企業法務

パロディ

2022.09.13

パロディとは「文芸・美術作品等の原作を模し、あるいは滑稽化した作品を指し、原作を揶揄するもの、社会を風刺するもの、原作を利用して新たな世界を表現するもの等」とされますが、実は著作権に関する法的問題でもあります。

例えば、絵画のパロディについていえば、他人の絵画の本質的な特徴を直接感得できることを前提として「原作を模す」といっても、そこには様々な動機や表現方法があり、必ずしも原作者の同意を得られるとは限りません。

すると、原作者の著作権としての同一性保持権(著作物等につき、その意に反して変更・削除・改変を受けない権利、著作権法20条1項)や翻案権(著作物を翻訳・編曲・変形、脚色・映画化、その他翻案〈新たな著作物を創作〉する権利、著作権法27条)を侵害するのではないかが問題になりますが、かといって、原作者の同意がなければ全てが違法といってしまうのも行き過ぎと考えられるからです。

パロディの取扱いは、国々によって異なりますが、日本では、明文の定めを置かない形を採っており、ただ、表現の自由という憲法上の権利(憲法21条)も含んだ関係で、個々に許される場合もあるのではないかが検討される傾向にあります。

 

ちなみに、左の画像はフェルメールの真珠の耳飾りの少女で、右は、、、(/ω\)

村上としては結構頑張ったつもりですが、そもそも「本質的な特徴を直接感得できる」のかが、争われるのかもしれません(笑)。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

2類と5類

2022.08.16

 

 

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新型コロナ感染症(以下、新型コロナという場合があります。)の取り扱いにつき、2類相当とされている現状を5類相当まで引き下げるべきかという議論が高まっています。その目的の1つが、新型コロナの現状に鑑み、保健所・病院等のひっ迫状態を解消させる点にある訳ですが、何故、そのような議論がされるのか、感染症法(感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律)を参照に説明したいと思います。

 

感染症法

第一章 総則

(定義等)

第六条 この法律において「感染症」とは、一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症、新型インフルエンザ等感染症、指定感染症及び新感染症をいう。

 

 この法律において「二類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

 急性灰白髄炎

 結核

 ジフテリア

 重症急性呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属SARSコロナウイルスであるものに限る。)

 中東呼吸器症候群(病原体がベータコロナウイルス属MERSコロナウイルスであるものに限る。)

 鳥インフルエンザ(病原体がインフルエンザウイルスA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型が新型インフルエンザ等感染症(第七項第三号に掲げる新型コロナウイルス感染症及び同項第四号に掲げる再興型コロナウイルス感染症を除く。第六項第一号及び第二十三項第一号において同じ。)の病原体に変異するおそれが高いものの血清亜型として政令で定めるものであるものに限る。第五項第七号において「特定鳥インフルエンザ」という。)

 

 この法律において「五類感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

 インフルエンザ(鳥インフルエンザ及び新型インフルエンザ等感染症を除く。)

 ウイルス性肝炎(E型肝炎及びA型肝炎を除く。)

 クリプトスポリジウム症

 後天性免疫不全症候群

 性器クラミジア感染症

 梅毒

 麻しん

 メチシリン耐性黄色ブドウ球菌感染症

 前各号に掲げるもののほか、既に知られている感染性の疾病(四類感染症を除く。)であって、前各号に掲げるものと同程度に国民の健康に影響を与えるおそれがあるものとして厚生労働省令で定めるもの

 この法律において「新型インフルエンザ等感染症」とは、次に掲げる感染性の疾病をいう。

 新型インフルエンザ(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

 再興型インフルエンザ(かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

 新型コロナウイルス感染症(新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

四 再興型コロナウイルス感染症(かつて世界的規模で流行したコロナウイルスを病原体とする感染症であってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)

 

➡ 第6条は定義規定ですが、通常のインフルエンザは5類に分類されているところ、新型コロナを含む新型インフルエンザ等感染症は、通常のインフルエンザとは別枠扱いになっている点がポイントです。

 

第三章 感染症に関する情報の収集及び公表

(医師の届出)

第十二条 医師は、次に掲げる者を診断したときは、厚生労働省令で定める場合を除き、第一号に掲げる者については直ちにその者の氏名、年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を、第二号に掲げる者については七日以内にその者の年齢、性別その他厚生労働省令で定める事項を最寄りの保健所長を経由して都道府県知事(保健所を設置する市又は特別区(以下「保健所設置市等」という。)にあっては、その長。以下この章(次項及び第三項、次条第三項及び第四項、第十四条第一項及び第六項、第十四条の二第一項及び第八項並びに第十五条第十三項を除く。)において同じ。)に届け出なければならない。

 一類感染症の患者、二類感染症、三類感染症又は四類感染症の患者又は無症状病原体保有者、厚生労働省令で定める五類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者及び新感染症にかかっていると疑われる者

 厚生労働省令で定める五類感染症の患者(厚生労働省令で定める五類感染症の無症状病原体保有者を含む。)

 

➡ 「全数把握疾患(発症例の全数を把握することとされている疾患)」の根拠とされている条文ですが、ここで「厚生労働省令で定める5類感染症」の中には通常のインフルエンザは含まれていません。その意味で、通常のインフルエンザは「定点把握疾患(定点医療機関が届出を行うのみ)」とされています。ところが、新型コロナを含む新型インフルエンザ等感染症は、ここでの対象とされているので全数把握が必要になってきます。

 

 

(感染症の発生の状況、動向及び原因の調査)

第十五条 都道府県知事は、感染症の発生を予防し、又は感染症の発生の状況、動向及び原因を明らかにするため必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。

 厚生労働大臣は、感染症の発生を予防し、又はそのまん延を防止するため緊急の必要があると認めるときは、当該職員に一類感染症、二類感染症、三類感染症、四類感染症、五類感染症若しくは新型インフルエンザ等感染症の患者、疑似症患者若しくは無症状病原体保有者、新感染症の所見がある者又は感染症を人に感染させるおそれがある動物若しくはその死体の所有者若しくは管理者その他の関係者に質問させ、又は必要な調査をさせることができる。

➡ 12条に加えて、都道府県知事は、新型コロナを含む新型インフルエンザ感染症の患者等に調査等をすることになっていて、情報公表義務を負い(16条)、就業制限通知(18条)、入院勧告(19条)等をすることになっています。この点が、現在、保健所等をひっ迫させることになっていて、この点を改善すべく新型ロロナを通常のインフルエンザと同様、5類相当と取り扱うべきという議論がされている訳です。

 

(情報の公表)

第十六条 厚生労働大臣及び都道府県知事は、第十二条から前条までの規定により収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない。

 前項の情報を公表するに当たっては、個人情報の保護に留意しなければならない。

 

第四章 就業制限その他の措置

 

(就業制限)

第十八条 都道府県知事は、一類感染症の患者及び二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の患者又は無症状病原体保有者に係る第十二条第一項の規定による届出を受けた場合において、当該感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該者又はその保護者に対し、当該届出の内容その他の厚生労働省令で定める事項を書面により通知することができる。

2 前項に規定する患者及び無症状病原体保有者は、当該者又はその保護者が同項の規定による通知を受けた場合には、感染症を公衆にまん延させるおそれがある業務として感染症ごとに厚生労働省令で定める業務に、そのおそれがなくなるまでの期間として感染症ごとに厚生労働省令で定める期間従事してはならない。

(入院)
第十九条 都道府県知事は、一類感染症のまん延を防止するため必要があると認めるときは、当該感染症の患者に対し特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関に入院し、又はその保護者に対し当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。ただし、緊急その他やむを得ない理由があるときは、特定感染症指定医療機関若しくは第一種感染症指定医療機関以外の病院若しくは診療所であって当該都道府県知事が適当と認めるものに入院し、又は当該患者を入院させるべきことを勧告することができる。

※ なお、19条は、26条により2類感染症・新型インフルエンザ等についても準用されています。

 

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FCガイドライン②FC本部の基礎知識

2022.08.09

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1 はじめに

  前回の記事では、セブンイレブンに対する排除措置命令(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)を素材としてフランチャイズ契約と独禁法上の「優越的地位」に関する考え方をフランチャイズ・ガイドライン(以下、単にGLと略します。)の規定を参照しながら解説しました。
 このGLですが、実は、令和3年4月、大幅に改正されています。そこで、今回は、GLについて、①優越的地位の濫用に関する改正を中心に解説するとともに、②その他の改正についても簡単に紹介することとします。

 

2 GL改正の背景

具体的な改正内容を紹介する前に、そもそも、なぜ今回のGL改正が行われたのかというと、それは、コンビニフランチャイズ問題が背景にあるとされています。

報道等もされているところですが、近年、コンビニエンスストアでの24時間営業に関し本部加盟店間のトラブルが生じています。このような事態を受けて、公正取引委員会は大規模な調査を行い、令和2年9月「コンビニエンスストア本部と加盟店との取引等に関する実態調査について」を、公表しました(ポイントは、以下のとおり。200902_03.pdf (jftc.go.jp))。

そこで明らかになった問題点をふまえて、今回のGL改正となりました。このような経緯から、内容的にもコンビニフランチャイズを念頭においたと思われる改正が多くなっています。

しかし、今回のGL改正の対象は、コンビニフランチャイズに限定されておらず、他のフランチャイズにも妥当し得るものとなっている点には注意が必要です。

 

3 優越的地位の濫用についてのGL改正

  先ず、優越的地位の濫用に関するGL改正を見ていきます。
 前回の記事で紹介したのは「優越的地位にあるかどうか」についてのGLの考え方ですが、これを前提として「優越的地位にある」本部がした行為等が「どのような場合に優越的地位の濫用に当たり得るか」といった想定事例が示されています(GL3(1)ア)。

それでは、今回のGL改正により、どのような事例が追加されたのか、具体的に紹介します。

(1)仕入数量の強制

「本部が加盟者に対して,加盟者の販売する商品又は使用する原材料について,返品が認められないにもかかわらず,実際の販売に必要な範囲を超えて,本部が仕入数量を指示すること又は加盟者の意思に反して加盟者になり代わって加盟者名で仕入発注することにより,当該数量を仕入れることを余儀なくさせること。」

  下線部分が「無断発注による仕入数量の強制」として追記されました。もともと仕入数量の強制は想定事例として存在したのですが、今回の改正により、本部が加盟者に無断で仕入れを行うこと等に規制が及ぶことが明確にされました。

(2)見切り販売の制限

GL(注8)では「見切り販売を行うには,煩雑な手続を必要とすることによって加盟者が見切り販売を断念せざるを得なくなることのないよう,本部は,柔軟な売価変更が可能な仕組みを構築するとともに,加盟者が実際に見切り販売を行うことができるよう,見切り販売を行うための手続を加盟者に十分説明することが望ましいとされました。
 正当な理由のない見切り販売の制限は、今回の改正前からも想定事例として規定されていました。今回の改正では、見切り販売の「手続」についても、実質的に見切り販売が可能となるような仕組みづくりを求める注が新設されました。
 なお、上記の改正の「望ましい」という部分が、仕組みの構築にまでかかるのか、それとも仕組みの構築自体は本部の義務とされているのかについては、二通りの読み方ができるように思います。この点については、GLの「原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方」のなかで「仕組み構築を義務付けるのは行き過ぎではないか」という「意見」に対し「システム管理上やむを得ない事情により複雑なものとなっているのかについては,個別事案ごとの判断を要するものですが,本改正では,柔軟な売価変更が可能な仕組みの構築を慫慂しています」(GL原案に対する意見の概要及びそれに対する考え方No.99)という「考え方」が示されていることから、仕組みの構築自体についても義務というわけではなく「望ましい」とされているものと考えることができます。

(3)営業時間の短縮に係る協議拒絶

  「本部が,加盟者に対し,契約期間中であっても両者で合意すれば契約時等に定めた営業時間の短縮が認められるとしているにもかかわらず,24時間営業等が損益の悪化を招いていることを理由として営業時間の短縮を希望する加盟者に対し,正当な理由なく協議を一方的に拒絶し,協議しないまま,従前の営業時間を受け入れさせること。」

  この想定事例は、今回の改正により新設されたものです。ただ、この規定はあくまでも協議の拒絶を禁止しているものですから、協議の結果として合意ができなかったとしても、直ちに優越的地位の濫用に当たると判断されるわけではありません。また、契約書中に協議に関する定めがない場合には、そもそもこの想定事例に当てはまりませんので、協議を拒絶してもそのこと自体は優越的地位の濫用と評価されません。

(4)事前取決めに反するドミナント出店等

ドミナント出店とは、特定の地域に店舗を集中させることですが、GLは、次のようなドミナント出店が「正常な商慣習に照らして不当に不利益を与える場合」には、優越的地位の濫用に該当するとしています。

即ち「ドミナント出店を行わないとの事前の取決めがあるにもかかわらず,ドミナント出店が加盟者の損益の悪化を招く場合において,本部が,当該取決めに反してドミナント出店を行うこと。また,ドミナント出店を行う場合には,本部が,損益の悪化を招くときなどに加盟者に支援等を行うとの事前の取決めがあるにもかかわらず,当該取決めに反して加盟者に対し一切の支援等を行わないこと。」は、優越的地位の濫用にあたる場合があります。

 この想定事例は、今回の改正で新設されたもので、ドミナント出店自体が直ちに独禁法に違反するものではないとの考え方を前提とした上で、優越的地位の濫用になり得る類型を規定しています。また「事前の取決め」がない場合には、ドミナント出店をしても直ちに優越的地位の濫用にあたるわけではありません。

 

4 その他のGL改正について

  以上は、今回の改正のうち「GL3フランチャイズ契約締結後の本部と加盟者との取引」に関する「(1)優越的地位の濫用について」のものです。今回の改正では、その他に「GL2本部の加盟者募集について」に関する「(3)ぎまん的顧客誘引」の観点からも規定が新設されています。

  具体的には、①「人手不足,人件費高騰等の経営に悪影響を与える情報」の開示が望ましいとする規定(GL2(2)ウ)、②ドミナント出店に関して配慮を行う旨を提示する場合にはその配慮の具体的内容を明らかにしたうえで取り決めに至るよう留意することを促す規定(GL2(2)ア(注3))及び③募集時の説明におけるモデル収益等が予想収益と誤認されないように求める規定(GL2(2)イ(注4)、が新設されています。
 このうち、①は優越的地位の濫用のところで解説した時短営業等に関わるものであり、②は、優越的地位の濫用の箇所で解説したドミナント出店に関する規定と関係するものです。
 時短営業やドミナント出店は、主として、契約前は「ぎまん的顧客勧誘」の観点から問題となり、契約後は「優越的地位の濫用」の観点から問題となるため、このように複数の規定がされたものと思われます。

 

5 まとめ

  今回以上のような改正がされましたので、本部としても、この改正GLを踏まえた態勢を整えておく必要があると思われます。
 また、今回解説したのは、独禁法関係の一部についてです。独禁法上問題がない場合でも、例えば民事上の問題が生じる場合もあり得るところですし、逆に民事上の問題に独禁法の問題が関係してくることもあり得ます。
 本部としては、フランチャイズ・システムには複数の法規制等があることを意識して、適切な対応をとれるように契約書の整備などをしておく必要があると思われます。

 

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優越的地位の濫用①FC本部の基礎知識

2022.07.21

1 はじめに

  コンビニ最大手のセブン‐イレブン・ジャパン(以下「セブンイレブン」といいます。)は、公正取引委員会から排除措置命令(平成21年(措)第8号、ただし改正前の独占禁止法第二〇条第一項、同第二条第九項第五号・不公正な取引方法第十四項第四号、以下「平成21年措置命令」といいます。)を受けたことがあります(<4D6963726F736F667420576F7264202D2030393036323220905695B794AD955C95B68169835A837583938343838C83758393816A2E646F63> (selectra.jp)

 平成21年措置命令については、村上新村法律事務所のアメブロ記事で解説したことがありますが(フランチャイザーの優越的地位の濫用 | 村上・新村法律事務所のブログ (ameblo.jp))、同命令は、セブンイレブン本部が加盟者との関係で優越的地位にあることを前提にしたものであることから、今回は、フランチャイズと独禁法上の「優越的地位」について、少し掘り下げて解説してみます。

2 フランチャイズと優越的地位の濫用

(1)アメブロ記事の振返り

  独占禁止法(以下「独禁法」といいます。)は、優越的地位の濫用を禁止しています(独禁法2条9項5号)。しかしながら、フランチャイズ・システムにとって、本部の統制等は、本質的なものであり、また、そのこと自体に重要な価値があります。そのため、本部による統制の全てが独禁法に違反するとすれば、それはフランチャイズ・システム自体の否定を意味します。しかし、公正取引委員会も、フランチャイズ・システム自体が直ちに独禁法に違反するとはしていません。

  逆に、公正取引委員会は、フランチャイズと独禁法の関係についてのガイドラインを公表しています。そこでは、今回のテーマである「優越的地位の濫用」について、「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)にある本部が,加盟者に対して,フランチャイズ・システムによる営業を的確に実施する限度を超えて,正常な商慣習に照らして不当に加盟者に不利益となるように取引の条件を設定し,若しくは変更し,又は取引を実施する場合には,フランチャイズ契約又は本部の行為が独占禁止法第2条第9項第5号(優越的地位の濫用)に該当する。」と規定されています(フランチャイズガイドライン〈以下、FCGLということがあります。〉3(1))。
 ここまでは、アメブロ記事で解説したところです。

(2)「優越した地位」

   今回は、「優越的地位の濫用」の前提として、いかなる場合に本部が「優越した地位」(優越的地位)に当たると判断されるのか、その判断の要素や方法についてみてみたいと思います。もう一度前記FCGLを見てみると「「加盟者に対して取引上優越した地位(注7)」と規定されていて、その(注7)には、以下のように規定されています。

 

   「フランチャイズ・システムにおける本部と加盟者との取引において,本部が取引上優越した地位にある場合とは,加盟者にとって本部との取引の継続が困難になることが事業経営上大きな支障を来すため,本部の要請が自己にとって著しく不利益なものであっても,これを受け入れざるを得ないような場合であり,その判断に当たっては,加盟者の本部に対する取引依存度(本部による経営指導等への依存度,商品及び原材料等の本部又は本部推奨先からの仕入割合等),本部の市場における地位,加盟者の取引先の変更可能性(初期投資の額,中途解約権の有無及びその内容,違約金の有無及びその金額,契約期間等),本部及び加盟者間の事業規模の格差等を総合的に考慮する。」

 

  細かく読みづらいかと思いますが、大まかにいうと、諸事情を総合した上で、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような場合に本部が「優越的地位」にあると判断されるというように言ってよいかと思います。そして、ここで考慮される事情というのが、①加盟者の本部に対する取引依存度、②本部の市場における地位、③加盟者の取引先の変更可能性、④本部及び加盟者間の事業規模の格差等というわけです。

 

3 平成21年措置命令について

  ガイドラインの規定だけを見ていても抽象的で分かりづらいところがあると思いますので、上記のガイドラインに即して、セブンイレブンの平成21年措置命令の判断を説明するとどうなるかを解説してみたいと思います。

  平成21年措置命令では、優越的地位に関する結論部分において、「前記アからエまでの事情等により,加盟者にとっては,セブン-イレブン・ジャパンとの取引を継続することができなくなれば事業経営上大きな支障を来すこととなり,このため,加盟者は,セブン-イレブン・ジャパンからの要請に従わざるを得ない立場にある。したがって,セブン-イレブン・ジャパンの取引上の地位は,加盟者に対し優越している。」と判断されています。
 そこで、重要なのが「前期アからエまでの事情等」になるわけですが、このアからエの概要は以下のようなものでした。

 

  ア:セブンイレブンがコンビニフランチャイズの中で最大手の事業者であるのに対して加盟者のほとんどが中小の小売事業者であること等

  イ:加盟店基本契約の期間が15年であり、基本契約のタイプに応じて、契約期間終了後に1年間の競業避止義務が課されたり、店舗の返還を求められること等

  ウ:セブンイレブンが加盟店に対し、推奨商品の仕入れ先を提示し、加盟店で販売されている商品のほとんどすべてが推奨商品であること等

  エ:セブンイレブンが加盟店の所在地区に経営相談員を配置し、同相談員を通じて加盟店に対し経営に関する指導,援助等を行い、加盟店がこれに従った経営を行っていること等

 

  上記のア~エの事情が具体的にどのように評価されているのかまでは措置命令自体からは直ちに明らかではありません。
 もっとも、上記アの事情は、ガイドライン(注7)のいうところの「本部の市場における地位」や「本部及び加盟者間の事業規模の格差」に関係する事情と考えられ、平成21年措置命令の事案では、本部の市場における地位は強く、本部・加盟者間の事業規模の格差も大きかった等と評価されている可能性があります。
 また、上記イの事情は、加盟店の取引先の変更可能性が乏しいとの評価につながる事情と考えられます。
 さらに、上記ウ及びエの事情は、加盟店の本部に対する取引依存度が大きいことを示す事情と評価されるものと思われます。

  以上を踏まえると、平成21年措置命令の事案では、「コンビニフランチャイズ市場で強力な地位を占める本部とほとんどが中小事業者である加盟店の事業規模の格差は大きく、本部が商品の仕入れや経営の指導等を行うことにより、加盟店の本部への依存度は高いことに加え、契約期間や競業避止義務の関係からしても、加盟店は、その取引先を変更することが難しく、加盟店としては、加盟店が本部からの不利益な要請についても従わざるを得ないような状況にあった(=本部が優越的地位にある)」というような評価がされていたのではないかと考えられるところです。

 

4 まとめ

  以上のように、そもそも本部が独禁法上の「優越的地位」にあるかどうかは、公正取引委員会が公表しているフランチャイズガイドラインに記載されている考慮要素を事案に応じて評価・検討して考えていくことになると思われます。
 もっとも、最終的には諸事情を総合的に考慮することになりますので、微妙な判断となる可能性が高いと思われます。さらに本部が優越的地位にあることによってどのようなリスクがあるか等については、個別の事案に応じた検討が不可欠と思われます。
 そのため、本部として、「優越的地位」にあるかどうか(どの程度優越的地位にあると判断される可能性があるか)や、そのことによってどのようなリスクがあり、これにどう対処すべきか等について関心があれば、当事務所などフランチャイズ契約を得意とする事務所にご相談ください。

 

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中小事業再生GL②手続の流れ

2022.07.05

 画像は、中小企業庁が公表している、業況判断DI(ディフュージョンインデックス)というもので、中小企業において、景気が良いと「思っている」企業数から景気が悪いと「思っている」企業数を差し引いた指数です。2020年4月~6月期(Q1)の落ち込みが激しいのがコロナの影響とされますが、業種間差が激しい(黄色の製造業・緑色のサービス業の落ち込みが著しい)というのが、コロナ不況の特徴の一つでもあります(コロナ不況の特徴については、https://m2-law.com/blog/1958/ )。

 ただ、回復傾向にあるといえ、2022年になっても全体的な業況は-20~-40ですから、依然として厳しい状況とされています。

 そのような中、中小企業の事業再生スキームとして新たに定められたのが、中小企業事業再生GLで、第一弾としてその概要を解説しましたが( https://m2-law.com/blog/1216/ )、今回はGLにおける私的整理手続(再建型・廃業型)の具体的内容の解説です。

 

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1 再生型

(1)再生型私的整理手続の申出

    ア 主要債権者(金融債権額のシェア上位50%に達するまでの対象債権者)に対し、再生型私的整理手続の申出

    イ 主要債権者全員の同意を得て、第三者支援専門家を選定

(2)第三者支援専門家による支援開始

   主要債権者の意向を踏まえて、再生支援を行うことが不相当ではないと判断された場合に支援が開始されます。

(3)一時停止の要請(資金繰りの安定のために必要な場合)

   対象債権者全員に、書面で同時に一時停止の要請(私的整理手続一般における、一時停止の概要については、https://m2-law.com/blog/1277/ を参照下さい)

   ア 中小企業者・対象債権者間で良好な取引関係が構築されていること

   イ 再生の基本方針が示されていること

(4)事業再生計画案の立案

     外部専門家の支援を受け、第三者支援専門家、主要債権者と協議の上、事業再生計画案を立案

    ※ 内容・数値基準は、以下のとおりで、中小企業再生支援協議会による再生スキームとほぼ同じです(GL第三4.(4)①イ~ニ 支援協スキームについては、https://m2-law.com/blog/1427/ を参照下さい。)。

    ア 内容は、以下のとおりです。

        ① 企業の概況

② 財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移

③ 保証人がいる場合はその資産と負債の状況(債務減免等を要請する場合)

④ 実態貸借対照表(返済猶予の場合は必須ではない)

⑤ 経営が困難になった原因

⑥ 事業再生のための具体的施策

⑦ 今後の事業及び財務状況の見通し

⑧ 資金繰り計画(債務弁済計画を含む)

⑨ 金融支援(債務返済猶予や債務減免等)を要請する場合はその内容

イ 数値基準(再生計画案成立後最初に到来する事業年度開始日から起算)の内容は、以下のとおりです。

 ① 実質的に債務超過である場合は、5年以内を目途に実質的な債務超過を解消する(企業の業種特性や固有の事情等に応じた合理的な理由がある場合にはこれを超える期間を要する計画を排除しない)

 ② 経常利益が赤字である場合は、概ね3年以内を目途に黒字に転換する(但し上記①括弧書と同じ例外あり)

③ 事業再生計画の終了年度(原則として実質的な債務超過を解消する年度)における有利子負債の対キャッシュフロー比率が概ね10倍以下となる(但し上記①括弧書と同じ例外あり)

(5)第三者支援専門家による事業再生計画案の調査

   計画案の相当性、実行可能性、金融支援の必要性等の調査

(6)債権者会議の開催

  ア 事業再生計画案の内容説明

  イ 第三者支援専門家による調査報告

  ウ 質疑応答、意見交換

  エ 意見(同意不同意)表明の期限の設定

(7)事業再生計画の成立

    全対象債権者が同意し第三者支援専門家がその旨を文書等で確認した時点で成立

(8)事業再生計画成立後のモニタリング

   3年間を目処に

 

2 廃業型

(1)廃業型私的整理手続の申出

主要債権者に対し、廃業型私的整理手続の申出

(2)外部専門家による支援開始

     主要債権者の意向を踏まえて、資産負債及び損益状況の調査検証、弁済計画案策定の支援等

(3)一時停止の要請(資金繰りの安定のために必要な場合)

   対象債権者全員に、書面で同時に一時停止の要請

   中小企業者・対象債権者間で良好な取引関係が構築されていること

(4)弁済計画案の立案

   外部専門家の支援を受け、主要債権者と協議の上、弁済計画案を立案

   ※ 弁済計画案の内容は、以下のとおりで、再建型の場合以上に簡潔です(GL第三5.(3)①イ)。

    ① 企業の概要

    ② 財務状況(資産・負債・純資産・損益)の推移

    ③ 保証人がいる場合はその資産と負債の状況

    ④ 実態貸借対照表

       ⑤ 資産の換価及び処分の方針並びに金融債務以外の弁済計画、対象債権者に対する金融債務の弁済計画

     ⑥ 債務減免等を要請する場合はその内容

(5)第三者支援専門家による弁済計画案の調査

   ア 主要債権者全員の同意を得て、第三者支援専門家を選定

   イ 第三者支援専門家による弁済計画案の相当性、実行可能性等の調査

   ※ 廃業型の場合は、再生型と異なり、弁済計画案の調査の段階で、第三者支援専門家が入ります(GL第三5.(4)①)。

(6)債権者会議の開催

   ア 弁済計画案の内容説明

   イ 第三者支援専門家による調査報告

   ウ 質疑応答、意見交換

   エ 意見(同意不同意)表明の期限の設定

(7)弁済計画の成立

    全対象債権者が同意し第三者支援専門家がその旨を文書等で確認した時点で成立

(8)弁済計画成立後のモニタリング

   弁済計画に沿った資産の換価及び処分等が適時・適切に実行されているかについて、報告を受けて履行状況を確認

 

 

投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

中小事業再生GL①概要等

2022.06.20

1 はじめに

  令和4年3月、中小企業の事業再生等に関する研究会が「中小企業の事業再生に関するガイドライン」を発表しました(以下、中小企業事業再生GL、若しくは、単にGLといいます。)。GLは3部構成になっていて、第一部では「ガイドラインの目的等」が示され、第二部では「中小企業の事業再生等に関する基本的な考え方」として、有事における中小企業者と金融機関の対応等が示されています。そして、第三部が「中小企業の事業再生等のための私的整理手続」です。

 今回は、第三部を中心に簡単な解説をしていきます。先ずは、概要と関係者の説明です。

 

2 中小企業事業再生GLに定める私的整理手続の位置づけ

(1)GL第三部に定める私的整理手続は、準則型の私的整理手続で、経営困難な状況にある中小企業者である債務者を対象に、法的整理手続によらずに、債務者である中小企業者と金融機関等の債権者との合意に基づき、債務について、返済猶予、債務減免等を受けることで、中小企業者の円滑な事業再生や廃業を行うことを目的としています(私的整理手続の概要については、https://m2-law.com/blog/1216/ を参照下さい。)。

(2)似ている制度として中小企業再生支援協議会スキーム(以下、支援協スキームといいます。)を利用した私的整理手続があり、どちらも、第三者介在型の私的整理手続ですが、両者の立ち位置を図式化し比較すると以下のとおりになり、支援協スキームが「官」を介在した手続であるのに対し、中小企業事業再生GLは「民」を介在した手続となります。

      【支援協スキーム】           【中小企業事業再生GL】

      中小企業再生支援協議会          第三者支援専門家

     対象債務者 ⇔ 対象債権者       対象債務者 ⇔ 対象債権者

 

両制度の大雑把な違いは以下のとおりです。

 

中小企業事業再生GL

支援協スキーム

手続関与者

第三者支援専門家(民)

再生支援協議会(官)

対象債権者

リース債権者も対象

リース債権者は対象外

対象債務者

学校法人、社会福祉法人等も利用可

学校法人、社会福祉法人等は利用不可

 

3 対象債務者・対象債権者等

(1)対象債務者

 (ⅰ)中小企業者(中小企業基本法2条1項)

    ※ 個人である中小企業者、学校法人、社会福祉法人等も対象としています(GLQ&A3)。

※ 基本法2条5項の小規模事業者も含まれます(おおむね常時使用する従業員の数が20人以下、商業又はサービス業に属する事業を主たる事業として営む者については、5人以下)。なお、小規模事業者については、後述の数値基準が緩和されています(GL第三部1.4(4)②参照)。

 (ⅱ)要件

    ア 再生型私的整理手続

     ① 収益力の低下、過剰債務等による財務内容の悪化、資金繰りの悪化等が生じることで経営困難な状況に陥っており、自助努力のみによる事業再生が困難であること

     ② 中小企業者が対象債権者に対して中小企業者の経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること

     ③ 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと

    イ 廃業型私的整理手続

     ① 過大な債務を負い、既存債務を弁済することができないこと又は近い将来において既存債務を弁済することができないことが確実と見込まれること(法人の場合は債務超  過の場合を含む)

     ② 円滑かつ計画的な廃業を行うことにより、中小企業者の従業員に転職の機会を確保できる可能性があり、経営者等においても経営者保証に関するガイドラインを活用する等して、創業や就業等の再スタートの可能性があるなど、早期廃業の合理性が認められること

     ③ 中小企業者が対象債権者に対して中小企業者の経営状況や財産状況に関する経営情報等を適時適切かつ誠実に開示していること

     ④ 中小企業者及び中小企業者の主たる債務を保証する保証人が反社会的勢力又はそれと関係のある者ではなく、そのおそれもないこと

)対象債権者

   銀行、信金、信組、労金、農協、漁協、政府系金融機関、信用保証協会(代位弁済を実行し、求償権が発生している場合。保証会社含む。)、銀行等からの債権譲渡を受けているサービサー等及び貸金業者

  ※ リース債権者は、廃業型の場合は原則として、再生型の場合は必要に応じて対象債権者となります(GLQ&A20)。

(3)外部専門家

   中小企業者が、手続の利用にあたって、必要に応じて相談する弁護士、公認会計士、税理士等(弁護士なら、代理人として計画策定支援や交渉等にあたることになります。)。

(4)第三者支援専門家

   第三者である支援専門家(弁護士、公認会計士等の専門家であって、再生型私的整理手続及び廃業型私的整理手続を遂行する適格性を有し、その適格認定を得たもの

 

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土地法制改正⑦不動産登記法

2022.05.30

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1 相続登記の申請義務化等

(1)改正の経緯

相続登記の申請が義務とされていないことや、また、費用や手間をかけてまで登記申請したくないと考える場合も少なくないことが、相続登記未了の原因となり、結果として、所有者不明土地発生の最大の温床となっていました。そこで、相続登記申請の義務化とその義務履行を簡易にできる制度について、不動産登記法が改正されました(以下、改正不動産登記法を、単に新法といいます。)。

なお、これらの点に関する新法施行日は、令和6年4月1日になっています。

(2)相続登記の申請義務化

ア 義務内容

相続(特定財産承継遺言による場合を含むとされています。なお、特定財産承継遺言については、https://kawanishiikeda-law.jp/blog/2000/ をご覧ください。)や遺贈によって不動産を取得した相続人に対し、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました(新法76条の2)。

さらに、例えば、上記登記が遺産分割前の暫定的な法定相続分に基づく共同相続登記等である場合において、その後に遺産分割が成立したときには、その内容を踏まえた登記申請をすることも義務付けられています(新法76条の2-2項)。

イ 過料の制裁

正当な理由がないのに相続登記申請を怠ったときは、10万円以下の過料に処されます(新法164条1項)。この「正当な理由」の具体的な内容は、後日、通達等であらかじめ明確化される予定です。過料を科する際の具体的手続についても、事前に義務の履行を催告することを必要とする等、後日同様に、省令等で明確に規定される予定となっています。

(3)義務履行の簡易化

①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を申請義務の履行期間内(3年以内)に登記官に対して申し出ることで、上記(2)の相続登記申請義務を履行したものとみなしてもらえます(新法76条の3)。

申出をした相続人の氏名・住所等が職権で登記に付記され、これを「相続人申告登記と呼ぶことになります。「相続人申告登記」は、単独申出可、法定相続人の範囲及び法定相続分の割合の確定が不要、資料収集の負担の軽減という3つの点で簡易な方法といえます。また、令和4年度税制改正の大綱では、相続人申告登記を非課税とする方針がとられています。

(4)経過措置

施行日(令和6年4月1日)前に相続が発生していたケースについても、相続登記の申請義務は課されます。ただし、申請義務の履行期間については、施行日か要件を充足した日のいずれか遅い日から3年間として起算されます(令和6年3月31日までに発生した相続でいえば、令和9年3月31日までに申請義務を履行すべきことになります。)。

 

2 所有不動産記録証明制度の創設

(1)改正の経緯

相続が発生した場合にその相続人が被相続人所有名義の不動産を名寄せして知ることができる制度があれば、相続財産調査の煩雑さを軽減でき、ひいては相続登記未了の予防につながると考えられました。そこで、登記官において、特定の被相続人が所有権の登記名義人として記録されている不動産を一覧的にリスト化し、証明する制度が新設されました(新法119条の2)。これを「所有不動産記録証明制度」と呼び、かかる制度による証明書を「所有不動産記録証明書」といいます。

なお、これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね5年とされていますので、令和8年4月1日頃と予想されます。

(2)交付請求可能者

所有不動産記録証明書の交付請求が可能な者は、以下のとおりです。

ア 新法119条の2-1項によれば「何人も…交付を請求することができる」とされているので「自らが所有権の登記名義人として記録されている者」だけでなく「所有権の登記名義人として記録されている不動産がない者」も、請求が可能です。この場合には、該当する不動産の記録がない旨の証明書が交付されます。

イ 相続人その他の一般承継人(新法119条の2-2項)。

 

3 住所変更登記等の申請の義務化

所有権の登記名義人に対し、住所等の変更日から2年以内にその変更登記の申請をすることを義務付けられ(新法76条の5)、「正当な理由」がないのに申請を怠った場合には、5万円以下の過料に処されます(新法164条2項)。この「正当な理由」の具体的な内容は通達等で、過料を科す手続は省令等で明確にされる予定です。

上記変更登記は、登記官が職権ですることも可能で、その場合自然人に対しては法務局からの意思確認がなされる手続となっています。

なお、これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね5年とされていますので、令和8年4月1日頃と予想されます。

そして、住所変更登記申請の義務化についても、義務履行期間の起算日に関して経過措置が設けられ、施行日か要件を充足した日のいずれか遅い日から2年間として起算されます(令和8年3月31日までに発生した住所変更でいえば、令和10年3月31日までに申請義務を履行すべきことになります。)。

 

4 その他の登記手続の簡略化

(1)遺贈を原因とする所有権移転登記

従来:登記権利者(受遺者)と登記義務者(被相続人の全相続人又は遺言執行者)との共同申請

新法:相続人が受遺者である場合に限り、登記権利者である受遺者による単独申請が可能(新法63条3項)。例えば、遺贈によって共同相続人ABCの中の一部の者であるABの共有とされた不動産について、Aが単独でAB共有名義とする登記を申請することも実務上可能と考えられています(部会資料57・9頁)。

(2)法定相続分での相続登記後に、①遺産の分割の協議又は審判若しくは調停、②他の相続人の相続放棄、③特定財産承継遺言、④相続人が受遺者である遺贈による、所有権の取得に関する登記申請をする場合

従来:登記権利者と登記義務者の共同申請

新法:単独申請による更正登記が可能

これらの点に関する新法施行日は、本ブログをアップした現時点では決まっていませんが、新法公布日から概ね2年とされていますので、令和5年4月1日頃と予想されます。

 

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空家対策特別措置法

2022.04.26

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1 はじめに

土地法制改正の連載中ですが、所有者不明土地管理制度の解説をしたことから( https://m2-law.com/blog/4734/ )、これと関連する空家等対策特別措置法(以下「特別措置法」乃至は単に「法」ということがあります。)について解説します。ちなみに、写真は、村上の故郷の福知山で行われたかかる特別措置法に基づく代執行がされた建物です。ネット情報ですが、特別措置法については福知山という地名を見聞きすることが多く、福知山市が頑張っているように思います。

2 制定理由

空家は、適切な管理が行われず、防災、衛生及び景観を害するなど、特に地域住民の生活環境に悪影響を与えることがあります。そこで、空家に関する問題に対処し、地域住民の生命・身体・財産の保護及び生活環境の保全するとともに、空家等の活用を促進することを目的として、空家等対策特別措置法が制定されました(法1条)。

3 空家の種類
 空家対策特別措置法は、空家について、「空家等」と「特定空家等」という2つの定義を置いています。おおまかにいうと、「空家等」という大きな括りの中で特に問題があるものが「特定空家等」に当たるという建付けになっています。
 特定空家等に当たると、後述のとおり、指導、勧告や行政代執行の対象となり得る点が重要です。
 具体的には、空家等については、「この法律において『空家等』とは、建築物又はこれに附属する工作物であって居住その他の使用がなされていないことが常態であるもの及びその敷地(立木その他の土地に定着する物を含む。)をいう。ただし、国又は地方公共団体が所有し、又は管理するものを除く。」(法2条1項)と規定されています。
 また、特定空家等については、「この法律において『特定空家等』とは、そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態又は著しく衛生上有害となるおそれのある状態、適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態にあると認められる空家等をいう。」(同条2項)と規定されています。

4 制度概要

  それでは、空家対策特措法は、どのような内容となっているのでしょうか。

(1)基本指針・計画の策定等

  まず、国や公共団体に対しては、国が空家等に関する施策の基本指針を定めること(法5条)、市町村は国の指針に則した空家等対策計画を定めることができる旨(法6条)及び協議会を設置が可能であること(法7条)を規定しています。また、都道府県は、市町村が講ずる措置に対する助言や市町村相互の連絡調整等の必要な措置を行うように努めるものとされています(法8条)。

  このように、国や地方公共団体が相互に連携して空家問題に取り組むべきであることが定められているといえるでしょう。

(2)空家等についての情報収集等

  外観上危険と認められる空家等に対する情報収集のための立入り(法9条)や所有者等の把握のために固定資産税情報の内部利用(法10条)が可能であることなどが規定されています。また、市町村長が、空家等の所有者に対し、管理のための情報提供や助言などができることも定められています(法12条)。

(3)空家等及び跡地の活用・財政上の措置及び税制上の措置等

  空家等の跡地の活用(法13条)や財政上の措置及び税制上の措置等(法15条)に関する規定も設けられています。財政上の措置及び税制条の措置については、以下の7で詳しく解説します。

(4)特定空家等に対する措置

  空家等のうち、特定空家等については、市町村長は、特定空家等の所有者等に対し、除却、修繕、立木竹の伐採についての助言又は指導、勧告、命令が可能とされています(法14条1項乃至3項)。さらに、命令を受けたにもかかわらず対象者が必要な措置を取らない場合には、行政代執行により強制的な実現が可能と規定されています(同条9項)。また、そもそも命令の対象者が確知できない場合には、通常の代執行の手続きより簡略な略式代執行により必要な措置の実現が可能とされています(同条10項)。

  また、上記のうち、「勧告」に従わなかった場合には固定資産税等の住宅用地特例の例外除外(地方税法349条の3の2第1項括弧書)、「命令」に従わなかった場合には50万円以下の過料の制裁(法16条1項)も規定されています。

5 空家等対策特措法の施行後の状況

  空家等対策特措法は、平成27年2月26日に施行されました。現時点(令和4年)では、同法施行から既に5年以上が経過しています。令和3年2月4日に国土交通省から「空家対策特措法について」という資料が公開されており、同資料4頁以下に空家対策特措法の施行後の状況が記載されています。ここでは、同資料に基づき、空家対策特措法の施行後の状況を紹介します。詳細な数字については上記資料もご参照ください( 001385948.pdf (mlit.go.jp ) 。
 まず、空家等対策計画についてみると、約7割の市区町村で空家等対策計画が既に策定され、かつ、今後策定する予定がある市区町村も約2割に上ります。同法に基づく行政代執行や略式代執行についても、令和2年3月31日時点で、それぞれ69件及び191件の実施件数があります。
 市区町村の取組みにより除去等がされた特定空家等は、上記の代執行等の件数も併せて、1万1887物件にも上ります。もっとも、特定空家等は、市区町村が把握しているだけでも、まだ1万7636物件も残存しています。そのため、今後も、空家問題への取組みは続くものと思われます。

6 所有者不明建物・管理不全建物管理制度との関係

 空家対策特措法が施行され、同法に基づく取組みも着実に増加してきました。もっとも、以前ブログで解説した通り、土地法制改正により、その中で所有者不明建物・管理不全建物管理制度が創設されています。特定空家等についても、所有者不明建物管理制度等の要件が満たされれば、この管理制度の利用(併用)も考えられるところです。

 例えば、特定空家等かつ所有者不明建物を除却する場合、市町村長は、略式代執行の方法によることも考えられます。
 しかし、略式代執行の要件充足性を判断することは困難であるとともに、代執行費用の予算措置が必要で、事後的に代執行費用を回収することも困難です。そのため、法的には略式代執行の方法によることができるとしても、現実には、略式代執行を行うことが難しい場合もあり得ます。

 これに対し、所有者不明建物管理制度を利用した場合には、建物の管理は管理人が行うこととなり、また、一定の予納金が必要であるものの、建物の売却により予納金が回収できる場合もあり得るなどのメリットがあります。また、管理人が選任されると、この管理人は、同時に空家対策特別措置法3条にいう「管理者」に該当すると解されます。そのため、市町村長は、管理人に対し、空家対策特別措置法に規定された指導等の各種の権限行使も可能となると考えられます。もっとも、所有者不明建物管理制度は、「利害関係人」が申し立てなければなりません(民法264条の14第1項)。当該空家の隣人等は「利害関係人」に当たると考えられますが、公共団体の長が「利害関係人」に当たるかどうかは議論があったことから、所有者不明土地利用円滑化特措法新38条2項で、公共団体の長も「利害関係人」にあたるとされました(ただし、令和5年4月1日施行)。

 このように、所有者不明土地関係法改正で制定された制度と空家対策特措法に基づく制度のいずれを利用するか、あるいはこれらの制度を組み合わせて利用するかは、事案に応じて具体的に検討する必要があるといえます。

 

7 財政上の措置及び税制上の措置(法15条関係)

(1)財政上の措置

 先ず、法15条1項は「国及び都道府県は、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、空家等に関する対策の実施に要する費用に対する補助、地方交付税制度の拡充その他の必要な財政上の措置を講ずるものとする。」としています。
そして、空家の「活用」については、地方公共団体が行う場合は国費による1/2を限度とした交付を、民間が行う場合は国費による1/3・地方自治体による1/3を限度とした交付を受けることが可能です。空家の「除去」については、地方公共団体が行う場合は国費による2/5を限度とした交付を、民間が行う場合は国費による2/5・地方自治体による2/5を限度とした交付を受けることが可能です。
 
(2)税法上の措置
 
 次に、法15条2項は「国及び地方公共団体は、前項に定めるもののほか、市町村が行う空家等対策計画に基づく空家等に関する対策の適切かつ円滑な実施に資するため、必要な税制上の措置その他の措置を講ずるものとする。」としています。具体的には、以下のような措置があります。
 
ア 空家の固定資産税等について

空家の放置で税金が6倍になることがあります。

住宅用地については、固定資産税と都市計画税の課税標準の特例(地方税法349条の3の2、702条の3)があり、例えば、小規模住宅用地については特例で固定資産税の課税標準が6分の1になっています。しかし、空家を適切に管理せずに放置し続けると特定空家(法2条2項)と判断されることがあり、状態改善するよう助言・指導、勧告をされることで、上記の特例の適用対象外となってしまいます(地方税法349条の3の2)。

イ 相続した空家等の譲渡の所得税について

相続した空家の譲渡(平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間の譲渡で、当該相続の開始があつた日から同日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの間にしたもの)では、譲渡所得から3,000万円を特別控除されることがあります(租税特別措置法35条3項)。ただ、この特別控除の特例を受けるための要件は多く、ご自身の譲渡が充たしているか確認する必要があります。

まず、①家屋と敷地の両方を相続②その家屋が昭和56年5月31日以前に建築③売却先が第三者(配偶者や親族、同族会社等でない)④売却金額が1億円以下であることが必要です。家屋又は家屋と敷地の売却をする場合は、⑤家屋が相続開始時から売却時まで空き家であった(相続人等の居住の用等に供されていない)⑥売却時に耐震性があることが必要ですし、相続した居住用家屋を取り壊した後その敷地の用に供されていた土地等の売却をする場合も、⑤と同じようなことが求められます。

                                                                                   以上

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土地法制改正⑥所有者不明土地管理制度等

2022.04.09

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1 はじめに

  土地法制改正①総論(https://m2-law.com/blog/4048/)でも触れましたが、所有者不明土地問題の一つの側面として、所有者不明土地が管理不全状態になりやすいという問題があります。

  今回ご紹介する「所有者不明」「土地等」管理制度・「管理不全」「土地等」管理制度(民法264条の2以下及び264条の9以下)は、こうした問題に対処しようとする制度です。
 以下では、所有者不明土地管理制度に重点を置いて解説を行い、その他の制度については簡単に解説を行うこととします。

  これらの制度の施行は、令和5年4月1日からです。

2 所有者不明「土地」・「建物」管理制度

  財産の管理に関する制度としては、これまでも、不在者管理制度(民法25条1項)や相続財産管理(民法952条)がありました。しかし、これらの制度では、不在者等の財産の全てが管理の対象になり、管理費用が高額になるという問題があります。
 今回創設された所有者不明土地等管理制度等の特徴は、従前の不在者や被相続人といった「人」に着目した管理と異なり、所有者不明土地等という「物」に着目した管理を可能とするところにあります。

(1)所有者不明「土地」管理制度

   まず、所有者不明土地管理制度について解説します。

  ア 具体例

 所有者不明土地管理制度の利用が検討される例としては、隣地が管理不全状態で草木が生い茂ったり、工作物が倒壊し又は倒壊の危険が生じているなどして、自己所有地に妨害状態が生じ又は生じるおそれがあるといった場合が考えられます。
 このような場合、当該土地の所有者は、隣地の所有者に対し、妨害状態の排除や予防を請求することが出来ます。
 しかし、そもそも隣地の所有者が不明であれば、このような請求をする相手方が不明であり、所有者が対応に窮する可能性があります。
 このような場合には、甲土地の所有者は、所有者不明土地管理制度を利用し、選任された所有者不明土地管理人に対し、妨害排除や予防を請求することができるようになります。

イ 要件等

 では、どのような場合に、所有者不明土地管理制度を利用できるのでしょうか。
 まず、対象土地について、「所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない」ことが必要です(民法264条の2第1項)。所有者が誰かわからない場合だけでなく、所有者がどこにいるかわからない場合も含まれます。
 そして、この制度を利用できるのは、「利害関係人」(同項)及び「国の行政機関の長又は地方公共団体の長」(所有者不明土地利用円滑化特措法新38条2項・施行日は同じく令和5年4月1日)です。「利害関係人」についてみると、どのような人が「利害関係人」当たるかは法律には明記されていないのですが、例えば単なる隣人は「利害関係人」含まれないものの、隣地の管理不全状態により悪影響を被っている者は「利害関係人」当たると考えられています。
 上記の「利害関係人」等は、裁判所に対し、所有者不明土地管理命令の申立を行います。そして、裁判所は、「必要があると認めるとき」には、所有者不明土地管理命令を発令し、所有者不明土地管理人が選任します(民法264条の2第1項、4項)。この必要性についてですが、必要性がないと考えられる場合の例としては、不在者管理など他の財産管理制度が既に利用されている場合が考えられます。
 なお、管理費用については、当該土地の所有者が負担するのが原則です(民法264条の7第2項)。しかし、予納金が必要な場合もあるとされています(民法267条の7第1項参照)。

  ウ 効果

    このようにして、所有者不明土地管理人が選任されると、当該土地等の管理処分権は、所有者不明土地管理人にのみ帰属することになります(民法264条の3第1項)。
 所有者不明土地管理命令の効力は、当該土地と土地上の一定の動産などに及び(民法264条の2第2項)、所有者不明土地管理人は、これらの物の保存行為や対象財産の性質を変えない範囲における利用・改良行為をすることができます(民法264条の3第2項各号)。
 また、所有者不明土地管理人は、裁判所の許可を得れば、当該所有者不明土地の所有者の同意がなくても、対象土地を売却することが出来ます(民法264条の3第2項柱書本文)。そのため、民間事業や公共事業に際して所有者不明土地を買受けを希望する者(このような者も前記「利害関係人」に当たり得ます。)が同制度の申立てを行い、管理人から買受けることによって、土地利用の活性化にもつながると期待されているのです。

(2)所有者不明「建物」管理制度

   以上のような所有者不明土地管理制度とは別に、今回の改正では、建物についての所有者不明建物管理制度(民法264条の8)も定められました。
 建物についての管理制度を創設しなくても、「土地の管理制度の効力を建物に及ぼせばよいのではないか」と考えられるかもしれません。
 しかし、土地と建物は別個の物とされているため、土地と建物の所有者が異なる場合があります。その場合に同一の管理人が、土地と建物の双方とも管理するとすれば、利益相反のおそれがあるのです。例えば、土地上の家屋が老朽化している場合、土地の所有者からみれば建物の解体が利益になりますが、家屋の所有者からすれば建物の存続が利益になります。
 そのため、今回の改正では、土地と建物のそれぞれについて管理制度が創設され、それぞれ規定が整備されることとなったのです。
 もっとも、土地と建物の双方の所有者が同一の場合には、利益相反のおそれがないことから、土地と建物について同一の管理人が専任される場合も多いと思われます。

3 「管理不全」土地・建物管理制度

 以上のような所有者不明土地・建物管理制度が創設されたのですが、不動産の管理不全状態は、所有者が不明である場合にのみ生じるわけではありません。例えば、所有者が誰かが判明し、かつ、どこにいるかがわかったとしても、遠方に暮らしている等の理由により、土地等を管理する意思が希薄であるという場合も考えられます。

 このような場合に対処するため、今回の改正では、管理不全土地等管理制度(民法264条の9及び民法264条の14)も創設されました。
 管理不全土地等管理命令の発令要件は、①対象土地又は建物の所有者による管理が不適当なことによって「他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある」こと、②「利害関係人」による申立て及び③「必要があると認め」られることです(民法264条の9第1項、民法264条の14第1項)。
 管理不全土地等管理命令が発令されると、管理人は、当該対象土地等につき、保存行為等をすることができます(民法264条の10)。
 もっとも、所有者不明土地等管理命令と異なり、管理不全土地等管理管理人は、所有者の同意なく、当該土地等を処分することはできません(民法264条の10第3項)。

4 所有者不明土地等管理制度と管理不全土地等管理制度

  ここまでの解説で、所有者不明土地等管理制度(要件は「所有者不明等」です。)と管理不全土地等管理制度(要件は「管理不適当」です。)のどちらの要件もみたす場合にはどうなるのかという疑問を持たれるかもしれません。

  すなわち、所有者不明であるがゆえに管理不全状態となっている土地・建物については、どちらの制度を使えばよいのかという問題です。
 法律上は、どちらの制度を利用することも可能です。もっとも、所有者不明土地等管理制度の方が、所有者の同意なく、裁判所の許可のみで、土地等を処分できる点で管理人の権限が大きいと考えられます。

  そのため、両制度の双方の要件を満たす場合には、所有者不明土地等管理制度を利用する方がよいと思われます。

5 まとめ

  今回は、所有者不明土地等管理制度・管理不全土地等管理制度について、所有者不明土地管理制度を中心に解説をしました。もっとも、ブログ記事の性質上解説を省略した箇所もあります。
 土地・建物の管理については、本文でも言及した相続財産管理制度など、利用可能な制度が複数存在することもあります。具体的にどの制度を利用するべきかは、それぞれの制度の特色やメリット・デメリットを踏まえたうえで検討する必要があります。

                                              以上

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

未成年取消権

2022.03.31

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令和4年4月1日から、成年年齢が20歳から18歳に引き下げられます。その際、一番危惧されていることは、民法上の未成年取消権を使えなくなる年齢層が増えるという点です。

未成年取消権とは、民法5条が定める制度で「未成年が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。…前項の規定に反する法律行為は、取り消すことができる。」というものです。例えば、親(法定代理人)の同意なく契約(法律行為)をしたとしても、未成年であるならば「未成年という理由だけで」契約を取り消せます。契約の目的物に問題があったというような理由は不要です。

何故、そのような制度が存在するかといえば、未成年者は判断能力に乏しく騙されやすいから定型的な保護が必要という点なのでしょうが、日本の実情からみて未成年の成熟度が増してきているのか(昔と比べて18歳にもなれば立派な判断能力がある)といえば、疑問が湧くところです。建前としては、若者の自己決定権の尊重と世界の趨勢(世界の80%では18歳からが成年)というのが成年年齢引き下げの理由になっていますが、それでいいのかということですね。

国民生活センターが関係するパイオネット情報によれば、18歳から24歳までの若者の相談件数は、以下のとおりで、その半数以上が18歳・19歳です。

       全体   18・19歳   割合

2018年 7393   4035   54.5%

2019年 8571   5203   60.7%

2020年 7741   4820   62.2%

相談内容としては、ダイエットサプリ、除毛剤の定期購入、洋服などの模倣品、アダルトサイト等が多く、契約としての要保護性がどこまであるのか疑問もあり、ただ、その目的物に問題(瑕疵)があったと直ちに言い切れるかどうかもわからないので、未成年取消権という武器を失うことは、18・19歳の人には大きなことなのかもしれません。一層の注意が必要です。

以下は、国民生活センターの関連ページです。関心ある方は、どうぞ。

 

 

狙われる!?18歳・19歳「金(かね)」と「美(び)」の消費者トラブルに気をつけて!(発表情報)_国民生活センター (kokusen.go.jp)

 

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