不動産

賃貸住宅管理業法③不当勧誘規制

2021.10.18

 

1 管理業法29条

次のとおり特定転貸事業者等による不当勧誘などが禁止されています。

法第二十九条 

特定転貸事業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。

一 特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為

二 前号に掲げるもののほか、特定賃貸借契約に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるもの

 

規則第四十四条 法第二十九条第二号の国土交通省令で定める行為は、次に掲げるものとする。

一 特定賃貸借契約を締結若しくは更新させ、又は特定賃貸借契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者(以下「相手方等」という。)を威迫する行為

二 特定賃貸借契約の締結又は更新について相手方等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為

三 特定賃貸借契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法により相手方等を困惑させる行為

四 特定賃貸借契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む。)を表示した相手方等に対して執ように勧誘する行為

 

 

2 管理業法29条1号について

(1)背景事情

オーナーに対する勧誘の際、事実でなかったり、断定できないにもかかわらず「サブリース家賃が下がることはない。入居率は確実である。家賃収入は将来にわたって確実に保証される。」、「原状回復費用・維持修繕費用はサブリース会社が全て負担する。」、「周辺相場よりも当社は高く借り上げることができる。」等の文句が使われ、多くのトラブルが発生していました。そこで、1号は、不実告知等を禁止しました。

前回ブログで指摘した誇大広告規制( https://m2-law.com/blog/2927/ )の背景事情も同様ですが、誇大広告規制に違反した場合の罰則が三十万円以下の罰金であるのに対し、不当勧誘規制の罰則は六月以下の懲役若しくは(or)五十万円以下の罰金又は、これの併科(懲役+罰金)となっており、規制の程度は強くなっています(管理業法42条2号、44条10号)。それは、一層被害を発生させやすい危険な行為と考えられるからでしょう。

(2)問題となる場面

①「勧誘をするに際し」とは

ここで「特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し」とは、特定賃貸借契約の相手方となろうとする者がいまだ契約締結の意思決定をしていないときに、特定転貸事業者又は勧誘者が、特定賃貸借契約を締結することを目的として、又は契約を締結させる意図の下に働きかけることをいいます。なお、その後実際に契約が締結されたか否かは問いません。

  ②「解除を妨げるため」とは

ここで「解除を妨げるため」とは、特定賃貸借契約の相手方の特定賃貸借契約を解除する意思を翻させたり、断念させたりするほか、契約の解除の期限を徒過するよう仕向けたり、協力しない等、その実現を阻止する目的又は意図の下に行うことをいいます。なお、実際に契約解除を妨げられたか否かは問いません。

(2)禁止される行為

   故意による事実を告げない行為・不実の告知が禁止されています。

  ② 管理業法29条1号にいう「当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なもの」とは、当該事項に関して告げなかったり、事実と違うことを告げることが、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の不利益に直結するものをいいます。

  ③ 管理業法29条にいう「故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」については、特定転貸事業者であれば当然に知っていると思われる事項を告げないような場合には、故意の存在が推認されることになると考えられます。

 

3 管理業法29条2号・規則44条について 

不実告知等以外にも、相手の正常な意思決定を困難にさせるような勧誘がトラブルを多く生んでおりました。そこで、2号では規則44条に定められる次のような行為を禁止しています。

(1)「威迫する行為」の禁止(規則44条1号)

ここで「威迫する行為」とは、相手方等に不安の念を抱かせる行為をいいます。脅迫と異なり、相手方等に恐怖心を生じさせることまでは要しません。

(2)「迷惑を覚えさせるような時間」における電話・訪問による勧誘の禁止(2号)

ここで「迷惑を覚えさせるような時間」とは、相手方等の職業や生活習慣等に応じ個別に判断されます。一般的には、相手方等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由なく午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、本号に該当します。

(3)「相手方等を困惑させる行為」の禁止(3号)

ここでの「その者を困惑させる行為」も、個別事案ごとに判断されます。深夜勧誘や長時間勧誘のほか、例えば、相手方等が勤務時間中であることを知りながら執ような勧誘を行って相手方等を困惑させたり、面会を強要して相手方等を困惑させる行為などが該当します。

(4)「執ように勧誘する行為」の禁止(4号)

ここにいう「執ように勧誘する行為」とは、相手方等が特定賃貸借契約の締結又は更新をしない旨を意思表示した以降、又は勧誘行為そのものを拒否する旨の意思表示をした以降、再度勧誘することをいいます。一度でも再勧誘を行えば本号違反になるとされています。また、勧誘方法や勧誘場所は問いません。

投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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