2021.01.29
解雇に関する原則
解雇は、客観的合理的理由があり、社会通念上も相当といえる場合でなければ、権利濫用として無効になり、許されません(労働契約法16条)。
令和2年以降、コロナ不況により従業員を抱え続けることが困難な企業が増えており、法人破産を避け事業再生をしていくために不可欠な場合がありますが、単に経営難だけを理由に解雇をしても、無効となる可能性があります。整理解雇の要件は以下のとおりです。
整理解雇の要件
特に、業績悪化の場面で行われるリストラ(整理解雇)については、判例上、以下の4つの要素をどれだけ備えているかによって、解雇の効力が判断されます。
① 人員削減の必要性
② 解雇回避努力
③ 人選の合理性
④ 手続きの相当性
業績悪化は、あくまで①の事情にすぎず、他の要素が欠けていれば、解雇は無効となる可能性が高いです。そこで、整理解雇を行う場合、上述した4つの要素を満たすべく、事前から検討・準備・対応することが求められます。
②については、企業規模や業種、人員構成、生産形態等により回避努力義務の内容は異なりますが、使用者は整理解雇前に遊休資産の売却、経費の削減などの経営努力を行うとともに、雇用確保の手段として下請に発注していたものを自社で生産する、残業規制、賃金カット、新規採用の中止、一時帰休、配転・出向、退職勧奨、希望退職募集などの実施、あるいはこれらの解雇回避手段の採否につき真摯な検討を求められています。特に、将来の減収に備えるためといった経営戦略的な整理解雇の場合には、使用者に対してより一層厳格な解雇回避努力義務を課すべきであるとした事例(社会福祉法人仁風会館事件:福岡地判平成19年2月28日)もあります(新労働事件実務マニュアル第4版参照)。前述したコロナ禍に関連するなら、急激な大幅売上減により企業が努力できる範囲・時間に限界はあるものの、雇用調整助成金もより容易・迅速に受けられるようになっていますから、その申請をするといった努力をしたかどうかも②の判断に影響することがあり、その旨を指摘する裁判例もでました。
弁護士顧問契約の必要性
整理解雇の準備にどのような方法を採るか、どの程度するかといった判断は、過去の裁判例等に照らして検討する必要があります。したがって、実務の相場を熟知した専門家である弁護士による協力が不可欠です。また、整理解雇に至るまでの準備は前述のとおり様々であり、状況に応じて、一定期間継続して行う必要があります。弁護士とは、日頃から協同できるように顧問契約を結んでおかれるとよいでしょう。会社の内容、状態を熟知した顧問弁護士なら、的確なアドバイスをしてくれます。
経営者としては、可能な限り解雇は避けたいと思いますが、全体的・長期的な視野からすれば、法人破産を避け、事業再生をしていくために不可欠な整理解雇もあります。
当事務所との顧問契約は、整理解雇のような労働問題に限らず、様々な分野に対応しております。顧問弁護士に関心があれば、当事務所までご連絡ください。
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