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2021.05.27

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

不動産関連④賃貸業と改正民法・敷金

2021.05.18

 

 

1 敷金関連の改正民法の概要は、以下のとおりです。

 

  民法622条の2

 1 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。

一 賃貸借が終了し、かつ賃貸物の返還を受けたとき。

二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。

2 賃貸人は、賃借人が賃貸借契約に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。

 (1)改正前民法では、敷金の定義や敷金に関する基本的な規定がありませんでした。ただ、敷金に関し形成されていた判例法理や従来の一般的な理解があったので、これを明文化した規定となります。

 (2)敷金の定義(1項括弧書)

 ここで「いかなる名目によるかを問わず」というのは、実質が賃借人の金銭債務を担保する目的であれば、この法律による「敷金」ということになるということで、例えば、関西でよく使われる「保証金」という名目でも内容としては敷金になるという意味です。逆に、「礼金」「権利金」「建設協力金」など、債務の担保として交付されるものではない金銭は、敷金とはなりません。

 (3)敷金返還債務の発生時期(622条の2第1項)

    敷金の発生時期は、賃貸借が終了し「かつ」賃貸物の返還を受けたとき等とされています。これらの返還時期についても、判例法理や従来の一般的な理解を明文化したものですが、①についていうと、賃貸借が終了しても、明渡しが完了するまでは、敷金返還債務が発生しないということ、また、明渡債務と敷金返還債務とは同時履行の関係にならないということが明らかにされました。

 (4)敷金による優先弁済(当然控除)(622条の2第1項)

    賃貸人は「敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額」を返還する義務を負うとされています。これは、別段「相殺の意思表示を要せず」他の債権者に優先して賃借人に対する債権の弁済を受けることができるということです。

 (5)敷金返還債務の発生前における敷金の効力(622条の2第2項)

   622条の2第2項は、1項により賃借人に敷金返還債務が具体的に発生する前の段階における敷金の効力の規定です。それゆえ、その段階で敷金について、賃貸人が期待できること(賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てること)と賃借人が期待できないこと(賃借人が敷金をその債務の弁済に充てること)を示しています。

 

2 敷金関連事項を契約書で定める場合の検討

(1)標準契約書における敷金関連事項条項は、以下のとおりです。

 

(敷金)

第6条 乙は、本契約から生じる債務の担保として、頭書(3)に記載する敷金を甲に交付するものとする。

2 甲は、乙が本契約から生じる債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、乙は、本物件を明け渡すまでの間、敷金をもって当該債務の弁済に充てることを請求することができない。

3 甲は、本物件の明渡しがあったときは、遅滞なく、敷金の全額を乙に返還しなければならない。ただし、本物件の明渡し時に、賃料の滞納、第15条に規定する原状回復に要する費用の未払いその他の本契約から生じる乙の債務の不履行が存在する場合には、甲は、当該債務の額を敷金から差し引いた額を返還するものとする。

4 前項ただし書の場合には、甲は、敷金から差し引く債務の額の内訳を乙に明示しなければならない。

 

 

 ア 契約条項第6条1項、2項

    この規定は、前述した改正民法の内容に文言を合わせてあります。具体的な敷金の金額については、頭書(3)に記載しておくということになります。

    滞納賃料・原状回復費用以外に「本契約から生じる債務」とは、契約期間中の修繕条項に基づく債務(修繕ブログ参照https://m2-law.com/blog/1644/。標準契約書9条)や借主の債務不履行に基づく損害賠償債務を意味します。

  イ 第6条3項、4項)

   4項は、改正民法と同じく、特段の意思表示なく、当然に賃借人の金銭債務を差し引くということが規定されております。5項は、特に民法の規定があるわけではないのですが、敷金の返還額をめぐるトラブルを防止するために内訳を明示するようにすると規定されています。

(2)敷引特約

   ちなみに、上記下線部と異なり、一定額を控除し残額を返還するという敷引特約を交わしていた場合に、これが消費者契約法10条に違反しないかが問題になります。

この点、最1小判平成23年3月24日民集65巻2号903頁(以下、平成23年判決といいます。)は「消費者契約である居住用建物の賃貸借契約に付された敷引特約は、当該建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額、賃料の額、礼金等他の一時金の授受の有無及びその額等に照らし、敷引金の額が高額に過ぎると評価すべきものである場合には、当該賃料が近傍同種の建物の賃料相場に比して大幅に低額であるなど特段の事情のない限り、信義則に反して消費者である賃借人の利益を一方的に害するものであって、消費者契約法10条により無効となると解するのが相当である。」と一般論を述べました。

ただ、平成23年判決の敷引特約は「契約締結から明渡しまでの経過年数に応じて18万円ないし34万円を本件保証金から控除するというものであって、本件敷引金の額が、契約の経過年数や本件建物の場所、専有面積等に照らし、本件建物に生ずる通常損耗等の補修費用として通常想定される額を大きく超えるものとまではいえない。また、本件契約における賃料は月額9万6000円であって、本件敷引金の額は、上記経過年数に応じて上記金額の2倍弱ないし3.5倍強にとどまっていることに加えて、上告人は、本件契約が更新される場合に1か月分の賃料相当額の更新料の支払義務を負うほかには、礼金等他の一時金を支払う義務を負っていない。そうすると、本件敷引金の額が高額に過ぎると評価することはできず、本件特約が消費者契約法10条により無効であるということはできない。」としました。

 

上記判例を参考にすると、賃貸人としては、通常損耗・経年変化について、原状回復義務の範疇で拡張するよりも敷引の範疇で対応する方が幾分容易に思えるところがあります(原状回復ブログ参照、https://m2-law.com/blog/1798/)。その理由は何処にあるのかを詰めて考え、またそれはどこまで許されるのか検討することが、原状回復関連で述べたところと同様、弁護士の力量が試される場面と思われます。

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不動産関連③賃貸業と改正民法・原状回復

2021.05.10

 

 

1 原状回復関連の改正民法の概要は、以下のとおりです。

 

  民法621条

   賃借人は、賃貸物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃貸物の損耗並びに賃貸物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

 

(1)賃借人は、期間満了後、賃貸物の返還義務を負い(616条、597条1項)その内容として原状回復義務を負うとされています(598条は、賃借人からみた収去「権」と位置付けます。)。

(2)ただ、その際の通常損耗や経年変化の取り扱いが明確ではありませんでした。判例上は、通常損耗や経年変化について、賃借人は原状回復義務を負わないとされ、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」でも同様の考え方がとられていました。改正民法では、これらを明文化しました。

 

2 原状回復関連事項を契約書で定める場合の検討

 

(1)標準契約書における原状回復関連事項は、以下のとおりです。

 

(明渡し時の原状回復)

第15条 乙は、通常の使用に伴い生じた本物件の損耗及び本物件の経年変化を除き、本物件を原状回復しなければならない。ただし、乙の責めに帰することができない事由により生じたものについては、原状回復を要しない。

2 甲及び乙は、本物件の明渡し時において、契約時に特約を定めた場合は当該特約を含め、別表第5の規定に基づき乙が行う原状回復の内容及び方法について協議するものとする。

 

そして、上記別表には、原則的な「原状回復条件」が定められた上で「例外としての特約」を記載することができるよう空欄が設けられています。

 

 1項は、改正民法の規定に従った原則的な取扱いを示します。ちなみに、別表で貸主の負担されている主なものは、以下のとおりです。一般的に、通常損耗とされているものを水色経年変化とされているものを紫色で示します

① 床

   畳の表替え等(次の入居者確保のためのもの)

   フローリングのワックスがけ

   家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡

   畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥により発生)

② 壁・天井

   テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気やけ)

   壁等の画鋲、ピン等の穴

   エアコン設置による壁のビス穴、跡

   クロスの変色(日照などによるもの)

③ 建具等、ふすま、柱等

    網戸の張替え(次の入居者確保のため)

    網入りガラスの亀裂(構造による自然発生)

④ その他

    専門業者による全体のハウスクリーニング(借主が通常清掃を実施)

    エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭い付着なし)

    消毒(台所・トイレ)

    浴槽、風呂釜等の取替え(次の入居者確保のため)の

    鍵の取替え(鍵紛失等のない場合)

    設備機器の故障、使用不能(機械の寿命) 

 

(2)民法621条は任意規定であり、特約による変更は可能ですが、公序良俗や消費者契約法等に違反しないこと必要であることは、修繕等や一部滅失等による賃料減額のところで、述べたとおりです。そして、例えば、標準契約書において「例外としての特約」を交わす場合の注意点は、以下の点です。

 

  ア 明確な合意

最2小判平成17年12月16日判タ1200号127頁(以下、平成17年判決といいます。)は「賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物件を原状に回復して賃貸人に返還する義務があるところ、賃貸借契約は、賃借人による賃借物件の使用とその対価としての賃料の支払を内容とするものであり、賃借物件の損耗の発生は、賃貸借という契約の本質上当然に予定されているものである。」とした上で、建物の賃借人に通常損耗についての原状回復義務を負わせるには「少なくとも、賃借人が補修費用を負担することとなる通常損耗の範囲が賃貸借契約書の条項自体に具体的に明記されているか、仮に賃貸借契約書では明らかでない場合には、賃貸人が口頭により説明し、賃借人がその旨を明確に認識し、それを合意の内容としたものと認められるなど、その旨の特約(通常損耗補修特約)が明確に合意されていることが必要であると解するのが相当である」と判断しました。

平成17年判決の事案は「賃借人が住宅を明け渡すときは…負担区分表に基づき修補費用を賃借人の指示により負担しなければならない」という特約があった場合において、入居説明会が開催「すまいのしおり」も配布され、1時間半かけて契約条項の重要部分の説明等がされて、負担区分表の説明がされましたが、このような場合でも、原状回復費用に関する明確な合意がないと判断されました。

なお、平成17年判決の当事者は、賃貸人大阪府供給公社、賃借人一般人でしたが、消費者契約法施行の前の事案であったことに注意する必要があります。

 

 イ 消費者契約法10条

次に、特約が、消費者契約法に違反しないということが必要になります。消費者契約法第10条は、消費者に不利な特約で、その程度が信義誠実原則に反する程度のものについては無効とすると規定しています。例えば、大阪高裁平成16年12月17日判決判時1921号61頁は、住宅の賃借人に通常損耗の原状回復費用を負担させる特約を消費者契約法10条に該当して無効であると判断しています。

参考になるものとしては、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン再改訂版」が示す、特約が有効と認められるための要件です。

 ① 特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること

 ② 賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること

 ③ 賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること

 

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