り減らすことができ、コロナ禍での事業再生スキームとして、注目されているところです(コロナ不況の特徴については、https://saimu-law.jp/column/info2297/ を参照)

 

2 事業再生での事業譲渡の有用性/会社分割との比較

  事業譲渡と会社分割の違いは様々ですが、以下の点が重要と思います。

(1)期間の見通し

   事業譲渡は、当該事業を譲渡する旨の契約ですから、互いに合意了解さえすれば、直ちに実現できます(但し、事業の全部譲渡等であれば、株主総会等の手続が必要)。ただ、以下の注意が必要です。

① 譲渡スキームとして、売買等でなく現物出資・事後設立を選択する場合には、検査役の選任・調査といった手続が必要とされますが、その手続が何時終了するかは、検査役次第のところがあり、確実な予測が立ちません。

② 後述しますが、資産・負債・契約関係・従業員の移転は、個々に対応せざるを得ませんので、その点手間取れば時間を要します。

会社分割の場合、そのための手続期間は法定されていますので、期間の見通しは確実といえます。ただ、必ずその期間は必要なので省略できません。その意味で、一般的には、事業譲渡の方が、迅速性を有するとされています。

(2)資金の準備

   事業譲渡の場合、上記(1)①で述べたとおり、現物出資等による譲渡スキームには問題があるので、譲渡対価は金銭であることが多いでしょう。その意味で、資金が必要となります。他方、会社分割により事業再生を行う場合、分割対価は、新設会社乃至は吸収会社の株式であることが多いので、その意味で、資金を準備する必要はありません。

(3)資産・負債・契約関係の移転方法

  ① 事業譲渡の場合、個々の資産・負債等について移転手続を取る必要があります。この点、会社分割における資産・負債等の移転は、一般承継です。分割計画等に記載した資産や負債が分割効力発生日に新設会社に移転することになるため、特に債務の免責的移転(免責的債務引受)について債権者の個別同意を得る必要がない点はメリットといえます。ただし、債権者保護手続が必要な場合があります。

  ② 逆にいえば、会社分割の場合、特定の事業に関する債務が一般承継されるため簿外債務の承継を回避できない点がデメリットになります。この点、事業譲渡であれば譲渡契約で債務の範囲を特定することができるので、簿外債務・偶発債務の承継を回避できるのは利点です。

  ③ 事業譲渡の場合、改めて事業譲渡後に、譲受会社が許認可を取得し直さなければなりません。他方、会社分割では、分割会社が有する許認可が新設会社に承継されることが多いことはメリットといえます。

(4)従業員の移転

  事業譲渡の場合、従業員の移転(労働契約の承継)については、譲渡会社、譲受会社及び労働者の三者の同意が必要であるため、このうちいずれかの当事者が同意しなければ、労働契約は譲渡会社に残存することになります。他方、会社分割では、労働契約承継法により、承継事業に主として従事していた労働者の労働契約は原則として新設会社に移転することになります。

 

3 私的整理での事業譲渡の有用性/会社分割との比較

(1)私的整理とは、金融機関等のみを対象に、その全員の同意を要件として、リスケ・債務カット等をすることです(私的整理の概要は、https://m2-law.com/blog/1216/ を参照)。私的整理は、秘密裏に行われるため(密行性)、事業価値が棄損される程度は低いです。他方、法的整理と比較して、債務遮断効が弱く、商取引債務・簿外債務はカットの対象外です。また、債務のカットには全金融債権者の同意が必要であることから、金融債務のカット自体も低額しかできないことも多いです。このような点について、事業譲渡がどのように役立つかという視点から、会社分割と比較して、検討してみましょう。

(2)事業譲渡・会社分割のメリット

  ① 事業譲渡は、個々の取引行為として、簿外債務リスクを大幅に軽減できます。この点が一般承継である会社分割との違いです(上記2(3)②)。一般的に債務カットの範囲と程度が少ない私的整理において、この点は一つのメリットといえます。

  ② 事業譲渡を行う場合は、資産・負債等の移転は、個々の手続が必要で一見煩雑ですが、実務上早急に対応すれば短時間で処理できる場合が多いと思われます。一方、会社分割の場合、会社法上の手続が必要で、ある程度の時間を要する点で大きな違いがあります(上記2(1)②)。私的整理の密行性をどのように理解するかによりますが、事業譲渡が短時間で実現可能という点からすれば、密行性に資するといえるでしょう。

  ③ 会社分割は、一般承継なので、資産・負債・契約関係・従業員の移転は、相手方と交渉することなく簡略に実施できます(上記2(3)①)。多数の交渉が不要という意味で、私的整理の密行性には資するといえるでしょう。

 

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事業譲渡②意義・法的性質・手続

2021.06.16

1 意義

(1)判例の立場

   会社法・商法上、事業譲渡に関する定義規定がなく、解釈に委ねられています。

この点、会社法制定前の「営業譲渡」に関するものですが、最大判昭和40年9月22日民集19巻6号1600頁は「①一定の営業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産(得意先関係等の経済的価値のある事実関係を含む。)の全部または重要な一部を譲渡し、②これによって譲渡会社がその財産によって営んでいた営業的活動の全部または重要な一部を譲受人に受け継がせ、③譲渡会社がその譲渡の限度に応じ法律上当然に〔平成17年改正前商法〕25条〔現行商法16条、会社法21条に相当〕に定める競業避止義務を負う結果を伴うものをいう」としています。

そして、この解釈は「営業譲渡」が「事業譲渡」に改められた会社法の下でも生きていると考えられていて、①有機的一体性のある財産、②譲受人による事業の承継、③譲渡人の競業避止義務の3要件を満たす場合が、株主総会決議の必要な事業譲渡にあたると考えられています。

(2)競業避止義務について

言い換えると、最高裁の考え方では上記3要件を充足しない場合、株主総会の特別決議は必要でなく、例えば、要件③競業避止義務を特約によって排除した場合には株主総会決議は不要となります。

しかし、最高裁の立場には異論があり、少なくとも要件③譲渡人の競業避止義務は、不要とするのが学説の多数です。このように事業譲渡の意義に関する見解は流動的ですので、単に要件③を外せば総会決議は不要と短絡的に考えるのは危険です。後に最高裁が学説に従って見解を変え要件③は不要と解すると、結果的にそれは株主総会が必要な事業譲渡であったということになり、総会決議を経ていない以上事業譲渡は無効という結果になりかねないからです。そこで、事業譲渡にあたるか否か即ち総会決議が必要か否かは、慎重に検討すべきように思います。

(3)有機的一体性のある財産

要件①で述べたとおり、事業譲渡とは「一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産」の譲渡であり、単なる事業用財産または権利義務の集合の譲渡はこれにあたりません。

有機的一体性のある財産の譲渡というためには、譲渡会社の製造・販売等に係るノウハウ等の譲受人による承継が必要であり、単に承継動産・不動産等を用いて同種の事業が行われているだけでは足りません(旭川地判平成7年8月31日判時1569号115頁)。

  ちなみに、会社分割の対象は「事業に関して有する権利義務の全部又は一部」とされていて、事業との有機的一体性は求められておらず、その範囲は事業譲渡の場合より広くなります(会社法2条29号、30号)

(4)事業の一部の譲渡とは、たとえば、食品事業とアパレル事業を営んでいる会社が、食品事業だけを譲渡するような場合をいいます(伊藤外「LQ会社法第5版」有斐閣458頁)。  

 

2 法的性質

(1)取引上の行為

事業譲渡は、個々の資産負債や契約上の地位を移転・承継すること(特定承継)を目的とする取引上の行為です。その結果、事業譲渡は、原則として当事者間の合意のみによって行うことができます。この点が、組織再編行為である会社分割では、原則として、株主総会の特別決議が必要とされていることとの違いです。

もっとも、単なる事業譲渡を超えて「事業の全部又は重要な一部を譲渡」する場合には、株主の重大な利害に関わることから株主保護の必要性があり、株主総会の特別決議による承認(会社法467条1項)や反対株主の株式買取請求権(会社法469条1項)が必要になります。

(2)財産の移転や債務の承継

事業譲渡は、個別の資産負債や契約上の地位を移転・承継する取引上の行為という法的性質から、個別資産の譲渡、免責的な債務の移転に関する債権者の承諾、契約上の地位の譲渡に関する相手方の承諾、労働者の移転に関する労働者の同意などについて個々の手続が必要です。この点が、組織再編行為である会社分割では、これらが一般承継として原則不要とされることと違っています(反面、会社分割では、債権者保護手続や労働契約承継法の定めに従わなければなりません。)。

ただ、個別資産の譲渡(会社分割の場合は分割契約に基づく資産承継)の対抗要件具備については、事業譲渡の場合は当然に個々に備える必要がありますが、この点は会社分割も同様です。例えば、個別資産が不動産の場合、別途対抗要件としての登記を具備しなければ第三者(事業譲渡会社・吸収分割会社から、不動産の二重譲渡を受けた者)に対抗することができません。

なお、行政上の許認可については、事業譲渡では原則として許認可の再取得が必要となるため、譲受会社が許認可を取得し直さなければなりません。

 

3 手続

(1)覚書の締結

  会社法467条1項1乃至3号に定める事業譲渡(以下、単に「事業譲渡」といいます。)を行う場合、先ず譲渡会社は譲受会社との間で、事業譲渡の対象となる事業の範囲、事業譲渡の対価、譲渡時期、労働契約の承継の有無等について協議を行います。そして、重要点につき合意に至った場合には、事業譲渡契約の締結前に、覚書を交わすことが多いでしょう。

(2)事業譲渡及び株主総会招集に関する取締役会決議

  ① 重要な財産の処分及び譲受けに該当する可能性

事業譲渡とは、単なる事業用財産・権利義務の集合の譲渡を超えて「一定の事業目的のため組織化され、有機的一体として機能する財産」を譲渡することです。したがって、当該会社にとって当然「重要な財産の処分及び譲受け」(会社法362条4項1号)に該当する場合が多いでしょう。すると、事業譲渡契約を締結する場合、取締役会設置会社ではその承認決議が必要になります。

  ② 株主総会の招集

   譲渡会社・譲受会社は、事業譲渡について、上記事業譲渡契約締結に関する取締役会の承認決議と併せて、株主総会の招集も決めることになるでしょう。  

(3)事業譲渡契約の締結

  譲渡会社・譲受会社は、総会決議が必要な事業譲渡であったとしても、上記取締役会の承認が得られた段階で事業譲渡契約を締結するのが通常です。但し、それは総会決議の承認を条件としたものになります。その際に作成される事業譲渡契約書は、会社法上要求されているものではありませんが、事後の紛争を防止することを目的として作成されます。この点、組織再編行為たる会社分割の場合は、法定事項を定めた組織再編契約や組織再編計画の作成・備置等が求められることが違いです。

(4)株主総会決議

  ① 招集手続

   事業譲渡に関する株主総会を行う場合には、原則として株主総会の2週間(非公開会社においては原則1週間)前までに、株主にその招集通知を発しなければなりません(会社法299条1項)。

  ② 株主総会決議を必要とする場合

   原則として株主総会の特別決議により承認を受けなければならない事業譲渡は、以下の場合です(会社法309条2項11号)。

  ア 事業の全部又は重要な一部の譲渡(会社法467条1項1号、2号)

  イ 他の会社の事業の全部の譲受け(会社法467条1項3号)

   譲渡会社と譲受会社とで違いがあるので、注意してください(事業の重要な一部を譲渡する場合の株主総会決議は、譲渡会社では必要ですが譲受会社では不要です。)

(5)反対株主の株式買取請求権

  事業譲渡をする場合、反対株主は、事業譲渡をする会社に対し、自己の有する株式を公正な価格で買い取ることを請求することができます(会社法469条1項)。事業譲渡が行われた場合、会社の財産状態が大きく変動し、株主の地位に重大な影響を及ぼすことがあるからです。

(6)その他

  事業譲渡の効力は、事業譲渡契約で定められた効力発生日に生じます。株主総会決議の承認が条件とされているのであれば、その日ということになるでしょう。もっとも、事業譲渡は特定承継ですから、譲渡会社の有するその他の資産、負債を引き継ぎ、従業員を雇うのであれば、個々に移転等の手続をとる必要があります。

 

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不動産関連⑤賃貸業と改正民法・借主債務の保証

2021.06.02

 

 

1 借主債務の保証に関連する改正民法の概要は、以下のとおりです。

(1)個人根保証契約

 

 民法第5款 保証債務 第2目 個人根保証契約

 465条の2

  1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負 う。

  2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

  3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

① ここで「個人根保証契約」とありますが、典型例は借主の賃料債務等の保証だとされています。

  ポイントは、2項の極度額を定めなければ効力を生じないとする点と3項です。3項で準用する446条2項、3項は、保証契約は書面等でしなければならないとされています。

  注意が必要なのは、1項が「元本、利息…その他云々について、その全部に係る極度額」とされている点です。例えば「極度額元本100万円」など、元本のみに極度額が定められていても無効となります。

② 一番の問題は「極度額」の上限はいくらかという点です。民法には極度額の上限についての規定はなく、解説書などでも抽象的に高額すぎる場合には、公序良俗に反して無効となる場合があるとしか書いておらず、明確な上限は明らかではありません。

  これと関連して、国交省が「極度額に関する参考資料」という資料を公開しており、国交省のHPからダウンロードできますが、この資料では、関係当事者間の協議にあたって参考としてくださいということが書かれているだけで、明確な基準が示されているわけではなく、家賃債務保証業者が負担した額や貸主が最終的に借主から回収できなかった金額、裁判所の判決で保証人が負担すべきとされた金額などをまとめているだけです。

 

  ただ、その中で参考になるものとして、裁判所の判決において、連帯保証人の負担として確定した金額について、最小値が賃料月額の2か月分、中央値が12か月分、平均が13.2か月分、最高値が33か月分という数字がありますが、この最高値が今後も大丈夫かどうかはよく分かりません。

  もう1つ、参考になるものとして、家賃滞納発生にかかる調査結果があり、そこでは最終明渡しまでの平均的な期間・金額として、

  ア 家賃滞納が3.1か月で合意解約の提案を行い合意解約ができたケース

家賃滞納から4.5か月経過後で明渡し、未回収家賃4.1か月分

イ 明渡しの裁判を行うケース

  家賃滞納から4.0か月経過後で訴え提起、判決確定までが7.3か月

 A 任意退去

   その後任意退去時の未回収家賃が7.2か月分

 B 強制退去

   明渡しまでに家賃滞納から9.1か月経過で、未回収家賃が9.7か月分、強制執行費用の平均が50.7万円というものがあります。

 

 ちなみに、不動産管理業者に対するアンケート調査によれば、家賃5万円と仮定した場合の極度額を、120万円以下とするもの(2年分、29.7%)と60万円以下とするもの(1年分、25.5%)が、多いようです。前者は強制退去までを見据えた数字、後者は保証人の平均的な負担額を参考にした数字といえるでしょう。

 

(2)個人根保証契約の元本確定事由

民法465条の4

1 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
 二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
 三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 

注意すべきは、個人根保証契約については、個人貸金等根保証契約(465条の4-2項)と異なり、借主に対する強制執行や借主の破産の場合は確定しないという点です。そもそも、家賃は居住用建物等を使用するための対価であるところ、その性質上、借主の経済状態が悪化したとしても直ぐに建物等を明渡すことにはならず、借主が破産したような場合にこそ、保証人に保証してもらう場面が生じてくるからとされています。

 

(3)債務の履行状況に関する情報提供義務

 

民法458条の2

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

 

保証人は、必ずしも主債務者の履行状況を知り得る立場にはないので、保証人を保護するために、保証人が負担しなければならない債務について債権者が情報を提供することが求められます。

 

(4)改正附則

 

民法施行附則21条1項は「施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。」としています。

 

 ① そうすると、

  ア 2020年4月1日より前に極度額の定めなく締結された連帯保証契約は有効、

  イ 2020年4月1日以降に極度額の定めなく締結された連帯保証契約は無効となります。

 ② 更新後の保証契約については、

  ア 2020年4月1日以降に賃貸借契約が更新された場合

    → 従前、極度額の定めなく締結された連帯保証契約が継続。

  イ 連帯保証人も更新契約書に署名押印した場合

    → 新たな保証契約と認定されると、極度額の定めがない場合は無効となる可能性がある。

③ 一応、このように整理しておきますが、この更新後の保証契約に関しては、議論のありうるところです。

  上記の見解は、神奈川県弁護士会で平成31年3月12日に法務省の担当者より示された見解であり、「①改正法の施行後である2020年4月1日以降に賃貸借契約が合意更新され、②この更新契約書に連帯保証人が署名押印したことにより新たな保証契約が締結されたと評価される場合には、改正民法が適用され、更新契約では連帯保証人の極度額を定めなければならない。」とされています。

  そうしますと、契約書に基づいて自動更新される場合、更新契約をせずに法定更新された場合は、新たな保証契約がないので、従前の保証が生きてきて、極度額の定めがなくても有効ということになります。そして、新たに連帯保証の契約を締結したり、更新契約に保証人が署名・押印するような場合は、新たな保証契約があるということで新報が適用され、極度額の定めがなければ無効ということになります。

  一方で、法務省の立法担当者が執筆した「一問一答民法(債権関係改正)法務商事」という本では、「契約更新について当事者の黙示の合意を根拠とするもの(例えば民法619条1項)と当事者の意思に基づかないもの(例えば借地借家法26条)に分かれ、前者は新法適用、後者は旧法適用となる。」と書かれております。民法619条1項は「賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用または収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借したものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。」という賃貸借の更新を推定した規定です。この書きぶりからすると、合意更新後の賃貸借契約には、新法が適用されるようにも読めます。ただ、保証契約は合意によって更新されていないということで、保証契約は別だとの考え方もあり得るので、そのような考え方が、前述しました法務省の見解かと思います。

  更新時に、保証人の極度額の定めをするのが一番安心でありますが、法務省の見解を前提とすると、上記のとおりとなります。

 

2 保証関連事項を契約書で定める場合の検討

(1)標準契約書における保証関連事項条項は、頭書部分に連帯保証人の住所・氏名・電話番号、極度額の記載欄があり、以下のとおりになっています。

 

(連帯保証人)

第17条 連帯保証人(以下「丙」という。)は、乙と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。

2 前項の丙の負担は、頭書(6)及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。

3 丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする。

4 丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。

 

(2)1項については、賃貸借契約が更新された後、保証人が更新後の借主の債務についても責任を負うのかについては議論がありましたが、最高裁平成9年11月13日は、特段の事情がない限り、責任を負うとしています。これを契約書上明記しているものです。

   3項については、確定事由を、民法465条の4の1項3号に定める事由(借主又は保証人の死亡)のみとしています。民法の他の確定事由(保証人の財産に対する強制執行、保証人の破産、同条項1、2号)を排除する趣旨であるかは、解釈の余地があると思います。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

事業譲渡①コロナ不況の特徴

2021.06.01

1 令和2年に入って、新型コロナの影響から、日本経済も大打撃を受けています。

2 事業種が偏っているのが特徴で、令和3年5月までの倒産で整理すると、飲食店(250件)、建設・工事業(140件)、ホテル・旅館(89件)、アパレル小売(76件)、食品卸(70件)と続きます(本稿における日付・数字のデータは、TDB『速報「新型コロナウィルス関連倒産」動向調査2021/5/26』によります。)。簡単に分析すると、飲食店は、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置(両者の違いについては、https://m2-law.com/blog/1694/)の直接的な影響を受け、それに伴う外出自粛要請から、ホテル・旅館、アパレル小売も大きな影響を受けています。そこから、取引先へと間接的に広がり、食品卸や中小・零細規模の工務店・電気工事業者が建設・工事業として倒産しています。最近では、テナントビルも苦しみだしているところもあるようです。

しかも、通常の不況であれば、業種内でも強い弱いといった差がありますが、コロナ不況の場合は特定事業種の会社が軒並み影響を受けているのが特徴です。

3 ただ、国が、持続化給付金、納税猶予の特例、政策公庫のコロナ対策貸付・信用保証協会のセーフティーネット、雇用調整助成金といった制度を充実させたことから、倒産件数の増加は、当初それほどではありませんでした(令和2年2月26日の第1号倒産から500件までは195日、1000件までは150日)。

ところが、休業外出自粛要請が続いた結果、資金が尽きていくのか、1000件から1500件(令和3年5月26日)までの日数は110日と発生ペースが加速しだしてきています。最近(本稿アップ時の令和3年6月1日)では、休業要請の担保である休業要請支援金の給付も遅れていることから、更に当該事業種を圧迫させることになっている上、ワクチン接種が進んできとはいえ、まだ先行きは不透明です。

通常の不況であれば、融資不可→商取引サイトの伸長→税金保険料滞納→給与遅滞→倒産へと徐々に向かいますが、コロナ不況の場合は、急激な金融負債の増加→一気に倒産という形が散見されます。

4 以上が、コロナ不況の特徴ですが、要約すると、飲食を始めとする特定事業種の中でも強みはある(業種内での競争力がある)ものの、多額の金融負債を抱え(ただ、税金保険料・給与の遅れは少ない)、先行き不透明な中で、資金が尽きて倒産しようとしている会社が多いことになります。

 これを事業再生という視点から眺めた場合、いわゆる倒産初期症状の段階といえます(但し、金融負債は事業規模に比較し、格段に多いです。この状態が更に進んで税金保険料給与の遅れがでてくると、事業再生の大きな負担になります。例えば、民事再生であれば、これらは一般優先債権とされるので、カットの対象にならないからです。このような場合には、破産・事業譲渡型の手法を採らざるを得ませんが、後述する意味での事業譲渡とでは、その手段を採る目的が違っている点に注意する必要があります。)。従って、相応の資金を有するスポンサーの下で一定期間を乗り越えることさえできれば、事業再生は有望ということになります。

 スポンサー型の再生手法といえば、株式譲渡(当該会社の株式の譲渡、狭義のM&Aといわれるものです。)や第三者割当増資(最近の例としては、旅行大手HIS、ロイヤルホスト等を経営するロイヤルHD、ワタベウェディングなど)がありますが、株式譲渡では金銭の遣り取りは新旧株主間でなされるだけで直ちに当該会社に資金提供はされません。他方で、第三者割当増資では直ちにスポンサーが100%株主となり当該会社の支配権を取得できません(その上、資本金として出資する以上、原則としてその返還を求めることはできず、本来ならスポンサーとしては、流動性の高い貸金としての資金提供を望むことが多いでしょう。)。ましてや、何れの手法も多額の金融負債の問題を解消するものではありません。

そうなると、特に中小企業については、迅速に金融負債と当該事業を切り離しスポンサー会社に当該事業を譲渡した上で、先行きの不透明さをスポンサー資金により補い、当該事業の再生を図るという手法が有望視されているところです(「新型コロナと私的整理・法的整理」事業再生と債権管理172号11頁)。ちなみに、この場合に事業譲渡が注目されるのは、例えば民事再生では、再生債権確定その他で一定程度の日数を必要としますが、再生計画外での事業譲渡も許されるため、迅速性を図って事業価値の棄損を防ぐことができるからです(私的整理における事業譲渡・第二会社方式によれば、より迅速に事業価値の棄損を防げます。)。

ただ、一般的にスポンサーは同業種であることが多いのですが、同事業種一斉不況というコロナ不況の特徴から、スポンサーを見つけるのが大変だという点は意識しておかなければなりません(特に令和2年度は財布の紐が締まり、市場が冷え込んでいるようでした。)。

5 そこで、村上・新村法律事務所としては「事業再生・債務整理サイト」の開設企画の1つとして、次回以降、現在注目を浴びている「事業譲渡による事業再生」に関する連載をしようと思います。ご期待ください。

 

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