2022.02.28
相隣関係とは、隣接する不動産所有権等の相互の権利関係を意味します。相隣関係については、民法制定以来実質的な見直しがされてこなかったところ、所有者不明土地問題が生じている近年の社会情勢に合わせて見直しがされました(令和5年4月1日施行)。
第1 隣地使用権
隣地使用権に関する新民法の規定は、以下のとおりですが、重要点について解説します。
第二百九条
1 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
1 要件
(1)目的
旧民法209条で認められていたのは「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため」でしたが、以下の場合が追加されました。
・「工作物の…収去」(新民法209条1項1号)
・「境界標の調査又は境界に関する測量」(2号)
・「233条3項の規定による枝の切取り」(3号)
(2)使用方法
旧民法209条で認められていたのは「必要な範囲内」での使用でしたが、その内容を明確にするため「使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者…のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」とされました。
2 内容
(1)承諾請求権から使用権へ
旧民法209条では「隣地の使用を請求することができる」とされていましたが、新民法209条では「隣地を使用することができる」と改められ、承諾請求権構成から使用権構成に変わりました。ただし、隣地を使用する権利があると構成したとしても、その実現方法をどのように考えるのかは別の問題です。
例えば、部会資料52・2頁では「一般的に、権利がある場合であっても、自力救済は原則として禁止されているが、ここで問題になっている隣地の使用の場面に即していえば、当該隣地を実際に使用している者がいる場合に、その者の同意なく、これを使用することは、その者の平穏な使用を害するため、違法な自力救済に該当することになるのではないかと思われる。例えば、土地の所有者が、住居として現に使用されている隣地について、隣地使用権を有しているからといって、隣地使用者の同意なく門扉を開けたり、塀を乗り越えたりして隣地に入っていくことまではできないと思われる。」とされています(ただ、後述する設備設置権に関してですが、それが使用者が存在しない所有者不明土地の場合にどうなるのかについては、議論があるようです「新しい土地所有法制の解説」有斐閣82頁)
また、同じく部会資料52・2頁では「隣地使用者が通知を受けても回答をしない場合には、黙示の同意をしたと認められる事情がない限り、隣地使用について同意しなかったものと推認され、土地の所有者としては、隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになると考えられる。」とされています。
以上から、承諾を得られないときは、原則として裁判手続をとる必要があることに変わりはなく、実務上の取扱いが大きく異なることにはならないといえます。
(2)手続
隣地使用者及び所有者の利益も保護する必要から、隣地使用の目的、日時、場所、方法を「隣地使用者と隣地所有者の両方」に通知する必要があります(新民法209条3項本文)。ただし、「あらかじめ通知することが困難なとき」は遅滞なく事後通知することで足ります(同項ただし書)。
3 住家の立入り
住家の立入りについては、従前から、判決をもって隣人の承諾に代えることはできないとされていましたが、改正後もその考えが維持されています(新209条1項ただし書)。したがって、必ず任意の承諾を得なければなりません。ただし、同条がプライバシーの保護を目的とすることから、プライバシーの保護を要しない部分(屋根、屋上、外部の非常階段等)、現に居住する者がいない場合は、上記でいうところの「任意の承諾」を得る必要はありません(判決で代替することが可能、東地判平11年1月28日参照)。
第2 設備設置権・設備使用権
これまで民法では、公の水流又は下水道に至るまでの排水としての低地への通水(民法220条)、通水用工作物の使用(民法221条)を定めるにとどまり、各種ライフラインの設備に関する規定は不十分であったことから、新たに条文が新設されました(新民法213条の2、3)。
その規定は、以下のとおりです(令和5年4月1日施行。それ以前の設備設置行為の適法性は旧民法時の判例法理に基づき判断されますが、設置場所の変更については新民法が適用されます。)。隣地使用権と内容が似ているので、特に異なる点を太文字・大文字・イタリックで示し、必要点のみ解説をします。
第二百十三条の二
1 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
第二百十三条の三
1 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
1 継続的給付として、例示されているのは電気、ガス、水道水の供給ですが「その他これらに類する」ものとして、下水道、電話等が含まれます。なお、設備設置権等は、土地の所有者に認められているもので、供給事業者対象ではありません(部会資料56・4頁)。なお、新法制定前の裁判例としては、平成31年3月19日東京地判が、給排水管とガス管について、民法220条(排水のための低地の通水)、221条(通水用工作物の使用)、下水道法11条(排水設備の設置等)を類推して、相手方の承諾を認めたものが参考になります。
2 自力救済が基本的に不可能であることや通知が必要であることは隣地使用権と同様です。ただし、設備設置権等では必ず事前通知が必要ですので(新民法209条3項参照)、通知の相手方が所在等不明の場合は、公示による意思表示等をすることになります。
第3 隣地の竹林の切除
旧民法では、隣地の竹木の境界線を越えたものが「根」である場合は、土地所有者が切り取ることができましたが「枝」である場合は、切り取りを隣地所有者に請求できるだけでした。「枝」に関するルールは、新民法233条1項でも原則的なものとして残っていますが、同3項ではそれが修正されました(以下、修正ルールといいます)。
第二百三十三条
1 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
1 修正ルール(新民法233条3項)
隣地の竹木の枝(境界線を越える部分)を自ら切除できる場合とされたのは3つです。
①「切除するよう催告したにもかかわらず…相当の期間内に切除しないとき」(1号):2週間が目安
②「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」(2号)
③「急迫の事情があるとき」(3号)
2 竹木が共有物の場合(新233条2項)
(1)枝の切除は1項によって各共有者に対して求めることができ、当該共有者はそれに応じることができます。
(2)急迫の事情があるときは1項3号を根拠に認容判決を経ずに切除できますが、3号を根拠にできない場合は、竹木共有者全員について1号または2号の事情がなければ認容判決を経ずに切除することはできません。
もっとも、多数の者に対し催告して自ら切除するのではなく、竹林の共有者の一人について認容判決を得て強制執行により枝の切除を実行するという方法もあります。
3 費用負担についての明文化は見送られました。個別の事案ごとに、当事者間で協議や調整を行う必要があります。
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投稿者:
2022.02.14
1 はじめに
今回は、所有者不明土地の解消に向けた法改正のうち、相続に関する改正を解説します。今回解説するのは、①遺産分割に関する改正、②相続財産等の管理及び清算に関する改正です。相続に関係する改正としては、相続登記の義務化もありますが、こちらは不動産登記法の見直しについて紹介する記事で扱うことにし、今回は上記①及び②の改正について解説することとします。
なお、今回解説する改正の施行日は、令和5年4月1日です(民法の一部を改正する法律の施行日を定める政令〔令和3年12月14日閣議決定〕)。
2 遺産分割に関する改正
(1)具体的相続分による遺産分割期間の制限
遺産分割期間の制限遺産分割に関する改正内容はいくつかありますが、そのなかでも重要なのは、具体的相続分による遺産分割期間の制限です。
ア 改正内容
今回の改正まで、遺産分割についての期間制限はありませんでした。しかし、今回の改正により、具体的相続分による遺産分割は、原則として、相続の開始時から10年間の間にしなければならないと規定されました。具体的相続分とは、生前贈与等の特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)を考慮して決まる相続分のことをいいます。
具体的相続分による遺産分割ができないと、例えば、被相続人から生前贈与等を「受けていない」相続人の取り分が具体的相続分による場合に比べて減ってしまうことになります。
それでは、実際にどのような条文になったのかを確認してみましょう。
新民法904条の3柱書本文では、「前三条の規定(注:特別受益や寄与分について規定)は、相続開始のときから10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。」と規定されています。相続開始時から10年経過後にする遺産分割では、原則として、特別受益や寄与分を考慮されないこととなるのです。
ここで、「原則として」と書いたのは、同じく、新民法904条の3で例外規定が定められているからです。
同条ただし書では「ただし、次の各号のいずれかに該当するときには、この限りではない。」されています。そして、「次の各号」である同条1号及び2号では、例外事由として、①「相続開始のときから10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(1号)及び②「相続開始のときから始まる10年間の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(2号)が規定されています。
相続開始時から、10年経過後でも、①や②に該当する事情があれば、具体的相続分による遺産分割が可能です。
なお、上記の例外に加え、10年の経過後でも、相続人の間で具体的相続分によって遺産分割をするとの合意がされた場合は、その合意に基づく分割が可能と考えられています。
具体的相続分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/926)、特別受益(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/954)、寄与分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/964)に関心ある方は、別途村上新村法律事務所のブログを参照ください。
イ 改正理由
それでは、なぜこのような具体的相続分による遺産分割期間の制限を設ける改正がされたのでしょうか。それは、所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化のためと考えられます。
本ブログの所有者不明土地関係法に関する総論の記事で、今回の改正は、所有者不明土地問題に対処するものであると解説しました。そこで解説した通り、所有者不明土地問題の解決には、発生予防の視点と利用の円滑化の視点が必要です。では、遺産分割の期間を制限することがどのように所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化につながるのでしょうか。
まず、所有者不明土地の発生原因として、「相続登記がされないこと」が挙げられます。相続登記がされないことに対処するため、今回の改正で相続登記の義務化もされたのですが(相続登記の義務化については別記事で解説します)、相続登記のためには遺産分割が円滑に進むことが重要です。
ここで、具体的相続分による遺産分割ができない場合について考えると、この場合、生前贈与等を受けていなかった相続人は、具体的相続分による遺産分割と比べて、遺産分割において不利益に扱われます。そのため、具体的相続分による遺産分割を主張したい相続人には、期間内に遺産分割を行うインセンティブがあると考えることもできます。その結果として、遺産分割が促進されると考えられます。
このように、具体的相続分による遺産分割の期間制限を設けることは、間接的に遺産分割を促進するといえるのです。すなわち、遺産分割の促進→相続登記の促進(義務化)→所有者不明土地の発生予防という関係にあるのです。
そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、所有者不明土地の発生予防につながるのです。
また、既に存在する遺産分割長期未了状態の土地については、法定相続分による画一的で簡明な遺産分割がされれば、遺産分割未了状態の解消が促進されます。
そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、すでに存在する遺産分割長期未了状態の土地との関係では、遺産分割未了状態を解消し、その利用円滑化につながると考えられます。
ウ 経過措置について
このような上記改正の施行日については、前述のとおり令和5年4月1日からですが、遺産分割の期間制限については、経過措置に注意が必要です。
施行日は令和5年4月1日からなのですが、同日より前に発生した相続についても、本改正は適用されます(改正法付則3条第1文)。
もっとも、施行日から5年以内にこの10年の期間制限が経過してしまう場合には、施行日から5年を経過する時まで、家庭裁判所に遺産分割の請求(新民法904条の3第1号)をすることができます(改正付則3条第2文)。新民法904条の3第2号についても、同様の経過措置が定められています(改正付則第3条第2文)。
(2)その他の改正等
遺産分割に関するその他の改正としては、遺産分割の調停又は審判の申立ての取下げに関する制限、遺産分割禁止に関する規定の整備などが行われました。
3 相続財産管理及び相続財産の清算に関する改正等
(1)相続財産の管理及び清算に関する改正
今回の改正前にも、相続財産の管理に関する制度として、相続財産管理人がありました。改正前の相続財産管理では、相続財産の清算を目的とした相続財産管理制度(改正前民法951条以下)と保存のための相続財産管理制度(改正前民法918条2項、926条2項、936条3項、940条1項)の目的を異にする制度が同じ名称の「相続財産管理制度」として規定されていました。
ア 相続財産清算人
そこで、今回の改正では、改正前の清算のための相続財産管理制度において相続財産管理人とされていたものについて、その名称を相続財産清算人と変更し、生産手続の合理化を図るなどの改正が行われました。
具体的には、改正前は権利関係の確定に最低10カ月かかっていたところ、その期間を6カ月程度に短縮する等の改正がされています。
イ 相続財産管理
相財産管理制度については、相続人不分明の場合や熟慮期間経過後遺産分割前の暫定的共有状態の場合にも利用できる等の改正がされました。これにより、所有者不明土地の管理についても、同制度の利用が一つの選択肢となりました。
また、相続財産管制度が準用する不在者管理に関する規定についても、管理すべき財産の全部が供託されたことが管理人選任処分の取消事由に当たると規定され、その終了事由が明確化される等の改正がされました(家事新146条の2第1項、147条)。
(2)相続放棄をした者による管理についての改正
改正前民法940条1項では、「相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産管理を継続しなければならない。」と規定されていました。
改正前民法では、放棄した者でも「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって管理することが要請されていることはわかりますが、被相続人と同居していない場合などの場合であっても、このような義務を負うかが明確ではありませんでした。
改正後民法940条では、「相続を放棄したものは、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならい。」と規定されました。
この改正により、相続放棄をした者による管理の範囲等が明確化されました。
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投稿者:
2022.02.03
1 はじめに
令和3年4月21日、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しに関する法改正等が行われました(「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号))。
この法改正により、どのような変化が生じるのでしょうか。これから、このブログでは何回かに分けて上記の法改正等につき解説します。
なお、今回の法改正等は、令和5年4月から段階的に施行されます(「民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」「相続等により取得した土地所有権の国庫へ
の帰属に関する法律の施行期日を定める政令」(令和3年12月14日閣議決定))。
2 所有者不明土地とは?
所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地又は②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地をいいます。
平成29年の国土交通省の調査によると、所有者不明土地に割合は、実に22%にも上るそうです。22%という数字だけ見てもその大きさがなんとなく分かるかと思いますが、九州本島に匹敵する面積といわれると、より直感的にその広さが分かるかと思います。
3 法改正の理由
このような所有者不明土地問題を解消するために今回の法改正等がされました。しかし、そもそも土地の所有者が不明だとどのような問題があるのでしょうか。
復興事業や民間取引で土地が必要となっても、所有者が不明だと円滑な事業や取引の妨げとなります。さらに、所有者不明土地は適切な管理が行われていないまま放置されることが多く、所有者不明土地と隣の土地に対する悪影響を与えるといった問題があります。このように、所有者不明土地には、その土地自体が活用できないことによる悪影響だけでなく、隣地に対する悪影響(隣の土地が管理されず、草木が生い茂っている様子などを想像してみて下さい。)など様々な問題があるのです。
もっとも、所有者不明土地といっても、相応の費用を掛けて住民票や戸籍等で調査を行えば、所有者が判明することが多いです。しかしながら、例えば複数回の相続が繰り返されたことにより所有者不明土地が生じている場合には、土地の共有者が数十人以上になることもあり、所有者(共有者)の探索には多大な時間と費用が必要になります。
事業や取引の内容によっては、それだけのコストを掛けることが割に合わない場合もあり得ます。
そこで、所有者不明土地問題を解消するために、今回の法改正等が行われることになりました。
4 法改正等の概要
今回の法改正等の内容としては、①遺産分割に関する新たなルールの導入、②相続登記・住所等の変更登記の申請の義務化、③相続登記・住所等の変更登記手続きの簡素化・合理化、④土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設、⑤土地・建物に特化した管理制度の創設、⑥共有地利用の円滑化などの共有制度の見直し及び⑦相隣関係の見直しなどがあります。
これらの改正は、一見しただけでは所有者不明土地問題の解消にどのように関係するか分かりづらいと思います。
詳しくは各改正に関する記事で紹介しますが、上記の各改正内容は、所有者不明土地の発生を防止するための仕組みや所有者不明土地の利用の円滑化に関する仕組みを定めるものが多くなっています。
すなわち、所有者不明土地問題の解決には、大きく分けると、第1に所有者不明土地の増加をどのように防止するか(発生予防の視点)と第2に現に存在する所有者不明土地をどのように活用するか(土地利用の円滑化の視点)の2つの視点からのアプローチが必要ですので、これらの視点から規定を整備したのです。
例えば上記②の相続登記の義務化についてみると、改正前は相続登記が義務でなかったことが所有者不明土地増大の一因となっていたため、改正により相続登記を義務付け、相続による権利関係の変動を正確に登記簿に反映させる(発生予防の視点)といった具合です。
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