企業法務

競業避止義務⑤FC本部の基礎知識

2025.10.06

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第1 はじめに

1 競業避止義務の意義 

競業避止義務とは、事業者と一定の関係にある者が、その事業者と競業する関係に立たないようにする義務のことを競業避止義務と言います。[1]

2 発生根拠

フランチャイジー(以下、「ジー」といいます。)の競業避止義務はどのような場合に発生するのでしょうか?

⑴ 一般論としての競業避止義務は、取締役や支配人のように法律で定められたもの(商法16条、23条、28条、会社法356条、365条、594条)のほかに、当事者間の契約で定められたものや信義則上認められるものなどがあります。

⑵ フランチャイズ契約(以下、「FC契約」といいます。)の場合には、商法や会社法などの法律が存在しないので、契約期間中及び契約終了後の競業避止義務については合意を定めることにより発生します。したがって、フランチャイザー(以下、「ザー」といいます。)としては、合意で競業避止義務を定めることが重要になります。[2]実際に、ほとんどのFC契約では契約期間中の競業行為が禁止され、さらに、契約終了後も一定期間営業行為が禁止される例が多いです。[3]

仮に、合意で禁止していない場合、競業避止義務は存在しないとも考えられますが、契約終了後の競業避止義務の存否が問題となった事案ではありますが、合意がなくともジーに信義則上の競業避止義務を認めた裁判例が存在します。[4]

3 ジーの競業避止義務

⑴ 上述した通り、ジーの競業避止義務は合意を根拠に発生するものと信義則を根拠に発生するものがありますが、本稿では前者の競業避止義務について取り上げることにします。

⑵ 合意を根拠に発生する競業避止義務の問題は契約期間中と契約終了後の競業避止義務に分けて考えるべき[5]ところ、本稿では契約終了後の競業避止義務の有効性について検討します。

 

第2 契約終了後の競業避止義務条項の有効性

1 ザーが競業避止義務を設ける理由は、①「ザーの商権の保護ないし商業圏の確保」、②「ノウハウの保護」、③「消費者がザーの営業と混同することの防止」に求められます。他方で、契約終了後の競業避止義務はジーの職業選択の自由ないし営業の自由を制約するだけでなく、ジーの生存権をも脅かす可能性があります。[6]

2 そこで、合意によって競業避止義務があったとしても、契約終了後の競業避止義務の内容がジーにとって過度の制約にわたる場合には、当該競業避止義務を定めた合意が公序良俗(民法90条)に反し無効となります。[7]公序良俗に反するかどうかについては、一般的に⑴禁止される業務の範囲(後述東京地判平成21年3月9日参照)、⑵禁止される場所、⑶禁止される期間[8]の3点において過度に広範な制限に当たらないかどうかによって判断されます。[9]

3 もっとも、競業避止義務の内容が上記⑴~⑶の基準は一応の形式的なものと思われ、実質的な考察が必要と解されます。すなわち、最終的には競業避止義務を認める必要性と競業避止義務を認めることによって生じる不利益(「加盟店側の投下資本の回収ができなくなる」、「生活が奪われる」などの重大な不利益をここでは想定しています。)の程度を比較衡量したうえで、競業避止義務の適用がみとめられるか判断せざるを得ないでしょう。

裁判例を見てみると、①FC契約終了後直ちに、②同一の営業を、③同一の場所で営んでいる場合には、競業避止条項が有効として差止めを認めているものが多いと思われます。他方で、①~③全てを充たすような場合でも差止めを認めない場合もあるように思われます。

例えば、以前から「〇〇」パン屋として営業していた者がジーとしてザーの商号・屋号である「××」パン屋として営業をした後、FC契約終了後ただちに、再度「〇〇」パン屋として同一の店舗で営業を継続する場面[10]を想定します。この場合には、①FC契約終了後直ちに、②同一の営業を、③同一の場所で行っているため、差止めが認められそうにも思われます。しかし、ジーはFC契約締結前にパン屋を営業しており、その時期に独自の商圏を構築しているため、競業避止義務が課されるとジー独自の商圏が奪われるという不利益を被ります。加えて、ジーが構築した商圏ともいえる以上、①「ザーの商圏の保護ないし商業圏の確保」という競業避止義務を設ける理由が妥当しません。それゆえ、上記のようなケースにおいては、ジーに競業避止義務を課すべきではない場合もあるのかもしれません。

また、例えば、自宅を改装してジーとして経営を行っていた者が、①FC契約終了後ただちに、②同一の営業を、③自宅で継続する場合も競業避止義務を課すべきかにも迷いはあります。なぜならば、改装された自宅を再改装するにも多額の費用を要する場合があるでしょうし、生活の拠点である自宅から退去することにより生存権をも脅かされる事態になりかねないからです。裁判例でも、期間前解約の事案(H16・12からの6年契約をH20・6に解除)について「洗車機等の設備は本件土地上に定着しており、これをほかの土地に移設することが可能であるとしても多額の費用(初期投資2400万円、設備リース料が月60万円×72か月)が必要になることが認められ、これらの事実からすると、原告(ジー)が本件土地上での洗車場の経営を禁止されることにより被る不利益は大きいものと認められる」と述べたうえ、「原告に競業避止義務を負わせて投下資本の回収を困難にすることは、信義則に反し許されない」として差止めを認めなかったものがあります。[11]

 

第3 東京地判平成21年3月9日・判時2037号35頁[12](競業避止義務は無効)

 1 事案の概要

FC契約の対象となる事業は労働者派遣事業でした。FC契約では「契約期間満了後の二年間はXの事業と同種又は類似の事業を営んではならない」旨の競業避止義務が定められていました。それにもかかわらず、加盟期間(加盟期間の合計は6年:平成11年3月~平成17年3月末)が終了した加盟店を吸収合併した被告は加盟店の雇用していた技術者をそのまま利用して同一の労働者派遣事業を行いました。

 2 判示事項

「コンビニエンスストア、ファーストフード、ファミリーレストランのように統一的ないし定型的な商品の仕入れないし製造、販売する業態においては強い従属性が認められるが、本件フランチャイズ事業は……個々の派遣内容ごとに内容の異なるサービスを提供する事業であり、サービスの定型化の程度は低く、営業成績も必然的にジー独自の信用・企業努力に左右されるとした上で、加盟店が「経営ノウハウの中核部分を使用しているとは認められないこと」や競業禁止によって「ジーは……営業の自由及び職業選択の自由が全面的に制限される」ことを認定している。そのうえで、「本件競業避止規定の制限内容は、競業禁止により保護されるザーの利益が競業禁止によって被る旧ジーの不利益との対比において、社会通念上是認し難い程度に達しているというべきであり、公序良俗に違反して無効である」と判断しました。

3 裁判例に対する考察

本件裁判例はFC契約の対象事業が労働者派遣事業であり、ザーよりもジー独自の信用・努力に左右されることを重視して、競業避止条項を無効としました。

従来の裁判例では、競業避止義務の履行を求めて差止請求をしたり、競業避止義務の不履行による違約金を請求したりすることは信義則に反し許されないとした例(ザーの勧誘に問題があったと認められるもの、東京高判平成21年12月25日・判時2080号41頁[13]や前掲大阪地判平成22年5月12日[14])はあります。しかし、FC契約の対象事業に着目して競業避止義務を認めなかった裁判例は見受けられませんので、非常に興味深い裁判例であるといえます。

もっとも、このような裁判例が存在する以上、ザーとしてはフランチャイズの対象となる事業の種類によっては、ジーに競業避止義務を課したとしても拘束力が否定される可能性もあることを念頭に置いてFC契約を締結する必要があります。なお、労働者派遣事業以外のいかなる業種に対して、本件裁判例の趣旨が及ぶかについては重要な検討課題といえるでしょう。

                                                                                  以上

[1] フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)P.178参照

[2] 【取引法研究会レポート】「フランチャイズ契約における競業避止義務」三島徹也P.81~82参照

[3] フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)P.178参照

[4] 東京高等裁判所平成20年9月17日決定・判例時報2049号21頁(契約終了後の競業避止義務について、黙示の合意の存在は認められないとしたが、「契約終了後の競業避止義務が全くないとすれば、」「原告が築いた無形の財産の保護にも欠けることとなる」等の理由から「契約に付随する義務として、信義則上」「一定期間の競業避止義務を負うものと解するのが相当」であるとした事案)参照

[5]「フランチャイズ契約における競業避止義務」大山盛義 沖縄法政研究第8号(2005)P.131参照

[6]【取引法研究会レポート】「フランチャイズ契約における競業避止義務」三島徹也P.81参照

[7] ただ、ザーにとって事業はFC契約の対象として重要な存在であり、事業者間との合意でもあることから、取締役や従業員の競業避止義務とは別に考える必要があると思われます。

[8] 東京地判令和3年1月25日・判例秘書掲載(インテリアリペアを含む総合カーリペア事業を対象とするFC契約の「契約終了後の10年間は本部からノウハウ教示を受けた事業並びにこれに類似する事業又は商品の取り扱いを行ってはならない」旨の規定の有効性が問題となった事案)は、本件競業避止条項は3年間の限りで有効性が認められるのであり、これを超える期間、超える範囲の競業禁止条項部分は公序良俗に反して無効というべきであると判断しました。したがって、3年以上の期間を合意により設定しても、差止めをすることができない可能性があります。

[9]フランチャイズ契約の実務と書式P.183 Question59参照

[10] 既に事業を行っている同業者とFC契約を締結して組織化する類型は「コンバージョン型フランチャイズ」と言われています。典型例は、センチュリー21です(フランチャイズにはどんな種類があるの?それぞれの特徴や違いを解説 [フランチャイズで独立] All About参照)。

[11] 大阪地判平成22年5月12日・判時2090号50頁

[12] 「フランチャイズ契約終了後における競業避止義務に関する判例分析と考察」波光巖(神奈川法学第44巻第1号 P.156~158参照)

[13] 当該裁判例は、ザーが詐欺的行為によってFC契約の締結をジーに勧誘し、ザーとしての経営指導を行わず、ジーがノウハウをほとんど受けていないという経緯があったことから信義則違反を肯定した。(BUSINESS LAW JOURNAL 2015.4「フランチャイズ契約のトラブル防止・対応策」P.93図表3参照)

[14] 当該裁判例は、①店舗の開設、運営のために多額の費用を投じていることなどからすると、ジーが営業を禁止されることにより被る不利益は極めて大きかったこと、②ザーが、ジーに代わって自ら又は他のジーをして店舗又はその近隣で運営することを現実に予定しておらず、店舗の商圏を維持しなければ、ザーが重大な不利益を受けるとはいえないこと、③ジーが本件店舗に多額の費用を投資したことは、ザーによる情報提供義務に違反する勧誘行為が契機となっていたことから信義則違反を肯定した。(前掲BUSINESS LAW、P.93図表3参照)

 

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レシピの取り扱い④FC本部の基礎知識

2025.08.15

 

第1 はじめに

前回のブログでは、顧客情報(顧客名簿)の取り扱いについて解説しました(顧客情報の取り扱い③FC本部の基礎知識、https://m2-law.com/blog/17244)。本稿では、レシピの使用差し止めの可否が争われた裁判例を踏まえて、なぜレシピの使用差し止めが顧客情報の差し止めに比べて難しいのかについて考察しながら、レシピの取り扱いについて解説します。

 

 

第2 裁判例の紹介

 不競法上の差し止めをすることができるのは、「不正競争」によって「営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある者」(不競法3条1項)です。「不正競争」は不競法上様々な類型が規定されています。代表的なものとして、混同惹起行為(2条1項1号)、著名表示冒用行為(2条1項2号)、営業秘密に係る不正行為(2条1項4号~10号)などが挙げられます。この中で、レシピの使用は、営業秘密に係る不正行為に該当するかが問題になるところ、裁判例として有名なものとして、東京地判平成14年10月1日〔商標・意匠・不競法判例百選第2版105事件掲載〕を紹介します。

1 事案の概要と争点

⑴ クレープ販売店のFCチェーンA社が、元従業員Bの設立したC社がA社のクレープミックス液の配合レシピ(ミックス粉に対する水・牛乳・卵・リキュール等の割合。以下、単に「割合」といいます。)を不正に使用しているとして使用の差し止めと損害賠償を求めた事案です。

第三者によるレシピの使用の場合には不競法に基づく差し止めを請求できるのに対して、元従業員や元加盟店によるレシピの使用の場合には契約違反を理由とする差し止めを請求できます。後述するとおり、元従業員Bが設立したC社が上記のいずれの類型に該当するか議論の余地はありますが、本件裁判例では第三者使用の場合として不競法に基づく差し止めが争点とされました。

   ⑵ クレープミックス液のレシピが「営業秘密を使用」(不競法2条1項7号)したといえるかが問題となりました。「営業秘密」とは、①秘密管理性、②有用性、③非公知性を充たしているものをいう[1]ところ、この点については、特に②が問題となりました。なお、「営業秘密」に関しては、弊所ブログでも説明していますので、そちらもぜひご確認ください(顧客情報の取り扱い③FC本部の基礎知識、https://m2-law.com/blog/17244)。

 

2 裁判所の判断

(1) 裁判所は、原告と被告のクレープミックス液の配合が同一とはいえないことを理由に営業秘密を「使用」[2](不競法2条1項7号)しているとは言えないとしました。つまり、「割合」が一緒であったとしても、ミックス粉の内容が異なれば比重も異なり、クレープミックス液そのものが異なるので「同一の製法」を「使用」したとはいえないという論法です。本件裁判例は「クレープの品質は、主としてミックス粉自体の成分・配合によって決定される」とした上で、証拠として提出された「比較検査結果報告書」を取り調べた結果、「異なる4種類の粉を用いて、いずれも原告配合に従ってクレープを製造したところ、粘度を示すcps値(水をゼロとして、数値が高いほど粘度が強いことを示す)がすべて異なり、食感、風味、焼色もすべて異なった」ことを挙げています。

⑵ また、裁判所は本件クレープミックス液のレシピについて「有用性」を欠き「営業秘密」にもあたらないと判断しました。その理由として、①「焼き上がりのクレープの品質は、主としてミックス粉自体の成分・配合によって決定される」ため、配合割合はレシピの有用性を基礎づけるものではないこと、②一般的な焼き菓子類の原料にリキュール類を香料として加えることは広く知られた調理方法であるため、リキュールを配合するという発想自体には独創性が認められず、レシピの有用性を基礎づけるものではないことが挙げられました。

 

 

第3 本件裁判例の評価

  1 顧客名簿の使用差し止めが認められた事案(大阪地判平成8年4月16日判タ920号232頁)では、顧客名簿に掲載された者に対して「営業行為をすることは」「営業秘密の使用に当たると解するのが相当である」として、顧客名簿を「使用」していると判断されていたのに対して、本件裁判例では、そもそもレシピを「使用」しているとも言えないと判断している点に特徴があります。

本件裁判例を踏まえると、レシピは顧客名簿に比較して「使用」の要件が認められにくい可能性があります。これは、顧客名簿の場合はそのまま利用されるため、同一の顧客名簿が「使用」されたと認定されやすいのに対して、レシピの場合には取得した情報が少々改変されたりすること等があるため、同一のレシピを使用したと認定されづらいことが理由であると思われます。つまり、レシピの改変により、商品のできばえ(本件裁判例の言う「食感、風味、焼色」)に差異が生じている場合には、同一性が否定され同じレシピを「使用」しているとはいえないとされることがあるということです。

  2 また、本件裁判例は、「リキュールを配合するという発想自体には独創性が認められない」として有用性を否定しています。大阪地判平成14年7月30日判例秘書(以下「類似裁判例」といいます。)も、シュークリームのパイ生地およびシュー生地の配合比率について、「特段の効果を奏する証拠がない」ことを理由に有用性を否定しています。

    しかし、有用性の認定が過度に厳格であると、本来不競法によって保護されるべき営業秘密が保護されないという問題も生じます。営業秘密管理指針においても、「当事者であれば、公知の情報を組み合わせることによって容易に当該営業秘密を作出することができる場合であっても、有用性が失われることはない」[3]とされています。これらを踏まえると、有用性の要件は、技術や情報に積極的な価値があることを求めるものではなく、脱税や贈賄、経営者のスキャンダルなど、保護の必要性がない情報を営業秘密の保護対象から排除するための基準であると考えるべきでしょう(多数説)[4]

ただ、フランチャイザーとしては、レシピに関して裁判所が厳格な判断を示している点(有用性を否定している点)については、十分に留意する必要があります。

  3 さらに、仮に有用性の要件を満たしたとしても、「非公知性」の要件を満たす必要があります。類似裁判例では、パイ生地およびシュー生地の配合比率が得意先各社に配布されていたことを理由に、非公知性が否定されました。このように、レシピの内容が第三者に容易に知られる状況にある場合には、「非公知性」が認められない可能性が高く、結果として「営業秘密」に該当しないと判断されるおそれもあります。

 

 

第4 終わりに

   第三者によるレシピの使用差し止めが認められるには、「営業秘密」としてレシピの有用性・非公知性を、「使用」としてレシピの同一性を、それぞれ立証する必要があります。その点でレシピの使用差し止めは顧客名簿の差し止めの場合と比べて難しいといえます。

   もっとも、本部と加盟店間であれば、秘密保持義務条項を工夫することにより、加盟店がそれに違反した場合、本部は営業秘密の使用を事前に差し止めることが、よりし易くなります。[5]その意味で、本部は加盟店との関係では不競法に基づく差し止めの困難さを緩和することができます。

また、本部は、本部の従業員との間では秘密保持契約を、加盟店の従業員との間では誓約書を提出させる[6]ことにより、従業員(本部所属・加盟店所属のいずれも含む)が退職後にそれに違反した場合、営業秘密の使用を差し止めることが、よりし易くなります。

本件裁判例は、元従業員が設立した会社の使用行為が問題になり、会社の第三者性(元従業員とは別人格)から、以上の議論(元従業員=会社)を経ることなく、端的に不競法が争点とされました。もしかしたら本部が元従業員との間で秘密保持契約を締結していなかったのかもしれません。その意味で、本部としては、従業員(本部所属・加盟店所属のいずれも含む)や加盟店の間で秘密保持契約をきちんと締結しておくことが重要です。

                                以上

[1] 不競法2条6項参照

[2] 営業秘密の「使用」とは、営業秘密の本来の使用目的に沿って行われ、当該営業秘密に基づいて行われる行為として具体的に特定できる行為を意味する。具体的には、自社製品の製造や研究開発等の実施のために、他社の製品の製造方法に関する技術情報である営業秘密を直接使用する行為や、事業活動等の実施のために、他社が行った市場調査データである営業秘密を参考とする行為等が考えられる。(逐条解説 不競法〔第2版〕P.93参照)

[3] 営業秘密管理指針P.20

[4] 知的財産法政策学研究Vol.52(2018)P.289参照

[5] フランチャイズ契約の実務と書式(改訂版)P.167~168

[6] 同上P.168

 

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顧客情報の取り扱い③FC本部の基礎知識

2025.08.13

第1 顧客情報に関する一般的な取り扱い

 顧客情報については、1個人情報の保護に関する法律(以下「保護法」といいます。)との関係、2財産権としての顧客情報の帰属の2つの問題に分けて考える必要があります。

1 保護法との関係について

⑴ 顧客との関係での注意点

ア 本部が収集した顧客情報を加盟店に提供した場合、「個人データを第三者に提供」(保護法27条1項柱書)したといえるのでしょうか。

       グループによる共同利用(保護法27条5項3号)は、顧客本人との関係において提供主体である個人情報取扱事業者と一体のものとして取り扱うことに合理性がある[1]ため、第三者提供にあたらないとされています。そこで、本部から加盟店への顧客情報の提供がグループによる共同利用にあたるのかが問題となります。

この点、フランチャイズシステムにおいて、本部と加盟店は独立した事業者であって、加盟店は本部の支店ではありません。[2]それゆえ、両者は一体のものとはいえず、本部から加盟店への顧客情報の提供をグループによる共同利用(保護法27条5項3号)にあたるとはいえないでしょう。実際、グループによる共同利用の典型例としては、親子会社を含むグループ企業で総合的なサービスを提供するために取得時の利用目的の範囲内で情報を共同利用する場合[3]が挙げられており、フランチャイズシステムの本部と加盟店は想定されていません。

以上より、本部から加盟店への顧客情報の提供はグループによる共同利用とはいえず、第三者提供に該当します。[4]したがって、本部が顧客情報を加盟店に提供する前に「あらかじめ本人の同意を得」る必要があります(保護法27条1項)。

イ もっとも、「①本人の求めに応じて当該本人が識別される個人データの第三者への提供を停止することとされている場合であって、次に掲げる事項(保護法27条2項各号に記載されている事項)について、後述の個人情報保護委員会の規則で定めるところにより、あらかじめ、②(a)本人に通知し、又は②(b)本人が容易に知り得る状態に置くとともに、③個人情報保護委員会(保護法130条)に基づき設置された合議制の機関)に届け出た」ときには、例外的に「あらかじめ同意を得ないで」個人データを第三者に提供することができます(いわゆるオプトアウト)。

       ただし、オプトアウトでは、顧客本人の求めがあると本部・加盟店間であっても顧客情報の提供ができなくなるという点に注意してください。

⑵ 加盟店との関係での注意点

保護法では「個人情報取扱事業者[5]は」「利用目的をできる限り特定しなければならない」(保護法17条1項)だけでなく、「特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱ってはならない」(保護法18条1項)とされています。それゆえ、本部が、所有する個人情報を加盟店に提供する場合、加盟店に対し提供を受けた個人情報を適切に管理して使用するように指導する必要があります。

2 財産権としての顧客情報の帰属について

⑴ フランチャイズシステムにおける主な顧客情報としては、①学習塾における生徒の成績やエステサロンにおける過去の施術内容などの役務提供に役立つ情報、②氏名・住所・電話番号・利用履歴などを記載した純粋な顧客名簿が考えられます。①はそれ自体が役務提供の質の向上につながる点で重要な財産となります。また、②のような純粋な顧客名簿(後述する裁判例も顧客名簿が問題となっていました。)であっても、大量の顧客情報が記載されている点で重要な財産と言えます。そして、重要な財産であるこれらの顧客情報については、加盟店又は本部のいずれに帰属するのかが問題となります。

本部が取得した顧客情報[6]が本部に帰属することは明らかです。問題は、加盟店が取得した顧客情報が本部又は加盟店のいずれに帰属するかという点ですが、当事者間の合意があればそれが優先されますので、本部としては契約書において顧客情報の権利帰属先が本部である旨をあらかじめ明確に定めておくことが重要です。[7]

⑵ また、重要な財産である本部に帰属する顧客情報が無断で持ち出されて第三者に不正利用された場合、本部としてはその使用を差し止めたいと考えるでしょう。上記差止請求が認められるためには、「不正競争」によって「営業上の利益を侵害され、又は侵害されるおそれがある」ことが必要です。[8]「不正競争」については不正競争防止法(以下「不競法」といいます。)2条が規定しているところ、顧客情報が無断で持ち出されて使用された場合には、とりわけ不正取得後の使用(不競法2条1項4号)に該当するかが問題になります。そこで、顧客情報のうち②純粋な顧客名簿が不正に取得され、使用されたかどうかが争われた裁判例について、項を改めて以下で見てみましょう。

第2 裁判例の紹介(大阪地判平成8年4月16日判タ920号232頁)

1 事案の概要と争点

 男性用かつらの販売業を営む企業(原告)が、退職した元従業員(被告)が顧客名簿を不正に取得し使用したとして、被告に対し、損害賠償や営業行為の差止めなどを求めた事案です。本件裁判例では、顧客名簿が「営業秘密」に該当するかどうかが主に争われました。

2 裁判所の判断

裁判所は、顧客名簿が不競法2条6項所定の「営業秘密」に該当すると判断しました。「営業秘密」とは、(1)秘密管理性、(2)有用性、(3)非公知性を充たしているものを言う[9]ところ、(1)~(3)の要件ごとに裁判所の判断を検討します。

⑴ 秘密管理性について

ア 秘密管理性に関する一般論

「秘密管理性」はどのような場合に認められるのでしょうか。この点、営業秘密として情報を守るには、企業が「これは秘密だ」と思っているだけでは不十分です。実際に合理的な方法(例えば、アクセス制限や契約など)で秘密管理の意思を従業員に明確に示し、従業員がその意思をきちんと理解できるようにしておく必要があります。[10]従来、秘密管理性を判断する際には、①その情報が営業秘密であることを認識できるようにすること(客観的認識可能性)、②情報へのアクセスを制限すること(アクセス制限)の二点が重要だとされてきました。

イ 裁判所の判断内容

「顧客名簿の表紙にマル秘の印を押捺し、」「これを…顧客からは見えない場所に保管していたところ、右のような措置は」「事業規模、従業員数(従業員は三つの支店を合わせて7名。心斎橋店は店長1名)等に鑑み、原告顧客名簿に接する者に対しこれが営業秘密であると認識させるのに十分なものというべきであるから、原告顧客名簿は、秘密として管理されていたということができる」と判断しています。

この判断において、下線部は権限のない者のアクセスを制限していることを認定している一方、二重下線部は客観的認識可能性を認定していると思われます。本件裁判例も従来の裁判例と同様に客観的認識可能性とアクセス制限の2点を重要視していることがうかがえます。以上に鑑みると、本部は、アクセス制限と客観的認識可能性の観点を意識した顧客名簿の管理を心掛けるべきでしょう。

⑵ 有用性について

ア 有用性に関する一般論

       有用性の要件は、公序良俗に反する内容の情報など、秘密として法律上保護されることに正当な利益が乏しい情報を営業秘密の範囲から除外した上で、広い意味で商業的価値が認められる情報を保護することに主眼があります。[11]したがって、情報が客観的に見て事業活動に役立つものであれば、原則として有用性は肯定されると思われます。もっとも、事案は異なりますが、レシピの「営業秘密」該当性の判断に際して要件を厳格に捉えて有用性を否定した裁判例[12]がありますので、本部としては気を付けなければならないでしょう。なお、レシピ(ノウハウ)の「営業秘密」該当性につきましては、別途、詳細に解説しますので、そちらも是非ご覧になってください。

イ 裁判所の判断内容

裁判所は、男性用かつらの販売は、顧客が他人に知られたくないと考えるのが通常であるという性質上、一般的な営業手法では顧客獲得が困難であり、原告は新聞広告などに年間数千万円規模の宣伝費を投じて顧客を開拓してきたため、顧客名簿に記載されている顧客はそうした広告によって獲得された貴重な情報源であり、定期的な調髪や将来の買い替え需要も見込まれるとしたうえで、当該顧客名簿は原告の営業活動において極めて重要かつ有用な情報であるとして有用性を認めました。

⑶ 非公知性について

ア 非公知性に関する一般論

       非公知性が認められるためには、当該情報が一般的に知られていない、または容易に知ることができないことが必要です。「公然と知られていない」とは、具体的には、その情報が合理的な努力で入手可能な刊行物に記載されておらず、営業秘密の保持者の管理外では通常入手できない状態を指します。[13]

イ 裁判所の判断内容

       裁判所は、顧客名簿に記載された情報の性質、内容(かつらの注文を受けた顧客の電話番号や住所などの個人情報に加えて、頭髪の状況なども記載されていた)からして、公然と知られていない情報であることは明らかであるとして非公知性を認めました。

                                                                                 以上

 

[1] 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)平成28年11月(令和7年6月一部改正)P.82参照

[2] フランチャイズ契約の実務と書式(初版)P.4参照

[3] 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)平成28年11月(令和7年6月一部改正)P.83~85参照

[4] 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)平成28年11月(令和7年6月一部改正)P.72参照

[5] 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)平成28年11月(令和7年6月一部改正)P.17~19参照

[6] 顧客が本部のWebサイトを通じて申し込み、本部から顧客の近隣の加盟店に顧客情報が送信される場合など(フランチャイズ契約の実務と形式(初版)P.138参照)

[7] フランチャイズ契約の実務と形式(初版)P.136参照

[8] 不競法3条1項

[9] 不正競争防止法2条6項参照

[10] 逐条解説 不正競争防止法〔2版〕P.41参照

[11] 逐条解説 不正競争防止法〔2版〕P.43参照

[12] 大阪地判平成14年7月30日、東京地判平成14年10月1日参照

[13] 逐条解説 不正競争防止法〔第2版〕P.44参照

 

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プー2あくまのくまさんとじゃあくななかまたち

2024.08.13

 著作物とは、自分の考え等を作品として表現した物で、それを保護するのが著作権です。著作権の及ぶ範囲は広く、著作者の意思に反した変更等はできません(同一性保持権)。

 ただ、著作権には期間制限があり、この度「くまのプーさん」の著作権が、2020年前後になくなりました(国によって消滅する期間が若干違っていて、アメリカでは2022年、日本では2017年とされています。ちなみに「くまのプーさん」に関する全ての権利がなくなった訳ではありません。)。そのような下で、表題の「プーあくまのくまさん」という映画がつくられ、今日は時間があったことから、その二作目をみてきました。実は二作目の方が背景事情が明らかになっていて、

 

何故プーさんは人の言葉がわかるんだろう?  

 

という基本的なところも理解出来ました(あくまで映画作成者の考えなのですが、笑)。

 

 ネタバレになるので、ここらへんでやめますが、プーがチェーンソー振り回しているので、それなりの衝撃でした。皆さんのイメージの「プーさん」といえば、黄色い可愛らしい熊で人気なのは蜂蜜ツボを持っている姿なので、想像つきませんよね?

 都市伝説になっているドラえもんの最終回としては、ドラえもんとの思い出は交通事故で植物状態になったのび太の夢の世界だったというのがありますが、それを知った時と似たような驚きです。

 

 そういえば、熊と人間の関係というのは難しいのか、例えば童謡「森のクマさん」にしても、クマが「お嬢さんお逃げなさい」と言い出すんですよね、このフレーズの唐突さから、村上の高校時代は、クマには自制心がないからお嬢さんを食ってしまうかもしれないので、お腹が減る前に逃がそうとしたんだよ、って説も聞いたりしていました(笑)。

 

 映画の評価としては、三点代前半とB級ホラー扱いでしたが、ブログねたにはなったので、もとはとれました😃✌️。

 

 

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パロディ

2022.09.13

パロディとは「文芸・美術作品等の原作を模し、あるいは滑稽化した作品を指し、原作を揶揄するもの、社会を風刺するもの、原作を利用して新たな世界を表現するもの等」とされますが、実は著作権に関する法的問題でもあります。

例えば、絵画のパロディについていえば、他人の絵画の本質的な特徴を直接感得できることを前提として「原作を模す」といっても、そこには様々な動機や表現方法があり、必ずしも原作者の同意を得られるとは限りません。

すると、原作者の著作権としての同一性保持権(著作物等につき、その意に反して変更・削除・改変を受けない権利、著作権法20条1項)や翻案権(著作物を翻訳・編曲・変形、脚色・映画化、その他翻案〈新たな著作物を創作〉する権利、著作権法27条)を侵害するのではないかが問題になりますが、かといって、原作者の同意がなければ全てが違法といってしまうのも行き過ぎと考えられるからです。

パロディの取扱いは、国々によって異なりますが、日本では、明文の定めを置かない形を採っており、ただ、表現の自由という憲法上の権利(憲法21条)も含んだ関係で、個々に許される場合もあるのではないかが検討される傾向にあります。

 

ちなみに、左の画像はフェルメールの真珠の耳飾りの少女で、右は、、、(/ω\)

村上としては結構頑張ったつもりですが、そもそも「本質的な特徴を直接感得できる」のかが、争われるのかもしれません(笑)。

 

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FCガイドライン②FC本部の基礎知識

2022.08.09

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1 はじめに

  前回の記事では、セブンイレブンに対する排除措置命令(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)を素材としてフランチャイズ契約と独禁法上の「優越的地位」に関する考え方をフランチャイズ・ガイドライン(以下、単にGLと略します。)の規定を参照しながら解説しました。
 このGLですが、実は、令和3年4月、大幅に改正されています。そこで、今回は、GLについて、①優越的地位の濫用に関する改正を中心に解説するとともに、②その他の改正についても簡単に紹介することとします。

 

2 GL改正の背景

具体的な改正内容を紹介する前に、そもそも、なぜ今回のGL改正が行われたのかというと、それは、コンビニフランチャイズ問題が背景にあるとされています。

報道等もされているところですが、近年、コンビニエンスストアでの24時間営業に関し本部加盟店間のトラブルが生じています。このような事態を受けて、公正取引委員会は大規模な調査を行い、令和2年9月「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」を、公表しました(ポイントは、以下のとおり。200902_03.pdf (jftc.go.jp))。

そこで明らかになった問題点をふまえて、今回のGL改正となりました。このような経緯から、内容的にもコンビニフランチャイズを念頭においたと思われる改正が多くなっています。

しかし、今回のGL改正の対象は、コンビニフランチャイズに限定されておらず、他のフランチャイズにも妥当し得るものとなっている点には注意が必要です。

 

3 優越的地位の濫用についてのGL改正

  先ず、優越的地位の濫用に関するGL改正を見ていきます。
 前回の記事で紹介したのは「優越的地位にあるかどうか」についてのGLの考え方ですが、これを前提として「優越的地位にある」本部がした行為等が「どのような場合に優越的地位の濫用に当たり得るか」といった想定事例が示されています(GL3(1)ア)。

それでは、今回のGL改正により、どのような事例が追加されたのか、具体的に紹介します。

(1)仕入数量の強制

「本部が加盟者に対して,加盟者の販売する商品又は使用する原材料について,返品が認められないにもかかわらず,実際の販売に必要な範囲を超えて,本部が仕入数量を指示すること又は加盟者の意思に反して加盟者になり代わって加盟者名で仕入発注することにより,当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。」

  下線部分が「無断発注による仕入数量の強制」として追記されました。もともと仕入数量の強制は想定事例として存在したのですが、今回の改正により、本部が加盟者に無断で仕入れを行うこと等に規制が及ぶことが明確にされました。

(2)見切り販売の制限

GL(注8)では「見切り販売を行うには,煩雑な手続を必要とすることによって加盟者が見切り販売を断念せざるを得なくなることのないよう,本部は,柔軟な売価変更が可能な仕組みを構築するとともに,加盟者が実際に見切り販売を行うことができるよう,見切り販売を行うための手続を加盟者に十分説明することが望ましいとされました。
 正当な理由のない見切り販売の制限は、今回の改正前からも想定事例として規定されていました。今回の改正では、見切り販売の「手続」についても、実質的に見切り販売が可能となるような仕組みづくりを求める注が新設されました。
 なお、上記の改正の「望ましい」という部分が、仕組みの構築にまでかかるのか、それとも仕組みの構築自体は本部の義務とされているのかについては、二通りの読み方ができるように思います。この点については、GLの「原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方」のなかで「仕組み構築を義務付けるのは行き過ぎではないか」という「意見」に対し「システム管理上やむを得ない事情により複雑なものとなっているのかについては,個別事案ごとの判断を要するものですが,本改正では,柔軟な売価変更が可能な仕組みの構築を慫慂しています」(GL原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.99)という「考え方」が示されていることから、仕組みの構築自体についても義務というわけではなく「望ましい」とされているものと考えることができます。

(3)営業時間の短縮に係る協議拒絶

  「本部が,加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。」

  この想定事例は、今回の改正により新設されたものです。ただ、この規定はあくまでも協議の拒絶を禁止しているものですから、協議の結果として合意ができなかったとしても、直ちに優越的地位の濫用に当たると判断されるわけではありません。また、契約書中に協議に関する定めがない場合には、そもそもこの想定事例に当てはまりませんので、協議を拒絶してもそのこと自体は優越的地位の濫用と評価されません。

(4)事前取決めに反するドミナント出店等

ドミナント出店とは、特定の地域に店舗を集中させることですが、GLは、次のようなドミナント出店が「正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合」には、優越的地位の濫用に該当するとしています。

即ち「ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるにもかかわらず,ドミナント出店が加盟者の損益の悪化を招く場合において,本部が,当該取決めに反してドミナント出店を行うこと。また,ドミナント出店を行う場合には,本部が,損益の悪化を招くときなどに加盟者に支援等を行うとの事前の取決めがあるにもかかわらず,当該取決めに反して加盟者に対し一切の支援等を行わないこと。」は、優越的地位の濫用にあたる場合があります。

 この想定事例は、今回の改正で新設されたもので、ドミナント出店自体が直ちに独禁法に違反するものではないとの考え方を前提とした上で、優越的地位の濫用になり得る類型を規定しています。また「事前の取決め」がない場合には、ドミナント出店をしても直ちに優越的地位の濫用にあたるわけではありません。

 

4 その他のGL改正について

  以上は、今回の改正のうち「GL3フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引」に関する「(1)優越的地位の濫用について」のものです。今回の改正では、その他に「GL2本部の加盟者募集について」に関する「(3)ぎまん的顧客誘引」の観点からも規定が新設されています。

  具体的には、①「人手不足,人件費高騰等の経営に悪影響を与える情報」の開示が望ましいとする規定(GL2(2)ウ)、②ドミナント出店に関して配慮を行う旨を提示する場合にはその配慮の具体的内容を明らかにしたうえで取り決めに至るよう留意することを促す規定(GL2(2)ア(注3))及び③募集時の説明におけるモデル収益等が予想収益と誤認されないように求める規定(GL2(2)イ(注4)、が新設されています。
 このうち、①は優越的地位の濫用のところで解説した時短営業等に関わるものであり、②は、優越的地位の濫用の箇所で解説したドミナント出店に関する規定と関係するものです。
 時短営業やドミナント出店は、主として、契約前は「ぎまん的顧客勧誘」の観点から問題となり、契約後は「優越的地位の濫用」の観点から問題となるため、このように複数の規定がされたものと思われます。

 

5 まとめ

  今回以上のような改正がされましたので、本部としても、この改正GLを踏まえた態勢を整えておく必要があると思われます。
 また、今回解説したのは、独禁法関係の一部についてです。独禁法上問題がない場合でも、例えば民事上の問題が生じる場合もあり得るところですし、逆に民事上の問題に独禁法の問題が関係してくることもあり得ます。
 本部としては、フランチャイズ・システムには複数の法規制等があることを意識して、適切な対応をとれるように契約書の整備などをしておく必要があると思われます。

 

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優越的地位の濫用①FC本部の基礎知識

2022.07.21

1 はじめに

  コンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパン(以下「セブンイレブン」といいます。)は、公正取引委員会から排除措置命令(平成21年(措)第8号、ただし改正前の独占禁止法第二〇条第一項、同第二条第九項第五号・不公正な取引方法第十四項第四号、以下「平成21年措置命令」といいます。)を受けたことがあります(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)

 平成21年措置命令については、村上新村法律事務所のアメブロ記事で解説したことがありますが(フランチャイザーの優越的地位の濫用 | 村上・新村法律事務所のブログ (ameblo.jp))、同命令は、セブンイレブン本部が加盟者との関係で優越的地位にあることを前提にしたものであることから、今回は、フランチャイズと独禁法上の「優越的地位」について、少し掘り下げて解説してみます。

2 フランチャイズと優越的地位の濫用

(1)アメブロ記事の振返り

  独占禁止法(以下「独禁法」といいます。)は、優越的地位の濫用を禁止しています(独禁法2条9項5号)。しかしながら、フランチャイズ・システムにとって、本部の統制等は、本質的なものであり、また、そのこと自体に重要な価値があります。そのため、本部による統制の全てが独禁法に違反するとすれば、それはフランチャイズ・システム自体の否定を意味します。しかし、公正取引委員会も、フランチャイズ・システム自体が直ちに独禁法に違反するとはしていません。

  逆に、公正取引委員会は、フランチャイズと独禁法の関係についてのガイドラインを公表しています。そこでは、今回のテーマである「優越的地位の濫用」について、「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)にある本部が,加盟者に対して,フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて,正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合には,フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当する。」と規定されています(フランチャイズガイドライン〈以下、FCGLということがあります。〉3(1))。
 ここまでは、アメブロ記事で解説したところです。

(2)「優越した地位」

   今回は、「優越的地位の濫用」の前提として、いかなる場合に本部が「優越した地位」(優越的地位)に当たると判断されるのか、その判断の要素や方法についてみてみたいと思います。もう一度前記FCGLを見てみると「「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)」と規定されていて、その(注7)には、以下のように規定されています。

 

   「フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引において,本部が取引上優越した地位にある場合とは,加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,本部の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても,これを受け入れざるを得ないような場合であり,その判断に当たっては,加盟者の本部に対する取引依存度(本部による経営指導等への依存度,商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等),本部の市場における地位,加盟者の取引先の変更可能性(初期投資の額,中途解約権の有無及びその内容,違約金の有無及びその金額,契約期間等),本部及び加盟者間の事業規模の格差等を総合的に考慮する。」

 

  細かく読みづらいかと思いますが、大まかにいうと、諸事情を総合した上で、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような場合に本部が「優越的地位」にあると判断されるというように言ってよいかと思います。そして、ここで考慮される事情というのが、①加盟者の本部に対する取引依存度、②本部の市場における地位、③加盟者の取引先の変更可能性、④本部及び加盟者間の事業規模の格差等というわけです。

 

3 平成21年措置命令について

  ガイドラインの規定だけを見ていても抽象的で分かりづらいところがあると思いますので、上記のガイドラインに即して、セブンイレブンの平成21年措置命令の判断を説明するとどうなるかを解説してみたいと思います。

  平成21年措置命令では、優越的地位に関する結論部分において、「前記アからエまでの事情等により,加盟者にとっては,セブン-イレブン・ジャパンとの取引を継続することができなくなれば事業経営上大きな支障を来すこととなり,このため,加盟者は,セブン-イレブン・ジャパンからの要請に従わざるを得ない立場にある。したがって,セブン-イレブン・ジャパンの取引上の地位は,加盟者に対し優越している。」と判断されています。
 そこで、重要なのが「前期アからエまでの事情等」になるわけですが、このアからエの概要は以下のようなものでした。

 

  ア:セブンイレブンがコンビニフランチャイズの中で最大手の事業者であるのに対して加盟者のほとんどが中小の小売事業者であること等

  イ:加盟店基本契約の期間が15年であり、基本契約のタイプに応じて、契約期間終了後に1年間の競業避止義務が課されたり、店舗の返還を求められること等

  ウ:セブンイレブンが加盟店に対し、推奨商品の仕入れ先を提示し、加盟店で販売されている商品のほとんどすべてが推奨商品であること等

  エ:セブンイレブンが加盟店の所在地区に経営相談員を配置し、同相談員を通じて加盟店に対し経営に関する指導,援助等を行い、加盟店がこれに従った経営を行っていること等

 

  上記のア~エの事情が具体的にどのように評価されているのかまでは措置命令自体からは直ちに明らかではありません。
 もっとも、上記アの事情は、ガイドライン(注7)のいうところの「本部の市場における地位」や「本部及び加盟者間の事業規模の格差」に関係する事情と考えられ、平成21年措置命令の事案では、本部の市場における地位は強く、本部・加盟者間の事業規模の格差も大きかった等と評価されている可能性があります。
 また、上記イの事情は、加盟店の取引先の変更可能性が乏しいとの評価につながる事情と考えられます。
 さらに、上記ウ及びエの事情は、加盟店の本部に対する取引依存度が大きいことを示す事情と評価されるものと思われます。

  以上を踏まえると、平成21年措置命令の事案では、「コンビニフランチャイズ市場で強力な地位を占める本部とほとんどが中小事業者である加盟店の事業規模の格差は大きく、本部が商品の仕入れや経営の指導等を行うことにより、加盟店の本部への依存度は高いことに加え、契約期間や競業避止義務の関係からしても、加盟店は、その取引先を変更することが難しく、加盟店としては、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような状況にあった(=本部が優越的地位にある)」というような評価がされていたのではないかと考えられるところです。

 

4 まとめ

  以上のように、そもそも本部が独禁法上の「優越的地位」にあるかどうかは、公正取引委員会が公表しているフランチャイズガイドラインに記載されている考慮要素を事案に応じて評価・検討して考えていくことになると思われます。
 もっとも、最終的には諸事情を総合的に考慮することになりますので、微妙な判断となる可能性が高いと思われます。さらに本部が優越的地位にあることによってどのようなリスクがあるか等については、個別の事案に応じた検討が不可欠と思われます。
 そのため、本部として、「優越的地位」にあるかどうか(どの程度優越的地位にあると判断される可能性があるか)や、そのことによってどのようなリスクがあり、これにどう対処すべきか等について関心があれば、当事務所などフランチャイズ契約を得意とする事務所にご相談ください。

 

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四半期決算

2021.10.01

 

 四半期決算とは、一年を四つにわけて、3か月毎に決算する仕組みで、上場会社に義務付けられている制度です。これが始まると、会社経営が目まぐるしくなり、大変なんですが「生きている(?生かされている、笑)」という実感は湧きますね。

 実は、村上・新村法律事務所の顧問先であるアスタリスクが、昨日(9月30日)、東証マザーズに上場しました。アスタリスクというのは、スマフォやパソコンのキーボードで見かける「*」の表示で、村上は「米印みたいな」と説明する叔父さんですが、正確には星を意味するようですね。最近は、ユニクロとの訴訟で、一躍有名になりましたね。

 

 鈴木社長とは、知り合ってからちょうど10年になりますが、ついに偉業を果たされました。ただ、健康に留意され、次の、またそのまた次の、ステップに上がって頂けることを、希望し、応援します(^.^)/~~~

 

 ところで、実は、うちも法人化して、昨日で丸9年が終了し、今日(10月1日)から10年目に突入します。まだまだ全然爪先にも及びませんが、村上も頑張っていきたいと思います。

 

 やっと緊急事態宣言もあけましたし、今から福知山に行ってきます🚙。

 

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顧問弁護士④クレーム対応

2021.03.24

クレームの語源は「claim」という単語で、本来は要求・請求といった意味ですが、日本語的には苦情と理解されることが多いようです(いわゆる和製英語とされています。)。ですから、ここでは「商品・サービスに対し苦情を述べられた場合の対策」として話を進め、その中での弁護士・顧問契約の位置づけを説明したいと思います。

 

1 正当か不当か

 苦情の中にも、本来的に不当なものと正当なものがあります。

 例えば、スーパーの店員の態度が気にくわないとクレームを述べ商品を受け取ったにも関わらず代金を支払わないのは明らかに不当です。しかし、商品が痛んでいるからとクレームを述べ代金返還や交換を求めることは、本当に商品が痛んでいるのであれば正当です。ただ、その場合でも過度の損害賠償請求をすると不当になります。

 また、例えば、引越しの際にグラスが壊れたこと自体、殊更問題視して、執拗に元に戻せと迫ることも不当です。グラスが壊れたことを悲しいと思っていることに共感を求めているのかもしれませんが、家族や友人ならまだしも契約の相手方にすぎない引越し業者にそれを求めることは、不当な要求です。壊れた物を元通りにすることは物理的に不能ですし、仮に、修復が可能であったとしても、1万円のグラスを30万円かけて修復するよう求めることは、社会経済的に不能を要求するものだからです。一時期話題になりましたが、土下座を求める構造と似ています。

 ここではわかりやすい例を示しましたが、実際は、不当か正当かが不明確な場合や、両社が混在している場合などもあり、それらの判断は決して容易ではありません。この点をきちんと区別しないまま対応すれば、新たなクレームに発展したり、企業の信用を低下させかねません。他方、不当なクレームに安易に応じたことで、クレーマーが勢いづいたり、他の顧客からの同様の要求を誘引してしまったりということもありえます。

この点、弁護士であれば、クレームに対して、それらが法的に不当か正当かを判断し、適切に対応することができます。

 

2 弁護士による交渉

  弁護士が企業の代理人としてクレーム対応することで、経営者・従業員の方は事業活動に専念することができます。相手が直接クレームを繰り返してきても、企業として基本的な対応(謝罪、交換、弁償等)をした後であれば、なすべきことは終えてるので「弁護士に連絡して下さい。」といえばすみます。

また、弁護士は交渉の専門家ですから、相手のクレームが悪質であったとしても、断固とした交渉を進めることができます。弁護士として刑事告訴や損害賠償請求等の法的手段について知らせることの効果は絶大です。

弁護士が電話したり、内容証明郵便で受任通知や警告書などを送付した途端に、相手からの連絡がなくなることは珍しくありません。

 

3 弁護士による法的対応

(1)刑事手続

相手方の行為がなんらかの犯罪に該当すれば、警察への告訴によって、刑事事件としてもらうことが考えられますが、警察がすべての事案を捜査してくれるというわけでもありません。

そこで、証拠を適宜収集・提出しながら、弁護士が、「告訴状」という形でクレーム行為について法的評価を加えた文書を作成し、警察や検察に相談することで、刑事事件として扱ってもらう方法があります。

(2)民事手続

金銭的なものでいえば、クレームについての損害賠償請求に対する防御、クレームの損害賠償についての債務不存在確認請求訴訟、進んで、クレーム行為に対する損害賠償請求があります。事実を告知すること自体、場合によっては名誉棄損、信用棄損にあたりますし、事実の中に間違ったことや不適切なことを織り込んでいれば、それは明らかに違法な行為です。

クレーム行為を止めさせるものとしては、仮処分手続があります。訴訟は判決に至るまで相応の期間を要しますが、それまでに仮処分手続によって裁判所から面談強要禁止の仮処分を出してもらえれば、法的には相手方からの押しかけや繰り返しの電話が止められます。また、この仮処分手続では、裁判所が相手方の言い分を聴く「審尋」というものが行われますが、その結果、相手方が納得し、クレーム消滅・和解ができることもあります。

(3)証拠収集

証拠は、事案に応じて様々なものがありますが、弁護士であれば、弁護士としての「職権」による収集が可能です。弁護士会を通じた弁護士法23条に基づく照会のように弁護士にしか用いることのできない強力な証拠収集方法もありますし、弁護士であれば、裁判所を通して行う調査嘱託や文書提出命令も的確に用いることができます。匿名、新設アカウントであれば、身元がバレないかといえば、そんなことはありません。

 

4 弁護士との顧問契約の必要性

(1)迅速対応

以上の対応に共通していえることは、迅速かつ的確な対応が大事だということです。

迂闊に交渉を進めてしまうと、思わぬところで相手方に弱みを握られることになりかねません。一度してしまった不用意な説明は、後から撤回・修正することが難しい場合があります。また、対応が遅ければ、それ自体がクレームの理由となったり、相手方を勢いづけたりすることにもなります。さらに、早期の段階で証拠を管理しておけば、後々の対応を円滑に進められます。

迅速かつ的確な対応をするためには、弁護士と顧問契約を交わし日頃から情報共有し、連携しておく必要があります。

顧問弁護士であれば、上記のような細かで手間のかかる数多くの対応もしてくれます。

 

(2)クレームの予防等

顧問弁護士は、クレームが発生する原因を少しでも減らすようにコンプライアンス体制の整備にも協力します。また、企業が顧問弁護士の存在をホームページやパンフレットで表明していれば、それだけでもクレームの予防になるでしょう。

 

当事務所と顧問契約を交わしていただければ、クレーム対策に限らず、各場面に応じて様々なサポートを提供しております。関心があれば、当事務所までご連絡ください。

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顧問弁護士③内部統制・リスク管理

2021.02.03

1 内部統制システム(リスク管理体制)とは多義的な概念ですが、法律用語としては「会社の業務の適正を確保するための体制」であると理解されており、株式会社(以下、単に会社といいます。)にはその整備が求められています(348条3項4号、362条4項6号、416条1項ホ)。

  具体的には、①損失の危機の管理に関する規定その他の体制、②取締役の職務の執行が効率的に行われることを確保するための体制、③使用人の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制等の整備が求められます(会社法施行規則98条、100条、112条2項)。

2 会社には、それを動かすものとして取締役がいて、それぞれ監視義務を負っています。会社の業務執行は、取締役・従業員によってされますが、その業務執行を他の取締役が監視することで、その適正を確保する訳です。

ただ、一定規模以上の会社になると、取締役が、常時、互いを監視し、また従業員を監視していくことは不可能です。そこで、業務執行の手順を合理的に設定すると共に不祥事の徴候を早期に発見・是正できるよう人を組織化していく、このシステムが内部統制であり、これによってリスク管理をし、業務の適正を確保していくということです。

  例えば、取引をする際は、契約書・伝票・領収書といった決められた書類を、作成・保存するようにしておく。そうすれば、取引の際には何をすべきか分り易く効率的な上、不祥事の際も、これを取締役が事後的に確認し是正していくことが容易になります。また、顧客から問題点の指摘があった際は、その内容を文書・記録化し、誰に伝達して誰が対応するかを決めておく。そうすれば、問題についての応対・是正も効率化し、いち早く取締役が会社の業務執行の適正を確保できる訳です。

 このとおり、内部統制システムとは、不祥事に関する対応策でもありますので、システム構築には、不祥事対応にたけた弁護士の知識と経験が役立つことは当然です。また、良い内部統制システムを構築するには、会社の業務内容・組織内容を熟知する必要があり、普段から親密な付き合いのある顧問弁護士のよりよく成し得るところです。むしろ、それこそが弁護士を顧問とする最大の利点の1つといえます。

3 ちなみに、内部統制システムを理解する上で、大切なことが2つあります。

(1)1つは、不祥事を完全に予防するものではなく「その確率を費用対効果の観点において合理的な程度にまで引き下げるもの」だという点です(伊藤・大杉外「リーガルクエスト会社法第4版」有斐閣181頁)。不祥事対応のコストが100円である時、これを完全に予防すべく1000万円のコストをかけて内部統制システムを構築していくことは不合理だということです。

(2)もう1つは、内部統制システムは情勢に応じて改善していく必要があるということです。「不祥事は、起こってしまった後ではその発生のメカニズムを知ることは比較的容易であり、将来にはどうすればその再発を防止できるかを考えることは難しくはないが、発生前に将来に生じ得る不祥事を全て予見し、それを防止するための万全の体制を整えることはきわめて困難(不可能)である。」とされています(大杉「企業不祥事の前と後」法学教室360号83頁)。そこで、不祥事が起こったということは内部統制システムに何らかの問題があることが多いのですが、そのようなシステムを構築したこと自体が取締役の監視義務に違反するか否かは、不祥事がなされた時点を基準としてその予見・防止が可能であったか否かという視点から判断されなければならないとされるところです。

しかし、一度そのような不祥事が発覚し世間に知れ渡った場合、そのような不祥事に対応し得る内部統制システムを再構築していくことは、比較的容易であり、また取締役に強く求められているものです。その意味で、新たな手段による不祥事が世間に明らかになった場合、その不祥事の内容と対応を分析することが必要であり、それを的確にし得るのは不祥事対応にたけた弁護士だということです。このような弁護士を顧問とすることで、内部統制システムを改善していくことも容易になります。

4 このとおり、内部統制システム(リスク管理体制)を万全にするという意味で、弁護士を顧問とすることに大きなメリットが存在します。顧問弁護士に関心があれば、当事務所まで相談ください。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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