事業再生法人破産

ビフォア法人破産⑦中小企業再生支援協議会

2021.03.01

中小企業再生支援協議会とは

 中小企業再生支援協議会(以下、支援協という。)とは、中小企業に対する再生計画策定支援等の再生支援事業を実施するため、産業活力強化法に基づき商工会議所等に設置される組織です。現在、全国47都道府県に1カ所ずつ設置され事業再生の専門家(弁護士、公認会計士、税理士、金融機関出身者など。)が常駐、日頃から中小企業者からの相談を受け付けています。

 

第一次対応

1 支援協の活動は、中小企業者(以下、当該企業という。)の申出を受け、企業内容の実体を把握しながら、事業再生に向けた相談に対し適切な助言等をする窓口対応から始まり、これを第一次対応といいます。

ここで中小企業者とは中小企業基本法2条にいうものです(①製造業・建設業・運輸業等-資本金額等〈以下、資と略〉3億円以下・常時使用従業員数〈以下、従と略〉300人以下、②卸売業-資1億円以下・従100人以下、③サービス業-資5千万円以下・従100人以下、④小売業-資5千万円以下・従50人以下)。

2 企業概要や3期分の税務申告書等を持参するのが通常で、併せて、現状に至るまでの経緯説明を1枚程度のメモに纏めていくと効率的な相談等が可能になります。

  そこでのヒアリングの上、支援協を通じた再生支援の必要性と可能性が窺えるなら、当該企業の承諾を得て、次の第二次対応に移ります。その際、主要債権者(メインバンク)の意向確認が必要なので注意してください(中小企業再生支援協事業実施基本要領〈以下、要領といいます。〉6(2)①②)。

 

第二次対応

1 当該企業の再生計画の策定支援をするのが、第二次対応です。支援協では、個別支援チームが編成されます。

  この段階で支払が継続されている場合には、債権額を確定等するため支援協と当該企業の連名で取引金融機関に対し一時停止の文書が送られます。規模の大きな事業者の私的整理を対象とする事業再生ADRという手続では、一時停止をする前の段階で、既にDDが実施され再生計画案の概要が作成されますが、支援協ではその後にDDをすることが予定されています。それは、支援協の対象が中小企業者であり独自で専門家を見つけ出し依頼することは難しく、支援協が関与する前の段階でそこまで求めることは酷であろうと考えられたためです。

(2)再生計画の内容は要領で決まっており、事業財務状況の見通しをたてなければなりません(6(5)①)。

迅速かつ簡易な再生計画の策定支援でない限り、外部専門家(公認会計士、税理士、中小企業診断士等)を含む個別支援チームが編成されますが、当該企業が実施したBS・PL等の財務DDと事業DDで状況把握可能なら、外部専門家等がそれを検証する形で、再生計画案の作成支援がなされます(要領6(3)①、(4)④)。

(3)このようにして支援策定された再生計画案について、支援協は、その内容・実行可能性・金融支援の必要性・合理性等に関する調査報告書を作成します(要領6(6))。

以上を元に債権者会議等により全金融機関の合意が得られれば、再生計画は成立します(要領6(7))。

 

モニタリング

  第二次対応により成立した再生計画について、当該企業の決算期も考慮しながら必要な時期を定め、その達成状況等を監督していきます。その期間は、概ね3事業年度とされていて、その間必要性が生じれば再生計画の変更にも支援協力していくことになります(要領8)。

 

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ビフォア法人破産⑥私的整理の金融支援方法

2021.02.21

はじめに

  私的整理とは、債務支払に関する交渉ですが、その対象は金融機関等のみで、如何なる金融支援がどの程度必要かが、検討されます。以下では、リスケの外、DDS、DES、債権放棄といった金融支援の方法を検討しますが、金融支援を受ける場合は、貸出条件緩和債権に陥って格下げを受けないよう、実抜計画・合実計画等に基づき行うことが必要です。

金融支援方法

1 リスケジュール

   リスケジュール(以下、リスケという。)とは、元本或いは利息の支払期限等を繰り延べることをいいます。金融機関への支払を繰り延べることで、その分の金員をプールして運転資金を増やし、経営が落ち着いた段階で金融機関に対する支払を再開するものです。私的整理では、全員一致というハードルもあるせいか、このリスケで終わることが大半です。

2 DDS

 DDSとは、Debt Debt Swap(デット・デット・スワップ)の略であり、債権者が既存債権を別条件債権に変更することをいいます。金融機関が既存の債権を他の債権よりも期間、利息等で劣後するものに切り替えて行うのが一般的です。債権の格付け査定上、劣後借入金が自己資本に算入されることから、債務超過解消要件を満たすことができない案件ですが、債権放棄にまで至らない案件に使われるスキームです。

債務者としては、実質純資産額の改善にはなりませんが、元金の返済が猶予され金利も引き下げられるので、貸出金利が高い時代は、キャッシュフロー改善のメリットが意外と大きいです。なお、金融機関次第ですが、流行していたころのDDSを見渡すと、返済猶予の期間は5~10年、利率0.4~0.8%程度にされることが多いようでした。金融機関としては、債権がなくならないという意味で、債権放棄や後述のDESよりもインパクトが少ないです。DDS化した債権については100%の貸倒引当金が求められるのが一般的で、その支援を受けるハードルは低いとはいえませんが、一時、中小企業に対する金融支援策としては注目された手法でした。

3 DES

DESとは、Debt Equity Swap (デット・エクイティ・スワップ)の略で、債務を株式化することです。金融機関が債権の一部を現物出資する形で(償還)株式等を取得し切り替える方法が一般的です。これによって金融債務が減少し債務者の財務状態は改善されます。後述する債権放棄には限界があり、それでも不十分な場合の追加金融支援策としての利用が考えられます。

一応株式化されるので、債権放棄程の衝撃性はありませんが、それに伴うメリットも受けられません。また、たとえそれが償還株式であったとしても、法的には債権を失う訳で、いざという場合特に上場していない債務者についてその回収は困難です。また、金融機関である以上独禁法上の限界もあります。そのため、利用例は少ないように思います。

 

4 債権放棄

   債権放棄とは、金融機関等がその債権を放棄することです。金融機関にとって最も厳しい支援であり、その調整に時間と手間を要します。

   債権放棄を行う場合、金融機関では欠損金処理が、債務者では債務免除益課税が、それぞれ問題になります。併せて、金融機関にとって、債権放棄という痛みを伴う支援ですから、そのような事態に陥ったことについて債務者の説明責任、経営者責任、株主責任が問われて当然であり、オーナー経営であったのなら私財提供も問題にされます。

その上で、債権放棄の必要性と相当性、経済的合理性、各金融機関の衡平性、過剰支援となっていないか等が検討されます。なお、その上限は、一般的に、実質債務超過額、非保全額、税務上の欠損金の何れか小さい金額であり、これを超える放棄は過剰支援として合意を得ることは難しいことが多いと思われます。

 

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ビフォア法人破産⑤実抜計画・合実計画・暫定リスケ

2021.02.15

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実抜計画

1 事業再生を前提とした金融負債のリスケ等は「貸出条件緩和債権」として債務者区分を格下げされないようにしなければなりません。さもないと、事業再生に必要な追加資金融資を後日受けられなくなるからです。

  実抜計画とは、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画をいいます。金融庁の監督指針(以下、監督指針といいます。)Ⅲ-3-2-4-3(2)③ハが指摘するもので、その計画に基づく経営再建が開始されている場合には、リスケをしたとしても「貸出条件緩和債権」には該当しないとされています。

  私的整理では、かかる実抜計画等に基づく経営再建が出来るかが重要になります。

2 実抜計画といえるには、先ず「実現可能性の高い計画」である必要があり、それは、①必要関係者との同意が得られていること、②支援の額が確定しており追加的支援が必要と見込まれないこと、③売上高、費用及び利益予測等の想定が十分に厳しいものになっていることを全て満たす計画です。

   続いて、実抜計画といえるには「抜本的な計画」である必要があり、それは「概ね3年後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態となる」計画です。従前は「概ね3年後の当該債務者の債務者区分が正常先となった場合」とされていましたが、令和元年12月の金融検査マニュアル廃止に伴う監督指針の改正により内容が変更されました。

 

合実計画

1 合実計画とは、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画をいいます。それは、監督指針Ⅲ‐3‐2‐4‐4③が指摘する概念で、本来的には当該債務者の債務者区分を要管理債権又は正常債権に格上げするためのものです。ただ、監督指針Ⅲ‐3‐2‐4‐3(2)③ハ(注2)では、債務者が中小企業であれば、合実計画が策定されている場合には、実抜計画と「みなして差し支えない」とされているので、中小企業の事業再生では、とりあえず合実計画の策定を目指すことになると思います。

2 ちなみに、監督指針の示す合実計画の主な内容は、以下のとおりです。

① 経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内で、かつ、計画の実現可能性が高いこと

  ただし、計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場合で、進捗状況が概ね計画どおり(売上高・当期利益が事業計画に比し概ね8割以上確保されていること)であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。

② 計画期間終了後の当該債務者の業況が良好で、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題のある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画

③ 全ての取引金融機関の経営改善計画等に基づく支援の合意があること

  ただし、単独で支援を行うことにより再建が可能な場合等は、当該金融機関の合意で足りる。

④ 金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものでないこと

 

暫定リスケ

1 以上のとおり、私的整理の原則は、実抜計画・合実計画を策定して全金融機関等との合意形成に向かって話し合いをしていくことになります。つまり、完済計画による話し合いということです。

2 しかし、このような完済計画を立てる前段階として、そもそも事業の持続可能性が不透明な債務者については、その可能性が見込めるかどうか、今後経営改善や事業再生が実現できるかどうかを、あらためて熟慮する期間が必要な場合もあります。

そこで、金融円滑化法(以下、円滑化法といいます。)が廃止される平成25年4月以降の方針として、中小企業再生支援協議会を通じて、1~数年間はリスケを前提に弁済方法を暫定的に決定し、その後の弁済方法は更新時の経済状況を踏まえて改めて協議するという方式が認められていました。これが正式な「暫定リスケ」といわれる方式で、3年計画を基本としたモニタリングを通じて、実抜計画・合実計画の策定等を模索するというものでした。

3 ところが、現実は、円滑化法廃止後も、多くの金融機関はリスケに寛大であったため、相対型の私的整理においても、暫定「的」リスケが続けられ、それは現在のコロナ禍リスケの流れに続いています。

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ビフォア法人破産④支払の一時停止

2021.02.08

 

一時停止とは

 現代的意味における私的整理とは、金融機関等のみを対象とした、負債に関するリスケ・DDS・債権放棄といった交渉です。話し合いをするにしても、その金額を確定させなければならず、そのために元金の支払を停止することを一時停止といいます。

  中小企業再生支援協議会(以下、支援協といいます。)等を利用する場合、支援協と債務者の連名で一時停止の通知を送るとされています。かつてはこの一時停止自体が大きな問題でしたが、金融円滑化法の施行以降金融機関もその対応に慣れてきており、今では債務者個人が一人で赴いてもそのこと自体はすんなりいくことが殆どだと思います。

  ただ、注意すべき点も幾つかあり、最も出くわすことの多い中小企業者が金融機関と相対で私的整理をする場合を念頭に、簡潔に述べておくことにします。

 

注意点

1 利息等

   一時停止といっても元金の支払を止めるだけです。利息等は支払わなければなりません。その際、信用保証協会の保証料等は、一時停止を求める期間分を先にまとめて支払わなければならないので多額になることが多いので注意が必要です。

2 期間

   一時停止の期間は3~6ヶ月というのが一般的です。金融円滑化法が健在だった当時は、それに続いて幾度か繰り返されることもあったように思われるが、その終焉を迎えてからは若干慎重な金融機関も増えていました(ただ、現在のコロナ禍では先行が不透明なことから、いきなり決算期乃至は1年単位の停止を認める例も多いです。)。

なお、当日に行ってその日に止めるというのも難しく、支払日の10日程前に金融機関に一時停止の相談に行くというのが理想です。

3 金融機関に赴く場合の注意点

  ① 数行取引がある場合は、重要度(メイン、借入金額、担保設定状況)や担当者のスケジュールに応じて判断すればいいですが、同日に回るのが好ましいといえます。止むを得ず日にちがずれる場合は、不公平の生じないよう各金融機関の支払日を念頭に入れて考える必要があります、一行の支払を止めておきながら他行の支払はしてしまうことはないよう注意が必要です。

  ② 一時停止は私的整理のために行うのであり、合実計画等による話し合いの前提行為であることを忘れてはいけません。

ただ、一時停止を求める時点で合実計画等を最後まで詰めておく必要はありません。一時停止後の売上収支の状況をみるのも大事です。ただ、何時頃までに実態バランスをつくって、何時頃までに合実計画等を持っていくのか、およその時間的目安は立てておくべきでしょう。相談依頼が何時の時点でなされたにもよりますが、それが士業或いは認定支援機関として行う私的整理であるなら尚更だと思います。

  ③ 一時停止の相談に赴く際は、謝罪の意味も含め債務者(代表者)が同行すべきでしょう。経理等の実務担当者も同席することが望ましく、士業等が関与するのであれば、挨拶を含め最初の段階で赴くべきと思います。その際に持参する資料としては、債務者の決算書は金融機関であれば持っているので、直近の試算表と今回一時停止に至った経緯(一時的なものか恒常的なものか、その対策はどうするのか)を簡単にメモ書きにでもして持参すると説明しやすいと思います。

  ④ なお、上記(2)で述べたとおり、現在のコロナ禍では、先行不透明であることを金融機関も熟知しており、上記②、③については、柔軟な対応をするところが多いかと思います。

 

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顧問弁護士③内部統制・リスク管理

2021.02.03

1 内部統制システム(リスク管理体制)とは多義的な概念ですが、法律用語としては「会社の業務の適正を確保するための体制」であると理解されており、株式会社(以下、単に会社といいます。)にはその整備が求められています(348条3項4号、362条4項6号、416条1項ホ)。

  具体的には、①損失の危機の管理に関する規定その他の体制、②取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、③使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制等の整備が求められます(会社法施行規則98条、100条、112条2項)。

2 会社には、それを動かすものとして取締役がいて、それぞれ監視義務を負っています。会社の業務執行は、取締役・従業員によってされますが、その業務執行を他の取締役が監視することで、その適正を確保する訳です。

ただ、一定規模以上の会社になると、取締役が、常時、互いを監視し、また従業員を監視していくことは不可能です。そこで、業務執行の手順を合理的に設定すると共に不祥事の徴候を早期に発見・是正できるよう人を組織化していく、このシステムが内部統制であり、これによってリスク管理をし、業務の適正を確保していくということです。

  例えば、取引をする際は、契約書・伝票・領収書といった決められた書類を、作成・保存するようにしておく。そうすれば、取引の際には何をすべきか分り易く効率的な上、不祥事の際も、これを取締役が事後的に確認し是正していくことが容易になります。また、顧客から問題点の指摘があった際は、その内容を文書・記録化し、誰に伝達して誰が対応するかを決めておく。そうすれば、問題についての応対・是正も効率化し、いち早く取締役が会社の業務執行の適正を確保できる訳です。

 このとおり、内部統制システムとは、不祥事に関する対応策でもありますので、システム構築には、不祥事対応にたけた弁護士の知識と経験が役立つことは当然です。また、良い内部統制システムを構築するには、会社の業務内容・組織内容を熟知する必要があり、普段から親密な付き合いのある顧問弁護士のよりよく成し得るところです。むしろ、それこそが弁護士を顧問とする最大の利点の1つといえます。

3 ちなみに、内部統制システムを理解する上で、大切なことが2つあります。

(1)1つは、不祥事を完全に予防するものではなく「その確率を費用対効果の観点において合理的な程度にまで引き下げるもの」だという点です(伊藤・大杉外「リーガルクエスト会社法第4版」有斐閣181頁)。不祥事対応のコストが100円である時、これを完全に予防すべく1000万円のコストをかけて内部統制システムを構築していくことは不合理だということです。

(2)もう1つは、内部統制システムは情勢に応じて改善していく必要があるということです。「不祥事は、起こってしまった後ではその発生のメカニズムを知ることは比較的容易であり、将来にはどうすればその再発を防止できるかを考えることは難しくはないが、発生前に将来に生じ得る不祥事を全て予見し、それを防止するための万全の体制を整えることはきわめて困難(不可能)である。」とされています(大杉「企業不祥事の前と後」法学教室360号83頁)。そこで、不祥事が起こったということは内部統制システムに何らかの問題があることが多いのですが、そのようなシステムを構築したこと自体が取締役の監視義務に違反するか否かは、不祥事がなされた時点を基準としてその予見・防止が可能であったか否かという視点から判断されなければならないとされるところです。

しかし、一度そのような不祥事が発覚し世間に知れ渡った場合、そのような不祥事に対応し得る内部統制システムを再構築していくことは、比較的容易であり、また取締役に強く求められているものです。その意味で、新たな手段による不祥事が世間に明らかになった場合、その不祥事の内容と対応を分析することが必要であり、それを的確にし得るのは不祥事対応にたけた弁護士だということです。このような弁護士を顧問とすることで、内部統制システムを改善していくことも容易になります。

4 このとおり、内部統制システム(リスク管理体制)を万全にするという意味で、弁護士を顧問とすることに大きなメリットが存在します。顧問弁護士に関心があれば、当事務所まで相談ください。

 

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ビフォア法人破産③私的整理の概要

2021.02.01

私的整理の意義

  私的整理とは、法的整理に対する概念です。かつては裁判所を介さない債務整理という意味で、法的整理同様、商取引債務も対象にしていました。ところが、それでは事業価値を毀損するという考えが強くなり、最近では、事業再生を念頭に入れた金融機関等のみを対象として、リスケ、DDS、債権放棄等を求めるものという位置付けが強まっています。以下、そのような意味で私的整理という言葉を扱います。

 

私的整理の手法

(1)相対型

  法的整理の場合、破産法・民事再生法・会社更生法といった確固たる手続が存在しています。ところが、そのようなものが存在しないのが私的整理であり、古くから債権者と債務者とが直接相対で話し合うという形が採られてきました。

  私的整理が金融機関等のみを対象とするという理解が強まったとしても、この傾向は変わらず、金融機関等と相対による私的整理というのは現在でもよく選択される方法です。金融機関等が多い場合、一堂に会しバンクミーティングという方法が採られることもありますが、これも債務者自身が独自に開催するのであれば、相対型の私的整理に位置付けられると思います。

(2)第三者介在型

  ただ、私的整理の有用性に関する理解が広まるにつれ、現在では、事業再生ADR、中小企業再生支援協議会(以下、支援協といいます。)、REVIC(地域経済活性化支援機構)といった債権者・債務者以外の第三者が介在する私的整理も発達しています。平成25年末に開発された特定調停スキームも、この1つにあたります(特定調停は、裁判所を介するが当事者間の合意形成を中心に据えた制度です。なお、支援協や特定調停は、私的整理の手法としての外、現在は、経営者保証ガイドラインに基づく保証債務の解除手続としても利用されています。)。

 

私的整理の特徴

(1)事業価値の毀損を防げる

   ここでの私的整理が、金融機関等のみを対象にした債務支払に関する交渉と理解するなら、商取引債務は対象外となり秘密裏に行われます、結果として、事業価値棄損のリスクを最大限取り除くことができるので、これが1番のメリットです。

(2)金融機関独自の論理がある

   他方、相手方が金融機関等のみであることから、そこには銀行法・信金法・信組法・金融庁の監督指針等に基づく独自の論理があります。金融支援の方法にも決まりがあり、それを引き出すにもルールがあります。また、金融機関同士の公平性も重要で、例えばバンクミーティングは同一の日時場所資料により行われることから、金融機関の公平性を担保する意味もあります(ただ、全員がいる場所では本音が出て来ないのも事実です。)。単なる経済合理性だけでは済まされないことも多いです。

(3)全員一致が必要である

   法的整理と異なって、多数決で押しきれません。強硬な債権者が存在する場合それを抑える的確な法的手段もありません。結果として、見通しも不安定で、十分な債権カット等ができず、中途半端な債務整理に終わる可能性もあります。

(4)その他

私的整理に共通する特徴として、それほど確固たる手続が存在しないことから、その気になって合意さえ形成できれば柔軟・迅速な対応が可能といった点もあります。

その反面、合意形成面だけでなく進行手続についても当事者間での合意に基づいて行われるものです。ですから、いかなる態度をとるかは各関係者に任されており、私的整理の進行中に強制執行等の個別執行が行われてしまう可能性を排除できません。裁判所の関与がないことから手続の透明性に欠け不公平な結果となる可能性もある、といったデメリットもあります。

 

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顧問弁護士②整理解雇

2021.01.29

解雇に関する原則

解雇は、客観的合理的理由があり、社会通念上も相当といえる場合でなければ、権利濫用として無効になり、許されません(労働契約法16条)。

令和2年以降、コロナ不況により従業員を抱え続けることが困難な企業が増えており、法人破産を避け事業再生をしていくために不可欠な場合がありますが、単に経営難だけを理由に解雇をしても、無効となる可能性があります。整理解雇の要件は以下のとおりです。

整理解雇の要件

特に、業績悪化の場面で行われるリストラ(整理解雇)については、判例上、以下の4つの要素をどれだけ備えているかによって、解雇の効力が判断されます。

 ① 人員削減の必要性

 ② 解雇回避努力

 ③ 人選の合理性

 ④ 手続きの相当性 

業績悪化は、あくまで①の事情にすぎず、他の要素が欠けていれば、解雇は無効となる可能性が高いです。そこで、整理解雇を行う場合、上述した4つの要素を満たすべく、事前から検討・準備・対応することが求められます。 

②については、企業規模や業種、人員構成、生産形態等により回避努力義務の内容は異なりますが、使用者は整理解雇前に遊休資産の売却、経費の削減などの経営努力を行うとともに、雇用確保の手段として下請に発注していたものを自社で生産する、残業規制、賃金カット、新規採用の中止、一時帰休、配転・出向、退職勧奨、希望退職募集などの実施、あるいはこれらの解雇回避手段の採否につき真摯な検討を求められています。特に、将来の減収に備えるためといった経営戦略的な整理解雇の場合には、使用者に対してより一層厳格な解雇回避努力義務を課すべきであるとした事例(社会福祉法人仁風会館事件:福岡地判平成19年2月28日)もあります(新労働事件実務マニュアル第4版参照)。前述したコロナ禍に関連するなら、急激な大幅売上減により企業が努力できる範囲・時間に限界はあるものの、雇用調整助成金もより容易・迅速に受けられるようになっていますから、その申請をするといった努力をしたかどうかも②の判断に影響することがあり、その旨を指摘する裁判例もでました。

弁護士顧問契約の必要性

整理解雇の準備にどのような方法を採るか、どの程度するかといった判断は、過去の裁判例等に照らして検討する必要があります。したがって、実務の相場を熟知した専門家である弁護士による協力が不可欠です。また、整理解雇に至るまでの準備は前述のとおり様々であり、状況に応じて、一定期間継続して行う必要があります。弁護士とは、日頃から協同できるように顧問契約を結んでおかれるとよいでしょう。会社の内容、状態を熟知した顧問弁護士なら、的確なアドバイスをしてくれます。

経営者としては、可能な限り解雇は避けたいと思いますが、全体的・長期的な視野からすれば、法人破産を避け、事業再生をしていくために不可欠な整理解雇もあります。

当事務所との顧問契約は、整理解雇のような労働問題に限らず、様々な分野に対応しております。顧問弁護士に関心があれば、当事務所までご連絡ください。

 

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顧問弁護士①契約書作成確認

2021.01.29

契約書は作成していますか?

契約書は、後々の紛争を予防、解決するために非常に重要です。

口約束だけの契約は、「言った、言わない」の水掛け論となる可能性が高く、後々面倒です。是非、契約書は作成するようにしましょう。

 

契約書の内容は十分チェックしていますか?

安易に従前の雛型を使いまわしたり、相手方の準備した契約書案をそのまま受け入れたりしていませんか。巷の雛型はあなたの行う取引内容を前提に作成されたものではないですから、修正する必要があります。また、あなたの取引相手は親切心で契約書案を準備するのではなく、自社に有利にしたいがために契約書案を準備してきます。これまで特段不都合がなかったとしても、今後のリスク管理として契約書のリーガルチェックは必須です。

 

弁護士による契約書チェックの必要性

1 合理的な内容の契約書を作成しておかなければ、後々、紛争になる可能性が高いです。 紛争になってしまえば、解決に多くの時間や労力、費用(例えば弁護士費用)がかかってしまいます。さらに、契約書は最重要証拠ですから、その内容が不利であれば、いずれにせよ納得のいく解決を期待することも難しいです。

また、紛争の発生が予想されるような取引では、契約書に紛争の解決策を盛り込むことも必要となってきます。

契約書は、文面上はごく細かな差異でしかないにもかかわらず、その法的意味合いが大きく異なってしまうことが非常に多いです(よく条文は外国語を解読するつもりで読めとも言われています。)。企業の担当者がせっかく入念にチェックしていても、それらに気づくことは難しく、時間対効果が低いというのが現実です。弁護士は、日頃から契約書のチェックを行い、そのいろはを熟知しています。訴訟等に取り組む中でも、問題のある契約書を数知れず扱ってきております。今後紛争を予防し、紛争解決のための余計なコストを回避するためにも、専門家である弁護士に契約書のリーガルチェックをしてもらうことは必須事項です。

2 不適切な契約書文言の例

以下は、櫻井「新版実は危ない契約書」清文社が注意すべきと指摘している契約条項の具体例ですが、素人であれば気付かないかもしれません。

 

例1

第〇条 甲および乙は、本契約を解除することができる。

もし、当事者の一方が(甲or乙)相手方の了解を得ずに契約を一方的に解除する旨を規定したいのであれば、「甲および乙」の文言は不適切です。このままでは、合意解除か一方的解除なのかについて解釈の対立が生じるおそれがありますから、「甲または乙」と規定しなければなりません。

例2

第〇条 甲は、乙に対し、甲所有の不動産を売却するものとする。

「ものとする」という文言では、「将来の売却を約束する(予約)」との解釈が成り立ってしまいます。

 

以上のような誤りは、雛形を安易に流用する場合に生じることもあれば、相手方が契約書案のなかに紛れ込ませることで生じることもあります。

 

弁護士顧問契約の必要性

契約書に個々の企業や取引の特性を十分に反映させるためには、関与する弁護士が各取引内容や会社間の上下関係その他の背景事情を熟知しておく必要があります。したがって、弁護士とは顧問契約を結び、日頃から、企業の状況・状態を知ってもらった上で、気軽に相談できるような協同関係を築いておかれるとよいでしょう。そうすれば、弁護士は、状況に応じて、攻めた契約書から守りの契約書まで様々な契約書案を提案することが可能となります。そして、余計な紛争解決のためのコストを大幅に減らしましょう。

当事務所との顧問契約は、契約書のリーガルチェックに限らず、各場面に応じて様々なサポートを提供しております。顧問弁護士に関心があれば、当事務所までご連絡ください。

 

顧問弁護士の相談は村上新村法律事務所まで

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

民事再生における中止命令・担保消滅許可

2021.01.27

法人破産を避け、事業再生をはかるには、負債対応が必要で、そのためには民事再生という選択肢があります(負債対応の仕方については、次のブログを参照ください。https://m2-law.com/blog/1190)。今回は、村上新村事務所が対応した民事再生手続について、解説したいと思います。

1 Ⅹ社(再生債務者)は、食品の製造・加工・販売業者で、本社工場を所有しており、その本社工場には、メインバンクに対する極度額3億円の根抵当権が設定されていました。Ⅹ社は、多額の負債を抱えて民事再生手続開始の申立を行い、会社の事業は存続させ、負債の一部をカットした上で、残った負債を営業により生じた利益の中から、10年間の分割で支払っていくという自力再生の計画を立てました。

 

2 ちなみに、民事再生手続では、再生債務者の財産に設定されている担保権は別除権として、再生手続とは無関係に実行することができるのですが、通常、事業を継続していく上で重要な財産については、別除権者(金融機関が多いです。)との間で、その財産の評価額を合意し、その評価額を分割等で支払う旨の合意(以下、別除権協定といいます。)をして、競売等することなく、その財産を受け戻すという方法を取るのが一般的です。

 

3 しかし、本件では、本社工場の評価について、メインバンクたる別除権者(以下、単に別除権者といいます。)との間で合意できず(再生債務者としては、1億2000万円が上限ではないかと考えていましたが、別除権者は1億8000万円ほどの評価をしていました。)、別除権協定が整わなかった結果、別除権者より、本社工場について競売申立がなされ、競売手続が開始することとなってしまいました。

  このまま競売手続が進行し、本社工場が売却されてしまうと、当然、会社の事業を継続することができなくなり、計画していた自力再生もできず、民事再生手続自体が頓挫することになってしまいます。

 

4 そこで、中止命令という制度により上記競売手続の中止を求め、同時に、担保消滅許可(裁判所の定めた評価額を納付することにより、特定の財産の上に存在する担保権を消滅させるという制度)の申立を行いました。

  結果的に、本社工場は約1億2000万円と評価され、再生債務者は、この金額を別の金融機関より借り入れて納付することにより、別除権者などの本社工場に対する担保権の消滅を得ることができました。

  そして、本社工場を利用して自力再生を図るという当初の計画についても認可決定を得ることができ、無事に再生を果たすことができることとなりました。民事再生手続において、中止命令・担保消滅許可という制度を利用し、事業再生を図った例として、紹介します。

投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

会社分割による事業再生

2021.01.27

 事業を継続し、再生していくには、会社分割が役立つことがあります。法人破産といっても、事業がなくならない形(事業譲渡・会社分割)もあります(概要は、弊所ブログ「ビフォア法人破産②負債対応」を参照ください。https://m2-law.com/blog/1190)。以下では、村上新村法律事務所が対応した事例を紹介したいと思います。

1 Ⅹ社は、運送業・倉庫業を営む会社で、平成20年ころまでは順調に売上も伸ばしてきていましたが、平成21年ころから売上が落ち始め、平成23年3月の東日本大震災の影響で予約のキャンセル等が相次ぎ、平成23年末ころには多額の金融負債だけでなく、1000万円を越える税金・社会保険といった公租公課の滞納を抱えて、苦しんでいました。

 相談を受けた段階では、事業は黒字化していましたが、民事再生をしても、公租公課は一般優先債権として、債権カットの対象になりません。多額の公租公課を支払っていける程の事業規模でもありませんでした。こういう場合、事業廃止→破産という道に進むことが多いですが、単純に破産申立をしてしまうと、多くの従業員を路頭に迷わせ、また、既に予約の入っている顧客に大きな迷惑をかけてしまうことになるので、どうしたらよいか悩んでおられました。

 

2 そこで、事業そのものは何とか継続させ、従業員や既に予約の入っているお客様に対して迷惑をかけない方法を検討し、Ⅹ社の代表者の親族が持っていたY社にⅩ社の事業そのものを引き継いでもらい、できるだけ破産の影響が大きくならないように、会社分割を行うこととしました。

  具体的には、Ⅹ社が有していた行政上の許可と備品及び従業員をY会社に引き継いでもらうという会社分割を行い、Ⅹ社が所有していた自動車などを、適正価格でY社に売却することにより、事業そのものを生かす形を取りました。

3 そして、Ⅹ社は、自己破産申立を行い、多額の負債等を整理することができました。破産はしましたが、会社分割を入れることで、事業そのものを存続させた事例です。このような手法を用いて事業自体を残すことにより、従業員や顧客に大きな迷惑をかけずに負債を整理することのできた例として紹介します。

投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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