2021.01.27
法人破産を避け、事業再生をはかるには、負債対応が必要で、そのためには民事再生という選択肢があります(負債対応の仕方については、次のブログを参照ください。https://m2-law.com/blog/1190)。今回は、村上新村事務所が対応した民事再生手続について、解説したいと思います。
1 Ⅹ社(再生債務者)は、食品の製造・加工・販売業者で、本社工場を所有しており、その本社工場には、メインバンクに対する極度額3億円の根抵当権が設定されていました。Ⅹ社は、多額の負債を抱えて民事再生手続開始の申立を行い、会社の事業は存続させ、負債の一部をカットした上で、残った負債を営業により生じた利益の中から、10年間の分割で支払っていくという自力再生の計画を立てました。
2 ちなみに、民事再生手続では、再生債務者の財産に設定されている担保権は別除権として、再生手続とは無関係に実行することができるのですが、通常、事業を継続していく上で重要な財産については、別除権者(金融機関が多いです。)との間で、その財産の評価額を合意し、その評価額を分割等で支払う旨の合意(以下、別除権協定といいます。)をして、競売等することなく、その財産を受け戻すという方法を取るのが一般的です。
3 しかし、本件では、本社工場の評価について、メインバンクたる別除権者(以下、単に別除権者といいます。)との間で合意できず(再生債務者としては、1億2000万円が上限ではないかと考えていましたが、別除権者は1億8000万円ほどの評価をしていました。)、別除権協定が整わなかった結果、別除権者より、本社工場について競売申立がなされ、競売手続が開始することとなってしまいました。
このまま競売手続が進行し、本社工場が売却されてしまうと、当然、会社の事業を継続することができなくなり、計画していた自力再生もできず、民事再生手続自体が頓挫することになってしまいます。
4 そこで、中止命令という制度により上記競売手続の中止を求め、同時に、担保消滅許可(裁判所の定めた評価額を納付することにより、特定の財産の上に存在する担保権を消滅させるという制度)の申立を行いました。
結果的に、本社工場は約1億2000万円と評価され、再生債務者は、この金額を別の金融機関より借り入れて納付することにより、別除権者などの本社工場に対する担保権の消滅を得ることができました。
そして、本社工場を利用して自力再生を図るという当初の計画についても認可決定を得ることができ、無事に再生を果たすことができることとなりました。民事再生手続において、中止命令・担保消滅許可という制度を利用し、事業再生を図った例として、紹介します。
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不動産
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