企業法務

パロディ

2022.09.13

パロディとは「文芸・美術作品等の原作を模し、あるいは滑稽化した作品を指し、原作を揶揄するもの、社会を風刺するもの、原作を利用して新たな世界を表現するもの等」とされますが、実は著作権に関する法的問題でもあります。

例えば、絵画のパロディについていえば、他人の絵画の本質的な特徴を直接感得できることを前提として「原作を模す」といっても、そこには様々な動機や表現方法があり、必ずしも原作者の同意を得られるとは限りません。

すると、原作者の著作権としての同一性保持権(著作物等につき、その意に反して変更・削除・改変を受けない権利、著作権法20条1項)や翻案権(著作物を翻訳・編曲・変形、脚色・映画化、その他翻案〈新たな著作物を創作〉する権利、著作権法27条)を侵害するのではないかが問題になりますが、かといって、原作者の同意がなければ全てが違法といってしまうのも行き過ぎと考えられるからです。

パロディの取扱いは、国々によって異なりますが、日本では、明文の定めを置かない形を採っており、ただ、表現の自由という憲法上の権利(憲法21条)も含んだ関係で、個々に許される場合もあるのではないかが検討される傾向にあります。

 

ちなみに、左の画像はフェルメールの真珠の耳飾りの少女で、右は、、、(/ω\)

村上としては結構頑張ったつもりですが、そもそも「本質的な特徴を直接感得できる」のかが、争われるのかもしれません(笑)。

 

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FCガイドライン②FC本部の基礎知識

2022.08.09

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1 はじめに

  前回の記事では、セブンイレブンに対する排除措置命令(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)を素材としてフランチャイズ契約と独禁法上の「優越的地位」に関する考え方をフランチャイズ・ガイドライン(以下、単にGLと略します。)の規定を参照しながら解説しました。
 このGLですが、実は、令和3年4月、大幅に改正されています。そこで、今回は、GLについて、①優越的地位の濫用に関する改正を中心に解説するとともに、②その他の改正についても簡単に紹介することとします。

 

2 GL改正の背景

具体的な改正内容を紹介する前に、そもそも、なぜ今回のGL改正が行われたのかというと、それは、コンビニフランチャイズ問題が背景にあるとされています。

報道等もされているところですが、近年、コンビニエンスストアでの24時間営業に関し本部加盟店間のトラブルが生じています。このような事態を受けて、公正取引委員会は大規模な調査を行い、令和2年9月「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」を、公表しました(ポイントは、以下のとおり。200902_03.pdf (jftc.go.jp))。

そこで明らかになった問題点をふまえて、今回のGL改正となりました。このような経緯から、内容的にもコンビニフランチャイズを念頭においたと思われる改正が多くなっています。

しかし、今回のGL改正の対象は、コンビニフランチャイズに限定されておらず、他のフランチャイズにも妥当し得るものとなっている点には注意が必要です。

 

3 優越的地位の濫用についてのGL改正

  先ず、優越的地位の濫用に関するGL改正を見ていきます。
 前回の記事で紹介したのは「優越的地位にあるかどうか」についてのGLの考え方ですが、これを前提として「優越的地位にある」本部がした行為等が「どのような場合に優越的地位の濫用に当たり得るか」といった想定事例が示されています(GL3(1)ア)。

それでは、今回のGL改正により、どのような事例が追加されたのか、具体的に紹介します。

(1)仕入数量の強制

「本部が加盟者に対して,加盟者の販売する商品又は使用する原材料について,返品が認められないにもかかわらず,実際の販売に必要な範囲を超えて,本部が仕入数量を指示すること又は加盟者の意思に反して加盟者になり代わって加盟者名で仕入発注することにより,当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。」

  下線部分が「無断発注による仕入数量の強制」として追記されました。もともと仕入数量の強制は想定事例として存在したのですが、今回の改正により、本部が加盟者に無断で仕入れを行うこと等に規制が及ぶことが明確にされました。

(2)見切り販売の制限

GL(注8)では「見切り販売を行うには,煩雑な手続を必要とすることによって加盟者が見切り販売を断念せざるを得なくなることのないよう,本部は,柔軟な売価変更が可能な仕組みを構築するとともに,加盟者が実際に見切り販売を行うことができるよう,見切り販売を行うための手続を加盟者に十分説明することが望ましいとされました。
 正当な理由のない見切り販売の制限は、今回の改正前からも想定事例として規定されていました。今回の改正では、見切り販売の「手続」についても、実質的に見切り販売が可能となるような仕組みづくりを求める注が新設されました。
 なお、上記の改正の「望ましい」という部分が、仕組みの構築にまでかかるのか、それとも仕組みの構築自体は本部の義務とされているのかについては、二通りの読み方ができるように思います。この点については、GLの「原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方」のなかで「仕組み構築を義務付けるのは行き過ぎではないか」という「意見」に対し「システム管理上やむを得ない事情により複雑なものとなっているのかについては,個別事案ごとの判断を要するものですが,本改正では,柔軟な売価変更が可能な仕組みの構築を慫慂しています」(GL原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.99)という「考え方」が示されていることから、仕組みの構築自体についても義務というわけではなく「望ましい」とされているものと考えることができます。

(3)営業時間の短縮に係る協議拒絶

  「本部が,加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。」

  この想定事例は、今回の改正により新設されたものです。ただ、この規定はあくまでも協議の拒絶を禁止しているものですから、協議の結果として合意ができなかったとしても、直ちに優越的地位の濫用に当たると判断されるわけではありません。また、契約書中に協議に関する定めがない場合には、そもそもこの想定事例に当てはまりませんので、協議を拒絶してもそのこと自体は優越的地位の濫用と評価されません。

(4)事前取決めに反するドミナント出店等

ドミナント出店とは、特定の地域に店舗を集中させることですが、GLは、次のようなドミナント出店が「正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合」には、優越的地位の濫用に該当するとしています。

即ち「ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるにもかかわらず,ドミナント出店が加盟者の損益の悪化を招く場合において,本部が,当該取決めに反してドミナント出店を行うこと。また,ドミナント出店を行う場合には,本部が,損益の悪化を招くときなどに加盟者に支援等を行うとの事前の取決めがあるにもかかわらず,当該取決めに反して加盟者に対し一切の支援等を行わないこと。」は、優越的地位の濫用にあたる場合があります。

 この想定事例は、今回の改正で新設されたもので、ドミナント出店自体が直ちに独禁法に違反するものではないとの考え方を前提とした上で、優越的地位の濫用になり得る類型を規定しています。また「事前の取決め」がない場合には、ドミナント出店をしても直ちに優越的地位の濫用にあたるわけではありません。

 

4 その他のGL改正について

  以上は、今回の改正のうち「GL3フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引」に関する「(1)優越的地位の濫用について」のものです。今回の改正では、その他に「GL2本部の加盟者募集について」に関する「(3)ぎまん的顧客誘引」の観点からも規定が新設されています。

  具体的には、①「人手不足,人件費高騰等の経営に悪影響を与える情報」の開示が望ましいとする規定(GL2(2)ウ)、②ドミナント出店に関して配慮を行う旨を提示する場合にはその配慮の具体的内容を明らかにしたうえで取り決めに至るよう留意することを促す規定(GL2(2)ア(注3))及び③募集時の説明におけるモデル収益等が予想収益と誤認されないように求める規定(GL2(2)イ(注4)、が新設されています。
 このうち、①は優越的地位の濫用のところで解説した時短営業等に関わるものであり、②は、優越的地位の濫用の箇所で解説したドミナント出店に関する規定と関係するものです。
 時短営業やドミナント出店は、主として、契約前は「ぎまん的顧客勧誘」の観点から問題となり、契約後は「優越的地位の濫用」の観点から問題となるため、このように複数の規定がされたものと思われます。

 

5 まとめ

  今回以上のような改正がされましたので、本部としても、この改正GLを踏まえた態勢を整えておく必要があると思われます。
 また、今回解説したのは、独禁法関係の一部についてです。独禁法上問題がない場合でも、例えば民事上の問題が生じる場合もあり得るところですし、逆に民事上の問題に独禁法の問題が関係してくることもあり得ます。
 本部としては、フランチャイズ・システムには複数の法規制等があることを意識して、適切な対応をとれるように契約書の整備などをしておく必要があると思われます。

 

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優越的地位の濫用①FC本部の基礎知識

2022.07.21

1 はじめに

  コンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパン(以下「セブンイレブン」といいます。)は、公正取引委員会から排除措置命令(平成21年(措)第8号、ただし改正前の独占禁止法第二〇条第一項、同第二条第九項第五号・不公正な取引方法第十四項第四号、以下「平成21年措置命令」といいます。)を受けたことがあります(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)

 平成21年措置命令については、村上新村法律事務所のアメブロ記事で解説したことがありますが(フランチャイザーの優越的地位の濫用 | 村上・新村法律事務所のブログ (ameblo.jp))、同命令は、セブンイレブン本部が加盟者との関係で優越的地位にあることを前提にしたものであることから、今回は、フランチャイズと独禁法上の「優越的地位」について、少し掘り下げて解説してみます。

2 フランチャイズと優越的地位の濫用

(1)アメブロ記事の振返り

  独占禁止法(以下「独禁法」といいます。)は、優越的地位の濫用を禁止しています(独禁法2条9項5号)。しかしながら、フランチャイズ・システムにとって、本部の統制等は、本質的なものであり、また、そのこと自体に重要な価値があります。そのため、本部による統制の全てが独禁法に違反するとすれば、それはフランチャイズ・システム自体の否定を意味します。しかし、公正取引委員会も、フランチャイズ・システム自体が直ちに独禁法に違反するとはしていません。

  逆に、公正取引委員会は、フランチャイズと独禁法の関係についてのガイドラインを公表しています。そこでは、今回のテーマである「優越的地位の濫用」について、「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)にある本部が,加盟者に対して,フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて,正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合には,フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当する。」と規定されています(フランチャイズガイドライン〈以下、FCGLということがあります。〉3(1))。
 ここまでは、アメブロ記事で解説したところです。

(2)「優越した地位」

   今回は、「優越的地位の濫用」の前提として、いかなる場合に本部が「優越した地位」(優越的地位)に当たると判断されるのか、その判断の要素や方法についてみてみたいと思います。もう一度前記FCGLを見てみると「「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)」と規定されていて、その(注7)には、以下のように規定されています。

 

   「フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引において,本部が取引上優越した地位にある場合とは,加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,本部の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても,これを受け入れざるを得ないような場合であり,その判断に当たっては,加盟者の本部に対する取引依存度(本部による経営指導等への依存度,商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等),本部の市場における地位,加盟者の取引先の変更可能性(初期投資の額,中途解約権の有無及びその内容,違約金の有無及びその金額,契約期間等),本部及び加盟者間の事業規模の格差等を総合的に考慮する。」

 

  細かく読みづらいかと思いますが、大まかにいうと、諸事情を総合した上で、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような場合に本部が「優越的地位」にあると判断されるというように言ってよいかと思います。そして、ここで考慮される事情というのが、①加盟者の本部に対する取引依存度、②本部の市場における地位、③加盟者の取引先の変更可能性、④本部及び加盟者間の事業規模の格差等というわけです。

 

3 平成21年措置命令について

  ガイドラインの規定だけを見ていても抽象的で分かりづらいところがあると思いますので、上記のガイドラインに即して、セブンイレブンの平成21年措置命令の判断を説明するとどうなるかを解説してみたいと思います。

  平成21年措置命令では、優越的地位に関する結論部分において、「前記アからエまでの事情等により,加盟者にとっては,セブン-イレブン・ジャパンとの取引を継続することができなくなれば事業経営上大きな支障を来すこととなり,このため,加盟者は,セブン-イレブン・ジャパンからの要請に従わざるを得ない立場にある。したがって,セブン-イレブン・ジャパンの取引上の地位は,加盟者に対し優越している。」と判断されています。
 そこで、重要なのが「前期アからエまでの事情等」になるわけですが、このアからエの概要は以下のようなものでした。

 

  ア:セブンイレブンがコンビニフランチャイズの中で最大手の事業者であるのに対して加盟者のほとんどが中小の小売事業者であること等

  イ:加盟店基本契約の期間が15年であり、基本契約のタイプに応じて、契約期間終了後に1年間の競業避止義務が課されたり、店舗の返還を求められること等

  ウ:セブンイレブンが加盟店に対し、推奨商品の仕入れ先を提示し、加盟店で販売されている商品のほとんどすべてが推奨商品であること等

  エ:セブンイレブンが加盟店の所在地区に経営相談員を配置し、同相談員を通じて加盟店に対し経営に関する指導,援助等を行い、加盟店がこれに従った経営を行っていること等

 

  上記のア~エの事情が具体的にどのように評価されているのかまでは措置命令自体からは直ちに明らかではありません。
 もっとも、上記アの事情は、ガイドライン(注7)のいうところの「本部の市場における地位」や「本部及び加盟者間の事業規模の格差」に関係する事情と考えられ、平成21年措置命令の事案では、本部の市場における地位は強く、本部・加盟者間の事業規模の格差も大きかった等と評価されている可能性があります。
 また、上記イの事情は、加盟店の取引先の変更可能性が乏しいとの評価につながる事情と考えられます。
 さらに、上記ウ及びエの事情は、加盟店の本部に対する取引依存度が大きいことを示す事情と評価されるものと思われます。

  以上を踏まえると、平成21年措置命令の事案では、「コンビニフランチャイズ市場で強力な地位を占める本部とほとんどが中小事業者である加盟店の事業規模の格差は大きく、本部が商品の仕入れや経営の指導等を行うことにより、加盟店の本部への依存度は高いことに加え、契約期間や競業避止義務の関係からしても、加盟店は、その取引先を変更することが難しく、加盟店としては、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような状況にあった(=本部が優越的地位にある)」というような評価がされていたのではないかと考えられるところです。

 

4 まとめ

  以上のように、そもそも本部が独禁法上の「優越的地位」にあるかどうかは、公正取引委員会が公表しているフランチャイズガイドラインに記載されている考慮要素を事案に応じて評価・検討して考えていくことになると思われます。
 もっとも、最終的には諸事情を総合的に考慮することになりますので、微妙な判断となる可能性が高いと思われます。さらに本部が優越的地位にあることによってどのようなリスクがあるか等については、個別の事案に応じた検討が不可欠と思われます。
 そのため、本部として、「優越的地位」にあるかどうか(どの程度優越的地位にあると判断される可能性があるか)や、そのことによってどのようなリスクがあり、これにどう対処すべきか等について関心があれば、当事務所などフランチャイズ契約を得意とする事務所にご相談ください。

 

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四半期決算

2021.10.01

 

 四半期決算とは、一年を四つにわけて、3か月毎に決算する仕組みで、上場会社に義務付けられている制度です。これが始まると、会社経営が目まぐるしくなり、大変なんですが「生きている(?生かされている、笑)」という実感は湧きますね。

 実は、村上・新村法律事務所の顧問先であるアスタリスクが、昨日(9月30日)、東証マザーズに上場しました。アスタリスクというのは、スマフォやパソコンのキーボードで見かける「*」の表示で、村上は「米印みたいな」と説明する叔父さんですが、正確には星を意味するようですね。最近は、ユニクロとの訴訟で、一躍有名になりましたね。

 

 鈴木社長とは、知り合ってからちょうど10年になりますが、ついに偉業を果たされました。ただ、健康に留意され、次の、またそのまた次の、ステップに上がって頂けることを、希望し、応援します(^.^)/~~~

 

 ところで、実は、うちも法人化して、昨日で丸9年が終了し、今日(10月1日)から10年目に突入します。まだまだ全然爪先にも及びませんが、村上も頑張っていきたいと思います。

 

 やっと緊急事態宣言もあけましたし、今から福知山に行ってきます🚙。

 

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顧問弁護士④クレーム対応

2021.03.24

クレームの語源は「claim」という単語で、本来は要求・請求といった意味ですが、日本語的には苦情と理解されることが多いようです(いわゆる和製英語とされています。)。ですから、ここでは「商品・サービスに対し苦情を述べられた場合の対策」として話を進め、その中での弁護士・顧問契約の位置づけを説明したいと思います。

 

1 正当か不当か

 苦情の中にも、本来的に不当なものと正当なものがあります。

 例えば、スーパーの店員の態度が気にくわないとクレームを述べ商品を受け取ったにも関わらず代金を支払わないのは明らかに不当です。しかし、商品が痛んでいるからとクレームを述べ代金返還や交換を求めることは、本当に商品が痛んでいるのであれば正当です。ただ、その場合でも過度の損害賠償請求をすると不当になります。

 また、例えば、引越しの際にグラスが壊れたこと自体、殊更問題視して、執拗に元に戻せと迫ることも不当です。グラスが壊れたことを悲しいと思っていることに共感を求めているのかもしれませんが、家族や友人ならまだしも契約の相手方にすぎない引越し業者にそれを求めることは、不当な要求です。壊れた物を元通りにすることは物理的に不能ですし、仮に、修復が可能であったとしても、1万円のグラスを30万円かけて修復するよう求めることは、社会経済的に不能を要求するものだからです。一時期話題になりましたが、土下座を求める構造と似ています。

 ここではわかりやすい例を示しましたが、実際は、不当か正当かが不明確な場合や、両社が混在している場合などもあり、それらの判断は決して容易ではありません。この点をきちんと区別しないまま対応すれば、新たなクレームに発展したり、企業の信用を低下させかねません。他方、不当なクレームに安易に応じたことで、クレーマーが勢いづいたり、他の顧客からの同様の要求を誘引してしまったりということもありえます。

この点、弁護士であれば、クレームに対して、それらが法的に不当か正当かを判断し、適切に対応することができます。

 

2 弁護士による交渉

  弁護士が企業の代理人としてクレーム対応することで、経営者・従業員の方は事業活動に専念することができます。相手が直接クレームを繰り返してきても、企業として基本的な対応(謝罪、交換、弁償等)をした後であれば、なすべきことは終えてるので「弁護士に連絡して下さい。」といえばすみます。

また、弁護士は交渉の専門家ですから、相手のクレームが悪質であったとしても、断固とした交渉を進めることができます。弁護士として刑事告訴や損害賠償請求等の法的手段について知らせることの効果は絶大です。

弁護士が電話したり、内容証明郵便で受任通知や警告書などを送付した途端に、相手からの連絡がなくなることは珍しくありません。

 

3 弁護士による法的対応

(1)刑事手続

相手方の行為がなんらかの犯罪に該当すれば、警察への告訴によって、刑事事件としてもらうことが考えられますが、警察がすべての事案を捜査してくれるというわけでもありません。

そこで、証拠を適宜収集・提出しながら、弁護士が、「告訴状」という形でクレーム行為について法的評価を加えた文書を作成し、警察や検察に相談することで、刑事事件として扱ってもらう方法があります。

(2)民事手続

金銭的なものでいえば、クレームについての損害賠償請求に対する防御、クレームの損害賠償についての債務不存在確認請求訴訟、進んで、クレーム行為に対する損害賠償請求があります。事実を告知すること自体、場合によっては名誉棄損、信用棄損にあたりますし、事実の中に間違ったことや不適切なことを織り込んでいれば、それは明らかに違法な行為です。

クレーム行為を止めさせるものとしては、仮処分手続があります。訴訟は判決に至るまで相応の期間を要しますが、それまでに仮処分手続によって裁判所から面談強要禁止の仮処分を出してもらえれば、法的には相手方からの押しかけや繰り返しの電話が止められます。また、この仮処分手続では、裁判所が相手方の言い分を聴く「審尋」というものが行われますが、その結果、相手方が納得し、クレーム消滅・和解ができることもあります。

(3)証拠収集

証拠は、事案に応じて様々なものがありますが、弁護士であれば、弁護士としての「職権」による収集が可能です。弁護士会を通じた弁護士法23条に基づく照会のように弁護士にしか用いることのできない強力な証拠収集方法もありますし、弁護士であれば、裁判所を通して行う調査嘱託や文書提出命令も的確に用いることができます。匿名、新設アカウントであれば、身元がバレないかといえば、そんなことはありません。

 

4 弁護士との顧問契約の必要性

(1)迅速対応

以上の対応に共通していえることは、迅速かつ的確な対応が大事だということです。

迂闊に交渉を進めてしまうと、思わぬところで相手方に弱みを握られることになりかねません。一度してしまった不用意な説明は、後から撤回・修正することが難しい場合があります。また、対応が遅ければ、それ自体がクレームの理由となったり、相手方を勢いづけたりすることにもなります。さらに、早期の段階で証拠を管理しておけば、後々の対応を円滑に進められます。

迅速かつ的確な対応をするためには、弁護士と顧問契約を交わし日頃から情報共有し、連携しておく必要があります。

顧問弁護士であれば、上記のような細かで手間のかかる数多くの対応もしてくれます。

 

(2)クレームの予防等

顧問弁護士は、クレームが発生する原因を少しでも減らすようにコンプライアンス体制の整備にも協力します。また、企業が顧問弁護士の存在をホームページやパンフレットで表明していれば、それだけでもクレームの予防になるでしょう。

 

当事務所と顧問契約を交わしていただければ、クレーム対策に限らず、各場面に応じて様々なサポートを提供しております。関心があれば、当事務所までご連絡ください。

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顧問弁護士③内部統制・リスク管理

2021.02.03

1 内部統制システム(リスク管理体制)とは多義的な概念ですが、法律用語としては「会社の業務の適正を確保するための体制」であると理解されており、株式会社(以下、単に会社といいます。)にはその整備が求められています(348条3項4号、362条4項6号、416条1項ホ)。

  具体的には、①損失の危機の管理に関する規定その他の体制、②取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、③使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制等の整備が求められます(会社法施行規則98条、100条、112条2項)。

2 会社には、それを動かすものとして取締役がいて、それぞれ監視義務を負っています。会社の業務執行は、取締役・従業員によってされますが、その業務執行を他の取締役が監視することで、その適正を確保する訳です。

ただ、一定規模以上の会社になると、取締役が、常時、互いを監視し、また従業員を監視していくことは不可能です。そこで、業務執行の手順を合理的に設定すると共に不祥事の徴候を早期に発見・是正できるよう人を組織化していく、このシステムが内部統制であり、これによってリスク管理をし、業務の適正を確保していくということです。

  例えば、取引をする際は、契約書・伝票・領収書といった決められた書類を、作成・保存するようにしておく。そうすれば、取引の際には何をすべきか分り易く効率的な上、不祥事の際も、これを取締役が事後的に確認し是正していくことが容易になります。また、顧客から問題点の指摘があった際は、その内容を文書・記録化し、誰に伝達して誰が対応するかを決めておく。そうすれば、問題についての応対・是正も効率化し、いち早く取締役が会社の業務執行の適正を確保できる訳です。

 このとおり、内部統制システムとは、不祥事に関する対応策でもありますので、システム構築には、不祥事対応にたけた弁護士の知識と経験が役立つことは当然です。また、良い内部統制システムを構築するには、会社の業務内容・組織内容を熟知する必要があり、普段から親密な付き合いのある顧問弁護士のよりよく成し得るところです。むしろ、それこそが弁護士を顧問とする最大の利点の1つといえます。

3 ちなみに、内部統制システムを理解する上で、大切なことが2つあります。

(1)1つは、不祥事を完全に予防するものではなく「その確率を費用対効果の観点において合理的な程度にまで引き下げるもの」だという点です(伊藤・大杉外「リーガルクエスト会社法第4版」有斐閣181頁)。不祥事対応のコストが100円である時、これを完全に予防すべく1000万円のコストをかけて内部統制システムを構築していくことは不合理だということです。

(2)もう1つは、内部統制システムは情勢に応じて改善していく必要があるということです。「不祥事は、起こってしまった後ではその発生のメカニズムを知ることは比較的容易であり、将来にはどうすればその再発を防止できるかを考えることは難しくはないが、発生前に将来に生じ得る不祥事を全て予見し、それを防止するための万全の体制を整えることはきわめて困難(不可能)である。」とされています(大杉「企業不祥事の前と後」法学教室360号83頁)。そこで、不祥事が起こったということは内部統制システムに何らかの問題があることが多いのですが、そのようなシステムを構築したこと自体が取締役の監視義務に違反するか否かは、不祥事がなされた時点を基準としてその予見・防止が可能であったか否かという視点から判断されなければならないとされるところです。

しかし、一度そのような不祥事が発覚し世間に知れ渡った場合、そのような不祥事に対応し得る内部統制システムを再構築していくことは、比較的容易であり、また取締役に強く求められているものです。その意味で、新たな手段による不祥事が世間に明らかになった場合、その不祥事の内容と対応を分析することが必要であり、それを的確にし得るのは不祥事対応にたけた弁護士だということです。このような弁護士を顧問とすることで、内部統制システムを改善していくことも容易になります。

4 このとおり、内部統制システム(リスク管理体制)を万全にするという意味で、弁護士を顧問とすることに大きなメリットが存在します。顧問弁護士に関心があれば、当事務所まで相談ください。

 

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顧問弁護士②整理解雇

2021.01.29

解雇に関する原則

解雇は、客観的合理的理由があり、社会通念上も相当といえる場合でなければ、権利濫用として無効になり、許されません(労働契約法16条)。

令和2年以降、コロナ不況により従業員を抱え続けることが困難な企業が増えており、法人破産を避け事業再生をしていくために不可欠な場合がありますが、単に経営難だけを理由に解雇をしても、無効となる可能性があります。整理解雇の要件は以下のとおりです。

整理解雇の要件

特に、業績悪化の場面で行われるリストラ(整理解雇)については、判例上、以下の4つの要素をどれだけ備えているかによって、解雇の効力が判断されます。

 ① 人員削減の必要性

 ② 解雇回避努力

 ③ 人選の合理性

 ④ 手続きの相当性 

業績悪化は、あくまで①の事情にすぎず、他の要素が欠けていれば、解雇は無効となる可能性が高いです。そこで、整理解雇を行う場合、上述した4つの要素を満たすべく、事前から検討・準備・対応することが求められます。 

②については、企業規模や業種、人員構成、生産形態等により回避努力義務の内容は異なりますが、使用者は整理解雇前に遊休資産の売却、経費の削減などの経営努力を行うとともに、雇用確保の手段として下請に発注していたものを自社で生産する、残業規制、賃金カット、新規採用の中止、一時帰休、配転・出向、退職勧奨、希望退職募集などの実施、あるいはこれらの解雇回避手段の採否につき真摯な検討を求められています。特に、将来の減収に備えるためといった経営戦略的な整理解雇の場合には、使用者に対してより一層厳格な解雇回避努力義務を課すべきであるとした事例(社会福祉法人仁風会館事件:福岡地判平成19年2月28日)もあります(新労働事件実務マニュアル第4版参照)。前述したコロナ禍に関連するなら、急激な大幅売上減により企業が努力できる範囲・時間に限界はあるものの、雇用調整助成金もより容易・迅速に受けられるようになっていますから、その申請をするといった努力をしたかどうかも②の判断に影響することがあり、その旨を指摘する裁判例もでました。

弁護士顧問契約の必要性

整理解雇の準備にどのような方法を採るか、どの程度するかといった判断は、過去の裁判例等に照らして検討する必要があります。したがって、実務の相場を熟知した専門家である弁護士による協力が不可欠です。また、整理解雇に至るまでの準備は前述のとおり様々であり、状況に応じて、一定期間継続して行う必要があります。弁護士とは、日頃から協同できるように顧問契約を結んでおかれるとよいでしょう。会社の内容、状態を熟知した顧問弁護士なら、的確なアドバイスをしてくれます。

経営者としては、可能な限り解雇は避けたいと思いますが、全体的・長期的な視野からすれば、法人破産を避け、事業再生をしていくために不可欠な整理解雇もあります。

当事務所との顧問契約は、整理解雇のような労働問題に限らず、様々な分野に対応しております。顧問弁護士に関心があれば、当事務所までご連絡ください。

 

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顧問弁護士①契約書作成確認

2021.01.29

契約書は作成していますか?

契約書は、後々の紛争を予防、解決するために非常に重要です。

口約束だけの契約は、「言った、言わない」の水掛け論となる可能性が高く、後々面倒です。是非、契約書は作成するようにしましょう。

 

契約書の内容は十分チェックしていますか?

安易に従前の雛型を使いまわしたり、相手方の準備した契約書案をそのまま受け入れたりしていませんか。巷の雛型はあなたの行う取引内容を前提に作成されたものではないですから、修正する必要があります。また、あなたの取引相手は親切心で契約書案を準備するのではなく、自社に有利にしたいがために契約書案を準備してきます。これまで特段不都合がなかったとしても、今後のリスク管理として契約書のリーガルチェックは必須です。

 

弁護士による契約書チェックの必要性

1 合理的な内容の契約書を作成しておかなければ、後々、紛争になる可能性が高いです。 紛争になってしまえば、解決に多くの時間や労力、費用(例えば弁護士費用)がかかってしまいます。さらに、契約書は最重要証拠ですから、その内容が不利であれば、いずれにせよ納得のいく解決を期待することも難しいです。

また、紛争の発生が予想されるような取引では、契約書に紛争の解決策を盛り込むことも必要となってきます。

契約書は、文面上はごく細かな差異でしかないにもかかわらず、その法的意味合いが大きく異なってしまうことが非常に多いです(よく条文は外国語を解読するつもりで読めとも言われています。)。企業の担当者がせっかく入念にチェックしていても、それらに気づくことは難しく、時間対効果が低いというのが現実です。弁護士は、日頃から契約書のチェックを行い、そのいろはを熟知しています。訴訟等に取り組む中でも、問題のある契約書を数知れず扱ってきております。今後紛争を予防し、紛争解決のための余計なコストを回避するためにも、専門家である弁護士に契約書のリーガルチェックをしてもらうことは必須事項です。

2 不適切な契約書文言の例

以下は、櫻井「新版実は危ない契約書」清文社が注意すべきと指摘している契約条項の具体例ですが、素人であれば気付かないかもしれません。

 

例1

第〇条 甲および乙は、本契約を解除することができる。

もし、当事者の一方が(甲or乙)相手方の了解を得ずに契約を一方的に解除する旨を規定したいのであれば、「甲および乙」の文言は不適切です。このままでは、合意解除か一方的解除なのかについて解釈の対立が生じるおそれがありますから、「甲または乙」と規定しなければなりません。

例2

第〇条 甲は、乙に対し、甲所有の不動産を売却するものとする。

「ものとする」という文言では、「将来の売却を約束する(予約)」との解釈が成り立ってしまいます。

 

以上のような誤りは、雛形を安易に流用する場合に生じることもあれば、相手方が契約書案のなかに紛れ込ませることで生じることもあります。

 

弁護士顧問契約の必要性

契約書に個々の企業や取引の特性を十分に反映させるためには、関与する弁護士が各取引内容や会社間の上下関係その他の背景事情を熟知しておく必要があります。したがって、弁護士とは顧問契約を結び、日頃から、企業の状況・状態を知ってもらった上で、気軽に相談できるような協同関係を築いておかれるとよいでしょう。そうすれば、弁護士は、状況に応じて、攻めた契約書から守りの契約書まで様々な契約書案を提案することが可能となります。そして、余計な紛争解決のためのコストを大幅に減らしましょう。

当事務所との顧問契約は、契約書のリーガルチェックに限らず、各場面に応じて様々なサポートを提供しております。顧問弁護士に関心があれば、当事務所までご連絡ください。

 

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債権回収⑤集合動産債権譲渡担保

2021.01.22

譲渡担保とは、例えば、売掛金を担保するため、債務者Aの有する動産甲の所有権を譲り受けたり、債務者AがBに対して有する売掛金を譲り受けたりするものです。Aが売掛金の支払いをしなければ、動産甲を処分したり、AのBに対する売掛金を取り立てたりして、自らの売掛金を回収します。これを「集合的」に利用した債権回収方法について、ご紹介します。この方法をうまく利用すれば、収支改善にもつながります(法人破産を考える前の収支改善の概要は、弊所ブログをご参照ください。https://m2-law.com/blog/1147

 

集合動産債権譲渡担保とは、例えば、債務者Aの倉庫に定期的に一定量の動産が存在するなら、その全てに担保を設定する。債務者AがBに対し定期的に一定量の売掛金を有するなら、その全てに担保設定するというものです。

ただ、このような担保を設定する場合、次のような問題点があるとされていました。即ち、債務者Aの倉庫にある動産に担保設定をしたとしても、それを公示する手段が不十分で、第三者対抗要件(民法178条)を具備したことを証明できない場合がありました。また、債権譲渡担保を設定する場合、担保設定の事実をAとの関係で債務者になるBに知らせなければならない(民法467条2項)のですが、このようなことをするとAの信用不安が起きるという点です。

 

このような問題点を改善するため、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下、特例法といいます。)が制定されました。特例法によれば、債務者Aが法人であって、動産譲渡登記ファイルに登記をすれば、第三者に対する対抗力が生じます(特例法3条1項)ので、この点の立証は十分です。また、債権譲渡登記ファイルに登記をすれば、その時点でBへの連絡がなされたものとみなされます(特例法4条1項)。そのため、債務者Aの信用不安を招くことなく、担保設定の第三者への優先が可能になり、Bとの関係での連絡は、譲渡担保の実行時、即ち、AのBに対する売掛金の取り立て時にすれば足りるということになっています(特例法4条2項)。

 

このような特例法を利用した債権回収は、非常に効果的です。弁護士、司法書士等の専門的知識を必要としますが、当事務所ではその点のネットワークは充実しています。お任せください。

 

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債権回収④動産売買先取特権

2021.01.22

債権回収の方法として、動産売買先取特権(どうさんばいばいさきどりとっけん)という方法があります。この方法を使えば、事業の収支改善に役立つかもしれません(法人破産を考える前の収支改善については、弊所ブログを参照ください。https://m2-law.com/blog/1147

 

1 機器製造会社Xが販売店Y対し、平成25年9月1日、代金支払時期を同年11月30日として、商品甲を代金100万円で売り渡したとします(以下、本件契約といいます。)。この場合を例として、Xの代金債権を担保する動産売買先取特権という方法を紹介します。

(1)前回ご説明した所有権留保(https://m2-law.com/blog/1167)は、XY間の合意による代金債権の担保方法です。

 

今回説明する動産売買先取特権は、法律上当然発生するものです(民法311条5号)。

例えば、本件売買についていえば、XはYに渡した商品甲について「動産の代価及び利息」について先取特権という担保権が認められています。

 

 

(2)そして、Yが平成25年11月30日までに代金を支払わない場合、Xとしては、裁判所に「担保権の存在を証する文書」を提出することで、Yの基にある商品甲について競売開始の許可を得ることが出来ます(民事執行法190条2項)。

従前の民事執行法では、動産競売を開始するには、裁判所執行官に対し、Xが商品甲を「提出」するかYが商品甲の「差押えを承諾する文書」を提出しなければならないとされていました(同条1項)。ところが、民事執行法が平成15年に改正され現在の2項が設けられたことから、その強制執行は格段にし易くなりました。

ちなみに、ここにいう「担保権の存在を証する文書」は何かについて、かつて争いがありましたが、現在は、売買基本契約書・個別契約書、それがない場合には注文書・受取書、これに対応した納品書・請求書で足りるとされており、Yの「実印が押印され印鑑証明書を添付した売買契約書」といった厳格な文書である必要はないとされています。

(3)ただ、所有権留保と異なり、動産売買先取特権には追及効がありません。例えば、Yが商品甲を転売しZのような「第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することはできない」とされています(民法333条)。

しかし、その反面として物上代位といった権利が認められ「目的物の売却…によって債務者が受けるべき金銭…に対しても、行使することができる」とされています(民法304条1項)。但し「先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない」ともされています(同条2項)。

その差押えの手続を定めたものが、民事執行法193条1項後段です。その場合にも同様に「担保権の存在を証明する文書」が必要とされており、そこでは、商品甲について、XY間の売買契約書等だけでなくYZ間の売買契約書等も求められる点、注意が必要です。

動産売買先取特権について、効率良い運用をしていくなら、御社の商品売買のシステムそのものを開発する必要があります(売買契約書等をどのようにするか、商品をどのように流通させるか、代金支払いがなかった場合誰が何時どのように対応するか等々)。

この点、当事務所にお任せ頂ければ御社の実体にあったシステム開発をさせて頂きますし、まさかの時にその威力は見逃せません。

 

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