2022.02.28
相隣関係とは、隣接する不動産所有権等の相互の権利関係を意味します。相隣関係については、民法制定以来実質的な見直しがされてこなかったところ、所有者不明土地問題が生じている近年の社会情勢に合わせて見直しがされました(令和5年4月1日施行)。
第1 隣地使用権
隣地使用権に関する新民法の規定は、以下のとおりですが、重要点について解説します。
第二百九条
1 土地の所有者は、次に掲げる目的のため必要な範囲内で、隣地を使用することができる。ただし、住家については、その居住者の承諾がなければ、立ち入ることはできない。
一 境界又はその付近における障壁、建物その他の工作物の築造、収去又は修繕
二 境界標の調査又は境界に関する測量
三 第二百三十三条第三項の規定による枝の切取り
2 前項の場合には、使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者(以下この条において「隣地使用者」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により隣地を使用する者は、あらかじめ、その目的、日時、場所及び方法を隣地の所有者及び隣地使用者に通知しなければならない。ただし、あらかじめ通知することが困難なときは、使用を開始した後、遅滞なく、通知することをもって足りる。
4 第一項の場合において、隣地の所有者又は隣地使用者が損害を受けたときは、その償金を請求することができる。
1 要件
(1)目的
旧民法209条で認められていたのは「境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため」でしたが、以下の場合が追加されました。
・「工作物の…収去」(新民法209条1項1号)
・「境界標の調査又は境界に関する測量」(2号)
・「233条3項の規定による枝の切取り」(3号)
(2)使用方法
旧民法209条で認められていたのは「必要な範囲内」での使用でしたが、その内容を明確にするため「使用の日時、場所及び方法は、隣地の所有者及び隣地を現に使用している者…のために損害が最も少ないものを選ばなければならない」とされました。
2 内容
(1)承諾請求権から使用権へ
旧民法209条では「隣地の使用を請求することができる」とされていましたが、新民法209条では「隣地を使用することができる」と改められ、承諾請求権構成から使用権構成に変わりました。ただし、隣地を使用する権利があると構成したとしても、その実現方法をどのように考えるのかは別の問題です。
例えば、部会資料52・2頁では「一般的に、権利がある場合であっても、自力救済は原則として禁止されているが、ここで問題になっている隣地の使用の場面に即していえば、当該隣地を実際に使用している者がいる場合に、その者の同意なく、これを使用することは、その者の平穏な使用を害するため、違法な自力救済に該当することになるのではないかと思われる。例えば、土地の所有者が、住居として現に使用されている隣地について、隣地使用権を有しているからといって、隣地使用者の同意なく門扉を開けたり、塀を乗り越えたりして隣地に入っていくことまではできないと思われる。」とされています(ただ、後述する設備設置権に関してですが、それが使用者が存在しない所有者不明土地の場合にどうなるのかについては、議論があるようです「新しい土地所有法制の解説」有斐閣82頁)
また、同じく部会資料52・2頁では「隣地使用者が通知を受けても回答をしない場合には、黙示の同意をしたと認められる事情がない限り、隣地使用について同意しなかったものと推認され、土地の所有者としては、隣地使用権の確認や隣地使用の妨害の差止めを求めて裁判手続をとることになると考えられる。」とされています。
以上から、承諾を得られないときは、原則として裁判手続をとる必要があることに変わりはなく、実務上の取扱いが大きく異なることにはならないといえます。
(2)手続
隣地使用者及び所有者の利益も保護する必要から、隣地使用の目的、日時、場所、方法を「隣地使用者と隣地所有者の両方」に通知する必要があります(新民法209条3項本文)。ただし、「あらかじめ通知することが困難なとき」は遅滞なく事後通知することで足ります(同項ただし書)。
3 住家の立入り
住家の立入りについては、従前から、判決をもって隣人の承諾に代えることはできないとされていましたが、改正後もその考えが維持されています(新209条1項ただし書)。したがって、必ず任意の承諾を得なければなりません。ただし、同条がプライバシーの保護を目的とすることから、プライバシーの保護を要しない部分(屋根、屋上、外部の非常階段等)、現に居住する者がいない場合は、上記でいうところの「任意の承諾」を得る必要はありません(判決で代替することが可能、東地判平11年1月28日参照)。
第2 設備設置権・設備使用権
これまで民法では、公の水流又は下水道に至るまでの排水としての低地への通水(民法220条)、通水用工作物の使用(民法221条)を定めるにとどまり、各種ライフラインの設備に関する規定は不十分であったことから、新たに条文が新設されました(新民法213条の2、3)。
その規定は、以下のとおりです(令和5年4月1日施行。それ以前の設備設置行為の適法性は旧民法時の判例法理に基づき判断されますが、設置場所の変更については新民法が適用されます。)。隣地使用権と内容が似ているので、特に異なる点を太文字・大文字・イタリックで示し、必要点のみ解説をします。
第二百十三条の二
1 土地の所有者は、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス又は水道水の供給その他これらに類する継続的給付(以下この項及び次条第一項において「継続的給付」という。)を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用することができる。
2 前項の場合には、設備の設置又は使用の場所及び方法は、他の土地又は他人が所有する設備(次項において「他の土地等」という。)のために損害が最も少ないものを選ばなければならない。
3 第一項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用する者は、あらかじめ、その目的、場所及び方法を他の土地等の所有者及び他の土地を現に使用している者に通知しなければならない。
4 第一項の規定による権利を有する者は、同項の規定により他の土地に設備を設置し、又は他人が所有する設備を使用するために当該他の土地又は当該他人が所有する設備がある土地を使用することができる。この場合においては、第二百九条第一項ただし書及び第二項から第四項までの規定を準用する。
5 第一項の規定により他の土地に設備を設置する者は、その土地の損害(前項において準用する第二百九条第四項に規定する損害を除く。)に対して償金を支払わなければならない。ただし、一年ごとにその償金を支払うことができる。
6 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その設備の使用を開始するために生じた損害に対して償金を支払わなければならない。
7 第一項の規定により他人が所有する設備を使用する者は、その利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕及び維持に要する費用を負担しなければならない。
第二百十三条の三
1 分割によって他の土地に設備を設置しなければ継続的給付を受けることができない土地が生じたときは、その土地の所有者は、継続的給付を受けるため、他の分割者の所有地のみに設備を設置することができる。この場合においては、前条第五項の規定は、適用しない。
2 前項の規定は、土地の所有者がその土地の一部を譲り渡した場合について準用する。
1 継続的給付として、例示されているのは電気、ガス、水道水の供給ですが「その他これらに類する」ものとして、下水道、電話等が含まれます。なお、設備設置権等は、土地の所有者に認められているもので、供給事業者対象ではありません(部会資料56・4頁)。なお、新法制定前の裁判例としては、平成31年3月19日東京地判が、給排水管とガス管について、民法220条(排水のための低地の通水)、221条(通水用工作物の使用)、下水道法11条(排水設備の設置等)を類推して、相手方の承諾を認めたものが参考になります。
2 自力救済が基本的に不可能であることや通知が必要であることは隣地使用権と同様です。ただし、設備設置権等では必ず事前通知が必要ですので(新民法209条3項参照)、通知の相手方が所在等不明の場合は、公示による意思表示等をすることになります。
第3 隣地の竹林の切除
旧民法では、隣地の竹木の境界線を越えたものが「根」である場合は、土地所有者が切り取ることができましたが「枝」である場合は、切り取りを隣地所有者に請求できるだけでした。「枝」に関するルールは、新民法233条1項でも原則的なものとして残っていますが、同3項ではそれが修正されました(以下、修正ルールといいます)。
第二百三十三条
1 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
2 前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
3 第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
一 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
二 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
三 急迫の事情があるとき。
4 隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。
1 修正ルール(新民法233条3項)
隣地の竹木の枝(境界線を越える部分)を自ら切除できる場合とされたのは3つです。
①「切除するよう催告したにもかかわらず…相当の期間内に切除しないとき」(1号):2週間が目安
②「竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき」(2号)
③「急迫の事情があるとき」(3号)
2 竹木が共有物の場合(新233条2項)
(1)枝の切除は1項によって各共有者に対して求めることができ、当該共有者はそれに応じることができます。
(2)急迫の事情があるときは1項3号を根拠に認容判決を経ずに切除できますが、3号を根拠にできない場合は、竹木共有者全員について1号または2号の事情がなければ認容判決を経ずに切除することはできません。
もっとも、多数の者に対し催告して自ら切除するのではなく、竹林の共有者の一人について認容判決を得て強制執行により枝の切除を実行するという方法もあります。
3 費用負担についての明文化は見送られました。個別の事案ごとに、当事者間で協議や調整を行う必要があります。
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投稿者:
2022.02.14
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1 はじめに
今回は、所有者不明土地の解消に向けた法改正のうち、相続に関する改正を解説します。今回解説するのは、①遺産分割に関する改正、②相続財産等の管理及び清算に関する改正です。相続に関係する改正としては、相続登記の義務化もありますが、こちらは不動産登記法の見直しについて紹介する記事で扱うことにし、今回は上記①及び②の改正について解説することとします。
なお、今回解説する改正の施行日は、令和5年4月1日です(民法の一部を改正する法律の施行日を定める政令〔令和3年12月14日閣議決定〕)。
2 遺産分割に関する改正
(1)具体的相続分による遺産分割期間の制限
遺産分割期間の制限遺産分割に関する改正内容はいくつかありますが、そのなかでも重要なのは、具体的相続分による遺産分割期間の制限です。
ア 改正内容
今回の改正まで、遺産分割についての期間制限はありませんでした。しかし、今回の改正により、具体的相続分による遺産分割は、原則として、相続の開始時から10年間の間にしなければならないと規定されました。具体的相続分とは、生前贈与等の特別受益(民法903条)や寄与分(民法904条の2)を考慮して決まる相続分のことをいいます。
具体的相続分による遺産分割ができないと、例えば、被相続人から生前贈与等を「受けていない」相続人の取り分が具体的相続分による場合に比べて減ってしまうことになります。
それでは、実際にどのような条文になったのかを確認してみましょう。
新民法904条の3柱書本文では、「前三条の規定(注:特別受益や寄与分について規定)は、相続開始のときから10年を経過した後にする遺産の分割については、適用しない。」と規定されています。相続開始時から10年経過後にする遺産分割では、原則として、特別受益や寄与分を考慮されないこととなるのです。
ここで、「原則として」と書いたのは、同じく、新民法904条の3で例外規定が定められているからです。
同条ただし書では「ただし、次の各号のいずれかに該当するときには、この限りではない。」されています。そして、「次の各号」である同条1号及び2号では、例外事由として、①「相続開始のときから10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(1号)及び②「相続開始のときから始まる10年間の期間の満了前6箇月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅したときから6箇月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき」(2号)が規定されています。
相続開始時から、10年経過後でも、①や②に該当する事情があれば、具体的相続分による遺産分割が可能です。
なお、上記の例外に加え、10年の経過後でも、相続人の間で具体的相続分によって遺産分割をするとの合意がされた場合は、その合意に基づく分割が可能と考えられています。
具体的相続分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/926)、特別受益(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/954)、寄与分(https://kawanishiikeda-law.jp/blog/964)に関心ある方は、別途村上新村法律事務所のブログを参照ください。
イ 改正理由
それでは、なぜこのような具体的相続分による遺産分割期間の制限を設ける改正がされたのでしょうか。それは、所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化のためと考えられます。
本ブログの所有者不明土地関係法に関する総論の記事で、今回の改正は、所有者不明土地問題に対処するものであると解説しました。そこで解説した通り、所有者不明土地問題の解決には、発生予防の視点と利用の円滑化の視点が必要です。では、遺産分割の期間を制限することがどのように所有者不明土地の発生予防や利用の円滑化につながるのでしょうか。
まず、所有者不明土地の発生原因として、「相続登記がされないこと」が挙げられます。相続登記がされないことに対処するため、今回の改正で相続登記の義務化もされたのですが(相続登記の義務化については別記事で解説します)、相続登記のためには遺産分割が円滑に進むことが重要です。
ここで、具体的相続分による遺産分割ができない場合について考えると、この場合、生前贈与等を受けていなかった相続人は、具体的相続分による遺産分割と比べて、遺産分割において不利益に扱われます。そのため、具体的相続分による遺産分割を主張したい相続人には、期間内に遺産分割を行うインセンティブがあると考えることもできます。その結果として、遺産分割が促進されると考えられます。
このように、具体的相続分による遺産分割の期間制限を設けることは、間接的に遺産分割を促進するといえるのです。すなわち、遺産分割の促進→相続登記の促進(義務化)→所有者不明土地の発生予防という関係にあるのです。
そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、所有者不明土地の発生予防につながるのです。
また、既に存在する遺産分割長期未了状態の土地については、法定相続分による画一的で簡明な遺産分割がされれば、遺産分割未了状態の解消が促進されます。
そのため、具体的相続分による遺産分割の期間制限は、すでに存在する遺産分割長期未了状態の土地との関係では、遺産分割未了状態を解消し、その利用円滑化につながると考えられます。
ウ 経過措置について
このような上記改正の施行日については、前述のとおり令和5年4月1日からですが、遺産分割の期間制限については、経過措置に注意が必要です。
施行日は令和5年4月1日からなのですが、同日より前に発生した相続についても、本改正は適用されます(改正法付則3条第1文)。
もっとも、施行日から5年以内にこの10年の期間制限が経過してしまう場合には、施行日から5年を経過する時まで、家庭裁判所に遺産分割の請求(新民法904条の3第1号)をすることができます(改正付則3条第2文)。新民法904条の3第2号についても、同様の経過措置が定められています(改正付則第3条第2文)。
(2)その他の改正等
遺産分割に関するその他の改正としては、遺産分割の調停又は審判の申立ての取下げに関する制限、遺産分割禁止に関する規定の整備などが行われました。
3 相続財産管理及び相続財産の清算に関する改正等
(1)相続財産の管理及び清算に関する改正
今回の改正前にも、相続財産の管理に関する制度として、相続財産管理人がありました。改正前の相続財産管理では、相続財産の清算を目的とした相続財産管理制度(改正前民法951条以下)と保存のための相続財産管理制度(改正前民法918条2項、926条2項、936条3項、940条1項)の目的を異にする制度が同じ名称の「相続財産管理制度」として規定されていました。
ア 相続財産清算人
そこで、今回の改正では、改正前の清算のための相続財産管理制度において相続財産管理人とされていたものについて、その名称を相続財産清算人と変更し、生産手続の合理化を図るなどの改正が行われました。
具体的には、改正前は権利関係の確定に最低10カ月かかっていたところ、その期間を6カ月程度に短縮する等の改正がされています。
イ 相続財産管理
相財産管理制度については、相続人不分明の場合や熟慮期間経過後遺産分割前の暫定的共有状態の場合にも利用できる等の改正がされました。これにより、所有者不明土地の管理についても、同制度の利用が一つの選択肢となりました。
また、相続財産管制度が準用する不在者管理に関する規定についても、管理すべき財産の全部が供託されたことが管理人選任処分の取消事由に当たると規定され、その終了事由が明確化される等の改正がされました(家事新146条の2第1項、147条)。
(2)相続放棄をした者による管理についての改正
改正前民法940条1項では、「相続を放棄した者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産管理を継続しなければならない。」と規定されていました。
改正前民法では、放棄した者でも「自己の財産におけるのと同一の注意」をもって管理することが要請されていることはわかりますが、被相続人と同居していない場合などの場合であっても、このような義務を負うかが明確ではありませんでした。
改正後民法940条では、「相続を放棄したものは、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第952条第1項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならい。」と規定されました。
この改正により、相続放棄をした者による管理の範囲等が明確化されました。
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投稿者:
2022.02.03
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1 はじめに
令和3年4月21日、所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直しに関する法改正等が行われました(「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号))。
この法改正により、どのような変化が生じるのでしょうか。これから、このブログでは何回かに分けて上記の法改正等につき解説します。
なお、今回の法改正等は、令和5年4月から段階的に施行されます(「民法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」「相続等により取得した土地所有権の国庫へ
の帰属に関する法律の施行期日を定める政令」(令和3年12月14日閣議決定))。
2 所有者不明土地とは?
所有者不明土地とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地又は②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡が付かない土地をいいます。
平成29年の国土交通省の調査によると、所有者不明土地に割合は、実に22%にも上るそうです。22%という数字だけ見てもその大きさがなんとなく分かるかと思いますが、九州本島に匹敵する面積といわれると、より直感的にその広さが分かるかと思います。
3 法改正の理由
このような所有者不明土地問題を解消するために今回の法改正等がされました。しかし、そもそも土地の所有者が不明だとどのような問題があるのでしょうか。
復興事業や民間取引で土地が必要となっても、所有者が不明だと円滑な事業や取引の妨げとなります。さらに、所有者不明土地は適切な管理が行われていないまま放置されることが多く、所有者不明土地と隣の土地に対する悪影響を与えるといった問題があります。このように、所有者不明土地には、その土地自体が活用できないことによる悪影響だけでなく、隣地に対する悪影響(隣の土地が管理されず、草木が生い茂っている様子などを想像してみて下さい。)など様々な問題があるのです。
もっとも、所有者不明土地といっても、相応の費用を掛けて住民票や戸籍等で調査を行えば、所有者が判明することが多いです。しかしながら、例えば複数回の相続が繰り返されたことにより所有者不明土地が生じている場合には、土地の共有者が数十人以上になることもあり、所有者(共有者)の探索には多大な時間と費用が必要になります。
事業や取引の内容によっては、それだけのコストを掛けることが割に合わない場合もあり得ます。
そこで、所有者不明土地問題を解消するために、今回の法改正等が行われることになりました。
4 法改正等の概要
今回の法改正等の内容としては、①遺産分割に関する新たなルールの導入、②相続登記・住所等の変更登記の申請の義務化、③相続登記・住所等の変更登記手続きの簡素化・合理化、④土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設、⑤土地・建物に特化した管理制度の創設、⑥共有地利用の円滑化などの共有制度の見直し及び⑦相隣関係の見直しなどがあります。
これらの改正は、一見しただけでは所有者不明土地問題の解消にどのように関係するか分かりづらいと思います。
詳しくは各改正に関する記事で紹介しますが、上記の各改正内容は、所有者不明土地の発生を防止するための仕組みや所有者不明土地の利用の円滑化に関する仕組みを定めるものが多くなっています。
すなわち、所有者不明土地問題の解決には、大きく分けると、第1に所有者不明土地の増加をどのように防止するか(発生予防の視点)と第2に現に存在する所有者不明土地をどのように活用するか(土地利用の円滑化の視点)の2つの視点からのアプローチが必要ですので、これらの視点から規定を整備したのです。
例えば上記②の相続登記の義務化についてみると、改正前は相続登記が義務でなかったことが所有者不明土地増大の一因となっていたため、改正により相続登記を義務付け、相続による権利関係の変動を正確に登記簿に反映させる(発生予防の視点)といった具合です。
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投稿者:
2022.01.13
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オミクロン株の影響と思われるコロナの急激な拡大により、濃厚接触者の取扱いが問題になりました。以下の文書は、1月14日現在の厚労省のHPにある濃厚接触者に関するQ&Aの一部を抜粋したものです(詳しくは、以下を参照ください。新型コロナウイルスに関するQ&A(一般の方向け)|厚生労働省 (mhlw.go.jp)。これに下線を引きながら、濃厚接触者に関するポイントを➡で示します。
濃厚接触者は、新型コロナウイルスに感染していることが確認された方と近距離で接触、或いは長時間接触し、感染の可能性が相対的に高くなっている方を指します。
濃厚接触かどうかを判断する上で重要な要素は上述のとおり、1.距離の近さと2.時間の長さです。必要な感染予防策をせずに手で触れること、または対面で互いに手を伸ばしたら届く距離(1m程度以内)で15分以上接触があった場合に濃厚接触者と考えられます。新型コロナウイルス感染者から、ウイルスがうつる可能性がある期間(発症2日前から入院等をした日まで)に接触のあった方々について、関係性、接触の程度などについて、保健所が調査(積極的疫学調査)を行い、個別に濃厚接触者に該当するかどうか判断します。
➡ 濃厚接触者とは、発症2日前からの接触者を指し、保健所が判断します。
具体例としては、以下が指摘されています(国立感染症研究所感染症疫学センター「新型コロナウイルス感染症患者に対する積極的疫学調査実施要項」より)。
① 患者(確定例。以下同様)と同居あるいは長時間の接触(車内、航空機内等を含む。なお、航空機内の場合については、国際線においては患者の前後2列以内の列に搭乗していた者、 国内線おいては患者の周囲2メートル内に搭乗していた者をそれぞれ原則とする。)があった者
② 適切な感染防護なしに患者を診察、看護若しくは介護していた者
③ 患者の気道分泌液もしくは体液等の汚染物質に直接触れた可能性が高い者
④ 手で触れることの出来る距離(目安として 1 メートル)で、必要な感染予防策なしで、「患者」と 15 分以上の接触があった者(周辺の環境や接触の状況等個々の状況から患者の感染性を総合的に判断する)。
濃厚接触者と判断された場合は、保健所の指示に従ってください。濃厚接触者は、感染している可能性があることから、感染した方と接触した後14日間は、健康状態に注意を払い(健康観察)、不要不急の外出は控えてください。
➡ 現在、濃厚接触者は「14日間」の外出自粛を求められていますが、陽性者の数が増えると当然濃厚接触者も増えますが、ここまで人数が激増し外出できない者が増えてしまうと社会機能に与える影響が著しいことから、オミクロン株の現状(潜伏期間が短い等)も併せて鑑み、その14日という期間を短くできないかが議論され、通常の方については10日(職種によっては6日、エッセンシャルワーカー)ということになりました。
➡️ 速報 1月27日自粛期間が7日とされました。ピークアウトまでまだかかりそうなので、今後続いて、更なる期間短縮→検査を条件に自粛なし→症状なければ自粛なしに移行するかが、注目されます。
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投稿者:
2022.01.01
新年あけましておめでとうございます。激寒からはじまりそうですが、頑張りますので、今後もご愛顧お願いします。今年は、トラ尽くしにしてみました。各ページ別の画像をアップしていますので、お時間あるときにでも、お立ち寄りください。
ちなみに、この画像は、信貴山の朝護孫子寺の狛トラ、激ツヨおーら満載です。
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投稿者:
2021.12.28
平成27年8月から令和3年6月までの間に、不正不当行為等として宅建業法違反で行政処分を受けた行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。
54 不正不当行為
(1)不正不当行為は、法65条2項5号が定める概念で、単なる宅建業法違反として業務停止処分が下されるよりも、1つ上の違反行為類型と考えられます(だからこそ、原則業務停止30日、関係者の損害の程度や社会的影響が特に大きい場合には60日の処分がされる訳です。)。ただ、不正不当行為と同様に、その概念は不明確で、具体的処分例を踏まえ検討することが必要です。
(2)具体的処分例
ア 個人を買主とする媒介業務に関して、ⅰ投資用物件にもかかわらず、被処分者は住宅ローンの銀行融資申込書を買主に作成させ、銀行へ提出、ⅱ金融機関と買主に対し、それぞれ異なる内容の売買契約書(法37条1項書面)を作成・交付
業務停止22日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。
イ 売主業者と媒介業者が、
手付金と金銭貸借の斡旋額について内容の異なる2種類の重要事項説明書
売買代金と手付金、融資申込額について内容の異なる3種類の売買契約書
を作成し、低い価格が記載された重要事項説明書を買主に交付し、高い価格が記載された両書面を金融機関に提出した(これらを3つの取引で行った)
業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 原則業務停止30日の違反行為類型ですが複数回存在し、他に重要事項説明書の虚偽記載も複数の取引でなされていた(14-原則業務停止7日)ことが影響しています。
ウ 建物売買取引において預り金を流用した。
業務停止45日間 原則業務停止30日の違反行為類型ですが、本件事案では他に預り金不返還(41-原則業務停止15日間)や媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)も存在したことが影響しています。
55 報告命令、立入検査の拒否等
専任の宅地建物取引士の設置状況について報告するよう求められたが、報告期限までに報告を行わなかった
業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、本件事案では、同時に取引士設置義務違反行為(6-原則業務停止処分7日)も処理されたことが影響しています。
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2021.12.20
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平成27年8月から令和3年6月までの間に大阪府から、取引の公正を害する行為として、宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。
51 取引の公正を害する行為
(1)宅建業法は、第6章(監督)65条で、宅建業者に対する指示及び業務停止について定めています。
業務停止に関しては原則として法65条2項が定めるところで、その処分の重さに照らしても、違反行為類型は比較的明確です(不正不当行為は例外)。そして、指示に関して原則として定めるのが法65条1項で、その中でも2号の「取引の公正を害する行為」という概念を通じて、2項以外の宅建業法違反行為を集めて「指示」等の処分に導いていくという、バスケット条項的な位置付けがあります。
逆にいえば「取引の公正を害する行為」がどのようなものかについては、現実の処分例を参考にすることが不可欠です。
ちなみに「取引の公正を害する行為」そのものの処分は「指示」に留まり弱いですが、なぜそのような処分までするのかということを考えると他により重く処分される行為を行っていることが多いからであり、最終的な処分結果が必ずしも軽いものとはいえないように思います。
(2)具体的処分例
ア 売買契約に関する重要事項説明書に、対象物件の敷地の中に国所有の畦畔があるにも関わらずその旨を記載せず、売主であるにもかかわらず、売主の表示に事実と異なる表示をした。
指示のみ
イ 賃貸借契約書に、転貸借が可能であるにも関わらず記載せず、付属設備に存在しないエアコンを記載した。
業務停止10日間 他に重要事項不説明(14-原則業務停止7日)と契約書不備(17-原則業務停止7日)の違反があったことが影響しています。
ウ 広告費について虚偽の内容の領収書(130,000円受領したにもかかわらず140,000円と記載)を貸主に交付
業務停止22日間 原則指示の違反行為類型ですが、他に賃貸契約書記載不備の違反(17-共益費の外に月々支払う8,000円の不記載・原則7日間の業務停止)と限度額を超える報酬の受領(28-特別な広告をしていないにも関わらず広告費として130,000円を受領・原則15日の業務停止)があったことが影響しています。
エ 重要事項説明書及び売買契約書に、ア法39条2項に反する買主に不利な手付解除期日を設定、イ日付の異なる手付金の領収書を2通作成し、買主に交付
業務停止44日間 原則指示の類型ですがその他、重要事項説明書の虚偽記載が複数の取引でなされていたり(14-原則業務停止7日)、さらに内容の異なる重要事項説明書や売買契約書を作成し金融機関に交付されたりしたことが不正不当行為と認定されたことが影響しています(54-原則業務停止30日)。
オ 契約が成立していないにもかかわらず、手付金を受領
業務停止45日間 原則指示の類型ですが、他に預り金の返還拒否(41―原則業務停止15日)や預り金流用(54―原則業務停止30日)の違反があったことが影響しています。
カ 賃貸借契約締結前に媒介報酬を受領
指示のみ
キ 取引することができる物件であったにもかかわらず、貸主に確認を取ることなく、被処分者自らの判断だけで賃貸借契約の媒介を断り、入居申込者の賃貸借契約締結の機会を奪った
指示のみ
ク 建物の賃貸借契約に係る媒介業務において、被処分者は調査義務を怠り、4階を適法に使用することが出来ない旨重要事項説明書に記載せず
指示のみ
ケ 契約解除期限の到来前に、買主に対する金融機関の融資の承認が困難となったことを売主に通知・説明し、買主と売主との間で契約解除期限延長の合意の仲介をするなどの適切な業務の遂行をせず
業務停止7日 他に媒介契約書の不交付(11-原則業務停止7日間)があったことが影響しています。
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2021.12.08
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平成27年8月から令和3年6月までの間に担保責任特約違反・超過報酬等により宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。
22 瑕疵担保責任についての特約違反(法40条1項)
宅地建物取引業者でない買主との契約において、土地及び建物の瑕疵担保責任に関し「引渡完了日から3ヵ月以内に請求を受けたものにかぎり、責任を負う。」という買主に民法(1年間)よりも不利となる特約をした
業務停止7日間 原則指示にとどまる違反行為類型ですが、取引士以外の者が重要事項の説明をした違反(14-原則業務停止7日)のあることが影響しています。
28 限度額を超える報酬の受領(法46条2項)
(1)建物の賃貸借契約の媒介業務において、特別な広告を行っていないにもかかわらず、貸主から84,000円を「広告料」として受領 + 別の取引においても、同様に80,000円を「広告料」として受領。なお、特別な広告の例としては、大手新聞への広告掲載料等報酬の範囲内でまかなうことが相当でない多額の費用を要する広告とされています(東高判昭和57年9月28日金商665号41頁)。
業務停止30日間 原則業務停止15日間の違反行為類型ですが、複数の取引で行われていたことが影響しています。
(2)保証会社費用及び鍵交換費用について、実体のない金銭を請求し、媒介報酬の法定上限を超える金銭を受領した
指示のみ 原則業務停止処分15日の違反行為類型ですが軽減規定が適用されました。
38 相手方等が契約を締結しない旨の意思を表示した場合の再勧誘(法47条の2-3項、規則16条の12-1号ハ)
業務停止15日間
41 契約申込みの撤回時における預り金の返還拒否(法47条の2-3項、規則16条の12-2号)
(1)預り金を借主より受領した後、借主から申込みの撤回があったにもかかわらず、預り金を返還せず
業務停止15日間
(2)賃貸借の媒介業務において、賃貸借の申込みの撤回後も預り金15,300円の返還を拒み、相手からの預り金返還等請求の認容判決確定後も遅延損害金の一部を支払わなかった
指示のみ 原則業務停止15日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。
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投稿者:
2021.11.22
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平成27年8月から令和3年6月までの間に宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。
11 媒介契約締結時における書面の交付義務違反(法34条の2)
(1)法人間の売買契約の媒介業務において、売主から売却の依頼を受けたにもかかわらず、売主に対し、媒介契約書を交付しなかった。
業務停止7日間
(2)土地建物の売買契約(売主:法人、買主:個人)に関する媒介業務において、媒介契約締結時に、買主(依頼者)に対し、媒介契約書を交付しなかった
指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。
14 重要事項説明義務違反(法35条1乃至3項)
(1)必要的記載事項を欠く・虚偽記載
一般的な重要事項説明書のひな形は、Ⅰ対象となる宅地に直接関連する事項、Ⅱ取引条件に関する事項、Ⅲその他の事項で構成されています。ここで問題になっているのは、法35条関係であり、主としてⅠに関する事項です。
ア 賃貸借契約に関する重要事項説明書に抵当権の詳細(法35条1項1号)、賃貸保証料、契約事務手数料(同条項7号)を記載せず
指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。
イ 土地建物の売買契約の媒介業務において、重要事項説明書に売買対象物件が建築基準法規定の容積率・建蔽率の基準を超過している旨を記載せず(法35条1項2号)
指示のみ アの事例と同様、軽減規定が適用されました。
ウ 重要事項説明書に、
ⅰ 代金又は交換差金に関する金銭の貸借のあっせんの内容について、金利等の詳細を記載していない(法35条1項12号)
ⅱ 代金以外に授受される金額について、固定資産税等精算金の具体的な額を記載していない(同7号)
業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 原則業務停止7日の違反行為ですが、本件事案では上記手法が複数の取引で用いられており、さらに内容の異なる重要事項説明書や売買契約書を作成したり、媒介業者がそれらを買主と金融機関に交付するなどしていたことが、不正不当行為と認定されたことが影響しています(54-原則業務停止30日)。なお、媒介業者はさらに誇大広告(7-原則業務停止7日)も行っていたことから、売主業者よりも業務停止日数が1日多くなっています。
(2)重要事項説明書の交付はしたが説明せず
業務停止7日間 なお、関係者に損害が発生した場合には15日間、その損害が大きければ30日間の業務停止となります。
(3)取引士以外の者が重要事項について説明
業務停止10日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に契約書記載不備の違反(17-原則業務停止7日)もあることが影響しています。
(4)重要事項説明書の不交付
建物の賃貸借契約において重要事項説明書のコピーを交付して説明
指示のみ 交付しなかった場合は、少し重たく原則業務停止15日の違反行為類型とされていますが、軽減規定が適用されました。
17 売買契約等の締結時における書面の交付義務違反(法37条1乃至2項)
(1)不動産売買契約書に受領した108,000円(代金及び交換差金以外の金銭)について記載せず(法37条1項6号)
業務停止7日間
(2)建物1室の賃貸借契約に関する媒介業務において、賃料・共益費の他に月々支払う金銭8,000円が定められていたにもかかわらず、その旨を賃貸借契約書に記載しなかった(法37条2項3号)
業務停止22日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に限度額を超える報酬の受領(28-原則業務停止15日)が影響しています。
(3)賃貸借契約書において賃料に共益費を含め記載した(法37条2項3号)
業務停止10日間 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、他に重要事項説明義務違反(14―原則業務停止7日)のあることが影響しています。
(4)売買契約書において、
ア 建物の代金に係る消費税を記載しなかった(法37条1項3号「代金…額」を記載する際には「当該売買につき課されるべき消費税等相当額」を明記する必要があります(「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方(国土交通省)」34頁)。
イ 瑕疵担保責任について、引き渡し以後2年以内であれば買主は売主に対して責任を追及できるという契約内容であるにもかかわらず、事実と異なる記載をした(法37条1項11号参照)
業務停止44日間(売主業者)、45日間(媒介業者) 重要事項説明義務違反の事例(14-(1)ウ)と同じものです。そちらをご参照ください。
(5)賃貸借契約において、賃貸借契約書を借主に交付していない。
指示のみ 書面交付すらしていないので、原則業務停止15日の違反行為類型ですが、軽減規定が適用されました。
18 宅地建物取引士の記名押印義務違反(法37条3項)
不動産売買契約書において、宅地建物取引士に記名押印させなかった
業務停止7日間 原則指示にとどまる違反行為類型ですが、他に不動産売買契約書の記載不備(17―原則業務停止7日)があったことが影響しています。
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投稿者:
2021.11.18
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平成27年8月から令和3年6月までの間に宅建業法違反で行政処分を受けた違反行為は、以下のとおりです(以下の番号は、別表第1に付した番号に従っています。別表第1については、https://m2-law.com/blog/3368/ 参照)。
1 変更の届出義務違反(法9条)
大阪市○○から大阪市△△へ事務所を移転しているにもかかわらず、事務所所在地の変更の届出を行わなかった。
業務停止30日間 届出義務違反(法9条)は指示に留まる違反行為類型ですが、本件事案では他にも専任宅地建物取引士不存在(6-原則業務停止7日間ですが、知事指摘後の違反状態の是正がないと30日間)と報告拒否(55-業務停止15日間)の違反行為が同時に処理されたという事情がありました。
4 営業保証金の供託等に関する義務違反
宅建業者は、営業保証金を供託しなければなりません(法25条1項)が、その金額は本店の場合で1000万円と高額であることから、多くの方が、宅建業保証協会の社員となる形でその負担を免れています。
しかし、宅建業保証協会の社員たる地位を失うと、原則通り営業保証金を供託しなければならず、その期間は地位喪失から1週間以内とされています(法64条の15前段)。ところが、本件事案では、その義務を守れませんでした。
業務停止30日間 なお、上記と類似の場合において、業務停止期間経過後も供託をせず、その情状が特に重いとされると、営業免許が取り消されたものがあります(法66条1項9号)。
6 専任宅地建物取引士の設置義務違反(法31条の3)
宅建業者は、事務所等ごとに、専任の宅地建物取引士(以下、取引士といいます)を置かなければなりません(法31条の3―1項)。また、既存事務所等で、取引士がいなくなれば、2週間以内に必要な措置を執らなければなりません(同条3項)。ところが、本件事案では、新たな専任の取引士を設置しませんでした。
業務停止7日間
7 誇大広告等の禁止違反(法32条)
(1)web広告に、所有者から媒介依頼を受けていない物件を表示+土地の所在を誤り建物が存在しないのに「新築一戸建」等の表示
指示のみ 原則業務停止7日の違反行為類型ですが、監督基準第4-6によれば「指示処分に軽減することがある」旨の記載があり、それにより軽減されたものです(以下、軽減規定といいます)。なお、軽減事由としては、以下のようなものがあります。
ア 関係者に損害が発生せず、その見込みもない場合
イ 知事の指摘に応じ直ちに、損害補てん取組を開始し、補てん内容が合理的で対応が誠実な場合等
ウ 知事の指摘に応じ直ちに、違反状態を是正した場合(損害が発生した場合は、上記②の事由に該当することが必要)等
エ その他特に軽減すべき特別な事情が存在する場合
(2)web広告で、入居者がいて取引できない物件を4年間掲載
業務停止7日間
10 取引態様の明示義務違反(法34条1項)
宅建業者は、広告をするとき、自己が、契約当事者なのか・代理人なのか・媒介なのかを明示しなければなりません(法34条1項)。ところが、本件事案では、売主(当事者)でないにもかかわらず、取引態様を売主としてweb(SUUMO)に10日間広告を掲載しました。
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