事業再生法人破産

事業譲渡④第二会社方式

2021.06.28

1 意義

(1)第二会社方式とは、会社の事業のうち再生見込みのある事業について、事業譲渡等の手法を利用して別会社(第二会社)に承継させるスキームです。事業の一部を移転させれば、旧会社は不採算部門のみ残ることになり、事業の全部を移転させれば、旧会社は空っぽになります。旧会社の債権者からすれば、旧会社が破産、特別清算等の手続で消滅することが望ましいのでしょうが、現実には、そのまま旧会社が放置されたままという場合も珍しくありません。

(2)事業再生を考えるには収支の改善が必須ですが、幾ら改善しても合理的な期間に負債を完済できないのであれば、払えない部分の債権をどのようにするかが問題になります。

   これが私的整理であれば、債権放棄を求めることになりますが、政府系金融機関や地域金融機関では十分な対応が出来ないことがあります。その際、第二会社方式を採り、併せて旧会社を破産等させれば、間接的な形であるが事実上、債権者に債権放棄してもらうのと同じ効果をもたらします。

   また、これが再建型倒産手続であれば、払えない部分は法的に債権カットできますが、例えば、民事再生手続の場合、①公租公課や労働債権はカットの対象にならないばかりか、再生手続開始決定後も引き続き支払っていかなければなりません。免除益課税の問題もあり、それらが事業再生の足枷になることもあります。②再生債権であれば法的カットが出来るといっても、そのためには、再生債権者の頭数過半数及び債権額2分の1以上の同意が必要であり(民再法172条の3-1項)、そもそもそのための予納金等も馬鹿になりません(負債額が1億円以上5億円未満であったとしても、東京地裁の場合、その額は400万円とされています。)。前者①の問題を回避すべく、再建型倒産手続の中で第二会社方式が採られることもありますし、後者②の問題を回避する方法として第二会社方式が採られることもあり、これが破産手続と併せて行われるのであれば、簡易な法的整理としての意義を有します。

 

2 長所

(1)免除益課税を回避できる可能性が高い

   事業再生後も払えない債務(債権者からみれば債権)については、その放棄乃至は法的カットが必要になり、その反面として免除益課税が問題になりますが、第二会社方式をとる場合、それらは旧会社の処理としてなされるので、その問題を限りなく回避できます。

   併せて、旧会社について破産・民事再生その他の法的整理手続が採られるのであれば、債権者にとっても無税償却が容易に可能となり、その協力が得易いというメリットが加わります。

(2)スポンサーの支援が受け易い

   第二会社方式では、新たな会社を利用するので、簿外債務や過去の法令違反の問題を回避することができ、その結果スポンサーによる資金援助が受けやすくなるという長所があります。新たな会社を利用するということは、旧会社と事業を継続する第二会社とを明確に区別するということなので、それが私的整理の中で行われるのであれば、債権放棄に比べて金融機関の支援を受け易いというメリットも加わります。旧会社の整理を伴うのであれば、スポンサーから提供を受けた事業譲渡等の対価を債権者が一括で取得できるという点もメリットといえます。

 

3 注意点

(1)問題の所在

  ① 第二会社方式が、私的整理の一環として行われるのであれば、旧会社を破産・特別清算により消滅させるという点も含め、全金融機関等の同意の下で行われるので問題はありません。債務者は第二会社において事業再生を果たせます、金融機関は事業譲渡・会社分割による対価によって不良債権処理を果たせます、その対価は事業価値の毀損を避けるべく秘密裏に行われた結果として最大価値を有するものです、事業に関する取引先は何ら影響を受けずそのまま継続した取引を営めます、正に「三方良し」といえます。

    また、第二会社方式が、債務者主導下で行われたとしても、これが再建型倒産手続の中で行われるのであれば、債権者集会等債権者が関与する機会があり、ある程度の保障はあります。また、旧会社が破産手続を経る場合は、管財人と裁判所の目が光るので、ギリギリ大丈夫かもしれません。

② 問題なのは、債務者主導の下、第二会社方式による事業再生が行われたものの、旧会社がそのままの状態になっている場合です。事業譲渡等により資産移転はされているので、正当な対価が旧会社に入っていればいいのですが、そのようなものもないまま、放ったらかしにされている場合は意外と多いように思います。このような場合の債権者としては踏んだり蹴ったりでしょう。ただ、大人しい債権者ばかりではありません。旧会社が破産しないまま債権が残っているのであれば、中には様々な行動をする債権者もいます。

(2)商号続用責任

   このような場合、債権者としては様々な対応が考えられますが、ここでは商号続用責任について、簡潔に述べます(その他、取締役の第三者責任の追及-会社法429条、法人格否認の法理、債権者破産により管財人に否認権行使を促すといった方法も考えられます。)。

   事業譲渡により事業再生を図る場合、旧会社から顧客その他を譲り受けることが多いです。では顧客はどこについているかといえば、それは様々で、契約関係のみならず、人そのものや、場所、商品、看板、中には電話番号やメールアドレスであったりもします。従って、これらの承継も併せてされることも多いです。

   この点、新会社が旧会社の商号を続用している場合は、債務弁済責任を負うという規定があります(会社法22条1項)。ただ、その類推適用という解釈手法は進んでいて、例えば、新設分割によりゴルフ場の経営が旧会社から新会社に移転したものの、同じクラブ名称を用いていた場合に、同条項を類推して新会社に旧会社の預託金債権者に対する責任を認めたものがあります(最3小判平成20年6月10日集民228号195頁)。

 

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投稿者:弁護士法人村上・新村法律事務所

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