2021.01.27
事業を継続し、再生していくには、会社分割が役立つことがあります。法人破産といっても、事業がなくならない形(事業譲渡・会社分割)もあります(概要は、弊所ブログ「ビフォア法人破産②負債対応」を参照ください。https://m2-law.com/blog/1190)。以下では、村上新村法律事務所が対応した事例を紹介したいと思います。
1 Ⅹ社は、運送業・倉庫業を営む会社で、平成20年ころまでは順調に売上も伸ばしてきていましたが、平成21年ころから売上が落ち始め、平成23年3月の東日本大震災の影響で予約のキャンセル等が相次ぎ、平成23年末ころには多額の金融負債だけでなく、1000万円を越える税金・社会保険といった公租公課の滞納を抱えて、苦しんでいました。
相談を受けた段階では、事業は黒字化していましたが、民事再生をしても、公租公課は一般優先債権として、債権カットの対象になりません。多額の公租公課を支払っていける程の事業規模でもありませんでした。こういう場合、事業廃止→破産という道に進むことが多いですが、単純に破産申立をしてしまうと、多くの従業員を路頭に迷わせ、また、既に予約の入っている顧客に大きな迷惑をかけてしまうことになるので、どうしたらよいか悩んでおられました。
2 そこで、事業そのものは何とか継続させ、従業員や既に予約の入っているお客様に対して迷惑をかけない方法を検討し、Ⅹ社の代表者の親族が持っていたY社にⅩ社の事業そのものを引き継いでもらい、できるだけ破産の影響が大きくならないように、会社分割を行うこととしました。
具体的には、Ⅹ社が有していた行政上の許可と備品及び従業員をY会社に引き継いでもらうという会社分割を行い、Ⅹ社が所有していた自動車などを、適正価格でY社に売却することにより、事業そのものを生かす形を取りました。
3 そして、Ⅹ社は、自己破産申立を行い、多額の負債等を整理することができました。破産はしましたが、会社分割を入れることで、事業そのものを存続させた事例です。このような手法を用いて事業自体を残すことにより、従業員や顧客に大きな迷惑をかけずに負債を整理することのできた例として紹介します。
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