不動産

不動産関連②賃貸業と改正民法・一部滅失等

2021.04.30

1 一部滅失等関連の改正民法の概要は、以下のとおりです。

 

民法611条

1 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

2 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。

 

(1)1項に関する重要点は、下線に関する部分です。

 改正前民法611条では「賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したとき」に、賃借人から賃料減額請求がされて初めて賃料が減額されるということになっていましたが、改正民法では、賃借人から減額請求をされなくても、当然に減額されるということになりました。

 また、改正前民法は、賃料が減額される場合は一部「滅失」に限られていましたが、改正法では「その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合」として、賃料が減額される場合が拡大されました。この「その他…」については、どのような場合か明確ではなく、解釈に委ねられますが、典型例としては、水害で水浸しになって賃貸目的物が使用できないような場合が考えられます。

 

(2)2項に関する重要点は、同じく下線に関する部分です。

   先ず「滅失」以外の場合は、1項の場合と同様、解釈に委ねられています。

 次に1項と比較した場合「それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは」という文言がありませんから、借主に帰責事由がある場合でも、借主から解除できることになっています。この場合に貸主が被る不利益は、帰責事由ある借主が、債務不履行の一般原則に従って、損害賠償義務を負うという形で、回復されることになります。

 

2 一部滅失関連を契約書で定める場合の検討

  民法の定めといっても、それが任意規定であれば特約(契約)によって修正できること、ただ、契約が行き過ぎると強行法規(公序良俗)に反し無効になることは、修繕関連で述べたとおりです。

  ちなみに、標準契約書における一部滅失関連条項は、以下のとおりであり、その内容を説明します。

 

(一部滅失等による賃料の減額等)

第12条 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、それが乙の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用できなくなった部分の割合に応じて、減額されるものとする。この場合において、甲及び乙は、減額の程度、期間その他必要な事項について協議するものとする。

2 本物件の一部が滅失その他の事由により使用できなくなった場合において、残存する部分のみでは乙が賃借をした目的を達することができないときは、乙は、本契約を解除することができる。

 

(1)重要点は、下線に関する部分です。

民法の規定では、一部滅失等の場合、当然に賃料が減額されるということになっていますが、修繕の範囲や修繕の期間などによって、一部減額する金額や期間に争いが生じうるところです。そこで、上記契約書では、民法611条1項を補完する形で、速やかな通知に基づいて借主と貸主が協議を行い、その協議によって解決を図るような定めとされています。

 

(2)なお、現実には、賃料を減額しなくても、一定期間賃料を免除するとか、代替物件を準備するとか、他の方法で借主が満足することも考えられます。そのような対応が可能かは「その他必要な事項」の中に含まれるかという解釈問題になりますが、より安全を図るのであれば、賃貸人としては「減額の程度」を「減額の要否、程度」とした方がよいと思われます。

 

3 一部滅失等とは

(1)一部滅失等とは、賃借物の物理的な破損だけでなく、設備の機能的な不具合等も含まれることは、改正民法が、賃料減額原因を「滅失」だけでなく「使用及び収益ができなくなった場合」にまで広げたことからも明らかです。

(2)旧法下の裁判例では、一部使用不能が通常の居住を不可能にするほどの状態かを重視する傾向にある(雨漏り部分を面積案分する等)とされていましたが、賃貸住宅管理業者に対するアンケート調査によれば、現場対応として「話し合い」を選択する率が70%を超えていました。それは話し合いの中で、賃料減額に限らず、謝罪、速やかな修繕等、適切な対応がなされてきたということを意味するのかもしれません。現場では、賃借物の使用収益についてトラブルが生じることは決して少ないということはなく、賃料減額原因の文言が拡大された現在、仮に裁判という段階にまでいけば、賃料減額が認められる場合はより増えるように思われます。

ですから、賃貸業者としては、問題が生じた場合は、賃借人と一層誠実に協議していくことが望まれるでしょう。賃借物を使用しているのは賃借人なので、現状は賃貸人にはよくわからないというのが本音でしょうから、賃借人に引き渡す前の段階で重要個所を写真で残しておく等、データを保管しておいた上で、いざ賃借人から修繕等の通知があったときは(これは賃借人の義務とされています、615条)、速やかに賃借物を訪問して現状を確認、今後の対応をスケージュールや費用も踏まえた上で具体的に協議すべきと思われます。

(3)ちなみに、トラブルの原因として多いものは(全てが、賃料減額原因となる訳ではないですが)、風呂が使えない、エアコンが作動しない、配水管の詰まり、上階からの漏水、雨漏りとなっています。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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