事業再生法人破産

ビフォア法人破産⑤実抜計画・合実計画・暫定リスケ

2021.02.15

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実抜計画

1 事業再生を前提とした金融負債のリスケ等は「貸出条件緩和債権」として債務者区分を格下げされないようにしなければなりません。さもないと、事業再生に必要な追加資金融資を後日受けられなくなるからです。

  実抜計画とは、実現可能性の高い抜本的な経営再建計画をいいます。金融庁の監督指針(以下、監督指針といいます。)Ⅲ-3-2-4-3(2)③ハが指摘するもので、その計画に基づく経営再建が開始されている場合には、リスケをしたとしても「貸出条件緩和債権」には該当しないとされています。

  私的整理では、かかる実抜計画等に基づく経営再建が出来るかが重要になります。

2 実抜計画といえるには、先ず「実現可能性の高い計画」である必要があり、それは、①必要関係者との同意が得られていること、②支援の額が確定しており追加的支援が必要と見込まれないこと、③売上高、費用及び利益予測等の想定が十分に厳しいものになっていることを全て満たす計画です。

   続いて、実抜計画といえるには「抜本的な計画」である必要があり、それは「概ね3年後の当該債務者の業況が良好であり、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態となる」計画です。従前は「概ね3年後の当該債務者の債務者区分が正常先となった場合」とされていましたが、令和元年12月の金融検査マニュアル廃止に伴う監督指針の改正により内容が変更されました。

 

合実計画

1 合実計画とは、合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画をいいます。それは、監督指針Ⅲ‐3‐2‐4‐4③が指摘する概念で、本来的には当該債務者の債務者区分を要管理債権又は正常債権に格上げするためのものです。ただ、監督指針Ⅲ‐3‐2‐4‐3(2)③ハ(注2)では、債務者が中小企業であれば、合実計画が策定されている場合には、実抜計画と「みなして差し支えない」とされているので、中小企業の事業再生では、とりあえず合実計画の策定を目指すことになると思います。

2 ちなみに、監督指針の示す合実計画の主な内容は、以下のとおりです。

① 経営改善計画等の計画期間が原則として概ね5年以内で、かつ、計画の実現可能性が高いこと

  ただし、計画期間が5年を超え概ね10年以内となっている場合で、進捗状況が概ね計画どおり(売上高・当期利益が事業計画に比し概ね8割以上確保されていること)であり、今後も概ね計画どおりに推移すると認められる場合を含む。

② 計画期間終了後の当該債務者の業況が良好で、かつ、財務内容にも特段の問題がないと認められる状態(自助努力により事業の継続性を確保することが可能な状態となる場合は、金利減免・棚上げを行っているなど貸出条件に問題のある状態、元本返済若しくは利息支払いが事実上延滞しているなど履行状況に問題のある状態のほか、業況が低調ないしは不安定な債務者又は財務内容に問題がある状態など今後の管理に注意を要する状態を含む。)となる計画

③ 全ての取引金融機関の経営改善計画等に基づく支援の合意があること

  ただし、単独で支援を行うことにより再建が可能な場合等は、当該金融機関の合意で足りる。

④ 金融機関等の支援の内容が、金利減免、融資残高維持等に止まり、債権放棄、現金贈与などの債務者に対する資金提供を伴うものでないこと

 

暫定リスケ

1 以上のとおり、私的整理の原則は、実抜計画・合実計画を策定して全金融機関等との合意形成に向かって話し合いをしていくことになります。つまり、完済計画による話し合いということです。

2 しかし、このような完済計画を立てる前段階として、そもそも事業の持続可能性が不透明な債務者については、その可能性が見込めるかどうか、今後経営改善や事業再生が実現できるかどうかを、あらためて熟慮する期間が必要な場合もあります。

そこで、金融円滑化法(以下、円滑化法といいます。)が廃止される平成25年4月以降の方針として、中小企業再生支援協議会を通じて、1~数年間はリスケを前提に弁済方法を暫定的に決定し、その後の弁済方法は更新時の経済状況を踏まえて改めて協議するという方式が認められていました。これが正式な「暫定リスケ」といわれる方式で、3年計画を基本としたモニタリングを通じて、実抜計画・合実計画の策定等を模索するというものでした。

3 ところが、現実は、円滑化法廃止後も、多くの金融機関はリスケに寛大であったため、相対型の私的整理においても、暫定「的」リスケが続けられ、それは現在のコロナ禍リスケの流れに続いています。

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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