不動産

不動産関連⑤賃貸業と改正民法・借主債務の保証

2021.06.02

 

 

1 借主債務の保証に関連する改正民法の概要は、以下のとおりです。

(1)個人根保証契約

 

 民法第5款 保証債務 第2目 個人根保証契約

 465条の2

  1 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負 う。

  2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。

  3 第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保証契約における第1項に規定する極度額の定めについて準用する。

 

① ここで「個人根保証契約」とありますが、典型例は借主の賃料債務等の保証だとされています。

  ポイントは、2項の極度額を定めなければ効力を生じないとする点と3項です。3項で準用する446条2項、3項は、保証契約は書面等でしなければならないとされています。

  注意が必要なのは、1項が「元本、利息…その他云々について、その全部に係る極度額」とされている点です。例えば「極度額元本100万円」など、元本のみに極度額が定められていても無効となります。

② 一番の問題は「極度額」の上限はいくらかという点です。民法には極度額の上限についての規定はなく、解説書などでも抽象的に高額すぎる場合には、公序良俗に反して無効となる場合があるとしか書いておらず、明確な上限は明らかではありません。

  これと関連して、国交省が「極度額に関する参考資料」という資料を公開しており、国交省のHPからダウンロードできますが、この資料では、関係当事者間の協議にあたって参考としてくださいということが書かれているだけで、明確な基準が示されているわけではなく、家賃債務保証業者が負担した額や貸主が最終的に借主から回収できなかった金額、裁判所の判決で保証人が負担すべきとされた金額などをまとめているだけです。

 

  ただ、その中で参考になるものとして、裁判所の判決において、連帯保証人の負担として確定した金額について、最小値が賃料月額の2か月分、中央値が12か月分、平均が13.2か月分、最高値が33か月分という数字がありますが、この最高値が今後も大丈夫かどうかはよく分かりません。

  もう1つ、参考になるものとして、家賃滞納発生にかかる調査結果があり、そこでは最終明渡しまでの平均的な期間・金額として、

  ア 家賃滞納が3.1か月で合意解約の提案を行い合意解約ができたケース

家賃滞納から4.5か月経過後で明渡し、未回収家賃4.1か月分

イ 明渡しの裁判を行うケース

  家賃滞納から4.0か月経過後で訴え提起、判決確定までが7.3か月

 A 任意退去

   その後任意退去時の未回収家賃が7.2か月分

 B 強制退去

   明渡しまでに家賃滞納から9.1か月経過で、未回収家賃が9.7か月分、強制執行費用の平均が50.7万円というものがあります。

 

 ちなみに、不動産管理業者に対するアンケート調査によれば、家賃5万円と仮定した場合の極度額を、120万円以下とするもの(2年分、29.7%)と60万円以下とするもの(1年分、25.5%)が、多いようです。前者は強制退去までを見据えた数字、後者は保証人の平均的な負担額を参考にした数字といえるでしょう。

 

(2)個人根保証契約の元本確定事由

民法465条の4

1 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
 二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
 三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。

2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。

一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。

二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。

 

注意すべきは、個人根保証契約については、個人貸金等根保証契約(465条の4-2項)と異なり、借主に対する強制執行や借主の破産の場合は確定しないという点です。そもそも、家賃は居住用建物等を使用するための対価であるところ、その性質上、借主の経済状態が悪化したとしても直ぐに建物等を明渡すことにはならず、借主が破産したような場合にこそ、保証人に保証してもらう場面が生じてくるからとされています。

 

(3)債務の履行状況に関する情報提供義務

 

民法458条の2

保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

 

保証人は、必ずしも主債務者の履行状況を知り得る立場にはないので、保証人を保護するために、保証人が負担しなければならない債務について債権者が情報を提供することが求められます。

 

(4)改正附則

 

民法施行附則21条1項は「施行日前に締結された保証契約に係る保証債務については、なお従前の例による。」としています。

 

 ① そうすると、

  ア 2020年4月1日より前に極度額の定めなく締結された連帯保証契約は有効、

  イ 2020年4月1日以降に極度額の定めなく締結された連帯保証契約は無効となります。

 ② 更新後の保証契約については、

  ア 2020年4月1日以降に賃貸借契約が更新された場合

    → 従前、極度額の定めなく締結された連帯保証契約が継続。

  イ 連帯保証人も更新契約書に署名押印した場合

    → 新たな保証契約と認定されると、極度額の定めがない場合は無効となる可能性がある。

③ 一応、このように整理しておきますが、この更新後の保証契約に関しては、議論のありうるところです。

  上記の見解は、神奈川県弁護士会で平成31年3月12日に法務省の担当者より示された見解であり、「①改正法の施行後である2020年4月1日以降に賃貸借契約が合意更新され、②この更新契約書に連帯保証人が署名押印したことにより新たな保証契約が締結されたと評価される場合には、改正民法が適用され、更新契約では連帯保証人の極度額を定めなければならない。」とされています。

  そうしますと、契約書に基づいて自動更新される場合、更新契約をせずに法定更新された場合は、新たな保証契約がないので、従前の保証が生きてきて、極度額の定めがなくても有効ということになります。そして、新たに連帯保証の契約を締結したり、更新契約に保証人が署名・押印するような場合は、新たな保証契約があるということで新報が適用され、極度額の定めがなければ無効ということになります。

  一方で、法務省の立法担当者が執筆した「一問一答民法(債権関係改正)法務商事」という本では、「契約更新について当事者の黙示の合意を根拠とするもの(例えば民法619条1項)と当事者の意思に基づかないもの(例えば借地借家法26条)に分かれ、前者は新法適用、後者は旧法適用となる。」と書かれております。民法619条1項は「賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用または収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借したものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。」という賃貸借の更新を推定した規定です。この書きぶりからすると、合意更新後の賃貸借契約には、新法が適用されるようにも読めます。ただ、保証契約は合意によって更新されていないということで、保証契約は別だとの考え方もあり得るので、そのような考え方が、前述しました法務省の見解かと思います。

  更新時に、保証人の極度額の定めをするのが一番安心でありますが、法務省の見解を前提とすると、上記のとおりとなります。

 

2 保証関連事項を契約書で定める場合の検討

(1)標準契約書における保証関連事項条項は、頭書部分に連帯保証人の住所・氏名・電話番号、極度額の記載欄があり、以下のとおりになっています。

 

(連帯保証人)

第17条 連帯保証人(以下「丙」という。)は、乙と連帯して、本契約から生じる乙の債務を負担するものとする。本契約が更新された場合においても、同様とする。

2 前項の丙の負担は、頭書(6)及び記名押印欄に記載する極度額を限度とする。

3 丙が負担する債務の元本は、乙又は丙が死亡したときに、確定するものとする。

4 丙の請求があったときは、甲は、丙に対し、遅滞なく、賃料及び共益費等の支払状況や滞納金の額、損害賠償の額等、乙の全ての債務の額等に関する情報を提供しなければならない。

 

(2)1項については、賃貸借契約が更新された後、保証人が更新後の借主の債務についても責任を負うのかについては議論がありましたが、最高裁平成9年11月13日は、特段の事情がない限り、責任を負うとしています。これを契約書上明記しているものです。

   3項については、確定事由を、民法465条の4の1項3号に定める事由(借主又は保証人の死亡)のみとしています。民法の他の確定事由(保証人の財産に対する強制執行、保証人の破産、同条項1、2号)を排除する趣旨であるかは、解釈の余地があると思います。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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